エッセイ

水曜随想 国策と軍需産業の癒着

 

 1954年、政治家や業界、官僚を巻き込んだ大規模な贈収賄事件が発覚した。世にいう造船疑獄である。当時の政権政党は自由党。幹事長は佐藤栄作氏だ。

 造船業界は自らに有利な法律を政治家に求め、総選挙の資金を提供し、選挙後の赤字まで補填(ほてん)するという至れり尽くせりの関係だった。赤坂の料亭はにぎわい、賄賂か乱舞した。その様子を松本清張は『日本の黒い霧』で詳細に描いている。

 東京地検特捜部に任意出頭した佐藤幹事長は「造船屋からもらった金は党への政治献金で、自分のものではない。こんなことが罪に問われるなら、政党の幹事長は務まるわけはない」。特捜部は佐藤氏の逮捕方針を固めたが、当時の吉田内閣の下、犬養法相の指揮権発動で逮捕を免れた。戦後日本の造船業の復興の時期に起こった昭和の一大疑獄事件だった。

 ところで、安保3文書の策定以来、日本の軍拡は驚くばかりの速さで進んでいる。防衛省は大軍拡推進のために「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」を設置した。会議に提出した資料で防衛省は、「為替変動、物価高、人件費の上昇が、装備品調達へ与える影響等」を問題提起した。

 会議の座長、榊原定征・経団連名誉会長はこの提起にすかさず反応し、43兆円の軍事費のさらなる増額の可能性に言及した。会議のメンバーには、軍需産業最大手の三菱重工や、宇宙・サイバー・電磁波などで新たな需要が見込まれているNTTの会長が加わっている。読売新聞の社長もメンバーだ。この構図を見ただけで国策と軍需産業の癒着の拡大が容易に想像される。自民党の裏金事件で「政治とカネ」への国民の怒りが極点に達する中でも、支配者たちは、次の計画を練り上げている。

 松本清張は「日本の政党は、常に金に渇いている。そこを見込んで、業者は常に金で誘惑しようと試みている」「政治資金規正法などは空文にすぎない」と書いている。金権政治を根絶するため、日本共産党と「しんぶん赤旗」の一層の奮闘が求められている。(しんぶん赤旗 2024年2月28日)

 

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