国会質問

質問日:2024年 4月 9日  第213国会  安全保障委員会

戦闘機輸出 紛争助長 戦闘地域判断の矛盾突く

衆院委で赤嶺氏

 日本共産党の赤嶺政賢議員は9日の衆院安全保障委員会で、政府が「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、殺傷能力のある兵器の輸出を可能にした問題をめぐり、「現に戦闘が行われていると判断される国」には輸出しないとする政府の説明の矛盾を追及しました。

 同指針の改定を受け、政府は米国への地対空誘導弾パトリオットの輸出を決定しています。赤嶺氏は米国が2001年の9・11テロ以降、世界各地で空爆を繰り返しており、「なぜ現に戦闘が行われていないと言えるのか。根拠を示すべきだ」と追及しました。

 木原稔防衛相は「仕向け国(輸出相手国)において戦闘が行われているか否かに関わる規定だ」と述べ、米国の領域内で戦闘が行われていないことが判断基準だとの見解を示しました。赤嶺氏は「米国が領域外で国連憲章違反の空爆をしても、戦闘はしていないというのは、あまりにもひどい認識だ」と批判しました。

 赤嶺氏は、英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出について質問。岸田文雄首相が戦闘機を「迎撃用兵器だ」と強調していることについて次期戦闘機の開発を担う三菱重工は「マルチロール(多任務)機」だと説明していると指摘しました。防衛省の弓削州司・大臣官房審議官は、マルチロール機とは対空・対艦・対地を備えた戦闘機であり、次期戦闘機もマルチロール機として開発すると答弁しました。

 赤嶺氏は、防衛省は保有する全ての戦闘機に敵基地攻撃に使用する長射程ミサイルを搭載する計画だと指摘。「そうなれば輸出先の国で他国攻撃に使用される危険はいっそう高まり、国際紛争を助長することになる」と批判し、戦闘機輸出はやめるべきだと強調しました。(しんぶん赤旗 2024年4月10日)

 

 

次期戦闘機は迎撃用?

輸出先で他国攻撃可能 赤嶺氏が追及

 日英伊3カ国が共同開発・生産する次期戦闘機―。その危険な能力と政府の説明のごまかしが、日本共産党の赤嶺政賢議員の質問(9日の衆院安全保障委員会)で明らかになりました。日本政府は同機を“迎撃用の兵器”と強調していますが、相手の戦闘機だけでなく、地上や艦艇を攻撃する能力を備えた戦闘機を想定していることがわかりました。

 これまで岸田文雄首相は、戦闘機の主任務を「侵攻してくる航空機やミサイルを迎撃し、領空侵犯を防ぐこと」(2月5日、衆院予算委員会)と強調。そのため「遠方で阻止できる優れた空対空能力」が重要として、レーダーに映りにくくするステルス性能や、長い航続距離などを重視するとしてきました。

マルチロール機

 しかし、赤嶺氏は、次期戦闘機の開発を担う三菱重工の資料で地上、艦艇、戦闘機を攻撃する能力を持つ「マルチロール(多用途)機」だと説明していると追及。防衛省の弓削州司・大臣官房審議官は「次期戦闘機もマルチロール機となる見込み」と明確に認めました。

 次期戦闘機はF2戦闘機の後継で、F2では現在開発中の敵基地攻撃兵器である12式地対艦誘導弾能力向上型(射程1000キロ超)を搭載する計画です。次期戦闘機にも搭載される可能性を赤嶺氏がただすと、防衛省の青柳肇整備計画局長は「今後決めていきたい」と述べ、否定しませんでした。

 英国やイタリアは巨額の開発費を回収するため、次期戦闘機の第三国への輸出を重視し、日本政府にも輸出解禁を迫ってきました。こうした圧力を受け、日本政府は3月、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、次期戦闘機の輸出を解禁しました。

国際紛争を助長

 赤嶺氏は、英国では、迎撃が困難とされる極超音速ミサイルを次期戦闘機に搭載する構想があると指摘。「長射程の対地攻撃用ミサイルを搭載できることになれば、輸出先の国で他国攻撃に使用される危険も一層高まる。まさに国際紛争を助長することになる」と厳しく批判しました。(2024年4月14日 しんぶん赤旗)

