エッセイ

水曜随想  安保が飯のタネの人

 

 原発の「安全神話」の崩壊過程で、「原発利益共同体」とよばれる利権集団の存在が明るみにでた。財界、政治家、特権官僚、御用学者、一部のメディアがそれだ。この利権集団が「安全神話」の製造元となり、国民をウソで欺いて原発を推進し、巨額の利益をむさぼってきた。

 原発事故の損害補償も原資は国民負担につけ回しする法律までつくった。「原子力損害賠償支援機構法」だ。「原発利益共同体」の負担も責任も一切問われない。許されないことだ。

 ところで、日米安保を取りしきっている勢力も、「抑止力」神話の製造元になり、莫大(ばくだい)な軍事利権で結びついている。日米の軍需産業、「知米派・親米派」とよばれる高級官僚、ワシントンで「知日派・親日派」とよばれるグループ、御用学者、「防衛族」の政治家、安保体制を動かせないものと信じている東京の中央メディアたちだ。彼らの合言葉は「日米同盟は永遠の基軸」だ。

 鳩山前首相が、退陣直後に、「抑止力は方便だった」と地元紙のインタビューに答えたことがある。東京の中央メディアは、軽薄な発言として、鳩山前首相に激怒した。

 実は、鳩山氏はこのなかで、「自分は『日米安保で飯を食べている人たち』に囲まれていた」と告白している。メディアに登場して、したり顔で国際政治を論じている人々が、「安保を飯のタネにしている人々」とよばれていることを、私は鳩山前首相の発言で初めて知った。

 彼らは「普天間問題での日米合意をそのまま実行しなければ日米同盟は破綻する」と脅し、「抑止力」への異論を絶対に許さない。

 沖縄県民のたたかいが高揚すると、東京の中央メディアは「良好な日米関係破綻の危機迫る」という社説を掲げる。

 原発や米軍基地は、農村や沖縄の資しさを逆手にとって、「札束」の力で押し付けられてきた。福島大学副学長の清水修二氏は「この悪しき構造を変える原動力は、オキナワとフクシマの苦しみを共有しようとする全国の『地域』にもとめるしかないだろう」と書いている。共感する文章だった。(しんぶん赤旗 2011年8月17日)

 

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