国会質問

質問日:2023年 6月 13日  第211国会  沖縄北方特別委員会

返還「展望持ちたい」 赤嶺氏に千島連盟理事長

衆院沖北委

 

 衆院沖縄北方特別委員会は13日、北方問題について参考人質疑を行いました。

 5月末の千島歯舞諸島居住者連盟の総会で就任した松本侑三理事長は、ロシアによるウクライナ侵略以降、最悪の状態になっている日ロ関係に言及。「島を不法に占拠されてから長い年月が経過したが、返還に至る道筋は見えてこない」と語りました。一方、海外メディアからの取材依頼が増えているとして、「不法占拠を元の正しい形に戻すために、国際社会と協調していくことも重要だ」と指摘しました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、納沙布岬の灯火台にある「祈りの火」が、沖縄県の波照間島から採火された経緯に言及。「祈りの火を見ると、領土返還の日まで頑張っていかなければならないとの思いを強くする」と訴えると、松本氏は「やはり(返還への)展望を持ちたい。組織も考え方も、そういう方向で進めていかなければならない」と述べました。

 同連盟は、「北方領土」への墓参の早期再開を求めています。赤嶺氏は、同墓参は人道的見地から始まったとして、「政治的な動きに左右されずに継続して行えるようにすべきだ」と指摘。松本氏は「元島民と家族は特に思いが強い」と語り、早期再開に向けた協力を求めました。(しんぶん赤旗ホームページ)

議事録

○赤嶺委員 松本参考人、そして黒岩参考人、今日はありがとうございます。私が最後の質問者になりますので、どうぞよろしくお願いします。私は、日本共産党の赤嶺政賢です。
 初めに松本参考人にお伺いしますけれども、私は、二〇〇〇年が初当選で、以来、この沖縄北方特別委員会に所属し、何度か現地にもお伺いさせていただきました。納沙布岬の祈りの火、あの祈りの火を見ますと、私のふるさとであります沖縄県の最南端の波照間島から採火されてきたものだということで、領土返還の日まで頑張っていかなければならないという思いを強くいたします。本当に長い年月がたってしまっているわけですけれども、しっかりと皆さんのお気持ちを受け止めさせていただいて、今後の取組の参考とさせていただきたいと思います。
 先月の参議院の委員会には脇さんが来られ、その後の総会で松本さんが新しい理事長に就任されたとお聞きいたしました。そのときの新聞記事を拝見しますと、失ったものがいかに大きいかを伝え、返還実現後の展望を持って活動に取り組みたい、このように述べていらっしゃいます。
 松本さんは択捉島の御出身ということであります。幼い頃の記憶ということになるのかどうか、御自身や御家族の体験あるいは御苦労、島への思い、まずその辺りからお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

○松本参考人 私自身はかなり幼少期の話なので、ただ、私の父親は、母親もそうなんですけれども、そういうのは余り話をしたがらなかった。そして、引き揚げてきた後に私たちが入ったのは、札幌市の白石、今は白石区にある引揚者官舎、これは旧陸軍の官舎です、そこに入ります。そこに、ちょうど満州からの引揚者とか北方四島からの人、各地から引き揚げてきた方々が入った。そこで私は過ごしたわけですが、そういう、ある面では私自身もやはり語りたくないという部分はあるし、でも伝えなきゃならないという使命感だけは持っております。
 ちょっと質問に対するお答えがきちんとできないような気はするんですけれども、いろいろな形で、先ほど新聞報道で、私はそういう方向でこの返還運動をしたい。ということは、展望のない運動、これはやはりむなしさしか残らない、返還要求運動をするための返還要求運動をしたくない、やはり展望を持ちたい。組織的にも、これからの、いろいろなこれから活動を進める体制を含めても、あるいは考え方を含めても、そういう方向で進めていかなければならない、そういうふうに感じております。

○赤嶺委員 大変ありがとうございます。お気持ちは伝わってきました。
 この間、政府の領土交渉の見通しが立たなくなっていたところに、今度はロシアによるウクライナ侵略が起こりました。ロシア政府は、日本を非友好的な国、地域の一つに指定し、平和条約交渉の中断や、ビザなし交流、自由訪問の失効を表明しました。国際法違反の侵略を非難し、制裁に加わったことをもってこのような行動に出るというのは、本当に許し難いことだと思います。
 そうした下で、まずは墓参の早期再開、これがずっとこの間言われてまいりました。早期再開を目指しておられるとのことでありますが、元々、先ほどからありますように、北方領土への墓参は人道的な見地から始まったものですので、政治的な動きに左右されずに継続し、行えるようにすべきだなということを、先ほどから松本参考人の御意見を聞きながら思っていました。
 この点で、元島民の方々の思いを改めてお伺いしたい、墓参に対する思いをお伺いしたいのと、政府も墓参の早期再開を最優先事項の一つと述べておりますが、政府の取組について気になっていること、あるいはお感じになっていることがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