質問の映像へのリンク

戦闘機輸出 紛争助長(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、法案に関連して、武器輸出の問題について質問をします。
 政府は、昨年十二月、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、殺傷能力のあるライセンス生産兵器をライセンス元国などに輸出することを可能にしました。その第一弾として、アメリカにペトリオットミサイルを輸出することを決定しました。
 運用指針では、輸出先の国が第三国に再輸出する場合、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国は除外されるとしています。
 この点について、二月二十一日の予算委員会で、我が党の本村伸子議員が、アメリカ自身が武力紛争の一環として現に戦闘が、戦われている国ではないかと質問をしました。林官房長官は、米国において武力紛争の一環として現に戦闘が行われていないと判断した、このように答弁をしております。
 防衛大臣も同じ認識でしょうか。具体的にどのような根拠に基づいて、アメリカは現に戦闘が行われている国ではないと判断したんですか。

○木原国務大臣 御指摘のペトリオットミサイルの我が国から米国への移転につきましては、昨年十二月の二十二日に装備移転三原則及び運用指針に従って国家安全保障会議で審議を行い、この審議において、米国において武力紛争の一環として現に戦闘が行われていないと判断したものであります。
 この点、武力紛争の一環として戦闘が行われていると判断される国に該当するかしないかというものは、仕向け国・地域における戦闘の規模や期間等を踏まえて、これは個別具体的に、かつ総合的に判断するものであります。当該規定は、仕向け国、すなわち本件の場合は、米国において武力紛争の一環として現に戦闘が行われているか否かに係る規定であり、政府としては、米国において武力紛争の一環として現に戦闘が行われているとは認識をしておりません。

○赤嶺委員 今、その根拠を伺ったんですが、アメリカは、二〇〇一年の九・一一テロ以降、アフガニスタンやイラク、シリア、ソマリアなど、世界各地で空爆を繰り返してきました。昨年十月以降も、イエメンやイラク、シリアで武装勢力の拠点への攻撃を繰り返しています。常に世界のどこかで戦闘を行っていると言ってもいい国であります。
 にもかかわらず、なぜ、アメリカが現に戦闘が行われている国ではない、このように考えるのか、具体的な根拠を示すべきだと思います。いかがですか。

○木原国務大臣 ペトリオットミサイルの移転につきましては、国際的な平和と安全への影響、米国と我が国の安全保障上の関係等、また、その最終需要者である米軍による防衛装備の使用状況及び適正管理の確実性等を考慮した上で、海外移転を認め得る案件に該当する、そのように判断をしたものであります。
 いずれにしても、ペトリオットミサイルの移転というものは日本の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものであることを米国との間で確認するとともに、日米相互防衛援助協定、MDA協定に基づき、国連憲章と矛盾する形で使用されることはない、そのように考えているところです。

○赤嶺委員 国連憲章違反の侵略的な戦争を随分アメリカは行ってきたわけですね。
 事前に外務省から聞いた説明では、アメリカは自国の領域外で戦闘を行い、領域内では戦闘は行われていない、だから、現に戦闘が行われている国には該当しないという説明を受けました。防衛大臣も同じ考えですか。
 これまでアメリカが行ってきた軍事行動は、基本的にアメリカの領域の外で行われております。二〇〇三年のイラクへの侵略戦争も、アメリカなどの多国籍軍がイラク国内で一方的に攻撃を行っています。
 こうした場合でも、ライセンス生産兵器を輸出できるということですか。

○木原国務大臣 当該規定は、仕向け国、米国において武力紛争の一環として現に戦闘が行われているか否かに係る規定でございます。
 ですので、防衛省としても、外務省としても政府全体としても考えは共通でありますが、米国において武力戦争の一環として現に戦闘が行われている、そういう認識ではございません。

○赤嶺委員 つまり、戦闘は領域外で行われており、領域内では行われていないから、現に戦闘が行われている国ではないという認識なんですね。

○木原国務大臣 申し上げたとおり、米国において現に戦闘が行われているか否かに係る規定でありまして、米国において武力戦争、紛争の一環として戦闘が行われているという認識ではないということでございます。

○赤嶺委員 アメリカが領域外で国連憲章違反の空爆を行っても、アメリカ国内で戦闘が行われていないという認識、これは余りにもひどい認識じゃないかなと思います。
 政府は、次期戦闘機の第三国への輸出についても、武力紛争の一環として現に戦闘が行われている国への輸出は除外する、このようにしております。今回の次期戦闘機の輸出も、ライセンス生産兵器と同じ考えで判断するのですか。

