国会質問

質問日:2020年 5月 28日  第201国会  憲法審査会

改憲論議の土台なし 衆院憲法審 赤嶺氏が安倍政権批判

 

 衆院憲法審査会は28日、「憲法改正国民投票法をめぐる諸問題」について「委員間討議」を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、憲法審は憲法改正原案を発議し審査する場であり、国民の多数が改憲を求めていない中、改憲を目的とした憲法審は動かすべきではないと強調しました。

 赤嶺氏は、国民投票法改定案7項目について「与党が突如持ち出し、一方的に提出したものだ」と指摘し、「改憲論議を進めるための呼び水にしようとしたことは明らかだ」と批判。現行の国民投票法には最低投票率の問題など「重大な欠陥がある」と述べ、根本的な問題を議論せず与党案を採決することは許されないと厳しく批判しました。

 赤嶺氏は、森友・加計問題や黒川弘務東京高検検事長の定年延長をめぐる問題など、安倍政権が民主主義と三権分立の土台を根底から崩しているもとで、「改憲論議など許されない」と強調。今必要なのは、改憲の議論ではなく、コロナ禍での生活保障や医療体制拡充など「憲法の諸原則を現実の政治に生かす議論だ」として「その場は憲法審査会ではなく、予算委員会や各常任委員会だ」と述べました。

 自民党の新藤義孝議員は、与党提案の国民投票法改定案の速やかな採決を主張しました。

 立憲民主党の山花郁夫議員は、CMの多寡が投票結果に影響を及ぼす可能性があると指摘。国民民主党の奥野総一郎議員は、CM規制などを盛り込んだ国民民主党案を示し、「並行して審議すべきだ」と主張しました。

 公明党の北側一雄議員は、CMについて「各党による自主規制の方がより柔軟だ」と述べました。

 同日の幹事会では、今後の運営について引き続き協議することになりました。(しんぶん赤旗 2020年5月29日)

 

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改憲論議の土台なし(衆院憲法審査会)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 私たちは、憲法審査会を動かす必要はないという立場です。
 憲法審査会は、憲法改正原案を発議し、また審査するための場です。ここでの議論は、改憲項目をすり合わせ、発議に向かうことにつながります。
 五月三日の憲法記念日に合わせてNHKが行った世論調査では、憲法以外のことを議論すべきだと答えた人が八割に上っています。憲法九条については、どの世論調査でも、変えるべきではないというのが多数です。今、国民の多くは、憲法を変えることを求めてはいません。
 問題なのは、こうした国民の意思とは関係なく、与党が安倍首相の意向で審査会を動かそうとしてきたことです。
 五年前の六月四日、安保法制が国会で審議されている最中に開かれた当審査会で、長谷部恭男教授ら三人の憲法学者が、安保法制は憲法違反だと異口同音に述べられました。これを機に、国民から、立場を超えて、安保法制反対の声が大きく広がりました。自民党は、その後、一年半もの間、審査会を開くことができなかったのです。
 ところが、三年前の二〇一七年五月三日、いわゆる改憲勢力が衆参で三分の二を占めたことを背景に、安倍首相は、二〇二〇年と期限を区切って、九条改憲に言及し、憲法改正の議論を加速させてきました。そのもとで、自民党は憲法審査会を動かしてきたのです。
 これまで繰り返し述べてきたように、国民の多数が改憲を求めていない中、改憲を目的とした審査会は動かすべきではないと改めて指摘しておきます。
 次に、憲法改正の国民投票をめぐる問題について意見を述べます。
 まず指摘しておきたいのは、なぜ今、公選法並びの七項目なのかということです。与党は投票環境向上のために必要だと言いますが、憲法改正は具体的なスケジュールに上がっておらず、国民も改憲を求めていません。急いで整備する必要は全くありません。
 与党は、二〇一八年の通常国会でこの七項目を突如持ち出してきました。そして、改正案を与党だけで一方的に提出したのです。改憲議論を進めるための呼び水にしようとしたことは明らかです。
 そもそも、現行の国民投票法自体、二〇〇七年、第一次安倍政権が、改憲を推し進めるため、与党の強行採決によって成立させたものです。私たちは、当初から、改憲手続のための法整備を行う必要はないとの立場をとると同時に、国民投票法には極めて重大な欠陥があると指摘してきました。
 当時、国民投票法の不備を指摘したのは私たちだけではありません。
 例えば、日弁連は、二〇〇六年の意見書で、最低投票率の規定がないこと、公務員や教育者の投票運動を不当に規制していること、広報協議会の構成が改憲派に有利になっていること、公平公正な放送や広告の利用が担保されていないことなど、重要な問題点が多々含まれていると指摘しております。
 ところが、与党は、こうした国民の声を無視して採決を強行したのです。このことが、国民投票法が今でも欠陥法と言われる実態を引き起こしているのではありませんか。
 国民投票法の採決に際し、参議院では、国民投票法の範囲、最低投票率の意義、テレビ、ラジオの有料広告規制など十八項目もの附帯決議が付されました。これらはいずれも国民投票法の根本的な問題です。しかし、これまで審査会でほとんど議論されていません。国民投票法というのであれば、これら残された課題に真摯に向き合うべきです。
 国民投票法の根本的な問題に触れないまま公選法並びの七項目だけ成立させようというのは、これを憲法改正の一里塚にしようとするものにほかなりません。コロナ禍のどさくさに紛れ国民投票法を採決しようというこそくなやり方は許されません。
 最後に述べておきたいのは、安倍政権のもとで改憲議論をする土台があるのかということです。私たちは、前回、森友問題や加計問題、桜を見る会を始め、国民の共有の知的資源である公文書の改ざん、捏造、隠蔽、破棄され、民主主義の土台が崩されて、壊されていると指摘いたしました。
 さらに、今問題となっている黒川弘務前東京高検検事長の定年延長をめぐる問題は、内閣が検察の人事まで左右しようとするものであり、三権分立を脅かす重大な事態です。
 これに対し、多くの国民が反応しました。ツイッターでは、検察庁法改正案に抗議しますというハッシュタグが一日で六百万件を超え、安倍政権のたくらみを押しとどめたのです。
 元検事総長らは、安倍政権を、フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ十四世の言葉として伝えられる、朕は国家なりとの中世の亡霊のような言葉をほうふつとさせると批判しました。こうした国民の声に耳を傾けるべきです。
 安倍首相は民主主義と三権分立の土台を根底から崩しており、そのもとで改憲論議など到底許されません。今必要なのは、改憲の議論ではなく、憲法の諸原則を現実の政治に生かす議論です。
 新型コロナウイルス感染症のもとで、憲法の生存権などを生かすかどうかが問われています。生活への保障、医療体制の拡充について議論すべきです。その場は憲法審査会ではなく、予算委員会や各常任委員会で大いに行われるべきことを申し上げて、発言を終わります。

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