国会質問

質問日:2023年 4月 28日  第211国会  衆院財務金融・安保委員会 連合審査

国民に真剣な説明を 軍拡財源法案 赤嶺議員に参考人

衆院連合審査

 

 5年間で43兆円の大軍拡のため、「防衛力強化資金」を創設する軍拡財源法案に関する参考人質疑が28日の衆院財務金融・安全保障両委員会の連合審査で行われました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、2022年5月の日米共同声明に軍事費の「相当な増額」が盛り込まれた後、国会で具体的な説明がないまま、安保3文書が同年12月に閣議決定されたと指摘し、民主主義の観点から問題だと追及。神保謙慶応大教授は「国民に対して議論を浸透する努力の余地があった」と述べました。香田洋二元自衛艦隊司令官も、敵基地攻撃能力の運用方法などの説明が不十分であり、「防衛省は国民に対して真剣に説明する姿勢が問われる」と指摘しました。

 赤嶺氏は、ミサイル防衛と敵基地攻撃を一体にする統合防空ミサイル防衛(IAMD)で、どのような日米の連携が想定されるか質問。香田氏は、「IAMD的な構想はあってしかるべきだ」と言及した上で、相手国がミサイルを撃った瞬間に敵基地攻撃するには「24時間365日、日米の高いレベルでの調整機能がないとダメだ」と述べ、日米の緊密な連携が不可欠だとの認識を示しました。

 また赤嶺氏は、米国政府が同盟国に、国内総生産(GDP)比2%への軍事費増額を求めてきたことと、政府の2%目標との関係を質問。香田氏は、政府が積算根拠に関する正確な説明をしていないとして、「北大西洋条約機構(NATO)諸国が目標とする2%を目安にしたのは容易に想像できる」と語りました。(しんぶん赤旗 2023年4月29日)

 

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軍拡財源法案で参考人質疑(衆院財金・安保連合審査)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、四人の参考人の先生方、大変御苦労さまです。いろいろな御意見を聞かせていただきました。
 そこで、今日は、私たちが問題意識として持っているところで質問をしていきたいんですが、初めに、神保参考人に、今回の安保三文書の策定経緯について伺いたいんです。
 昨年十月の財政制度等審議会での御発言を拝見いたしました。今回の軍事費の増額に関しての発言の中で、昨年五月の日米共同声明で防衛力の抜本的な強化とその裏づけとなる防衛費の相当な増額が盛り込まれた経緯に触れて、先生は、「言わば国際公約になっている」と述べておられました。私も、今回の三文書の決定に至る経緯というのは、まず昨年五月の国際公約があり、それが年末に閣議決定されたというものだったのではないか、このように感じております。
 その間、国会では多くの議員がこの問題を取り上げましたが、政府は、何も決まっていないと言うだけで、具体的な説明はありませんでした。こうした進め方というのは、三文書に対する賛否以前の問題として、国民主権や財政民主主義との関係で考えるべき点があるのではないかと思いますが、その点について、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

○神保参考人 御質問ありがとうございます。
 防衛力の抜本的強化というのは、ここ数年、様々なところで政府首脳が述べてきたところであります。当然、それがどの程度の強化なのか、どの程度の財政的な措置を伴うのかということについては様々な議論があったということを承知しております。
 当然、それは日米関係の中で、菅総理とバイデン大統領との日米首脳共同声明、そしてその後、岸田総理の首脳声明の中でも、防衛力の抜本的な強化ということについては触れられている。どの程度強化するのかということについては、当然、日本国の中で議論していくということなので、このプロセスに関して、私は特段問題だということについて意識は持っていないということでございます。
 ただ、この一年間、十二月に閣議決定されるまでの議論の過程において、我々が何を目指して、どのような防衛力の姿と、そのためにどの程度の財政規模が必要なのかということについての議論が十分だったかということについていえば、それはいろいろな御意見があってよろしいかというふうに思います。
 今回の政府の議論に関しましては、国家安全保障局が有識者会議というものを組織するのではなく、個別の聞き取りということで、四十数名の、私もその中に入っていたわけですけれども、よりインテンシブな、よりしっかりとした形での議論が行われて、それを政府が吸い上げて、そして、特にこの財源問題に関しましては、別途の有識者会議を含めて、そこで議論をしたということになっております。これまでの策定経緯から見ると、かなり特殊な形態を取ったというふうに思っております。
 私の理解では、このような形態を取った最大の理由は、日本を取り巻く安全保障環境が大変複雑になり、また、防衛装備や防衛力に関する考え方も、先ほど言ったサイバー、宇宙、電磁波も含めまして様々な技術領域によっているということから、特定の人が代表して何か諮問をするという形になる時代がもはや終わったのではないかという問題意識であったと思うんですね。なので、幅広い専門家を呼んで、そこで政府が議論を聞いて、そして出していくというプロセス自体はよかったのではないかと思っておりますが、その有識者を超えて、マスメディアそして国民に対してこの議論を浸透する努力が十分だったかと問われれば、まだまだそれをやる余地はあったのではないかというふうにも思っているところでございます。

