エッセイ

水曜随想  自衛艦入港拒否の西表島

 

 6月9日、自民党の国防部会から「提言・新防衛計画の大綱について」が発表された。その中で、「南西諸島防衛」として「常備部隊の主要島嶼への配置」がうちだされた。宮古島と八重山諸島に自衛隊を常駐配備しようということだ。同様の報告書は、米国の国防総省のシンクタンクからもだされている。米軍も宮古と八重山に軍隊を配備したがっている。いずれも対「中国の脅威」への対処だ。

 そしたら、「西表島の上原港に130人の自衛隊員が上陸」のニュースがとびこんできた。目的は休養と広報。隊員は西表島でダイビングなどを楽しんで引き上げるそうだ。海上自衛隊のミサイル護衛艦ごとのりこんできた。

 住民は「平和な西表に軍隊はいらない」という横断幕をかかげて抗議活動を展開した。しかも、憲法を守る八重山連絡協議会西表島住民の会の共闘組織まで結成しての行動だ。代表者に昔の同僚の名前を確認したので、さっそく激励の電話をしてみたら、「兄さん、ありがとう。」が第一声だった。言葉のニュアンスは「兄貴ありがとう」ということだ。高教組の活動では私のほうが兄貴分だった。「西表で抗議行動ができるかどうか不安だった。石垣の9条の人たちの支援も受けて、港での抗議行動は成功した。兄さんからもお礼をいってくれ」。

 「こうなったら島でも9条の運動やるよ。兄さん」と、自信にみちてこれからの決意を表明した。そして「われわれは中国の脅威なんか感じていないよ。台湾との交流も盛んだし、中国人とも仲良くしている。」とつけくわえた。対中国封じ込めの戦略どころか、ウエルカムなのだ。

 4月には石垣港に米軍艦船が港湾管理者の市長の入港拒否を無視して入港を強行した。隣の宮古島でも、軍隊の常駐に反対する島ぐるみの闘いが続いている。静かな島に軍隊が力づくでおしよせている姿は異常だ。

 自民党と民主党の国防族の議員は尖閣諸島視察に海上保安庁の飛行機を使っていたが、最近は自衛隊のP3C哨戒機を使い始めた。今にも不穏な軍事衝突でも起こりかねないという空気が彼ら防衛族にはただよっている。

 離島の自然は厳しいが、時間はゆっくり流れる。国境離島に必要なのは軍隊ではなくて、憲法9条である。(しんぶん赤旗九州・沖縄面2009年6月24日)

 

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