衆院憲法審査会は20日、自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、憲法9条は「絶対に戦争を起こさないこと、国家間の争いごとは徹底した外交努力で解決することを求めている」と強調。9条の精神は凄惨(せいさん)な沖縄戦を経験した沖縄県民の「命どぅ宝」(命こそ宝)の思いと重なると述べました。
赤嶺氏は、沖縄戦で日本軍は住民を根こそぎ戦争に動員し、乳飲み子をおぶった母親にまで米軍陣地に切り込むよう強要したと発言。「この世のありったけの地獄を集めたのが沖縄戦だ」と述べ、この痛苦の教訓から、憲法9条は戦争につながる一切のものを排除するよう求めていると強調しました。
赤嶺氏は、沖縄県では岸田政権の軍拡に反対し、「対話で戦争を回避する努力がはじまっている」と指摘。県議会は政府に「外交努力と対話による平和の構築」を求める意見書を可決し、玉城デニー知事も平和構築に貢献する地域外交を展開すると表明したことを紹介しました。
自民党の務台俊介議員は、「共産党は憲法に反対した」と攻撃。赤嶺氏は、当時の吉田茂首相が国家の自衛権を否定したのに対し、主権を明確にすべきだと主張し反対したものだと述べ、「当時と百八十度変わったのは自民党の方だ」と批判しました。(しんぶん赤旗 2023年4月21日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
今日は、憲法九条の意義について意見を述べます。
憲法九条は、絶対に戦争を起こさないこと、国家間の争い事は徹底した外交努力によって解決することを求めています。この九条の精神は、悲惨な沖縄戦を体験した私たち沖縄県民の命どぅ宝という強い思いと重なるものです。
さきの大戦で沖縄は、本土決戦を遅らせるための捨て石とされ、住民を巻き込んだ地上戦の場となりました。日本軍は、軍、官、民、共生共死の一体化という方針の下、住民を根こそぎ動員していきました。鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊など、中学生の年齢の少年少女たちまで動員し、男子学徒は戦闘の最前線へ、女子学徒は負傷兵の看護を担わせました。さらに、日本軍は、砲弾が飛び交う中で、軍の弾薬や食料を運搬させたのです。
沖縄戦の縮図と言われている伊江島では、乳飲み子をおぶった母親にまで米軍陣地に切り込むことを強制いたしました。石垣島では、マラリア生息地への移動を命じ、宮古島でも、餓死や病死で犠牲になる住民や兵士が相次ぎました。住民を守るどころか、沖縄の方言をしゃべっただけでスパイとみなし、虐殺していったのです。
国体護持を至上命題としていた第三二軍は、首里城の地下に構築した司令部が陥落するのを目前にして、多くの住民が避難していた本島南部へ撤退しながら、持久戦を継続することを決めました。狭い地域に住民と兵士が混在する極限状態の下で、住民は、米軍の攻撃だけでなく、日本軍からも砲弾の雨の中をごうから追い出され、口封じのために赤ちゃんに手をかけることを強要されました。負傷兵には青酸カリが配られ、自決を強要されました。まさに、この世のありったけの地獄を集めたのが沖縄戦でした。決して情緒論で片づけられるものではありません。戦場では軍事合理性が優先をされます。
沖縄県糸満市の摩文仁の丘にある平和祈念資料館の展示室に、次のような「むすびのことば」が掲げられています。
沖縄戦の実相にふれるたびに
戦争というものは
これほど残忍でこれほど汚辱にまみれたものはない
と思うのです
このなまなましい体験の前では
いかなる人でも
戦争を肯定し美化することはできないはずです
戦争をおこすのはたしかに人間です
しかしそれ以上に
戦争を許さない努力のできるのも
私たち人間ではないでしょうか
戦後このかた私たちは
あらゆる戦争を憎み
平和な島を建設せねばと思いつづけてきました
これが
あまりにも大きすぎた代償を払って得た
ゆずることのできない
私たちの信条なのです
これは、沖縄だけでなく、戦前の日本があらゆる者を軍事に動員して、侵略戦争に突き進み、アジア太平洋地域で約二千万人、日本国民約三百十万人もの犠牲者を出したことへの痛苦の教訓であります。
