先送りは「県民への裏切り」
日本共産党の赤嶺政賢議員は26日の衆院予算委員会で、沖縄県などで相次ぐ米軍犯罪に米側の「再発防止策」が何ら効果のない実態を示し、日米地位協定の抜本改定を求めました。
赤嶺氏は、2023年12月に沖縄県で起きた米兵による16歳未満の少女誘拐・性的暴行事件を日本政府が公表せず、その後も立て続けに4件の性暴力事件が起きたと告発。石破茂首相の「米側が発表した再発防止策が実際に事件・事故の再発防止につながることが重要」との国会答弁は「沖縄県民の認識とかけ離れている」と批判しました。
在日米軍が24年10月に午前1~5時の基地外での飲酒禁止を全軍種に広げる「再発防止策」を開始して以降の沖縄県での米軍関係者による事件・事故件数をただすと、坂井学国家公安委員長は、刑法犯18件、交通人身事故2件など計43件だと答弁。赤嶺氏は「地位協定抜本改定と基地の縮小・撤去が必要だ」「米軍の再発防止策では防止できないという認識に立つべきだ」と求めました。
石破首相は昨年11月に自民党の特命委員会を立ち上げ地位協定の見直しに関する検討を指示しましたが検討の期限が設けられていません。赤嶺氏は「なぜ期限を設けないのか」などと追及。「(地位協定と日米安保条約が)一体であるが故に(改定の)議論は難しい」と言い訳した石破首相に赤嶺氏は、首相は昨年9月の沖縄での自民党総裁選演説会で地位協定見直し着手を掲げたのに今頃になって安保条約と一体だから簡単にできないというのは「県民に対する裏切りだ」と断じました。
地位協定17条で、犯罪を起こしても起訴前であれば日本の警察に拘束されないとされるなど不当で差別的な地位協定の米軍特権があるから犯罪が次々起こると指摘し地位協定改定を要求。米軍駐留と米軍犯罪の「因果関係を知らない」と開き直った石破首相に対し「こんなことは許されない」と厳しく批判しました。(しんぶん赤旗 2025年2月27日)
論戦ハイライト
米軍の「再発防止」機能せず
衆院予算委 赤嶺議員が質問
日本共産党の赤嶺政賢議員は26日の衆院予算委員会で、沖縄で相次ぐ米兵による性暴力事件への対策として米軍が始めた再発防止策が機能していない実態を示し、米軍に特権を与えている日米地位協定の改定を求めました。
赤嶺氏は、2023年12月、米軍嘉手納基地(嘉手納町など)所属の米兵が16歳の少女を誘拐し、性的暴行を加える事件が発生し、その後も昨年1、5、6、11月と立て続けに米兵による性暴力事件が発生していると指摘。米軍がすべての軍種に対し、午前1~5時の基地外での飲酒を禁止する再発防止策を開始した昨年10月以降の事件・事故の発生状況をただしました。
坂井学国家公安委員長は、24年10月1日~25年2月12日に刑法犯18件、交通人身事故2件、道路交通法違反20件、特別法違反3件の計43件だと答弁。再発防止策実施後も事件・事故が相次いでいる実態を明らかにしました。
おとがめはなし
赤嶺氏は、昨年11月、酒に酔った米兵が進学塾のドアを壊して侵入した事件の発生時刻は午前2時台で、禁止時間帯の酒気帯び運転も頻繁に摘発されており、外出制限も、禁止時間帯を過ぎた後に基地内に帰ればおとがめなしだと指摘。そもそも23年12月の事件発生時刻は午後6時ごろで、深夜の飲酒制限は再発防止策になるはずがないと強調しました。
赤嶺 米軍の再発防止策では事件・事故の防止はできないという認識に立つことが、この問題の大前提だ。
首相 1件でも(事件・事故が)あるべきではないとの姿勢で臨む。
赤嶺 1件でも起こるべきでないことが何十件、何百件とずっと繰り返し起こっている。言葉だけで1件でも起こってはならないと言っても何の意味もない。責任ある首相の答弁とは到底思えない。
因果関係存じず
石破首相は自民党が昨年11月に立ち上げた特命委員会で日米地位協定の見直しを指示しましたが、期限を設けていません。
赤嶺 いつまでに検討を終えるのか。
