安倍内閣の本性むき出しの政治である。それが、4月8日国会で取り上げた八重山地区教科書採択問題だ。育鵬社の中学校公民教科書の使用を拒否している沖縄県竹富町教育委員会に対して、「違法だ」と圧力をかけている。それも、下村文科大臣の命を受けて義家弘介政務官が直接竹富町に乗り込んだ。町を相手取っての裁判も辞さないということも、まことしやかに流れている。
「離島を六つ抱え、人口も4000人にすぎない竹富町を、国の言いなりにならないからといって、押しつぶそうとすることなど、絶対に許されない」と、同町の西表(いりおもて)島の網取小学校で廃校まで勤務していた友人からメールも届いた。
八重山には、石垣市、竹富町、与那国町の3自治体がある。私は大学卒業直後、教師として八重山高校に赴任し、大小八つの島々の子どもたちを教えた。
その八重山で教科書採択をめぐって異変が起こったのは2011年のことである。竹富町教育委員会は、全会一致で東京書籍の教科書を採択し、石垣市、与那国町両教育委員会は、多数決で育鵬社採択を強行した。
八重山地区は、同一の教科書を採択しなければならないという定めがある。教育委員会の意見が分かれたら、3教育委員会が協議をしなければならない。文科省は協議の場の設定の必要性を認めず、石垣市、与那国町の両教育委員会は、協議の場を拒否している。沖縄県教育委員会は昨年、石垣市、与那国町の行動は不当だという見解を示した。文科省に対しても態度を改めるよう求めている。
質問準備のため、この2年余のたたかいの記録を読み返しながら、八重山住民の間での民主主義の力強い成長に励まされた。それだけに、今度の国会論戦は絶対負けられないという覚悟を決めて臨んだ。結果は、文科大臣はじめ誰一人、竹富町に育鵬社教科書を押し付ける根拠を説明できなかった。文科省こそ違法行為を行っていることを確信した。国家権力の暴走は絶対に許してはならない。(しんぶん赤旗 2013年4月10日)