衆院憲法審
衆院憲法審査会は24日、憲法53条に基づく「臨時会召集期限」について自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は同条について「国会の少数者の発言を保障し、国民の多様な意見を国政に反映させると同時に、国会による行政監視機能を徹底させ、権力を統制するためのものだ」と強調しました。
赤嶺氏は、明治憲法下で、議会は天皇と政府が必要とする場合のみ召集される協賛機関にすぎず、天皇の独裁体制のもとで侵略戦争に突き進んだと述べ、「この反省から日本国憲法は国民主権のもと、国会を国権の最高機関と位置づけ、国会自身に召集の自律権を与えた」と指摘。戦後の憲法制定議会で金森徳次郎憲法担当相は53条の意義について、少数が要求しても議会が開かれ、少数会派の意思が主張し得ることだと説明していると強調し、「国民主権と議会制民主主義を徹底する上で極めて重要な規定だ」と主張しました。
赤嶺氏は、2017年に安倍政権が野党の臨時会召集要求を98日間も無視するなど、これまで自民党政権が53条に基づく要求を無視し、「民主主義の土台を根底から踏みにじってきた」と批判。この問題が問われた裁判で、20年の那覇地裁判決は「内閣の臨時会の召集は、憲法上明文をもって規定された法的責務」「内閣に認められる裁量の余地は極めて乏しい」と断じており、「野党の臨時会召集要求を政府が無視するなど、到底認められるはずがない」と主張。「憲法を守らない者に改憲を口にする資格はない」と述べました。(しんぶん赤旗 2025年4月28日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
憲法五十三条について意見を述べます。
憲法五十三条後段は、臨時会について、いずれかの議院の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならないと明記しています。その目的は、国会の少数者の発言権を保障し、国民の多様な意見を国政に反映させると同時に、国会による行政監視機能を徹底させ、権力を統制するためです。
この規定は、日本国憲法に初めて取り入れられたものです。明治憲法は、天皇主権の下で、議会は天皇と政府が必要とする場合にのみ召集され、まさに協賛機関にすぎませんでした。さらに、天皇は議会閉会中も法律に代わる勅令を出せるなど、権限を独占していました。こうした独裁体制の下で侵略戦争へと突き進んだのです。
この反省から、日本国憲法は、国民主権の下、国会を国権の最高機関と位置づけ、国会自身に召集の自律権を与えたのであります。憲法制定議会で、金森徳次郎大臣は、憲法五十三条の意義を、少数が要求しても議会が開かれること、少数派の意思が主張し得ることだと強調しています。国民主権と議会制民主主義を徹底する上で極めて重要な規定であることは論をまちません。
重大なことは、自民党政権が、これまで、憲法五十三条に基づく野党の臨時国会召集要求を繰り返し無視し、民主主義の土台を根底から踏みにじってきたことです。
法制局の資料にあるように、二〇一七年六月、野党は、森友、加計学園問題の真相解明のため、憲法五十三条に基づいて臨時会の召集を内閣に要求しました。通常国会の閉会直後に加計学園問題で官邸の関与を示す文書が明らかになり、疑惑の解明は国会の責務でした。ところが、当時の安倍政権は、九十八日間にわたってこの要求に応じませんでした。さらに、九月二十八日に開いた臨時会では、その冒頭で衆議院を解散して、国会での議論を封じ、疑惑に蓋をしようとしたのであります。
二〇二〇年七月は、コロナ感染症の拡大に対応するために臨時会の召集を要求しています。当時は、全国の感染者数が連日最多を更新し、東京都が外出自粛を呼びかけていました。ところが、政府は、国民の批判を無視して国内での旅行需要を喚起するGoToトラベル事業を強行するなど、その対応は感染拡大防止に全く逆行するものでありました。
政府の姿勢を正し、コロナから国民の命と暮らしを守る対応を議論することが国会には強く求められていました。しかし、ここでも安倍、菅政権は、臨時国会召集要求に応じませんでした。国会での実質的な議論が四か月も行われない下で、第二波や第三波と言われる感染拡大が起きたのです。少数者の意見を切り捨て、行政監視という国会の任務を軽んじてきた自公政権の責任は極めて重大です。この問題で問われているのは、政府・与党の姿勢そのものです。
安倍政権が臨時会召集要求に応じなかった問題が問われた裁判、先ほど橘局長から御紹介いただきましたが、私も原告になっている二〇二〇年の那覇地裁判決は、憲法五十三条後段に基づく内閣の臨時会の召集は、憲法上明文をもって規定された法的責務であって、内閣に認められる裁量の余地は極めて乏しいと断じています。
二〇二三年の最高裁判決も、同条は政治的な責任にすぎないとする政府の主張を退けた上で、臨時会召集要求がされた場合には、内閣が臨時会を召集決定をする責務を負うと述べています。
野党の臨時会召集要求を政府が長期間にわたって無視することなど、到底認められるはずはありません。
その上、今、自民党は、殊更に国会機能の維持を強調して、議員任期延長のための改憲を主張しております。現実には国会の行政監視機能を無視しておきながら、国会機能維持を理由に改憲を主張するなど、言語道断であります。
憲法を守らない者に改憲を口にする資格はないと強調して、発言を終わります。