衆院安保委
日本共産党の赤嶺政賢議員は18日の衆院安全保障委員会で、日本の敵基地攻撃能力が米国の統合防空ミサイル防衛(IAMD)のもとで運用される危険性を指摘し、「安保3文書」の撤回を求めました。
米国は、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させたIAMDを同盟国を組み込んで構築しようとしていますが、岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有は「米国のIAMDに参加するものではない」「全く別物」と説明しています。
赤嶺氏は、政府がミサイル防衛に関して、日米のイージス艦などが共同で警戒監視・迎撃するシステムが構築され、「実際の場合は共同対処する」と答弁していたと指摘。長距離巡航ミサイル・トマホークが配備されれば、日米のイージス艦が敵基地攻撃も共同で行うことになり、「『全く別物』という説明は事実に反する」と追及しました。防衛省の増田和夫防衛政策局長は、「われわれ独自の考え方で抑止を推進する」と答弁しました。
赤嶺氏は「飛来する複数のミサイルにどのイージス艦が対処するかを瞬時に決めるには、指揮系統を一元化しておかない限りできない」と強調。米軍と自衛隊は「それぞれ独立した指揮系統に従って行動する」とする政府の詭弁(きべん)を批判しました。(しんぶん赤旗ホームページ・一部修正)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
今朝、東京にいる伊良部島出身の私の同期生から電話がありまして、島で起こった事故について、本当に嘆き悲しみ、何でああいう事故が起こったんだという訴えがありました。
改めて、亡くなられた隊員の皆様に御冥福をお祈り申し上げるとともに、残された隊員の捜索活動にも全力を挙げ、そして、今度の事故の原因の究明、島の人々の不安を取り除くための再発防止、こういうことに全力を挙げていただきたい、このように思います。
安保三文書に関わって、敵基地攻撃能力の保有について質問をします。
今月四日の本会議で、敵基地攻撃能力の保有とアメリカのIAMDとの関係について質問をしましたが、総理からは具体的な答弁はありませんでした。
まず、防衛省に改めて確認しますが、そもそもデータリンクとはどういうものか、自衛隊や在日米軍が保有する装備のうち、データリンクによる情報共有が可能なものはどれか、これを説明していただけますか。
○上田政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの、まず、データリンクの概要でございます。
一般に、データリンクと申しますのは、艦船等に搭載された互いのコンピューターを無線通信回線で接続いたしまして、レーダー等で収集した航空機等の位置に関する情報、こういった情報等につきまして、相互に送受信することにより情報を共有するシステム、このようなものをデータリンクと呼んでおるところでございます。
データリンクをこのように有して情報共有が可能な自衛隊の装備品、これを全て御明示することは困難でございますが、主要な装備品を申し上げますと、例えば、自衛隊の防空システムにおきましては、海上自衛隊のイージス護衛艦、航空自衛隊のレーダーサイトやAWACS、早期警戒管制機、あるいは防空のミサイルでございますペトリオットミサイル、こういったシステムの間で、データリンクのネットワークによる情報共有、こういうことが行えるところでございます。
また、米軍との間でもこういったデータリンクによる情報共有は可能でございますけれども、御指摘にありました在日米軍の装備品につきましてお答えすることは、相手国との関係もございますので困難でございますのを御理解いただきたいと思います。
○赤嶺委員 今の答弁の最後は、F35戦闘機や無人偵察機グローバルホーク、これもデータリンクの機能を持っているかどうか聞こうと思ったんですが、その点、いかがですか。
○上田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたように、米軍の装備ともデータリンクで情報共有というのは可能なのでございますが、具体的に一つ一つ、どの装備が可能になっているかということについては、お答えを控えさせていただきたいと思います。
○赤嶺委員 私の質問を先取りして答えているので次の質問になかなか行きにくいんですが、ただ、もう一回はっきりさせたいんですが、在日米軍との間でデータリンクによる情報共有、これはどのような場合に行ってきているのか。ミサイル防衛の共同訓練や北朝鮮の弾道ミサイル発射に共同で警戒監視する場合などでは行っている、このように理解しているんですが、それはいいですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
実運用における自衛隊と米軍とのデータリンクによる情報共有、こういう実績などについては、自衛隊の運用に関わることでございますのでなかなかお答えすることが難しいということは御理解いただきたいと思いますが、その上で、日米共同訓練などにおきましては、必要に応じてデータリンクによる情報共有を実施しております。
最近の主な訓練としては、本年四月に、四日から六日におきまして、米海軍と海上自衛隊の間で、各種の戦術訓練の中で情報共有の訓練もやっておることがございます。そしてまた、昨年の八月の八日から八月十四日、ハワイの周辺で、日、米、豪、韓、カナダのミサイル警戒演習、パシフィック・ドラゴン二〇二二というのがございまして、海上自衛隊、米海軍、オーストラリア海軍、韓国海軍、そしてカナダ海軍の間で、弾道ミサイルの模擬標的等の追尾に係る情報共有、このような訓練なども行っているところでございます。
○赤嶺委員 データリンクは、訓練では盛んに行われていると。
共同交戦能力、CEC、これはどういうものでしょうか。自衛隊や在日米軍のどの装備に導入し、今後、導入を計画しているのか、また、費用はどれだけかかるものなのか、これも説明していただけますか。
○土本政府参考人 お答え申し上げます。
共同交戦能力、CECでございますが、このCECとは、複数のイージス艦等の間で捕捉した目標情報をリアルタイムで共有することにより、遠距離の目標を早期に探知し、対処するためのシステムであり、海上自衛隊におきましては、イージス護衛艦「まや」及び「はぐろ」のみが装備しているところでございます。
もう一方、CECによる情報共有が可能な在日米軍、米軍の装備品等につきましては、相手国との関係もあるためお答えすることが困難であることを御理解いただきたいと思います。
