国会質問

質問日:2022年 12月 8日  第210国会  憲法審査会

個人情報侵害の恐れ 赤嶺氏「国民投票ネット広告」

衆院憲法審

 衆院憲法審査会は8日、憲法改定の国民投票におけるインターネット有料広告のあり方や「ネット社会と憲法」について参考人質疑を行いました。

 日本インタラクティブ広告協会の橋本浩典専務理事は、広告量などへの法規制が主張されていることを念頭に「自由で公平・公正な投票運動の確保のために、有料の放送CMとインターネット広告のみを規制することで効果があるのか」と疑問を呈したうえで、「基準があれば対応していく」と述べました。

 慶応義塾大学の山本龍彦教授は、社会のデジタル化によって個人情報の集積や分析、利用が進む中で、憲法が保障するプライバシー権や知る権利が侵害される恐れがあると指摘。「自己情報コントロール権」を基本的人権として正面から承認するなど、憲法の基本的価値を実現するための議論が必要だと述べました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、日本政府のデジタル政策が企業による個人情報の利活用に重点が置かれるもと「人権擁護や個人情報保護の観点が置き去りにされているのではないか」と質問しました。

 山本氏は「個人データの保護と経済成長のバランスを図ることが重要だ」と指摘し、個人情報保護を強化する議論を加速させるべきだと強調しました。(しんぶん赤旗 2022年12月10日)

 

質問の映像へのリンク

個人情報侵害のおそれ(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 憲法審査会、会派順でいきますと玉木先生がいつも私より先になっておりますが、今日は他の委員会と重なっておりまして、玉木先生の御理解も得まして、幹事会の御理解も得まして、先に質問をさせていただきます。
 まず、山本参考人に、デジタルの活用と個人情報保護の現状について、お話が繰り返されているところではありますが、お伺いをしたいと思います。
 今、日本政府は、データの利活用を成長戦略やイノベーションに資するものと位置づけて進めております。そこでは、専ら企業が消費者や利用者の個人データを収集し、利用しやすい仕組みづくりが中心で、人権擁護や個人情報保護という視点が置き去りにされているのではないかと私たちは考えています。
 例えば、非識別情報などを理由に、行政が保有する個人データの民間企業への提供、先ほど先生もお触れになっておりましたが、それを拡大して、企業間でビッグデータの共有を進める規制緩和が行われてきました。
 事業者が、自らが保有する顧客情報をプロファイリングして情報スコアを作成し、それを金融機関に提供する、こういう事業を政府が革新的データ産業活用事業として認定し、お墨つきを与えるようなことも行われてきています。
 一方で、保護の面では、例えば、いわゆるクッキーなどの端末識別情報も個人情報として保護対象に組み込もうという動きがありましたが、これは企業側の強い反発があって具体化されていないというのが現状です。
 今日の参考人のお話を伺っていますと、ヨーロッパは、個人情報の保護に徹底的に力を入れた上で、デジタル技術を活用した経済発展も目指すと、そのバランスを取って進めているように感じました。
 私は、日本のデジタル政策が、経済的合理性の下、利活用一辺倒に進んでいることに強い危機感を感じていますが、参考人は政府のデジタル政策の在り方をどのように見ておられるのでしょうか。
○山本参考人 ありがとうございます。
 私も、そのバランスが非常に重要だというふうに思っております。経済成長と個人データの保護ということのバランスをどう図るかということが重要だというのは、そのとおりかと思います。
 その点において、先ほどのクッキー情報ですとか、そういったものをどういうふうに統制、規律していくのかということは重要な課題だと思いますし、一歩一歩そういったものの議論は進んできていると思いますけれども、私は、なお、自分のパーソナルデータが、今、先生方も、どの範囲で共有されて誰に共有されているのかを明確に知っている方というのは少ないのではないか。そういう意味では、データに関する個人の主体性というのが失われつつある、そういう世界になってきているのかな。
 そういう意味では、ウェブ3とかそういった流れからすれば、個人起点、個人中心の世界ということが目指されている中で、やはりもう少しその議論というものを加速させていくべきなのではないかなというふうに思っているところでございます。
 差し当たり、以上です。
○赤嶺委員 引き続き山本参考人にお伺いいたしますが、自己情報コントロール権も繰り返し話題になりました。私たちも、これを基本的な権利として確立させるべきだ、このように思っています。
 そのほかにも、現在の個人情報保護法には、先ほどのクッキー情報の問題や、プロファイリングが規定されていないこと、同意の撤回ができないことなど、遅れが広く指摘されております。
 山本参考人は、日本の個人情報保護制度がどのように改善されていくべきか、先ほどからお話もありましたが、もう一度、具体的に詳しく、御意見がありましたら、よろしくお願いします。
○山本参考人 これを個人情報保護法の中でどこまでやるのかとか、そういったような問題もあるかと思います。特に、マイクロターゲティングのような形で強く消費者に対して働きかけをしていくということになれば、それは消費者保護の法制ということにもなっていくでしょうし、様々、まさに青写真を全体として示した上で、その問題というものをどういうふうに今後、課題解決していくのかということがまず重要だというふうに思います。
 その上で、個人情報保護法に関して申しますと、これは様々な議論があるところではありますけれども、私は、やはり、情報自己決定あるいは自己情報コントロールということを保障するものだというふうな形で個人情報保護法を読み込んでいく、あるいはそういう形で必要な改正というものを行っていくということが重要だろうというふうに思っております。
 そういう意味では、プロファイリングというものに対する規律というのは、ガイドライン等でいろいろと書かれ始めましたけれども、なお十分でないところがあると思っておりますので、やはり、個人が自らの情報に対するコントローラビリティーというものを持つという方向での議論が私は重要であろうというふうに思っております。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
 大変時間も押してきましたけれども、橋本参考人に対しても、プロファイリングの問題や、ターゲティングの広告、個人の言論空間が狭められていること、フェイクニュースが広がりやすくなっていることなどについて、その対策の遅れが指摘をされていますけれども、思想形成などの影響については先ほどお答えできないということでしたが、様々出ている危険性、これを参考人はどのように受け止めておられるでしょうか。かなり時間が押していますけれども、手短によろしくお願いします。
○柳田参考人 ターゲティングに関しましては、先ほど御説明いたしましたとおり、広告においては自主的な基準も設けております。もちろん法制度、法規制に従っている上のことでございますが、自主的にも、例えば、政治的な広告に関してはターゲティングをすることができないようにしている、あるいは、ターゲティング、政治的な思想信条に関わるセグメントを作らないといったようなことをプラットフォーム、メディア側では行っているということがございますので、そういったことで、法規制と自主規制と、併せて機能しているという状況があると認識しております。
 ですので、政治に関する広告だけではございませんけれども、実際の広告で、個人情報、あるいは個人に関する、個人情報に該当しない、今は個人関連情報というふうに定義されましたけれども、個人関連情報が個人に結びつくということがなければ、その利活用というのはバランスを持ってやっていけるものというふうに認識しております。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
 終わります。

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