エッセイ

水曜随想 米追随やめ外交主体的に

 

 ガザで戦闘が再開された。イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスを壊滅するまで戦争を継続すると明言している。

 パレスチナはこれまで民族の独立と自決権を求めてきた。ところが、イスラエルはパレスチナを占領下におき、住民を排除しながら入植地を拡大してきた。ガザを分離壁で封鎖し、無差別攻撃を繰り返してきた。こんな乱暴なことができるのは、アメリカの後押しがあるからだ。ハマスが抵抗の手段として、民間人を攻撃し人質にした行動は容認できないが、このような歴史的背景がある。

 最近イスラエルの元兵士の証言を中心にした「愛国の告白」というドキュメント映画を観(み)た。パレスチナ自治区にある入植地はイスラエル兵が警護している。住民が入植者に少しでも無礼を働こうものならたちまち逮捕され、イスラエルの刑務所に連行される。少年であっても容赦しない。現場から逃走した少年を真夜中自宅におしかけて、家族の目の前で逮捕し、長期間投獄することも日常茶飯事だ。パレスチナ住民の怒りは、長期にわたるイスラエルによる占領、入植、封鎖、殺りくという不正義に対して向けられたものだ。

 映画の中で、イスラエルの元兵士の一人が次のように述べていた。

 「『私たちだけの安全保障』という考えは機能しません。億万長者が城を持っていたとします。その1メートル先に餓死寸前の数百の家族が住んでいたとしましょう。その大金持ちは安全だと思いますか?」「今の私たちは、安全保障が相互関係の概念だと知っています。隣の人が安全でなければ、私も安全ではありません」

 武力で平和をつくることはできない。そのことに気づいた元兵士たちの証言は、何が真実かを教えてくれた。

 一連の国連決議は、①イスラエルの占領地からの撤退、②パレスチナ独立国家樹立を含む民族自決権の実現、③両者の生存権の相互承認という三つの原則を確認している。アメリカ追随ではなく、国連決議に立脚した主体的な外交が求められている。(しんぶん赤旗 2023年12月13日)

 

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