○赤嶺委員 ありがとうございました。
 説明不足と言われる面はあったのではないかと、今の先生のお話を聞いても、感じたところであります。
 次に、香田参考人に何点かお伺いしたいと思います。
 今回の軍事費増額の規模と根拠についてであります。
 政府は、三文書で、今後五年間の防衛関係費の総額を四十三兆円とすることを決めました。前回の一・五倍以上という非常に大きな変化だと思います。政府は必要な防衛力を積み上げたとしておりますが、防衛省が四十八兆円、財務省が三十兆円台半ばを主張する下で、何を根拠に四十三兆円としたのか、具体的な説明は行われておりません。
 二〇二七年度には他省庁の予算と合わせてGDP比二%にすると説明しておりますが、他省庁予算については、五年間で何をどこまでやるのか、これから検討する段階です。にもかかわらず、なぜ二%と決めることができるのか、私たちには全く理解できません。
 香田参考人は、かつてメディアのインタビューで、自衛隊の積み上げではない、身の丈を超えていると発言しておられましたが、今回の軍事費の規模と根拠について、参考人の御意見をお伺いできればと思います。

○香田参考人 ありがとうございます。
 私の、三文書が出てからの発言、少し誤解をされているところも、赤嶺先生ではないんですけれども、あるんですが、防衛省の主張の四十八、それから財務省主張の三十兆円半ばということについては、私もマスコミ報道で承知をしています。
 これは、一般感覚でいきますと、私たちが海上自衛隊の予算の総括課長であった頃あるいは部長だった頃が二十八兆円とかいうことですから、三十五兆円ということは大体一・二%ぐらいなんですね。これは、中身によってはいけるかなということは十分に言えます。それは、ただ、財務省側の相当厳しい箱に入れる場合ですね。
 それから、防衛省の場合は、一%で四十年もやってきたんだから、取りこぼしが相当ある、それを全部積み込むとしたらやはり四十八兆円、いわゆる一・七%ぐらいになるんだろうということについて、十分想像はできますが、それについての正確な説明があったかどうかということについては、これはありません。
 ただし、ヨーロッパのNATO諸国が二%、あるいは、そういう環境の中で、中国もある、北朝鮮もあるという中で、自由と民主主義を重んずる国の仲間としておおむね同じところを狙う、その一つの目安が二%だろうということ自体は容易に想像ができるところです。
 しかも、その四十三兆円の中身というのは、一部報道にありますけれども、例えば、弾薬庫を百三十棟造るとか、戦闘機の掩体ごうを造るとかいう、いろいろな事業の積み合わせということで、部分的に、ジグソーパズルの半分ぐらいが開示されているというのがいいところかなと思うんですけれども、これはあながち荒唐無稽な話ではないと思います。
 ただ、先ほども申し上げましたけれども、やはり大枠のところで、防衛省が、これだからここだということについての説明というのが非常に不足をしている。
 例えば、最新の長射程型のミサイルとかトマホークとかなんとか、極超音速とかいうものにつきましては、何ゆえに、ですからこれぐらい、それで、反撃能力についてこういう運用をするということについて、言える範囲の中でやはり国民に説明をして、それで、ですから最新装備も追求をします、今まで取りこぼした後方についてもこういうふうに盛り返していきますということについては、例えば一対四対五というふうな言い方はできたはずなんですけれども、それさえもなされていないということについて言うと、これはやはり防衛省は相当真剣に国民に対する説明の姿勢というものが問われるべきだろうなと思います。
 それから、身の丈についてというのは、これもやや誤解を受けやすいんですが、今現在の自衛隊というのは、自衛隊が本来持たなければならない専守防衛の枠の中で、相当、達成されていないんですよね、特に後方の部分について。
 だから、そこについて、事の優先度として、きっちりと手当てをせずに、今はやりの、これは決して神保参考人のことを言うわけじゃないんですが、多くのドメインの、横並びの、これはやらないかぬのです。しかし、これを声高に叫んで、まさにこれを最優先に上げてやるのか。それはあるんでしょうけれども、資源投下としてはこれぐらいですよと。しかし、こっちについて、今、足らざるところはたくさんあり、現場の部隊が困っていて、防衛体制さえかちっとできていないところについてしっかりとやらないかぬのに、それをやらずに、別のところを声高に言っているという意味で、身の丈を超えたということです。
 物事には時と順番があるということと、優先度についてしっかりと判断をして、自衛隊が我が国の防衛任務につける最適環境をまずつくっていくというのが防衛省の役割じゃなかろうか、そういう意味でいうと、背伸びをしているんじゃないかという意味で申し上げた次第でございます。
 以上でございます。
    〔塚田委員長退席、鬼木委員長着席〕