○木原国務大臣 今般の次期戦闘機の第三国移転、第三国への直接移転に関する文言も含めて、運用指針における武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国については、仕向け国・地域における戦闘の規模や期間等を踏まえて、個別具体的かつ総合的に判断するものであることに変わりはございません。

○赤嶺委員 大臣は、四日の本会議で、イスラエルは現に戦闘が行われている国に該当するかと問われて、現在のイスラエル、パレスチナの情勢に鑑みれば、イスラエルは該当する、このように答えられました。
 これは、どういう根拠で該当すると判断したのですか。アメリカと何が違うんですか。

○木原国務大臣 武力紛争の一環として戦闘が行われると判断される国に該当するかしないかというものは、繰り返しになりますが、仕向け国・地域における戦闘の規模や期間等を踏まえて、個別具体的かつ総合的に判断するものであります。
 その上で申し上げれば、先般、本会議で、現在のイスラエル、パレスチナの情勢に鑑みれば、現在のイスラエルは、運用指針上の武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国に基本的に該当するというふうに考えていると答弁をさせていただいたところであります。
 他方で、ペトリオットミサイルの移転について、政府としては、仕向け国、すなわち米国においては武力紛争の一環として現に戦闘が行われているとは認識していないというふうに申し上げております。

○赤嶺委員 軍事力を用いて他国を攻撃し、人を殺傷しているという点では、アメリカもイスラエルも変わりはありません。イスラエルが該当するというのであれば、アメリカも、それから今後戦闘機を輸出する国も、現に戦闘を行っているなら同じように該当すると思いますよ。
 現に戦闘が行われている国というのは、一体どういう場合に該当するのか。アメリカとイスラエルの評価をめぐってももう答弁が矛盾だらけでありますが、その基準、これは何なのか、明確にすべきだと思います。いかがですか。

○坂本政府参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど来大臣から御答弁申し上げているとおりでございますけれども、運用指針における武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国につきましては、仕向け国・地域における戦闘の規模、期間等を踏まえて、個別具体的に判断するものでございます、総合的に判断をするものでございますので、一概に申し上げることは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

○赤嶺委員 納得いかないですね。イスラエルは現に戦闘が行われている国で、同じようなアメリカは行われていない国、非常に曖昧なものになっております。
 現に戦闘が行われている国とは、どういう場合なのか。領域内で戦闘が行われていなければ、現に行われていない国なのか。じゃ、イスラエルはどうなんだというような話になっていきます。その判断基準、これが何か、政府の見解をきちんと示すように求めたいと思います。
 委員長、取り計らいをよろしくお願いします。

○小泉委員長 理事会で協議します。

○赤嶺委員 次に、岸田首相は、二月五日の予算委員会で、戦闘機を輸出することは平和国家の基本理念に反するのではないかと懸念する国民もいると問われたのに対し、戦闘機の主任務は、侵攻してくる航空機やミサイルを迎撃し、領空侵犯を防ぐことだと述べ、殊更、迎撃用の兵器だと強調しておりました。
 しかし、次期戦闘機の開発を担っている三菱重工、この三菱重工は、次期戦闘機に関する説明資料がアップされておりますが、この中で、様々な任務をこなすことができるマルチロール機だと説明をしております。
 次期戦闘機はマルチロール機として開発されるという理解でよろしいでしょうか。

○弓削政府参考人 お答えを申し上げます。
 マルチロール機とは、空対空能力のみならず、空対地、空対艦の能力も兼ね備えた戦闘機でありまして、次期戦闘機もマルチロール機となる見込みです。次期戦闘機はF2の後継になるわけでございますが、今のF2につきましてもマルチロール機でございます。
 その上で、戦闘機同士の戦いは新世代機が圧倒的に優位であり、周辺国が新世代機の開発や配備を進めていることに鑑みれば、次期戦闘機は、それらの戦闘機を超える最新鋭の次期戦闘機として、極めて優れた空対空能力を持つマルチロール機であることが必要でございます。