だからこそ、日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意し、九条で戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定め、戦争につながる一切のものを排除することを求めているのです。
今、沖縄県では、岸田政権が南西諸島を軍事要塞化し、再び戦場にしようとする動きに反対し、対話によって戦争を回避する努力が始まっています。様々な市民団体が、中国や台湾の有識者を招いた集会やシンポジウムの取組を進めています。石垣島や与那国島では、自衛隊の誘致に賛成した住民からもミサイルの配備に反対する声が上がっています。
石垣市議会は、意見書で、「「平和発信の島」、「平和を希求する島」との決意のもと議会活動しており、自ら戦争状態を引き起こすような反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない。」と批判しています。
沖縄県議会は、政府に外交と対話による平和の構築に積極的な役割を果たすことを求める意見書を可決しました。玉城デニー知事も、議会の所信表明で、ロシアのウクライナ侵略や米中対立の顕在化を挙げながら、このような状況だからこそ外交の知恵が求められており、アジア太平洋地域における、関係国等による平和的な外交、対話による緊張緩和と信頼醸成、そしてそれを支える県民、国民の理解と行動がこれまで以上に必要になると強調し、地域の平和構築に貢献する地域外交を展開すると表明しています。
憲法九条を持つ日本政府こそ、東アジアに平和と対話の枠組みを発展させることに全力を尽くすべきです。そのことを改めて申し上げ、発言にいたします。
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○務台委員 発言の機会をありがとうございます。
このところの憲法審査会の与野党のやり取りを聞いていて、他の委員会と異なる憲法審査会の特徴がにじみ出ている、玉木先生が先ほどおっしゃったとおりの状況を感じます。政府を交えずに国会議員同士がお互いの所見を述べ合い議論するという特徴は、国権の最高機関たる国会にふさわしい議論の場のように思われます。
先週の北神委員による防衛力に関する必要最小限の概念が生まれた経緯の説明は、非常に興味をそそられました。
大島委員からは、党議拘束をかけるべきでないという議論も伺いまして、議論の多様性を感じさせていただきました。
同じく先週の玉木委員の意見の中で、九条に係る憲法改正の立法事実に関し、仮に共産党が自衛隊違憲論を引っ込めたら憲法改正の立法事実がなくなるので、憲法改正に反対する共産党としては、自衛隊合憲を認めればいいんじゃないか、そういうお話がありまして、玉木委員の横に座っている共産党の赤嶺委員が、私は怒るのかと思って見ていましたら、思わずのけぞって笑われていた姿が非常に印象的でした。もちろん、その後の発言で赤嶺委員も、共産党のスタンスは変わらないという意見陳述を続けられておりました。
この点に関して、私がかねてから抱いていた疑問を、この際、改めて赤嶺委員にお伺いしたいと思います。前にも少し言いかけましたが、赤嶺委員が離席されていたものですから、中途半端になってしまいました。
共産党の赤嶺委員の意見は護憲の立場で一貫し、悲惨な歴史という背景があって護憲を主張されることに、ある意味で共感を覚えるところもあります。その一方で、私の理解では、現憲法に対する対応を最も激しく変えたのは、ほかならぬ共産党であったのではないかという思いもあります。現行憲法制定時に、唯一、政党として反対したのは共産党でした。
一九四六年八月二十四日の衆議院本会議で、野坂参三代議士は、現在の日本にとって九条は一個の空文にすぎない、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある、それゆえ我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならないという演説をされました。
私は地元で時々憲法セミナーを開催するんですが、こうした話を地元の有権者の皆様にすると、ほとんどの皆様はそのことを知りません。共産党は一貫した護憲政党だと思っていたとの反応がほとんどで、びっくりされます。
