国会質問

質問日:2021年 6月 14日  第204国会  沖縄北方特別委員会

公共事業で適正な賃金支払いを

沖縄県民所得 全国平均7割

 沖縄県の本土復帰から、来年で50年を迎えます。この間、5次にわたる沖縄振興計画が取り組まれ、社会資本整備や産業振興の面では一定の成果を上げてきていますが、県民所得は依然として全国平均の7割程度にとどまっています。こうした下で、労働者の雇用所得の改善をはかろうと、県内の公共工事で適正な賃金の支払いを求める声が上がっています。

 18日には、沖縄県労連や建交労の主催で、賃上げを求める横断幕を取り付けたダンプトラック約40台によるデモが行われました。

 

赤嶺議員追及

 日本共産党の赤嶺政賢議員は6月14日の衆院沖縄北方特別委員会でこの問題を取り上げ、公共工事の予定価格の積算に用いる「設計労務単価」が担い手確保の観点から9年間で60%引き上げられてきたが、現場労働者が受け取る賃金は単価の5~6割程度だと指摘。労務単価の一定水準の支払いを義務付ける公契約条例を制定する動きが全国の自治体で広がっていることにふれ、「沖縄振興の懸案である県民所得の向上に向け、単価引き上げが実際の賃上げにつながる仕組みの導入を検討すべきだ」「自治体にできて国にできないはずはない。沖縄振興から突破口を開くべきだ」と迫りました。

 国土交通省の天河宏文審議官は、今年3月の建設業界団体との意見交換会で「本年は概ね2%以上の賃金上昇を目指す」と確認したと答弁。河野太郎沖縄北方担当相は「国交省の取り組みは重要。担当部局の事業執行でも適切に対応する」と述べました。

 国の統計によれば、県内建設労働者の年収は全国平均より100万円以上低くなっています。建設労働者は県内全就労者数の1割以上を占め、ここでの賃金水準の引き上げは県民所得の向上に大きく貢献します。(しんぶん赤旗 2021年7月31日)

 

質問の映像へのリンク

建設労働者の賃上げ、北谷町立博物館の整備を(衆院沖北特別委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 次期沖縄振興計画に関し質問をいたします。
 沖縄の本土復帰から来年で五十年になります。これまで五次にわたる振興計画に基づいて社会資本整備や産業振興が取り組まれてきました。県民自身の努力と相まって、観光業を始め、一定の成果を上げてきた一方で、依然として大きな課題となっているのが、全国最低水準にある県民所得をどう引き上げていくかということであります。
 この点に関わって、今日取り上げたいのは、建設業で働く労働者の賃金の問題です。この間、建設業の担い手確保の観点から、公共工事の予定価格の積算に用いる公共工事設計労務単価が全国的に引き上げられてきました。沖縄も、二〇一二年度は一万五千九百八十円でしたが、今年三月の時点で二万五千六百二十五円となっています。全体で六〇%の引上げになっております。
 ところが、労働組合の方々に伺いますと、実際に職場の現場の労働者が受け取っているのは設計労務単価の五割から六割程度で、引上げ額も微々たるものとのことでありました。
 まず、国土交通省に伺いますが、こうした現場の声や支給実態について、どのように把握し、国土交通省としてどのような取組を進めているか、答えてください。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 国土交通省におきましては、公共工事設計労務単価につきまして、平成二十四年度に法定福利費を反映させる形で引上げを行って以降、本年三月の直近の改定まで九年連続で引上げを行ってまいりました。また、公共工事の品質確保の促進に関する法律の趣旨を踏まえ、国、地方公共団体を通じまして、予定価格の適切な設定、ダンピング受注対策などに取り組むとともに、安定的、持続的な公共投資の確保にも努めてきております。
 こうした取組もあり、厚生労働省が行っております賃金構造基本統計調査におきましては、建設労働者の賃金は、平成二十四年以降、上昇傾向が続いております。
 一方、今御指摘ありましたけれども、九年連続で労務単価を引き上げた効果が現場の技能労働者まで十分に行き渡っていないのではないかとの声があることも承知をしております。
 国土交通省としましては、建設業の担い手確保、育成のためにも、公共工事設計労務単価の引上げが現場の技能労働者の賃金水準の上昇という好循環につながることが重要と認識しており、法定福利費の確保、社会保険の加入の徹底を図るとともに、適切な賃金水準の確保につきまして、様々な機会を捉え、建設業関係団体に対して繰り返し要請してきております。
 直近では、本年三月三十日に行われました国土交通大臣と建設業関係団体との意見交換会におきまして、今後の担い手確保のため、本年はおおむね二%以上の賃金上昇の実現を目指すという旗印の下、全ての関係者が可能な取組を進めるとしたところでございます。
 二%の賃金上昇の実現を目指すためにも、ダンピング受注の排除、適正な請負代金での下請契約の推進、建設キャリアアップシステムの普及促進などに一層取り組んで、建設技能労働者の賃金水準が更に改善されるよう官民挙げて取組を進めていきたい、このように考えております。
 以上でございます。