○赤嶺委員 マルチロール機について説明を伺いましたが、次期戦闘機は、今の説明でも、空対空だけではなく対地攻撃能力を持つということであります。
 政府は戦闘機は防衛用の兵器だと強調しておりますが、輸出した先の国がその戦闘機をどのように使うかは、その国が決めることであります。総理の言うように、侵攻してくる航空機やミサイルを迎撃するために使うのか、それとも相手国への対地攻撃に使うのかは、その国の判断次第だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○木原国務大臣 英国、イタリアと共同開発をいたします次期戦闘機について、我が国から第三国への完成機の移転の可否を判断する際には、防衛装備移転三原則に基づき、移転先の国が国際的な平和と安全にどのような影響を与えているかなどを踏まえて、移転の可否を厳格に審査した上で、閣議の決定を得るということになります。
 その際に、他国への侵略など国際憲章に反するような行為に使用されることがないように、国連憲章の目的と原則に適合した使用を移転先国政府に義務づける防衛装備品・技術移転協定の締結国に限定しており、現在十五か国でありますが、その移転先において次期戦闘機が国連憲章に反する行為に使用されるということは想定はしておりません。
 また、英国、イタリアからの第三国移転もあるかと思います。それに当たっては、我が国の防衛装備移転三原則及び同運用指針及び我が国と英国、イタリアそれぞれとの防衛装備移転に関する協定に従って、我が国の事前同意というものが必要になりますので、運用指針上、第三国移転に係る事前同意に当たっては、第三国移転先が国際的な平和及び安全に与えている影響等を考慮して、これもまた厳格に審査することとなっております。こういった点から、引き続き厳格かつ慎重に判断する必要があると考えております。

○赤嶺委員 国連憲章に適合した使用を義務づける、日本側はそう主張していて、しかし、それが担保になるかということですよ。国連憲章に違反すると自ら言って攻撃を行う国はありません。何の保証にもなりません。
 次期戦闘機は、F2戦闘機の後継機として開発するものであります。防衛省は今、F2戦闘機は長射程化した一二式地対艦誘導弾を搭載できるよう改修を進めています。次期戦闘機がどのようなものになるかは今後の交渉で決まるという説明が先ほどからずっとありますが、防衛省としては、F2と同様に長射程ミサイルを搭載できるようにしたいと考えているのか、それともその必要はないと考えているのか、どちらですか。

○青柳政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、F2には一二式の地対艦誘導弾能力向上型の空発型を搭載する予定である一方、次期戦闘機に搭載する具体的な装備につきましては、今後、次期戦闘機の配備が始まる二〇三五年以降の我が国の防衛力全体、これを見据えながら決定してまいりたいと考えてございます。

○赤嶺委員 防衛省は、今保有する全ての戦闘機に長射程ミサイルを搭載しようとしています。イギリスも、次期戦闘機に最新鋭の極超音速ミサイルを搭載する構想が伝えられております。
 次期戦闘機が、いわゆる敵基地攻撃能力、長射程の対地攻撃用ミサイルを搭載できることになれば、輸出先の国で他国攻撃に使用される危険性も一層高まります。まさに国際紛争を助長することになるのではないか、こういう我々が危惧している点をどのように考えますか。

○木原国務大臣 次期戦闘機に搭載する具体的な装備につきましては、現在検討中でございます。いわゆるスタンドオフミサイルを搭載するか否かというものも含めて、今後決定していくということになります。
 いずれにしても、移転の可否を判断する際には、防衛装備移転三原則に基づき、移転先の国が国際的な平和と安全にどのような影響を与えているかなども踏まえて厳格に審査し、閣議の決定を経ることになります。その際、他国への侵略など国際憲章に反するような行為に使用されることがないように、国連憲章の目的と原則に適合した使用を移転先国政府に義務づける国際約束の締結国というものに限定をしており、移転先国において次期戦闘機が国連憲章に反する行為に使用されることは想定しておりません。
 英伊からの第三国移転に当たっても、我が国の防衛装備移転三原則及び同運用指針及び我が国と英伊それぞれの防衛装備移転に関する協定に従っておりますので、我が国の事前同意が必要となりますから、運用指針上、第三国移転に係る事前同意に当たっては、第三国移転先が国際的な平和及び安全に与えている影響等を考慮して厳格に審査するということになっておりまして、国際紛争を増長するという御指摘には当たらないというふうに思っております。

○赤嶺委員 余りにも建前だけの答弁で、真実味が感じられません。
 国際紛争、いろいろな場合がこれまでも起こってきました。一九九〇年にイラクがクウェートを侵略しました。それが可能になったのは、一九八〇年代に欧米諸国が行ったイラクへの軍事支援があったからであります。
 国際紛争を助長する戦闘機の輸出はやめるべきだということを申し上げて、今日のところは、時間が来ましたので、質問を終了いたします。

すべて表示

このページをシェアする