エッセイ

水曜随想 沖縄に広がる不安の声

 

 岸田政権が安保政策を大転換し、地上戦を体験した歴史をもつ沖縄県民の間で不安の声が広がっている。

 石垣市で開かれた日本共産党八重山群委員会の新春旗開きで、来賓のあいさつに立ったオール沖縄の次呂久成崇(じろく・まさたか)県議は、「もう新聞を見るのが嫌になっている。連日、南西諸島へのミサイル配備など、軍事強化のニュースばかりだ」と切り出した。そして、「正月に20歳の息子が帰省してきた。息子が友人たちと『自分たちは将来石垣に戻れるだろうか』と語り合っているのを聞いて衝撃を受けた」と、涙をこらえながら語り出した。会場の参加者全体が同じ気持ちのようだった。同じ日、宮古島の新春のつどいでも、「息子に『この島で根を張って暮らしなさい』とは言えない」と一人の母親が訴えていたそうだ。

 故郷が戦場になる不安は、与那国町にも広がっている。町は台湾有事を想定し、住民避難に必要な費用を支給するための基金の設置を検討している。住民保護と言っても、戦争になったら地方自治体に住民を避難させる力はない。町民は危険を感じたら基金を使って避難するところを自分で探して逃げなさいということだ。

 安保3文書には、住民保護のためにも自衛隊の増強を図るとある。「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓を全く無視している。戦闘地域からの住民避難など不可能だ。政府に故郷や家族を捨てて逃げろと言う権利はない。横暴すぎる。アメリカの要求は断れないから、平気で南西諸島が戦場になるシナリオを描いている。憤まんやるかたない感情が県民の間でひろがっている。

 政府・与党は、日本列島全土に敵基地攻撃能力をもったミサイルの配備をと声高に叫んでいる。危機をあおり、国民を不安に陥れ、戦争国家ヘー気に突き進もうとする岸田政権と翼賛勢力にたじろいではならない。

 いよいよ通常国会がはじまる。憲法9条に込められた戦争への反省と平和の心で、全力で頑張る決意だ。(しんぶん赤旗 2023年1月18日)

 

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