国会質問

質問日:2023年 4月 25日  第211国会  安全保障委員会

武器輸出は分断招く 衆院安保委 赤嶺議員に参考人懸念

 

 国内軍需産業の基盤を強化するための財政支援措置を盛り込んだ「軍需産業支援法案」に関する参考人質疑が25日の衆院安全保障委員会で行われました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、第2次安倍政権以降、米国の武器輸出制度である有償軍事援助(FMS)に基づく契約額が急増し、2023年度予算は1・4兆円と過去最高になったとして、影響を質問。深山(みやま)延暁元防衛装備庁長官は、「国内調達額を押し下げた」と述べました。

 赤嶺氏は、FMSは納期や価格が米側の都合で決まり、調達した兵器が故障した場合も日本側が十分な調査が行えないと述べ、実態をただしました。深山氏は、「FMSの実施は苦労した。米側の要請でいろんなものが変わることは実際にあった。秘密の壁が厚く、日本側がマニュアル通りにしかさわれない」と述べました。

 岸田政権が策定した安保3文書は、FMSでの大量調達を温存したまま国内軍需企業の強化・育成のため、政府が武器輸出などを財政支援するとしています。赤嶺氏は、政府がアジア太平洋地域への武器輸出を進めており、この地域から中国の切り離しを進める米国の戦略を補完するものだと指摘。「ブロック化の動きは地域の対立と分断を拡大する」と批判しました。

 佐藤丙午拓殖大教授は、輸出相手国やその周辺国が、日本の対中政策の一部だと疑念を抱くと指摘。「結果として分断を招く可能性があり、大きな問題だ」と述べました。(しんぶん赤旗 2023年4月26日)

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武器輸出は分断招く(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、四人の参考人の先生方、大変ありがとうございます。
 今回の法案について、岸田政権が昨年末に閣議決定した安保三文書を具体化するものでありますが、三文書は、今後五年間で防衛力を抜本的に強化するとして、敵基地攻撃に用いる長射程ミサイルの量産や自衛隊施設の強靱化を打ち出しています。そして、自衛隊の装備品を製造する軍需産業を防衛力そのものとして位置づけ、先ほどから折木参考人もおっしゃっておられましたが、その強化は必要不可欠だ、こう述べております。
 まず、折木参考人にお伺いをいたしますが、政府は今回の安保三文書について、アメリカの戦略文書と整合したものだ、このように説明しておりますが、今アメリカは、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛、いわゆるIAMD、これを構築しようとしております。日本政府も、三文書で統合防空ミサイル防衛を打ち出し、敵基地攻撃能力の運用に当たって日米が連携することが重要だと述べております。
 現在でも、日米のイージス艦は、データリンクを経由し、一体的に運用しておりますが、敵基地攻撃能力も同様で、米軍と一体で運用されることになると思います。
 今回の安保三文書はアメリカの戦略を補完する形で具体化されていくことになるのではないかと思いますが、折木参考人はどのようにお考えでしょうか。

○折木参考人 どうもありがとうございます。
 戦略三文書を踏まえながら先生御指摘されたと思いますけれども、今回の防衛力の抜本的強化の中で、特に防衛戦略の方を見ますと、まず何がうたわれているかというと、日本が主体的にまずやるんだということを明確に表現していると思うんです。だから、それを踏まえた上で、情勢を、我が国を取り巻く安全保障環境情勢とか、それから経済も含んだ世界の大きな動きとか、それを分析した結果、アメリカと協議しながら吻合しましたということで、アメリカに決して合わせたわけではないというふうに私は思っています。
 それと、態様について申し上げれば、それは、先ほど言った主体的という中で、補完するということではなくて、日本がまずやらなければいけないのは、こんなに安全保障環境が変わってきてしまったんだから、まず抑止しなきゃいけないよねと。抑止しなきゃいけない手段として何だというふうにして考えたときに、反撃能力とか、ウクライナを見れば分かるように防空能力とか、それから、北朝鮮を考えたときにBMDはどうするんだとか、国民を守るためにはどうすればいいんだということを考えた結果が、私は、今回の安全保障戦略であり、防衛戦略だというふうに考えています。
 それと、アメリカとの関係が、じゃ、全く切り離していいかというとそうでもなくて、これはやはり、日米同盟でしっかりした体制を整えるということは、これも抑止につながりますし、何かあったときに、まずは日本が主体的にやるんですけれども、米軍と一緒にその後でもやることによって、きちんと日本を防衛できる、国民の命を守れる。
 そういうことを狙いにした、アメリカの戦略との吻合、それから日本独自の三文書の策定というふうに私自身は理解をしております。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 ちょっともう一問、折木参考人にお伺いをいたしますけれども、今度の国家防衛戦略は、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行う常設の統合司令部を創設することを明記しております。
 今年一月の日米2プラス2の共同声明は、日本による常設の統合司令部設置の決定を歓迎し、同盟におけるより効果的な指揮統制関係を検討する、このようにしております。
 この統合司令部の設置によって日米の調整機能がどのようになると考えていらっしゃいますか。参考人の御意見を伺いたいと思います。

