国会質問

質問日:2023年 4月 26日  第211国会  沖縄北方特別委員会

あちこーこー豆腐守れ 衛生基準巡り 赤嶺議員要求

衆院沖北特委

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は4月26日の衆院沖縄北方特別委員会で、沖縄県特有の熱い状態のまま食べる「あちこーこー(あつあつ)豆腐」の存続について質問しました。

 2018年の食品衛生法改正に伴い、国際的な衛生管理基準HACCPに沿った手引書が適用されたことで、沖縄県で豆腐屋を営む小規模事業者が、販売数の減少や、事業継承の危機に直面しています。

 赤嶺氏は、手引書に厳格な温度基準や管理が定められたことで、現場では3分の1しか納品できず売り上げが半減するなどの影響が出ていると指摘。基準適用後10軒ほどが撤退したとして、「元に戻してほしい」との当事者の要求に応えるよう政府に求めました。

 伊佐進一厚生労働副大臣は、手引書の改定に、「法律の改正は(必要)ない」「業界団体が改定の必要性を認め、厚労省が改定の内容を確認する」と答えました。

 赤嶺氏は、1972年に沖縄県が本土復帰した際、あちこーこー豆腐は食品衛生法上認められなかったと指摘。県民や組合の運動に押され、当時の政府が2年後に特例的に認めた経緯に触れ、歴史あるあちこーこー豆腐の存続と事業者への支援を求めました。(しんぶん赤旗ホームページ)

 

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あちこーこー豆腐守れ(衆院沖北特別委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、沖縄県の島豆腐について質問をします。
 外務大臣がいらっしゃいますが、外務大臣への質問ということではなくて、かつて外務大臣は、豆腐議連の発起人という具合に伺っておりますから、是非、沖縄の島豆腐についての応援団として、答弁は求めませんが、よろしくお願いします。
 沖縄県の島豆腐は、本土の豆腐より硬くて大きいのが特徴です。本土の豆腐一丁が三百グラムなのに対し、島豆腐は約一キロ近くあります。いため物や煮物でも煮崩れしにくい、沖縄ではたくさんの料理に使われております。豆腐チャンプルー、ゴーヤチャンプルー、フーチャンプルーとかですね。また、本土の豆腐よりも水分が五%ほど少なく、エネルギーやたんぱく質などが多く含まれており、昔から多くの県民に愛されてきました。
 その島豆腐ですが、沖縄でしか食べられない食べ方があります。それが、できたて、熱い状態のまま食べるあちこーこー豆腐です。あちこーこーとは、沖縄の言葉で熱々、つまり、本土のように水にさらさないで、できたてをそのまま食べるというのが、沖縄県で戦前から県民に親しまれてきた食べ方であります。
 そのあちこーこー豆腐ですが、県内の豆腐業界がとても大変な状況になっているという話を聞いてまいりました。二〇二一年六月、食品衛生法の改正に伴い、国際的な衛生管理基準、HACCPが適用されたことで、今までのように販売できなくなったということでした。
 まず、厚労省に伺いますが、HACCPの適用によって沖縄県内の豆腐業界がどのような影響を受けているのか、現状を御存じですか。

○伊佐副大臣 平成三十年の食品衛生法改正によりまして、御指摘ありましたとおり、HACCPに沿った衛生管理の義務化を行わせていただいております。
 令和三年六月一日に完全施行しておりますが、この法改正の中では、小規模な営業者の皆さんに対しての負担軽減の観点から、HACCPに基づく衛生管理ではなくて、より簡略化された、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理によって対応することを可能とさせていただいております。
 この考え方を取り入れた衛生管理と申しますのは、事業者団体において、それぞれの事業者団体が、衛生管理を実施する際に参照する手引を作成していただく。その手引については、厚労省が技術検討委員会で水準を満たす手引書かどうかという確認を、技術的な確認を行わせていただいて、その上で、確認を行った手引を厚労省のホームページに掲載する、また各都道府県に通知するということをさせていただいております。
 今回の島豆腐に関する手引書でありますが、沖縄県豆腐油揚商工組合を中心に、島豆腐手引書作成協議会が、作成をしていただきました。厚労省の確認を経まして、現在、ホームページで公表しておりまして、この手引書は、本来、小規模な営業者の負担を軽減するために作成されたものではあるんですが、保存方法を遵守することがなかなか困難だということで、幾つかの島豆腐の製造業者の皆さんが対応に苦慮しているというような報道がなされていることは承知をしております。

