エッセイ

水曜随想 台湾の知恵に学ぼう

 

 安保3文書は、沖縄の自衛隊増強の理由に「国民保護」を挙げている。沖縄戦で日本兵による壕(ごう)追い出し、集団自決の強制を体験した県民は、「軍隊は住民を守らない」という教訓を語り継いできた。先日の予算委員会の質問で、岸田首相は3文書と同じ考えを述べた。心の底から怒りが込み上げ、瞬時に「沖縄戦の教訓をあなたは知らないのか」という言葉が口をついて出てきた。

 3文書策定に先立って開かれた有識者会議には、読売、日経、朝日といった大手メディアの幹部・OBが名を連ね、国会も軍事力増強の翼賛体制だ。

 そんな時である。沖縄で「『台湾有事』を起こさせない沖縄対話プロジェクト」の1回目のシンポジウムが催された。沖縄から3人。台湾から国防安全研究院准研究員の林彦宏氏、輔仁大学教授の何思慎氏の2人。真剣な議論が4時間以上続いた。

 林氏は、軍事研究の専門家。中国の軍拡に危機感を抱いていた。シンポジウムの最後、同氏は「東アジアにはASEANのような組織がない。そういった組織ができたら紛争はなくなるのではないか」と発言をまとめた。司会は「中国への政治的立場は異なるお二人だが、台湾の人たちは、紛争を軍事的衝突に発展させない知恵がある。台湾の知恵に学ぼう」と締めくくった。いいシンポだった。

 沖縄戦で戦場に動員された経験を持つ元全学徒の会が、「沖縄を戦場にすることに断固反対する声明」を出した。「戦争は始まってしまったら手がつけられない」という一文が強く印象に残った。さらに「日本政府がすべきことは、侵略戦争への反省と教訓を踏まえ、非戦の日本国憲法を前面に、近隣の国々や地域と直接対話し、外交で平和を築く努力である。戦争を回避する方策をとることであり、いかに戦争するかの準備ではない」と続けている。

 地獄の戦場を体験した元学徒の声明は重い。150日間の通常国会の会期は6月21日まで。まだ序盤だ。「命(ぬち)どぅ宝」を掲げ、さらに頑張りたい。(しんぶん赤旗 2023年2月22日)

 

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