首相 これまで3回開催。具体的内容はいえない。地位協定は日米安全保障条約と一体で、全部セットで議論するのに期限が簡単にできるはずがない。
赤嶺 昨年沖縄で開催された総裁選の演説会で首相は地位協定の抜本改定をやると言っていた。安保条約と一体だから簡単にはできないなどと今ごろ言うのは県民に対する裏切りだ。
赤嶺氏は、地位協定17条の不当性について、23年12月の事件で少女の母親が日本の警察に通報したが、警察は犯人を逮捕せず米軍に問い合わせたことをあげ、日本の警察が米軍と一緒にいれば(現場での)犯人の身柄確保の権限が米軍側にあると指摘しました。
赤嶺 この状況を変えてほしいというのは不当なのか。こんな差別的・特権的なものがあるから米軍の犯罪が次々と起こるのではないか。
首相 米軍が駐留することによって犯罪が起こっているという因果関係を私は存じ上げない。
赤嶺氏は、米軍の駐留によって起こる米兵犯罪の横行を否定した首相の言葉に「大変驚いた」と述べ、日米地位協定改定を先延ばしにするなど「許されない」と強調しました。(しんぶん赤旗 2025年2月27日)
主張
米軍犯罪の首相答弁
基地と特権が温床なのは明白
「(沖縄に)米軍が駐留することによって(米兵)犯罪が起こっているという因果関係を私は存じ上げない」。石破茂首相の答弁に驚きと怒りの声が上がっています。
沖縄で相次ぐ米兵犯罪について日本共産党の赤嶺政賢議員が2月26日の衆院予算委員会で、米軍が「再発防止」「綱紀粛正」を何度口にしても一向になくならない事実を追及したことへの答弁です。
■再発防止効果なし
沖縄では、2023年12月に嘉手納基地所属の米兵が少女を誘拐し性的暴行を加える事件が起こりました。政府は半年間も事件を公表せず、県内外で激しい怒りが沸き起こりました。しかも、沖縄での米兵の性暴力事件はその後も、24年に4件立て続けに発生しました。
こうした事態を受け、米軍は24年10月から、再発防止策の一環として、午前1時~5時の基地の外での飲酒を禁止しました。
しかし、赤嶺氏の質問に坂井学国家公安委員長は、24年10月1日~25年2月12日までの米軍関係者の事件・事故が刑法犯18件、交通人身事故2件、道路交通法違反20件、特別法違反3件の計43件に上ることを明らかにしました。
事件・事故が起こるたび米軍が打ち出す再発防止策に何の効果もないことを示しています。しかも、そもそも23年12月の少女誘拐暴行事件が起きたのは午後6時で、「深夜の飲酒制限が同様の事件の再発防止になるはずがありません」(赤嶺氏)。
沖縄に米軍が駐留していなければ、駐留米兵による犯罪が起こらないことは自明です。米軍基地の縮小・撤去こそ米兵犯罪を根絶する一番の道です。
同時に、基地があるもとでも米兵犯罪を減らすには、日米地位協定の抜本的な改定が必要です。
地位協定は、公務外であっても、犯罪を起こした米兵容疑者が基地に逃げ込めば、日本側は起訴するまで身柄を拘束できないと定めています。米兵犯罪の発生を抑えることができないのは、日本側が容疑者を逮捕できず、取り調べも難しい差別的・特権的な仕組みが要因の一つです。
■地位協定改定急げ
沖縄県が、日本側が容疑者の身柄引き渡しを要請すれば米側は速やかに応じるよう規定の見直しを求めているのは当然です。
石破氏は24年9月、自民党総裁選の演説会(那覇市)で「地位協定の改定に着手すべき」だと述べました。しかし、首相就任後は口を閉ざしています。24年11月に地位協定の改定などを検討する自民党の特命委員会を発足させ、これまで3回の会合が開かれていますが、結論を出す期限は設けられていません。
赤嶺氏の追及に石破氏は「地位協定は(日米)安全保障条約と一体のものなので…セットで議論するのに、期限(を切ること)が簡単にできるはずはない」と開き直りました。1960年締結の日米地位協定はこれまで一度も改定されていません。しかし、米国の同盟国であるドイツや韓国では改定が行われています。日米地位協定改定の先延ばしは許されません。(2025年3月6日 しんぶん赤旗)