○赤嶺委員 副大臣、報道で承知しているということですが、HACCPに伴う手引書が作られて、それが適用されたときの地元紙を、資料として、今、委員の先生方にもお配りしております。そこには、豆腐の温度が新たに設けられた基準温度より下回っていたため納品できなかった事例や、通常の三分の一しか納品できなかった事例が紹介されています。
 私が伺ってきた話では、スーパーなどに卸す豆腐屋さんは、今まで四時間店頭に並べられていたものが二時間に短縮になり、売上げが半減したと話しておりました。あるいは、四時間かけて作った豆腐を店に卸す際、たった一度でも五十五度を下回っていたら納品できない、そんなことが何度もあったと悔しそうに話をされておりました。組合の方からの話では、HACCP適用後、事業継承の問題や温度管理の難しさ等から十軒ほどがお店をやめたと聞きました。
 そうした現状、厚労省、具体的にそこまで把握しておられますか。

○伊佐副大臣 この手引書によりますと、先ほど二時間と委員おっしゃっていただきましたが、手引書の中では、保存方法については、島豆腐が五十五度未満になってから三時間以内に消費をする、あるいは速やかに冷却して冷蔵で保存するというふうに記載されております。
 この内容は、島豆腐の温度が五十五度未満になりますと、食中毒菌、セレウス菌というものが増殖をして、それによって健康危害が生じることを未然に防止するために、事業者団体である島豆腐手引書作成協議会が必要な衛生管理措置として示していただいたもの、つまり、食品衛生法の法令に基づく規制ではない、手引書上の決まりだというふうに認識をしております。
 手引書に記載されている島豆腐の保存方法を改定するかどうかについては、まず、この手引書を作成していただいた島豆腐手引書作成協議会において御検討いただきたいというふうに考えております。

○赤嶺委員 私が聞いているのは、つまり、HACCPに基づく手引書が業界によって作られた、その基準が、実際の業界にとっては三時間じゃないですよ、消費者の手元に渡るまでに二時間ですよ、私たちが聞いてきたのは。それで本当に売上げも半減、誇りを持って後継者にも譲れなくなっている。
 スーパーなどに卸されるあちこーこー豆腐ですが、これはスーパーが買い取ったわけじゃないのですね。納品した分だけ店側が買い取ってくれるわけではありません。スーパー側が時間経過後に冷蔵庫に保存してくれるわけでもありません。時間が過ぎて売れ残った分は、豆腐屋さんがまた回収しに行かなければならないわけです。
 温度管理にもとても苦労されています。冬は豆腐の温度が下がりやすく、五十五度以上を維持するのはとても難しいそうです。夏は作業場が高温になり、熱中症の観点から冷房をつけないといけませんが、そうすると、夏場でも豆腐の温度は下がりやすくなります。
 当事者である豆腐屋さんの要求を聞いてきました。それは、元に戻してほしい、これに尽きます。
 厚労省はこの要求に応えるべきだと思いますが、先ほど副大臣は、安全基準を守ることが大事だと。大事です。その上で、手引書は業界団体が作ったものだとおっしゃいました。しかし、その手引書が、HACCPの基準に基づいて作られた手引書が、実際の業界の皆さんにとっては、豆腐の製造業が成り立たなくなっていくところに追い詰めているわけですね。
 豆腐屋さんに聞きました。私たちはおいしい豆腐を届けることに関しては誰にも負けない、職人だと。そして、誇りを持ってやっておられました。今まで、豆腐を食べて食中毒の話というのは聞いたことがないと。私も、沖縄に生まれてこの年になっておりますが、一度も、豆腐を食べて食中毒になって大変だというような話は聞いたことありません。
 安全性も担保されている。そうであれば、以前のように販売することは可能なのではありませんか。