○松本参考人 今の御質問に対して、非常に答えにくい立場に私もいるんですけれども、個人的にはというよりも、組織としては、考えられるのは、今日も総理に要望書を出しまして、墓参のより早期の再開を求める要望書を出させていただきましたけれども、もう皆さん、そういう気持ちでいっぱいであると。島民、特にその家族については、特にそういう思いが強いんだということだけお伝えして、やはり政治的に私たちが、こういう体制が望ましいとか、こういう形が望ましい、そういう発言は私たちはできませんし、むしろ私自身はしないようにしておりますけれども、島民の気持ち、家族の気持ちというのは必ず一つの方向を向いているんだということをお伝えして、問いに答えたいと思います。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。大変聞きにくいことを聞いたのかなと思っておりますが、立場はよく理解できます。ただ、本当に、この委員会も墓参の実現に向かって、やるべきことをやらぬといけないなというのを強く感じました。
 それから、黒岩参考人にお伺いいたしますが、この間、安倍政権の下で領土問題を含む平和条約締結交渉が行われました。プーチン大統領との間で個人的な信頼関係を築き、経済協力をてこに前進を図ろうとしましたが、進展はありませんでした。
 参考人は、この間の領土交渉をどのように見ておられるのか、どのような点を教訓とすべきか、まずその点を、先生のお考え方からお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

○黒岩参考人 安倍・プーチン会談については、私は、現実的な二島で話を持っていったというのは、それは政治としては結構なことだ、思い切ったと思います。それは安倍さんにしかできなかったと思います。もし野党がやっていたら、もう全く、袋だたきになったと思いますね。
 私、ちょっと昔、二島とも言っていないけれども、何か書いたら、売国奴に鉄槌をとか何か手紙が来たりして、あと、何か言うと、二島と言うと袋だたきに遭っていたんですよね。
 研究者で和田春樹さんという東大の名誉教授の方がいますけれども、あの人が言ったときは二島プラスアルファで、八〇年代のゴルバチョフの時代に言ったら、そのほかの人も言ったんですけれども、まあ、すごかったですよね。
 そうやっていったのが、安倍さんが言ったら、ぱっとオーケーというのは、これは、ぶれているというんじゃなくて、やはり、境界線というか国境というのは可変的という、不変ではなくて可変だと。それはおかしいことではないと思うんですよね、現実があるわけですから、それに応じた。ただし、交渉は失敗でした。
 安倍さんの回顧録を読んだりしたら分かるんですけれども、外務省に任せたら全然進まないからと、官邸主導でやったわけですよね。そうしたら前のめりになって、幾ら何でも、二島を出す前にちゃんと言質を取っておきなさいと思いますけれども、もう今や、今更何か言っても、それは意味がないことだと思いますが、よかったのは、一つは、可変的になったというか、日本国民がそこにフレキシビリティーを持ったということですね。
 先ほどおっしゃいましたけれども、ずっと四島でいっていたけれども、地元の方々に聞いてみると、非常にフレキシブルですよ。がりがりに絶対と、それは旗を振るのはもちろんですけれども、非常にフレキシブルな考え方をなさっている。ですから、是非、根室の地域に行って住民の声に耳を傾ければ、解決の道というのが、もっとフレキシブルなものが見えてくると思います。
 以上です。

○赤嶺委員 どうもありがとうございます。
 日本の外交史そのものが、いろいろアメリカにも左右されたりして、ぶれてきている中での今日ですが、安倍政権の下で行われた交渉で、返還された北方領土に米軍基地を置くのかどうかが度々問題になりました。複数の首脳会談でプーチン大統領は、安保条約と地位協定を読むと、アメリカは日本国内のどこにでも基地を造れると発言したとされています。政府は、基地の設置には日本の同意が必要だ、このように言っておりますが、沖縄出身の私からすると、これは全く説得力を持たないなと。欲しいところに基地を造ってきたわけですから。
 先生は、領土問題の前進を図る上で、今はこういう状況ですけれども、安保条約、地位協定との関係、これはどのように考えていらっしゃるのか、この点について御意見を伺いたいと思います。