○赤嶺委員 設計労務単価の引上げが続いているけれども、それが実際の賃金の引上げにつながるように建設業団体に要請している、そういうお答えでありましたが、これまでも単価引上げのたびにそういう要請は行ってきておるようであります。しかし、実態としては十分な引上げにはつながっておりません。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査で同じ期間の建設労働者の賃金を見てみますと、一五%の引上げにとどまっています。六〇%の単価引上げに対し、実際の賃金引上げは一五%であります。業界団体への要請だけでは十分な効果を上げていないと思いますが、いかがですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 今御指摘のとおり、十分じゃないんじゃないかということでございますが、そうしたこともありまして、先ほど申し上げましたけれども、本年三月三十日に、国交大臣と建設業関係団体、これは日本建設業連合会、全国建設業協会、それから全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、この四団体としっかり話合いをいたしまして、おおむね二%以上の賃金上昇を目指して、しっかりみんなで取り組んでいこうという合意をいたしまして、今、それに向けて頑張っておるところでございます。
 以上でございます。

○赤嶺委員 河野大臣に伺いますが、沖縄の建設関連労働者は、県内の全就労者数の一割を占めます。全就労者数七十万に対して、建設労働者は七万人であります。ここでの賃上げは県民所得全体の引上げに必ずつながっていきます。
 地方自治体では、公契約条例を制定して、労務単価の一定水準の支払いを義務づける取組が広がっております。例えば世田谷区、ここは、熟練労働者に労務単価の八五%を支払うよう義務づけております。自治体にできて国にできないはずはないと思います。
 沖縄振興の長年の懸案である県民所得の向上に向けて、労務単価の引上げが実際の賃金の引上げにつながるような仕組みの導入、これを検討する必要があると思いますが、大臣はどのようにお考えになりますか。

○河野国務大臣 沖縄担当大臣としても、先ほど国土交通省から答弁のあった取組は重要と考えており、沖縄担当部局における事業執行においても引き続き適切に対応してまいります。

○赤嶺委員 設計労務単価というのは、あくまで賃金として支払われることを予定して積算するものであります。何か特に、先ほどの屋良議員が提起していたような問題とはちょっと違って、全国マターで、しかし、それが沖縄の所得の向上という点から見れば抜き差しならない重要な課題であるものだと思います。
 下請企業の適正な利益には目を配りながら、単価に沿った賃金が支払われるようにすることは当然のことであります。しかも、これは民間の事業ではなく、国が発注する公共工事のことを申し上げております。沖縄振興の枠組みからこの問題の突破口を切り開くような取組が求められているということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、沖縄県北谷町の町立博物館の建設問題について質問をいたします。
 キャンプ桑江北側地区の返還跡地で、伊礼原遺跡という縄文時代の遺跡が発見されました。ウーチヌカーという湧き水があり、全国的にも珍しい土器やくしなどの出土品が発掘されております。二〇一〇年には国史跡として指定もされております。
 北谷町は、こうした出土品や町内に点在する歴史的資料、文化財を展示し、学校教育、生涯学習の場としても活用できる施設として遺跡の隣接地に博物館を建設する計画を進めてきました。当初は一括交付金での整備を計画していましたが、年々予算規模が削減される下で実現の見通しが立たなくなりました。現在は防衛省の民生安定助成事業として整備しようとしております。
 沖縄防衛局は、二〇一九年度から定期的に情報交換を行い、補助要件に該当することも確認しながら計画を進めてきたにもかかわらず、最近になって突然、予定していた八月の概算要求に盛り込むのは難しいと手のひらを返すような対応をされたと伺っております。なぜ、突然、はしごを外すような対応をしたんですか。