○赤嶺委員 ありがとうございます。
 今の香田参考人の御発言、大変よく理解できる面がありました。
 また香田参考人にお伺いいたしますが、政府のGDP二%目標に関わって、この間の経緯を振り返りますと、トランプ政権は、バイ・アメリカンを合い言葉に、日本を含む同盟国に対して、軍事費を二%に引き上げて、米国製兵器を購入するよう求めてきました。バイデン政権になってからも、求め方に違いはあったとしても、基本的な路線は変わっていないと思います。エマニュエル駐日大使は三文書を大歓迎しておりますが、その理由を、裏づけとなる予算をつけたからだとあからさまに述べているわけです。
 安倍政権以降、アメリカの対外有償軍事援助、いわゆるFMSによる米国製兵器の爆買いが問題になってきました。こうした経緯に照らしても、やはり、二%の背景として、アメリカの存在を否定できないのではないかと思いますが、この点についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
    〔鬼木委員長退席、塚田委員長着席〕

○香田参考人 ありがとうございます。
 核心に迫る御質問ですし、ただ、現場からすると、少し、現実とはやや異なる違和感もあるかなという気がいたします。
 まず、少なくとも、自衛隊員の立場からしますと、アメリカに言われたからこういう兵器が欲しいということについては、これは、お誓いを申し上げます、断じてありません。
 我が国の防衛を最終的に軍事力で行う場合に、最小限の兵力の下で侵攻を撃破するために何が最も効果的かという中で、やはり性能が一番高いもの、これは多くの場合アメリカ製なんですね。政治の段階でどういう約束があったかどうかというのについては別ですけれども、それと自衛隊の積み上げとが簡単に私は連動できるような話ではないと。まあ、アメリカからいったら、俺のがいいんだから買ってくれよというふうな話はあったかもしれません。
 しかし、例えば、F35をAとBで百四十機買うというのについて言うと、これは航空自衛隊の、自分たちの戦闘機の所要から積み上げた話であって、これは別に、バイデンさんであろうと国防長官であろうとエマニュエル大使であろうと、の話とは一切関係ない話なんですね。これは、真摯に、本当に我が国の防衛所要を積み上げた結果というものが全てと言っていいと思います。あるいは、ほとんどと言っていいと思います。
 では、なぜ米国製の装備の導入が多くなったかといいますと、先ほどの高見澤参考人の資料一の、ここのへっこんだ部分なんですね。ここは自民党政権の小泉さんのときなんですけれども、水平飛行からへっこんだ時期というのが、安倍政権で復活するまで、まさに十四年間続いたわけです。
 そこで実は防衛予算がずっと平和の代償で減らされましたから、どっちを買うかというと、ぎりぎり、性能のいいものを少しでも買おうという方向に、大きく言いますと、行かざるを得なかった。それが結果的に、アメリカから買ったようになっているということなんですね。それが逆に国内の防衛産業に相当大きな打撃を与え、防衛産業の基盤自体を傷めてしまったという別の効果もあったんですけれども、そのときは、もう毎年必死でやっていますから、結果的に先は読めなかった。
 そういういろいろな事情で米国製品というものの購入、導入が多くなっているというのは事実なんですけれども、実態を自衛隊の立場から申し上げますと、アメリカから言われたとかアメリカへのサービスということについて言うと、これは、我々の任務達成上、断じてないということですね。そこだけは御理解いただきたい。
 マスコミも、ある意味、面白いところもありまして、結構突いてくるわけですけれども、そんな簡単なことで我々は日本の、我が国の防衛を考えておりません。これはもう本当に、自衛隊、二十二万人、総員、非常に心外なところなんですね。そこについて御理解をいただければというふうに考えます。
 以上です。