○黒岩参考人 プーチンが北方領土に米軍基地を置かないと約束しろと言ったのは、あれは多分、変化球といいますか、そんなところに置くわけがないんですよね。もし置くなら、北海道にもっと大きな基地を置けばいいわけですから。しょぼいと言っては本当に失礼ですけれども、あんな歯舞とか色丹なんかに別に米軍基地を置く必要はないわけで、あれは日本に対する揺さぶりですよね。
 日本の政府が、日本がイエスと言わなければ置けないんだからと言ったら、裏マニュアルを出してきて、プーチンは読んでいたんですね、注に書いてあると。アメリカが北方領土に置くと言ったらノーとは言えないという、北海タイムスでしたっけ、すっぱ抜いた、そういうものもあるというのを持ってきたんですけれども、あれは一々真に受けるものではなくて、今、安保でも、北方領土は安全保障条約の中に入っていないですよね。そういう意味で、あの話はほとんど流していいものだと思います。
 それから、私は、地元のことを考えながら領土問題をやっているので、これは、学問的にはボーダースタディーズ、国境学とか境界研究というふうに日本語で訳されていますけれども、そういう意味で、境界自治体研究ネットワークという、各島の首長さんたちが入って、マスコミとか学者も入っているチームがあるんですが、昨年秋に波照間島にも行ってきました。
 それで、竹富島が理事になって石垣でやったときに、そのとき、ちょうど米軍との、与那国島の糸数町長が来て、あそこで初めて公道を自衛隊の戦車が走ったと言ったら、それが何が悪い、その先の安全保障を考えていると。住民が分断されているって、分断なんてマスコミが作った言葉だと、がんがん演説なさったとも聞いたんですけれども、あのとき思ったのは、沖縄というのはもう何か殺気立って、ロシアで起こった戦争は、北海道よりも沖縄の方が浮き足立っている。北海道の自治体の人たちはもっと落ち着いているんですね。自分たちは交流している実績があるので、一々何かロシアが言っていることに反応する必要もないと。
 ロシアは、千島連盟さんを好ましくない団体だと言ったというんですけれども、墓参は残しているので触れなかったんですね。墓参に行く日本人というのは、みんな千島歯舞諸島居住者連盟に入っている人なわけで、矛盾しているんですよ。一々ロシアが言うことに、今、非友好国とか言っていますけれども、私は、今ロシアはビザも出さないのかと思ったら、もう研究者も行っているんですよ、日本人が。ビザを出すのは出しているんだそうです。まだ私は行っていないんですけれども、いずれ、近々行きたいなとは考えているんですね。
 そうやって、交流の道をずぼずぼでやっている。一々ロシアがやることを、彼らが言うことも矛盾しているので、余りしゃくし定規にこうだこうだと言わずに、もう行けるんだったら行く、交流するんだったらするというのを、余り表立たずにというか、そうやってやっていったらいいんじゃないかと思います。
 以上です。

○赤嶺委員 本当に交流は大事だと思います。
 私、与那国の町長は私もよく知っている人なんですが、一方で、知事の方は、やはり万国津梁、各国との交流、友好、それを強めようという、地域外交室というのを設けてやっているところでありますが、その辺は、千島連盟の皆さんの粘り強いロシアとの交流の在り方なども学んでいかぬといけないなということを思います。
 ただ、その交流していく上での話ですが、今回のウクライナ侵略によって、日ロ間の領土交渉は大変難しい局面に立たされております。なぜロシアはこのような行為に出たのかという点で、昨年五月のシンポジウムで、NATOの東方拡大、脱ナチ化、あるいは国民統合理念の模索という三つの点を先生は挙げておられました。現時点で、ウクライナ侵略の背景についてどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
 それから、日ロの領土交渉については、ウクライナ侵攻が終わらなければ次の段階には移れない、ウクライナ、ロシア両国に多数の犠牲者を出しながら一年以上も続く戦争を停戦に持ち込むことが現在最も重要だろうと述べておられますが、この点でも、今お伺いできることがあればお願いしたいと思います。

○黒岩参考人 なぜ侵攻したかという、それに関しては、ちょっと私もはっきりしたことは言えない。絶対侵攻しないと思ったのは、私が考えたのは、全く意味がないから、不合理だから。それと、過去に非情な独ソ戦で二千七百万、二千万人以上の死者を出しているのでしないんだろうと思ったんですが、それは見事に外れました。
 そういうわけで、そこのところは何とも私も言えないんですが、現状を考えて、とにかく次の、日ロとの、落ち着いたら、縁が悪縁であってもつながる以外にはその道はないので、何かしら考えていくしかないのではないか、その政治力を発揮していただきたいというふうに考えております。
 以上です。

○赤嶺委員 今日は、どうもありがとうございました。

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