国会質問

質問日:2023年 5月 11日  第211国会  憲法審査会

憲法の根本原理を無視 赤嶺氏 緊急事態条項を批判

衆院憲法審

 

 衆院憲法審査会は11日、憲法54条の参院緊急集会について議論しました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、同条は「国民の自由と権利を奪い、侵略戦争への道を突き進んだ歴史への反省を踏まえたものだ」と指摘しました。

 明治憲法下では、政府が緊急勅令や緊急財政処分の制度を国民弾圧の手段に使いました。赤嶺氏は、政府が敗戦後、新憲法に同様の制度を復活させようとしたものの、連合軍総司令部(GHQ)との交渉過程で退けられ、代わりに取り入れられたのが参院緊急集会の制度だと指摘しました。

 赤嶺氏は、自民党などが創設を主張する緊急事態条項は「戦争などに際して、内閣による緊急政令や緊急財政処分を可能にし、政府に権力を集中させるものだ」と指摘。「憲法の制定経緯と根本原理を無視し、国会の権能を奪い、国民の権利を制限する憲法停止条項に他ならない」と批判しました。

 赤嶺氏は、ロシアのウクライナ侵略などを例に国会議員の任期延長を可能にすべきだとする主張について、「有事の認定という重大な決定に際してこそ国民の判断を仰ぐべきだ」「国民の参政権を奪う任期延長は議会制民主主義の否定だ。衆議院の不存在の場合は、国民から選ばれた参議院の緊急集会で対応すべきだ」と強調しました。

 審査会は次回、憲法学者の参考人から、緊急集会について意見を聴取することを決めました。(しんぶん赤旗 2023年5月12日)

 

質問の映像へのリンク

憲法の根本原理を無視(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 参議院の緊急集会について意見を述べます。
 憲法五十四条二項は、衆議院が解散され、国に緊急の必要があるとき、内閣が参議院の緊急集会を求めることができるとし、同条三項は、緊急集会において取られた措置は臨時のもので、衆議院の同意がない場合にはその効力を失うと規定しています。この規定は、国民の自由と権利を奪い、侵略戦争への道を突き進んだ歴史への反省を踏まえたものです。
 明治憲法は、帝国議会の閉会中に行政府による緊急勅令や緊急財政処分を可能としていました。政府は、この制度を濫用し、国民弾圧の手段に使いました。議会で廃案になった治安維持法の重罰化法案を議会閉会後に緊急勅令で制定したのは、その象徴的な事例です。
 敗戦後、政府は、新憲法制定に当たり、衆議院の解散などで国会を召集できず、緊急の必要があるとき、法律や予算に代わる閣令を制定できる旨の規定を盛り込もうとしました。しかし、旧憲法下と同様の制度を復活させる規定は総司令部との交渉過程で退けられ、代わりに憲法に取り入れられたのが参議院の緊急集会の制度です。
 当時の金森大臣は、憲法制定議会でのこの趣旨について、民主政治を徹底させて国民の権利を十分に擁護するためには、政府の一存で行う処置は極力防止しなければならない、どんなに精緻な憲法を定めても、非常という言葉を口実に破壊されるおそれがないとは断言できないため、行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えた、特殊の必要が起これば臨時会を召集して処置し、衆議院の解散後で処置できないときは参議院の緊急集会で暫定の処置をすると明確に述べています。
 ところが、今議論されているのは、戦争やテロ、内乱などに際して、内閣による緊急政令や緊急財政処分を可能にし、政府に権力を集中させるというものです。憲法の制定経緯と根本原理を無視し、国会の権能を奪い、国民の権利を制限する憲法停止条項にほかなりません。
 大規模災害や感染症の蔓延なども理由に挙げられていますが、東日本大震災やコロナ感染症の拡大においても、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという問題は起きていません。この審査会に参考人として出席した憲法学者や災害の専門家が、極端な事例を出して議論すれば間違う危険性が高いと繰り返し指摘したことを思い起こすべきです。
 ロシアのウクライナ侵略などを挙げて、いついかなるときも国会の機能を維持することが必要として国会議員の任期延長を可能にすべきだという主張も行われていますが、有事の認定という重大な決定に際してこそ国民の判断を仰ぐべきです。アメリカにつき従って他国の紛争に軍事介入する決定を行った政府と国会議員に対し、選挙を通じて退場させる機会を奪うことは許されません。
 国民の参政権を奪う任期延長は、議会制民主主義の否定であり、行うべきではありません。衆議院が不存在の場合は、憲法の規定に沿って、国民から選ばれた参議院の緊急集会で対応すべきです。
 今、安保三文書の下で、国民の命と暮らしが脅かされています。
 戦後の日本は、日米安保体制の下で、外交、軍事、経済のあらゆる面でアメリカへの国家的な従属を深めてきました。米軍の補完部隊として創設され、育成、増強されてきた自衛隊は、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる周辺有事に際して、米軍への兵たん支援のみならず、相手国領土を直接攻撃する任務まで担わされようとしています。
 非正規雇用の拡大、消費税の連続増税、そこに物価高騰が追い打ちをかけ、国民の生活実態は深刻です。にもかかわらず、アメリカの軍拡要求に応え、軍事費をGDP二%に激増させ、現在と将来の国民に新たな負担を押しつけようとしています。歯止めなき軍備増強で侵略戦争を遂行し、国の財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験を思い起こすべきです。
 日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、制定されたものです。
 今政府がやるべきことは、地域の緊張を高め、戦争の危険を引き寄せる軍事力の強化ではありません。この地域で絶対に戦争を起こさせないために、全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させる徹底した外交努力です。憲法が生きる政治の実現が今こそ必要だということを強調し、発言を終わります。

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