そこで、憲法審査会委員の赤嶺委員に、自衛権放棄の条文の存在ゆえに現行憲法制定時に反対した政党が、百八十度党の方針をひっくり返して護憲の立場を取った経緯、これを是非とも伺わせていただきたいと思います。
核武装を放棄し大幅軍縮を実現した挙げ句、ロシアの侵略を招いたウクライナ戦争の始終を目の当たりにする中で、七十七年前の野坂参三代議士の指摘は、今日的観点から見て、実は炯眼のようにも思われます。
だからこそ、共産党の考え方の転換の背景を理解させていただくことは、今後の憲法審査会のかみ合った憲法議論の土台になると思います。先ほど中川幹事がおっしゃるように、国民意識を喚起する観点からも、国民の注目を集める論点だというふうに私は思います。
私も、知り合いの歴史家にこの点について取材しました。そうしたら、一昔前の共産党は、自衛のための軍隊を持つことは国家にとって当然の権利だと考えていたけれども、東西冷戦の中で米国が共産主義の脅威に対して日本を極東における共産主義の防波堤とすべく自衛隊をその実力組織として位置づける中で、当時の共産党は、自衛隊の存在は日本における共産主義革命の支障となると考え、その存在を違憲無効と位置づけるに至った経緯があるという説明を受けました。
それが果たして正しい理解なのか、それこそ当事者である共産党の見解をしっかり伺いたく存じます。
安全保障面で国連が機能しないことが白日の下にさらされた今日、ひょっとしたら、共産党が再度、百八十度解釈を翻し、自衛隊合憲論に移行することもなきにしもあらずかなと、玉木委員の話を聞いて思った次第でございます。
最後に、憲法改正に関しては、自民党のほかに日本維新の会、国民民主党、立憲民主党が憲法改正の提言等を公表し、各党は昨年の参議院選挙の際にも憲法改正に言及しています。憲法の在り方に関して国民意識がここまで高まっている今だからこそ、国民の期待に応えるべく、昨年来の精力的な憲法議論を踏まえ、具体的な検討の段階に立ち至っていると考えます。是非とも、次のステージに移行する調整を各党間でお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○赤嶺委員 務台議員の質問、ありがとうございます。
ただ、間違った理解、誤った情報で日本共産党の見解をおっしゃっているなと思って、大変残念であります。
私たちは、今の憲法の採択に当たり反対の立場を表明いたしました。
私たちは、戦後の日本の憲法の議論が起きたときに、日本共産党自身が国民主権や平和主義の憲法案を提案しております。
現行憲法の九条の下で解釈を変えたのは、当時の吉田茂内閣、今の自民党であります。私たちは、解釈は変えていません。それは、先ほど玉木先生から、当時の吉田首相は九条でさえ自衛権を認めていなかったとおっしゃっていましたよね。私たちは、独立国家であれば自衛権は明記すべきだ、九条に自衛権をないとする政府の解釈は間違っているということで反対をしたのであります。
その後、自民党の方が百八十度立場を変えて、自衛権を九条で認めている。しかし、その上に、常備軍を持つことさえ合憲にするというような立場になりましたので、私たちは、もちろん、常備軍を持ってやるというようなことには、戦力の不保持の立場からいっても、それは反対であるという経過がありましたので。
立場を大きく変えたのは当時の政権党、皆さんの先輩方であるということを、よく先生の支持者の方々にも、自衛権を最初から主張していたのは日本共産党、自衛権を認めたという……(発言する者あり)そうそう。日本共産党が言うとおりになったんですよ、自衛権がね。
ただ、皆さんは、軍隊は保持しないというようなことまで踏みにじってやってきていることに、我々は、それは違う、憲法九条の大事さ、それを踏みにじるものだということであります。
国家間の対立よりも、やはり、あの二つの戦争を経て、再び戦争は起こさないとした国連憲章、こういうものについてしっかり国際社会が一致団結して守っていけるような、そういう社会をつくりたいと思っています。
なお、何か、自衛隊が独立国家に必要な軍隊だというようにしておりますが、今の日本の国は、憲法の上に安保条約があり、国会の上に地位協定があるわけですよ。アメリカ言いなりのそういう体制、軍事の面でもそうであります。こういう状態を置いていていいのかということが、今、日本の政治家には問われているということも申し上げておきたいと思います。
以上です。