○折木参考人 ありがとうございます。
 日本の統合司令部につきましては、私の個人的な念願でございまして、十年余りかかったんですけれども。
 東日本大震災のときに統合幕僚長をやらせていただいて、それでいろいろ対応させていただいたんですけれども、その中の反省事項で、本当に、部隊を指揮する部分と、それから大臣を補佐する部分という、要するに昔でいえば軍令、軍政的な分野というのは、一人でやるのはこれは厳しいよねということを前提にずっと考えていましたし、それから、そういうことを考えたときには、それを区分をして、きちんとした日本の統合司令部というのが必要だよねというふうに思っていました。それをいろいろ議論していただいて、今回、統合司令部ということで設置をするということで方向性をつけていただきました。
 これによって、いろいろなことがあるんですけれども、国内的には陸海空、それから宇宙とかサイバーとかいろいろな要素がありますので、これをきちんとした統合関係、統合をした中で、指揮という関係できちんとした組織というのがつくれて、日本の自衛隊というのがそれで運用できますよねというのが一つ。
 それからもう一つは、アメリカとの関係で、先生御指摘いただいたように、連携というか協議ですね。例えばインド太平洋軍司令部とやる上で、統幕長が、二股、二股という表現はよくないですけれども、両方、指揮と補佐という断ち割りじゃなくて、ちゃんと、指揮同士、組織同士がきちんと調整をする、それから訓練をやっていく、それからいろいろな戦略的な協議もやっていく、そういう関係がきちんと整理をされたというふうに思っています。
 その中で、日米の指揮統制関係をどうするかということを、これから深めていきますということなんですけれども、それは要するに、私の感覚、私の理解では、お互いに共同で作戦を日米はやるわけですから、それを踏まえた中で、日米の指揮関係、調整関係というのをどちらに、指揮関係に、上下関係になるということではなくて、共同の中でそれを、どういうふうにして調整関係とかなんとかというのを深めていくかということがその趣旨だというふうに私は理解していますし、それで間違いないと思っております。
 以上でございます。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 次に、深山参考人にお伺いをいたします。
 深山参考人、政府のときは大変お世話になりました。今日はもう参考人としておいでいただいているんですが。
 安倍政権以降、アメリカからの対外有償援助、FMS調達額が急増し、国内産業を圧迫していると言われているわけです。今年度のFMS予算は一兆四千億円以上と、昨年度の四倍以上、これまでで高額だった一九年度の二倍に上っております。
 経団連は、三文書の策定に向けた提言書で、近年、防衛産業にとって厳しい環境変化が続いている、このようにしております。その理由として、海外からの装備品調達が増加しており、二〇一九年度は米国からのFMSによる装備品調達額は約七千億円となった、こうした傾向が続けば、製造の空白期間や、年度ごとの調達量の増減が生じ、防衛産業は安定的な操業ができなくなり、人員規模を縮小せざるを得ない、このように述べております。
 このようなFMS調達の増額は国内産業にどのような影響を及ぼしているのか、参考人が把握しているところを教えていただきたい、このように思います。

○深山参考人 赤嶺先生には、現役のときは大変お世話になりまして、感謝をいたしております。
 今のお尋ねですが、FMS契約が増加した時期、私が装備庁長官を務めた時期もそこに重なっておりますが、これが結果として国内調達額を当時押し下げてしまったというのは事実であります。私も、一方でそれを米国と交渉して導入しなきゃいけない、それとともに国内防衛産業にも頑張ってもらわなきゃいけないんですが、予算の目減りで国内産業は苦しいんだという、陳情といいますか訴えも何度も聞きました。
 ただ、FMSは、FMSでしかやはり買えない装備があります。これは実はジレンマなんですけれども、本来は国内で、率直に言えば、米国から導入しなくても、日本で造れる装備品がもっと優れていれば買う必要はないので。ただ、それが達成できていなくて、それで、日本を守るために最新の装備品を持つためにはそういう道を選ばざるを得なかったという、大変なジレンマでありました。
 今おっしゃいましたように、今年度も、FMS、手元の、調査室の作られた資料を拝見しますと伸びておりますけれども、今年はそれとともに国内調達額も増えております。もちろん、私は増えることを歓迎いたします、そこはお立場の違いがあるかもしれませんけれども。でも、国内産業に対する影響は軽減され、今年は少なくとも軽減されていると思います。
 必要なものはFMSで調達しますが、我々、我々と言うのはもうおかしいんですけれども、政府も、必要なものは適正な額で調達する、そういう努力は常に続けていくことになろうと思います。

