国会質問

質問日:2023年 6月 15日  第211国会  憲法審査会

権力乱用の危険 「議員任期の延長」 赤嶺氏が批判

衆院憲法審

 

 衆院憲法審査会は15日、緊急事態における「議員任期の延長」に関して各党が意見を述べました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、議員任期の延長は「権力の乱用と恣意(しい)的な延命につながる」と指摘。日中戦争下の1941年に衆院議員の任期を1年延長し、その間に東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切ったことに言及し、任期延長のための改憲は「歴史の教訓を真っ向から踏みにじるものだ」と強調しました。

 赤嶺氏は、自民党改憲案の緊急事態条項が、議員任期延長と内閣による緊急政令・緊急財政処分をセットで盛り込んでいると指摘。「国会機能維持のために議員任期の延長が必要」と言いながら、国会の権能を奪い、政府に権力を集中させる緊急政令等の主張は「全くの自己矛盾だ」と厳しく批判しました。

 同日の審査会では、自民、公明、維新、国民などの要請を受け、法制局・審査会事務局が「緊急事態に関する論点」を報告。これに対して赤嶺氏は、今国会の審査会では「安保3文書」に基づく敵基地攻撃能力保有の違憲性、沖縄の米軍基地と日米地位協定など多岐にわたるテーマが議論されたにもかかわらず、「多数の会派だけで自分たちに都合のいい論点を抜き出し、改憲案のすり合わせにつなげようとすることは断じて許されない」と批判しました。(しんぶん赤旗 2023年6月17日)

 

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権力乱用の危険(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 初めに、今日の運営についてであります。
 冒頭、法制局が、自民、公明、維新、国民、有志五会派の要請に基づき、緊急事態、特に参議院の緊急集会、議員任期延長について論点整理資料に基づく報告を行いました。
 これは、六月十三日の幹事懇談会で、論点整理資料を作成する基準として、一定の討議の積み重ねがあること、複数の会派から会長に論点整理の要請があることの二つを要件とすることを合意したことに基づくものであります。論点整理資料の作成を複数会派による要請があった場合にのみ認めるというのは、およそ公正公平な運営とは言えません。少数意見を切り捨て、憲法審査会の運営に数の論理を持ち込むものであり、断じて容認できません。
 今国会の審査会で議論されたのは、緊急事態条項だけではありません。安保三文書に基づく敵基地攻撃能力保有の違憲性、軍事費増額と財政民主主義の関係、沖縄の米軍基地と日米地位協定、放送による表現の自由の侵害、臨時会の召集要求に対する召集期限の法定など、多岐にわたるテーマが議論されてきました。にもかかわらず、多数の会派だけで、自分たちに都合のいい論点を抜き出し、改憲案のすり合わせにつなげようとすることは、断じて認められるものではありません。
 いわゆる緊急事態を口実にした議員任期の延長については、今国会の議論を通じて、権力の濫用と恣意的な延命につながる危険が鮮明になりました。
 長谷部参考人は、議員任期を延長すれば、総選挙を経た正規のものとは異なる、ある種の国会が存在することになり、国会に付与された全ての権能を行使できることから、緊急時の名をかりて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が次々と制定されるリスクがあると指摘しました。その上で、任期の延長された衆議院と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続ける、緊急事態の恒久化を招くことになりかねないと警告しました。この指摘は、我が国の歴史の教訓そのものであります。
 日中戦争下の一九四一年、当時の政府は、衆議院議員の任期を立法措置によって一年間延長しました。緊迫した内外情勢下に短期間でも国民を選挙に没頭させることは、挙国一致体制の整備を邁進しようとする決意に疑いを起こさせないとも限らないというのがその理由でありました。当時の政府は、日中戦争の重圧に苦しむ国民の不満が爆発するのを恐れ、選挙を延ばし、その間に東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切り、無謀な戦争の道を突き進んだのであります。
 戦後の日本は、この反省から、権力者の都合で議員任期を延長できないように、法律ではなく憲法に任期を規定しました。その憲法の規定自体を変えてしまおうというのは、歴史の教訓を真っ向から踏みにじるものにほかなりません。
 憲法制定議会において、金森担当大臣は、国会議員の任期を自ら延ばすことは甚だ不適当であり、そのために憲法に四年の任期を明記したこと、そのときには必ず選挙に訴えて、国会が国民と表裏一体化しているかどうか現実に表さなければならないことを強調しています。この指摘を重く受け止めるべきです。
 議員任期延長の口実として、国会機能や二院制の維持が強調されていますが、国会機能の維持の大前提は、国会が国民に正当に選挙された議員で構成されていることです。人為的に任期を延長し、国民から信任を受けていない議員が長期にわたって居座り続けることは許されません。
 日本国憲法は、前文で、主権が国民に存することを宣言し、国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると述べています。国民主権は日本国憲法の基本原理であり、国民の選挙権は最大限に保障されなければならないものです。
 二〇〇五年の最高裁判決は、国民の選挙権について、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹を成すものと述べ、これを制限することは原則として許されないと強調しています。
 議員任期の延長は、国民の選挙権行使の機会を奪い、議会制民主主義を根底から揺るがすものです。国民主権を軽んじるものと厳しく指摘しなければなりません。
 そもそも、自民党の改憲案は、緊急事態条項として、議員任期の延長と、内閣による緊急政令、緊急財政処分の制定をセットで盛り込んでおります。いついかなるときにも国会の機能を維持するために議員任期の延長が必要と言いながら、国会の機能を奪い、政府に権力を集中させる緊急政令、緊急財政処分を主張するのは全くの自己矛盾と言わなければなりません。国会機能の維持のための任期延長という主張がいかに形だけのものであるかを示すものです。
 参議院の緊急集会の制度は、緊急の事態に際しても内閣の独断を許さず、参議院が暫定的に立法や行政監視の機能を果たせるようにしたものです。明治憲法下で当時の政府が緊急勅令、緊急財政処分の制度を濫用し、国民弾圧の手段に使ったことへの反省を踏まえたものです。
 衆議院が不存在の場合は、臨時の暫定的措置として参議院の緊急集会で対応し、その後に、国民から選ばれた衆議院がその当否を判断する現在の仕組みを維持すべきであります。長期にわたって総選挙を実施できないおそれがあるというのであれば、そのような事態を招かないための選挙制度の改善を議論すればよいのであって、憲法を変えて延長を可能にするなどというのは、まさに本末転倒の議論と言わなければなりません。
 日本国憲法は、かつての侵略戦争によって、アジア二千万人、日本国民三百十万人という多大な犠牲を出したことへの痛苦の反省に立ち、政府の行為によって再び戦争の惨禍を繰り返さないという決意の下に作られたものです。悲惨な地上戦を体験した沖縄県民の命どぅ宝、命こそ宝の思いと重なるものです。
 今政治がやるべきことは、いかに戦争に備えるかの議論ではありません。二度とあのような惨禍を繰り返さないために、いかにして東アジアの緊張を緩和し、平和的な環境をつくっていくかの議論です。
 戦争の準備ではなく、平和の準備のための国民の声に応える政治を実現するために全力を尽くすことを表明して、発言を終わります。

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