エッセイ

水曜随想  大震災が問う政治の道

 

 3月11日の東日本大震災もあり、4月の「水曜随想」を休んでいた。その間は、いっせい地方選挙支援と被災地調査で各地をかけめぐった。地方選挙の結果は、残念である。

 福岡前市議の比江嶋俊和さんは、選挙後の「ニュース」で、「臥薪嘗胆」(がしんしょうたん)という表現を使っていた。議席を失った候補者と党組織の気持ちが痛いほど伝わってきた。国と地方を結ぶ議席の大切さを改めてかみしめている。

 原発で被災して、自治体まるごと避難した福島県浪江町の避難先をたずねた。浪江町臨時役場は二本松市役所東和支所の2階にあった。馬場有町長は「一日も早く一緒に浪江町に帰りましょう」と全国に避難している町民に訴えていた。たまたま、沖縄に避難してきた浪江町の居酒屋の主人の名刺をみせたら、町長や副町長の知人にあたり、無事を喜んでくれた。

 浪江町は原発立地自治体ではない。しかし、故郷は放射能で汚染されたままで、津波の犠牲者の遺体もまだ収容されていない。復興がいつから可能になるか、まだ誰も見通せない。

 ところで、原発を受け入れた自治体は、電源3法にもとづいて「原発交付金」がもらえる。原発立地とひきかえの交付金制度をつかって、過疎の村を狙い撃ちし、つぎつぎと原発をつくりつづけてきた。この交付金をもらったら、モルヒネのように原発から離れることができなくなり、原発と運命を共にすることになる。

 開発が盛んになり豪華な箱モノが目立ち始めるが、財政は悪化し、「早期健全化団体」に指定され、町長は無給という立地自治体もある。今度の原発震災で、住民は故郷を失った。

 その仕組みをそっくりまねて作ったのが「米軍基地再編法」だ。基地受け入れを表明したら交付金がおりはじめ、環境アせスに同意したり、工事開始に応じたりしたら、段階に応じて交付金が増えていく。豪華な箱モノがふえ、財政運営が厳しくなれば、さらに基地を受け入れるという悪循環が始まる。

 これにノーを突きつけたのが沖縄の名護市。ノーと言った瞬間、交付金はすべて打ち切られた。稲嶺進市長は、第1次産業の振興でまちづくりをしようと市民によびかけている。今度の災害は、政治が向かうべき道も鋭く問いかけている。(しんぶん赤旗 2011年5月18日)

 

20110500-%e6%b5%aa%e6%b1%9f

 

このページをシェアする