○伊佐副大臣 このHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書につきましては、答弁させていただきましたとおり、これは、この食品のことを誰よりも知る業界の皆さんが、その特性、またリスクを熟知した事業者団体が、自ら手引書案を作成していただいているという状況でございます。
 この改定につきましては、それぞれ事業者団体においてその必要性を御判断をしていただきまして、それに対して必要な科学的知見を添えて厚労省に御相談いただければ、我々は確認をするということになっておりますが、ただ、都道府県等に対して、食品衛生監視員が監視をすることになっておりますが、そこに対しても、我々としてはきめ細かい指導を行うように指針でもお示しをさせていただいているという状況でございます。

○赤嶺委員 手引書は業界団体が作成したものだと先ほどから繰り返されておりますが、その手引書の基準にも矛盾が出ているわけですね。業界がもたないと言い出している。
 だから、手引書の策定に加わる業界団体が改定、改善を求めれば、その手引書は改定はできる、そういうことで、そういう理解でいいですか。

○伊佐副大臣 業界団体の方が、その必要性、改定の必要性を認めて、そしてその改定の内容を、我々厚労省の確認する、技術的な確認のために提出をしていただく。我々としては、技術的な観点からそれを判断をさせていただいて、それについて認めた上で、ホームページで公表するということになっております。

○赤嶺委員 念のために伺いますが、別に法律の改正は必要ない、手引書の改定でいいんだということでよろしいですか。

○伊佐副大臣 法律は、あくまで、その枠組みを定めているものでございますので、法律の改正はございません。

○赤嶺委員 実は、あちこーこー豆腐が非合法化される事態が前にもあったんですよ。
 一九七二年に沖縄が本土復帰をしました。本土の法律が適用されたら、沖縄独特の製造法であるあちこーこー豆腐が認められなかったんですね、食品衛生法の中で。県民に愛されてきた島豆腐です。この認められなかったときに、本土の法律というのは、沖縄特有の熱い状態のまま食べる保存方法は想定していなかったわけであります。
 地域に根づいてきた歴史あるあちこーこー豆腐、これを守ろうと、当時の豆腐組合の皆さんが、度重なる必死の懇願について、当時の厚生省は、一九七四年に、特例的にあちこーこー豆腐を認めるただし書を法文に加えました。人の暮らしに立脚した当時の政府の英断が、今日まで県民のソウルフードを守り、今も若い経営者が誇りを持って島豆腐を作ってきた。当時のこの課題に携わった担当者からは、あのときの厚労省に本当に感謝しているというような言葉をいただきましたよ。
 ですから、手引書の改定は、最終的には厚労省の検討会で検討されることになります。手引書の改定の話が上がってきた際に、安全性と事業の継続が両立できるような観点から厚労省には是非検討していただきたい。作ったけれども豆腐業界が潰れてしまう、こんなことは本意じゃないはずですから、是非、安全性と豆腐業界が両立できるようなものを検討していくとお約束していただけますか。

○伊佐副大臣 私自身も、島豆腐、何度もいただいたこともありまして、ただ、あちこーこーで、本当に温かいものはいただいたことはございません。ただ、こうした沖縄の伝統的な文化をしっかりと守っていく必要性については重々理解をしているつもりでございます。
 この安全性、国民の皆さんの健康を守るという安全性とのバランスについて、もし改定の必要性を事業者団体で認められて、御相談があれば、しっかりと丁寧に対応してまいりたいというふうに思っております。