○中山副大臣 ありがとうございます。
 御指摘の北谷町が計画している博物館につきましては、令和五年、二〇二三年度の開設に向けまして、北谷町から防衛省に対して、環境整備法第八条に基づく令和四年度の工事費の助成を要望されているものと承知をいたしております。
 この御要望を受けまして、防衛省として、北谷町から伺った事業規模等について様々な検討を行った結果、我が国の厳しい財政事情に鑑み、令和四年度の補助事業としての採択は厳しい旨、北谷町に対して御連絡を申し上げました。
 その上で、北谷町におかれては、本件を含め様々な事業の御要望があるというふうに承知をいたしております。今後、令和五年度以降の予算を見据えながら、北谷町の御要望全般の計画や嘉手納飛行場の運用に伴う障害の実態を伺うなど、引き続き丁寧に調整をしてまいりたい、かように考えております。

○赤嶺委員 中山副大臣、ここで国の財政が逼迫しているという、北谷町の博物館は皆さんの事業に要件も満たしているんですが、それがどんなふうに国の予算の逼迫につながるのか、今の説明では全く分かりません。しかも、三年間、北谷町は皆さんと一緒に協議をしてきて、要件にも合致し、こういう話が進んでいけば大概はそういう予算というのはつけられて事業化をしてきておりました。
 北谷町というのは、今副大臣も触れられましたけれども、米軍基地をめぐって防衛省がさんざん迷惑をかけてきた自治体ですよ。返還跡地から大量の有害物質を含むドラム缶が発見されたこともありました。そして、返還跡地の利活用に防衛省が最優先で取り組まなければならない自治体でもあります。
 ここに事業費をつけないで、国の予算が逼迫するからといってほかの自治体につけるなんという、そんなまさか矛盾した行為なんか、やれるはずないと思いますよ。
 予算が逼迫していると言いますが、この事業で来年度に新規採択を予定している事業はほかにないんですか。それらは今どうなっているんですか。

○青木政府参考人 お答え申し上げます。
 令和四年度予算につきましては、現在、八月末の概算要求に向けて調整しているところでございまして、何ら決まったものはございません。
 このため、沖縄県内で令和四年度に新規採択を予定する民生安定事業の件数であるとか、あるいは予算見込額等も含めまして、この時点で、現段階で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

○赤嶺委員 国の予算が逼迫していると言いながら、新規採択事業はないのかと聞いたら、今明らかにできないと言う。これは中山副大臣、幾ら何でも説明になっていませんでしょう。
 北谷町には採択は難しいと説明したわけですから、その一方で採択できると判断している事業があるはずです。それは何件あり、どのくらいの予算を見込んでいるのか、それらはなぜ採択できると判断したのか、これを明らかにしていただきたいんですが、いかがですか。

○中山副大臣 沖縄県内で二〇二二年度に継続を見込む民生安定助成事業の件数、それから予算見込額でありますが、現在、八月末の概算要求に向けて調整をしているところであり、先ほども御答弁申し上げたように、何ら決まったものはないということでございます。
 また、沖縄県内で、令和四年、二〇二二年度に継続を見込む民生安定助成事業の件数と予算見込額についても、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
 部内における検討の詳細についても、この補助事業の適正な採択に影響を及ぼすという観点から、お答えを差し控えなければならないと考えています。
 いずれにしましても、防衛省として、北谷町から伺った事業規模等について様々な検討を行った結果、我が国の厳しい財政事情に鑑みまして、令和四年度の補助事業としての採択は厳しいとの結論に至ったものと認識をいたしております。

○赤嶺委員 とても納得できる説明ではありません。不公平な予算の配分の仕方をしているとしか指摘せざるを得ません。
 今日は外務大臣には津堅島への海兵隊のヘリ不時着事件についても伺いたかったところですが、時間が来ましたので終わりますが、ただ、防衛副大臣、こういう説明で、一番嘉手納基地のそばで苦しめられている北谷町が、返還跡地でさんざん迷惑をかけた北谷町が返還跡地に博物館を造ろうとしたら、国の予算が逼迫しています。じゃ、新規事業はないのかといえば、それは説明できません。こんなのはとても納得できる説明ではないということを申し上げて、事業化すべきであるということを強く申し上げて、質問を終わります。

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