○赤嶺委員 大変ありがとうございました。
 私たちにとって、現場の感覚を織り交ぜて発言なさる香田参考人のお立場、大変貴重なものでありまして、もちろん意見の違いはあると思いますが、あと一問、ちょっとお願いできないかと思います。
 今回の三文書の大きな特徴は、敵基地攻撃能力の保有に踏み込んだことであります。この点について、アメリカの統合防空ミサイル防衛、IAMDに参加するものではないのか、日本の敵基地攻撃能力は米軍の指揮統制の下で運用されることになるのではないか、このように私たちが質問をいたしますと、政府は、IAMDに参加するものではない、全く別物だ、日米は独立した指揮系統に従って行動するという説明を繰り返しております。
 参考人は、マスコミのインタビューで、「「矛」の役割を日米で担うわけですから、有効に機能させるためには、NATOや韓国軍・在韓米軍のように統一した指揮系統も必要です。」と述べておられました。
 現実の日米の軍事的連携の実情に照らして、今の政府の説明、どのようにお感じになっておられるでしょうか。また、日本が敵基地攻撃能力を保有した場合に、どのような日米の連携が想定されるのか、この点についても御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

○香田参考人 これまた立ち往生しそうな御質問なんですが、これも、大原則は、今までの憲法の考え方で、日米別々の指揮系統で我が国の防衛、あるいは周辺地域の安定を成し遂げるというのが大原則です。ですから、これは何があろうとびた一文譲れません、アメリカが何と言おうと。それは自衛官のプライドです。なぜかというと、民主主義の中で育てられた自衛隊だからです。国民とともにある自衛隊だから、そこについては、勇み足といえども、ありませんし、やらせませんし、今の人たちもやらないと思います。
 ただ、同時に、例えば敵基地を攻撃する反撃能力とか、大量のミサイル攻撃に際して日米が最も有効に対処するというふうな、IAMD的な構想というのはあってしかるべきなんですよね。なぜかというと、日本国民を究極的に守るのが政府の責任であり、自衛隊の役割ですから。ただ、その中で、私が申し上げているのは、NATOと韓国、米韓同盟と一番違うのは、別々の指揮系統で自衛隊と米軍が同じ目標に対して行動するということなんです。
 しかし、その中で、今までのような、例えば二十四時間三百六十五日、自衛隊と米軍がじかに話せるような環境にないと、例えば、反撃能力というのは、北朝鮮が今撃つときに、撃った瞬間に反撃をするわけですから、これは危なくなってから設立しちゃ駄目なんですね。二十四時間三百六十五日、日米の高いレベルの調整機能がないと駄目なんです。
 それを、同一の指揮系統かどうかといいますと、同じところで意思決定はします。しかし、その中で、アメリカ、日本が国益をしょって対立をすることもあれば、同じようにいくこともあります。合意する場面についてのみ自衛隊と米軍が別々の指揮系統で調整をしながら行うというのが筋ですし、そういうふうにつくっていくと思います。
 国会の議員の皆さんに申し上げるのは、それを監視するのは皆さんですよ。シビリアンコントロールというのは自衛隊を縛るだけじゃないんです。ここは、政府もそうなんですけれども、国会の機能としてそこがきちっとできているかということについて、私は、国会の議員の皆さんの役割というのは物すごく大きい、国会の役割は大きいということをあえて申し上げて、終わります。
 以上でございます。

○赤嶺委員 ありがとうございます。
 大変貴重なお話を聞いているうちに、高見澤参考人への質問もちょっと短くなってしまいましたが、ただ、高見澤参考人とは、防衛庁の局長を務められていた頃に何度も国会でやり取りをさせていただきました。また、防衛研究所の所長を務められていたときにも政党講義でお目にかかることもありました。大変懐かしい方でありますけれども、現場にいらした頃から私たちの間で取り上げてきました、軍事費増額の議論とも関わって、辺野古の問題、これは、民主主義や地方自治の面でも、予算の使い方の面でも、非常に問題が多い計画ではないかと思います。
 その辺野古の問題について、いまだにできていないんですが、どう考えていらっしゃるか、参考人のお気持ちを是非今聞かせていただきたいと思います。

○高見澤参考人 御質問ありがとうございます。
 時間もありませんので。
 やはり透明性を持って、政府全体あるいは地元の理解を得ながら進めていくべきものだ、この原点に尽きるかと思います。

○赤嶺委員 時間もなくなりましたけれども、参考人とはもうちょっとお話ししたいところもありましたけれども、今日はちょっと香田参考人のところで長い時間を取らせていただきました。高橋参考人も含めて、大変ありがとうございました。

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