エッセイ

水曜随想  訓練移転より基地撤去

 

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、安倍首相にオスプレイの訓練の一部を大阪府の八尾空港で受け入れる構想を伝えた。8日付の琉球新報社説はこの構想について「沖縄の負担軽減というより、『慰安婦』に対する自身の暴言への批判をかわす小手先の案にみえる。沖縄を政治利用するつもりなら、やめてもらいたい」とのべている。沖縄県民の基地負担を逆手にとるやりかたに、切歯扼腕(やくわん)している県民はきっと多いことだろう。

 橋下氏の提案をうけて、安倍首相は「沖縄の負担を本土でも負担するのは当然だ」と応じた。わが意を得たりというところだろう。安倍、橋下両氏の政治的親密さがよくわかる。彼らの言動は眉唾物だと思いつつ、言っていることに反対はしにくいという人も多い。しかし、沖縄では違う。沖縄タイムスの8日付社説は、八尾空港で「(10日くらい)うけいれを実施することが沖縄の負担軽減につながると考えるのは幻想だ」とのべている。広大な基地群は、移設論ではなにも変わらない、というのが県民の肌感覚だ。日本政府は米軍基地に手も足も口も出せない植民地並みの属国関係だからだ。

 われわれが向き合っているのは、イラク戦争やアフガン戦争に従事し、罪もない人々を殺りくしてきた米国軍隊だ。長期にわたる戦争で疲弊した米軍の内部では今、性暴力が深刻化している。性犯罪対策部門の責任者だった中佐が性的暴行容疑で逮捕された。「米軍は内部から崩壊している」(バーバラ・ボクサー上院議員)どまで指摘されている。こんな軍隊を受け入れるところはどこにもない。

 一人悶々(もんもん)としていると、次のようなツイッターをみつけた。「オスプレイを八尾ではなく東京にとか、とにかく沖縄県外にという声がありますが、私は反対です。軍隊に何かを提供するということは、その後の殺りくに加担することです。沖縄を含めた全国で拒否しましょう!移転ではなく撤去を!!」―沖縄の知人からの発信だ。沖縄の基地の過重負担の解消は、遠回りに見えるようだが、安保廃棄の世論を多数にする草の根からの取り組みが確実な道だ。(しんぶん赤旗 2013年6月12日)
  

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