国会質問

質問日:2022年 12月 8日  第210国会  安全保障委員会

空港・港湾軍事利用で政府 沖縄・下地島、成田に言及

赤嶺議員追及

 政府が「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定にあたり、民間空港・港湾の軍事利用の拡大を検討している問題で、浜田靖一防衛相は8日の衆院安全保障委員会で、沖縄県の下地島空港や千葉県の成田空港の軍事利用に向けて、関係自治体の協力を求める考えを示しました。政府が具体的な空港名に言及したのは初めて。日本共産党の赤嶺政賢議員への答弁。

 赤嶺氏は、下地島空港の開港時に琉球政府(当時)と日本政府が自衛隊や米軍等が軍事目的で使用しないと確認した1971年の「屋良覚書」の存在を挙げ、同覚書の見直しを求めていくのかと質問。浜田防衛相は「地元自治体に説明していく」と答えました。

 赤嶺氏は、軍事活動に効果的に資する空港・港湾は国際法上の軍事目標として取り扱われると指摘。離島住民の避難に不可欠な空港・港湾が米軍や自衛隊の軍事利用で攻撃対象にされるのではないかと追及しました。

 さらに、「かつての沖縄戦から何の教訓も学んでいない」と厳しく批判。那覇市の9割が焼失した44年の「10・10空襲」で軍事物資の積み上げ港だった那覇港が真っ先に攻撃対象となり、おびただしい住民が犠牲になったことを挙げ、空港・港湾の軍事利用をやめるよう求めました。(しんぶん赤旗 2022年12月9日) ※一部修正