○赤嶺委員 FMS、現職の時代からいろんな意見を聞かれてきたことと思いますが、納期や価格はアメリカ政府の見積りで、原則前払いであること、米国側の都合で契約解除できるなど、余りにもアメリカに都合のいい契約方法、これが問題となってまいりました。また、FMSで調達した装備品が故障したときや不具合があったときも、アメリカが機微な技術などを秘匿するため、日本側が十分に調査や点検ができないと言われております。
 この辺りの実態、この辺はいかがでしょうか。今、現職を離れられて、また発言の機会、そのFMSについてどういうお考えなのか。深山参考人、お願いします。

○深山参考人 FMS契約の実施につきましては大変苦労いたしました。それは、やはり米国側の要請によっていろいろなものが変わってくるということは実際にありました。そして、今、FMSでなければ調達できない装備品があると申しましたが、そうした装備品であるがゆえに、特に最近は、FMSで調達したものについては、非常に装備品の秘密の壁が厚くて、日本側がマニュアルどおりにしか触れないということがあったのも事実です。それについては政府が、私も問題意識を持っておりましたし、今も持ち続けていると思います。
 私の知る限り、やはりこれについては、他国は、他国もFMSで導入している国はありますが、ある国は、非常に多くのスタッフを、FMSオフィスをワシントンにつくって、非常に人的規模を、多くの人間を割いてアメリカ政府と交渉して、我々が悩む不都合ができるだけ起きないように交渉して、あるいは早く情報を収集して対処しているということもその間に学びました。
 私の現役時代にはそうしたシステムを日本もつくることはできませんでしたが、今聞いておりますところによれば、防衛装備庁はそうしたものに少しでも近づけるべくFMSの交渉体制も拡充しているというふうに承知しておりますので、これはまだ、そうしたFMS交渉については先進的な国と肩を並べられるとは言えないかもしれませんが、今先生から御指摘のあったようなことが、日本側から見て不都合なことはできるだけ減らしていくということでやっていってくれると思っております。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 ちょっと時間が迫っていますので、村山参考人と佐藤参考人にお伺いします。
 日本政府は、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策手段として武器輸出を挙げていますが、その輸出先はアジア太平洋地域が中心になっています。防衛省の防衛装備移転の実現可能性調査はこの地域の国々を対象としていますし、先日外務省が公表した、発展途上国に武器提供などの軍事支援をする新たな枠組み、先ほども出ましたが、OSA、これもフィリピン、バングラデシュ、マレーシア、フィジーが対象となっています。
 日本の武器輸出は、この地域からの中国の切離しを進めるためのもので、アメリカの対中戦略を補完するものだと私は考えております。こうしたブロック化の動きは、この地域の対立と分断を拡大し、緊張を一層高めることにつながると思いますが、両先生のお考えを伺いたいと思います。

○村山参考人 御指摘のあった武器輸出の件ですけれども、結局、完成品を今まで輸出したのはフィリピンへのレーダーだけなんですよね。だから、八年間で一件だけなんです。これは、ある意味、私の立場からすると、何なんだということですよね。緩和して、オープンにしているのに、できない。だから、まずその辺りを解決すべきですよね。だから、そこを解決して、それから、どういう国に、どういう形でやっていくか。これはかなり時間がかかります。というのは、それほど競争力のないところをやっていくわけですから。
 それよりも、私、先にしなきゃならないのは、同盟国、友好国の間の防衛のサプライチェーンの整備だと思います。そちらの方が日本の役割は大きいと思うんですよね。やはり、今の安全保障環境からして、中国とどう対峙するかというのは重要ですので、サプライチェーンの勝負になるという部分もあるので、できるだけアメリカそれから同盟国で防衛分野のサプライチェーンをつくって、それで抑止していくというのが、より重要度が高い、武器輸出よりもそちらの方が重要度が高いというふうに私は考えております。

○佐藤参考人 ありがとうございます。
 今先生の方から、OSAを含めて、防衛装備移転に関する様々な御指摘をいただいたと思います。
 OSAの制度については、一つ問題があるとすれば、これは、受け取った側は日本の対中政策の一部になるんですかという疑念をどうしても抱いてしまう、若しくは周辺国に抱かせてしまうというのが大きな問題だと思っております。そもそもそういう目的で移転されるものではないにもかかわらず、日本から受け取ることによる分断というのを結果として招いてしまう可能性があるというところに大きな問題があると思います。
 そうなってくると、日本からの防衛装備移転というのは、できるだけそういう政治的な戦略とは切り離して、経済的なとは言いませんけれども、相手国の実情に合った形での戦略性、政治性というのを持たせて移転させるのも一つの方法だと思います。今回、ウクライナに関して韓国が非常にスキルフルな装備移転を行っておりますけれども、ああいうやり方というのも、まねること、勉強することも一つの方法なのかなというふうに思っております。
 我々は、装備移転によって世界を分断の世界に導いてはいけないわけでありまして、そうではない方法を模索し続けていくことが装備移転においては極めて重要なポイントだというふうに思っております。

○赤嶺委員 大変ありがとうございました。立場が違う意見ではありましたが、これからも参考にしていきたいと思います。
 今日はありがとうございました。

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