○赤嶺委員 伊佐副大臣も、前に伺ったことがありますが、おじい様が沖縄の御出身で、ですから、あちこーこー豆腐は大好きなはずですよ。伊佐副大臣も島豆腐を召し上がったことがあるということで、今日は本当に豆腐応援団が政府答弁席に座っていらっしゃるなという感じがあります。
 そこで、沖縄担当大臣に伺いますが、HACCPが適用されたことで、業者の方々は、どうすれば納品時に五十五度以上に維持できるか、これに物すごく苦労したとのことでした。保温シートやアルミシートを敷いてみたり、今まで使っている入れ物がそのまま活用できるのか、それとも使えないのか、これまで納品していた販売ルートをありとあらゆる方法で何度も往復し、検討したそうであります。しかし、そこにかかった費用は誰も負担してくれず、議論すらされなかったと途方に暮れております。
 豆腐屋の若いオーナーさんは、温度管理が厳しくなったため販売先が比較的遠いところとの契約を打ち切らざるを得なかった、これだけ豆腐を一生懸命作っても、販路拡大ができないということは売上げが伸ばせないということ、従業員の給料も上げることができないし、何より、この豆腐作りの仕事を御飯を食べていけるだけの魅力ある仕事として次の世代に継承できない、このままではあちこーこー豆腐が消えてなくなりはしないか、そういう心配がありました。
 沖縄担当大臣に二つ要望があります。そういう食品業界に対する支援策、これは家族労働であっても製造業ですよ、小さな製造業ですよ。でも、そこを大切にしていかないと。そういう意味での支援策と、それから、業界が本当に手引の改善を求めていった場合に、関係行政機関の支援、援助も必要になると思います。そういう支援とか援助、こういうのも是非求めたいのですが、沖縄担当大臣、いかがでしょうか。

○岡田国務大臣 お答え申し上げます。
 食品衛生法改正とかHACCPとか、これらは専門の厚生労働副大臣から御答弁を申し上げておりますけれども、私、沖縄振興担当の大臣として申し上げたいことは、島豆腐も含めて沖縄の食文化、長い歴史の中で人々の生活に根づいて育まれてきた沖縄の大変な魅力の一つであると認識しておりますし、私も、沖縄の豆腐、歯応えのある大きな豆腐やゴーヤチャンプルーとか、本当においしいなと思う一人であります。
 業界の方々に対する支援策ということが、何ができるかどうかということはまた考えてみたいと思いますし、業界における手引の改定というお尋ねでございますけれども、これは厚生労働省の方と、また地元とコミュニケーションを取っていただければと思います。我々も、そういうふうに地元のお声があれば、それをお伝えをしていきたいと考えております。

○赤嶺委員 沖縄担当大臣も沖縄に行かれるたびにおいしい豆腐チャンプルーも召し上がっていると思いますので。
 それで、ただ、沖縄県内の豆腐屋さんは、これは、国会図書館に「シマ豆腐紀行」という本がありまして、宮里さんというルポライターが書いている本ですが、戦後、女性が始めたと言われております。地上戦となった沖縄戦で多くの男手を失い、残された女性が家族を女手一人で養わなければならない状況下に置かれました。そこで、豆腐を作る技術さえ身につければ現金収入が得られる仕事として、豆腐屋は戦後急速に広まりました。豆腐作りの残滓として発生するおからは豚の餌にもなり、伝統的に豚を食べる習慣のある沖縄では、養豚や農家の副業としても、とても豆腐作りが行われていました。そういう絶妙な調和が、戦前戦後の沖縄の経済と住民の生活を支えてきました。
 厚労省や、あるいは沖縄担当大臣、歴史ある島豆腐を守っていただきますよう、また、林外務大臣には、今は外務大臣として要職に就かれておりますから豆腐議連の役職は降りられているんじゃないかと思いますが、しかし、豆腐を愛する気持ちは、外交政策では意見の違いはあっても、共通するものがありますので、是非、島豆腐の支援のために頑張っていただきたい。
 業界の皆さんの意見をよく聞いて、手引の改善に尽力していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

○松木委員長 赤嶺さんもお疲れさまでした、本当に。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

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