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空港・港湾の軍事利用やめよ(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、民間空港、港湾の軍事利用の拡大について質問をいたします。
 政府が年末の安保関連三文書の改定に向けた検討を本格化させる下で、県民の間では、かつての沖縄戦のような悲劇が繰り返されることへの不安が広がっております。台湾有事は日本有事などという政治家の発言が繰り返され、南西諸島への長距離ミサイルの配備、弾薬庫の増設、陸上自衛隊第一五旅団の大幅な増強など、まるで戦争前夜を思わせるような報道が連日続いております。
 こうした下で、浜田防衛大臣は、十月二十日の有識者会議で、民間空港、港湾の軍事利用を拡大する意向を示しました。運航や使用に制限が課されている空港、港湾があるとして関係省庁や関係団体に協力を求めるとともに、先島諸島を名指しして、部隊運用の有用性が高いものもあるとして、空港、港湾の整備、機能強化を進める考えを示しました。
 防衛大臣に伺いますが、運航や使用に制限がある空港、港湾、また、部隊運用上の有用性が高い先島諸島の空港、港湾とはそれぞれどこを想定したのですか、説明してください。
○浜田国務大臣 我が国の防衛上、自衛隊が多様な空港、港湾を使用できるようにしておくことは重要であり、また、日頃から当該空港、港湾を使用した訓練を重ねておく必要がある一方、自衛隊による使用に様々な制約、制限が課されている空港、港湾もあります。
 具体的な事例として、例えば下地島空港については、いわゆる屋良覚書等により自衛隊機による使用が制限されているほか、成田空港については、一九七二年の取決めにおいて、軍事的に利用することは絶対に認めないとされております。
 また、相手方の関係で具体的にお示しすることはできませんが、事実上、災害派遣や防災訓練等でしか利用できていない空港や、空港の使用も断られた事例も複数ございます。
 こうした状況を踏まえ、自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や関係団体等から御協力をいただきたい旨、私から発言をしたところであります。
 そして、個別の空港、港湾の名称をお答えすることは差し控えますが、一般論としては、滑走路や岸壁長が長い空港、港湾は部隊運用上の有用性が高いと考えております。
 以上です。
○赤嶺委員 先島諸島、先島諸島とよく言われるんですが、私が学校を卒業して、初めて社会人生活、新婚生活を送ったのも石垣島であります。宮古島や石垣島、大変私にとっては懐かしい、懐かしいというか心のふるさとの地域でもありますが、ここの軍事利用を繰り返されることについて、非常に胸が痛い、そういう気持ちで聞いていることを防衛大臣はしかと受け止めていただきたいと思うんです。
 下地島空港については、一九七一年八月、当時の琉球政府と日本政府との間で、自衛隊や米軍などが軍事目的で使用しないことを確認した公文書、いわゆる屋良覚書があります。この見直しを求めるということですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国の防衛上、多様な空港等からの運用は重要でありまして、日頃からそのための訓練を重ねて、平素から柔軟に利用できることが必要でございます。国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議における御議論なども踏まえながら、自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や地方自治体、関係団体などから御協力をいただけるよう努めてまいりたいと考えております。
 下地島空港の自衛隊機による利用につきましては、地元住民の御意向といった地域の個別事情を踏まえる必要があると考えております。
○赤嶺委員 つまりは、屋良覚書の見直しを求めていきたいということですね、大臣。
○浜田国務大臣 今お答えしたとおりでありますが、我々とすれば、地方自治体に対して御説明をしていきたいというふうに考えております。
○赤嶺委員 武力紛争時に紛争当事者が最低限守るべき原則を規定した国際人道法、これは、民用物への攻撃を原則禁止する一方で、たとえ民用物であっても軍事活動に効果的に資する物については軍事目標として取り扱うことになっていると思いますが、防衛省、その点は間違いないですね。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、自衛隊が武力の行使を行うに当たりましては、自衛隊法第八十八条に規定するとおり、国際人道法を含む国際法を遵守することとなります。
 その上で、ジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十二条の二におきましては、物について、軍事目標は、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限ると規定されております。
 自衛隊が使用する空港、港湾が同条に規定される軍事目標に当たるかにつきましては、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があるものであり、一概にお答えできないものだと認識しております。
 以上でございます。
○赤嶺委員 だって、大臣は、先島諸島の空港や港湾は軍事的な利益をもたらすものとして、その効果的な活用を、日頃から訓練もし、そして武力攻撃事態になったら使うんだというわけでしょう。そうしたら、ジュネーブ条約で言ういわば軍事的利益をもたらすもの、こういうことになってしまうんじゃないですか。それはそのときになってみないと分からないというものではないでしょう。いかがですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 防衛省といたしましては、南西諸島を含む日本各地の空港、港湾といいますのは、有事に限らず、災害などの各種事態における住民、南西諸島の場合では離島の住民の方々の避難を含む人員や物資の輸送の観点においても大変重要な役割を担うものだ、こう認識しておりまして、これらを平素から柔軟に利用できることが重要と考えております。
 いずれにせよ、自衛隊が使用する空港、港湾がジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十二条の二に規定される軍事目標に当たるかにつきましては、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があると考えておりまして、一概にお答えできないものだと考えておりまして、その点、御理解いただければと思います。
○赤嶺委員 一概に言えないとか、そのときになってみないと分からないとか、私は、そういう態度はかつての沖縄戦から何も学んでいないということになると思うことを指摘したいと思います。
 かつて沖縄戦のときに、一九四四年十月十日、南西諸島全域が米軍による大規模な空襲を受けました。いわゆる一〇・一〇空襲です。五次にわたる波状的な爆撃が行われ、那覇市の九割が焼失をしました。真っ先に攻撃を受けたのは、当時の海軍小禄飛行場、現在の那覇空港。小禄飛行場と那覇港でした。那覇港は、軍事物資の主要な積み揚げ港となっていたために、真っ先に攻撃の対象とされました。ですから、伝統的に那覇市では、親泊市政の頃から那覇港の軍事利用は認めない方針を取っているわけです。
 同じ一九四四年の八月に、疎開学童らを乗せた対馬丸が米軍の潜水艦に撃沈をされました。当時、対馬丸は、軍に徴用され、中国戦線から沖縄に部隊を輸送する役割も果たしました。
 沖縄戦でのおびただしい住民の犠牲は、軍隊と民間が混在することで起こったわけであります。
 軍民を混在させない、離島住民の避難に必要不可欠な民間空港、港湾、ここは民生利用に限る、こういう具合にしないと。このことが沖縄戦から酌み取るべき教訓だと思いますよ。
 また再び民間施設を軍事利用して、そして爆撃の対象になる、撃沈の対象になる。こういうのは、去った沖縄戦から何の教訓も学んでいないで、気軽に、台湾有事だとか、あるいは軍事的に利用ができるとか、こういう態度はやめていただきたいと思います。
 最後に一点伺いますが、米軍は今、固定した基地に大規模な部隊を集中させるのではなく、小規模の部隊を一時的に分散展開させる考え方に移行してきています。相手のミサイル攻撃に脆弱だからであります。こうした考え方の下に、海兵隊は、ミサイル部隊などを一時的に島々に展開させるEABOという構想を推し進めています。
 防衛省に伺いますが、米軍が南西諸島の島々に展開するとき、どうやって展開するんですか。民間空港、港湾を使うことになるのではありませんか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の、米海兵隊の機動展開前進基地作戦構想、EABO構想といいますのは、海軍の海洋アセットに加えまして、海兵隊が陸上ベースの選択肢を提供することによりまして、決定的な攻撃力を更に分散するための取組と承知しております。
 EABO構想では、地上発射ミサイルを含む多様な機能を持つ臨時拠点を前方に一時的に設置するものとされており、危機前の状況から展開することにより既成事実化の取組に対応するとの考え方が示されていると承知しておりますが、本構想に基づく米軍の具体的な運用の内容につきましては、個別具体的な状況に応じて判断されるものと承知しておりまして、一概に申し上げることは困難でございます。
○赤嶺委員 米軍の運用について、それは知らないと。無責任じゃないですか。離島の空港や港湾を整備して米軍に使わせようとする。
 米軍は、インド太平洋軍が太平洋抑止イニシアチブという構想を打ち出していますが、二〇二〇年に議会に提出した予算要望書では、前進配備された部隊が空港、港湾に分散できるようにすることが必要だという認識が示されております。
 米軍は、南西諸島の空港、港湾を利用するという要望を持っているんじゃないですか。大臣、いかがですか。
○鬼木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。
○増田政府参考人 米軍の艦船や航空機は、日米地位協定に基づき、日本国の港又は飛行場に出入りすることが認められております。
 その上で、緊急時における民間空港、港湾などの公共施設の米軍の利用につきましては、その緊急事態の規模、態様等に応じて個別に判断することになります。
 既存の法制度におきましても、米軍による民間空港、港湾などの公共施設の利用は想定されており、例えば武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律などにおきまして、必要な規定を整備しているところでございます。
○赤嶺委員 非常に軽々に、沖縄戦を体験した沖縄県民をまた戦場に巻き込むような無責任な議論、明らかにせよと言ったらそれはできないとする態度、これを改めることを強く求めて、質問を終わります。

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