今後のCECを搭載する艦艇の導入計画に関しましては、イージスシステム搭載艦の整備に令和五年度予算から着手しているところでございます。
○赤嶺委員 早期警戒機E2Dにも導入を検討しているということが報道でありますが、これはどうなっているんでしょうか。
○土本政府参考人 CECを搭載するE2Dの機数や取得時期、全体像に関しましては、CEC搭載に関する経費やスケジュールに係る米側との調整結果も踏まえつつ、今後検討していきたいというところでございます。
○赤嶺委員 CECによる情報共有、これは在日米軍との間で行ってきているんですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
実運用における自衛隊と米軍との共同交戦能力、CECによる情報共有の実績につきましては、自衛隊の運用に関わることでございますのでお答えできないことを御理解いただきたいと思いますが、その上で、先ほどお答えいたしましたように、訓練におきまして申し上げますと、訓練におきまして共同交戦能力による情報共有を行った実績はございません。
○赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、安保法制の審議の際に、そのときの委員長は浜田防衛大臣でした。
当時、防衛大臣は中谷さんで、次のように述べています。
「他国からのミサイル攻撃に対して我が国を守る上におきましては、我が国自身のミサイル防衛システムもございますが、米国のミサイル防衛システム、これと共同で警戒監視をし、実際に攻撃を受けた場合には共同で迎撃をするというシステムができ上がってきております。」「我が国の防衛につきましては、自衛隊自身も対応しますが、日米安保体制によって日米共同対処、これガイドライン等でも平時から有事に至るまで共同で対処するということになっておりました。特にミサイルの防衛につきましては、我が国だけでは対処できないということで、日米合同でそのイージス艦にしましても実際の場合には日本海で共同対処をする、」このように述べています。
改めて確認しますが、ミサイル防衛については日米が共同で対処するという見解、これは今も変わりはないですよね。
○浜田国務大臣 弾道ミサイルによる攻撃を含め、我が国に武力攻撃が発生した場合には、日米安保条約第五条に基づき、日米両国が共同して対処することについては、これまで国会等の場で説明を差し上げてきており、この見解に変わりありません。見解に変更はありません。
なお、その際、自衛隊及び米軍は、各々独立した指揮系統に従って行動し、かつ、自衛隊は憲法、国際法、国内法に従って行動することは当然なことであります。
○赤嶺委員 変わらないということでありました。
日本が敵基地攻撃能力を保有することになれば、日本が購入するトマホークは自衛隊のイージス艦に配備されます。ミサイル防衛のために展開している日米のイージス艦が同時に敵基地攻撃も行うことになるわけですから、当然、敵基地攻撃も日米共同で行うことになると思いますが、いかがですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
昨年末に策定いたしました国家防衛戦略に記載しておりますとおり、反撃能力につきましても、先ほど御議論がありました弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととしております。
この点、我が国の防衛のためには、日米両国が共に可能な限りの努力を行いつつ、連携して対応していくことは当然であることから、日米共同でその能力を効果的に発揮する協力態勢を構築することとしております。
日米間での協力内容としましては、例えば、情報収集、分析などについて検討が必要と考えておりますが、こうした協力内容につきましては今後日米間で議論していくということにしておりまして、また、自衛隊の運用に関わる事柄でございますので詳細をお答えできないことを御理解いただきたいと思います。
○赤嶺委員 アメリカは今、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛、IAMDを構築しようとしております。政府も、敵基地攻撃能力の運用に当たっては日米の連携が重要と述べ、統合防空ミサイル防衛を強化するとしています。
政府は、アメリカのIAMDに参加することはない、全く別物だと説明しておりますが、現実に進んでいるのは、イージス艦を中心とした攻撃と防御の両面からの日米の連携強化です。そのことをアメリカはIAMDと言い、日本は統合防空ミサイル防衛と言っているということであります。
実態は一つです。それを全く別物という説明は、これは事実と反するのではありませんか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
今般、政府が決定いたしました反撃能力の保有、これは、弾道ミサイル等の技術の向上、そして運用能力が飛躍的に向上している中で、あくまで我が国を守り抜くために必要な最小限度の武力の行使のために必要な能力として保有することとしたものでございます。
そして、これは、有効な反撃を加える能力を我が国が持つことによりまして、相手に攻撃を思いとどまらせ、武力攻撃そのものを抑止することを目的としております。
すなわち、ミサイル防衛網により飛来するミサイルを防ぎつつ、我が国が有効な反撃を加える能力を保有する、この二つの能力によりまして、相手方が我が国をミサイル攻撃する、その抑止の効果を、やめさせようというその抑止の効果を得られるものだと考えておるところでございます。
このように、ミサイル防衛網と反撃を加える能力、これが二つ相まって、我が国に対するミサイルの攻撃を防止するためのものでございます。
○赤嶺委員 ですから、私が聞いたのは、アメリカのIAMDとは全く別物という政府の答弁が続いているわけです。これは事実に反するのではないかということです。
ミサイル防衛は、日米のイージス艦が共同対処するというのが従来の政府答弁です。そのイージス艦にトマホークを配備して、日米間の調整要領も作って、敵基地攻撃も行っていくことになるわけです。それをアメリカはIAMDと呼んでいるわけです。
しかも、安保三文書を見ると、統合防空ミサイル防衛の英訳は、アメリカと同じIAMDとなっています。にもかかわらず、アメリカのIAMDと全く別物だという説明、これは事実と違うのではないかということをただしているわけです。
○増田政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたように、日本が、我が国が導入いたします反撃能力は、あくまでミサイル防衛網と一緒になりまして相手国からのミサイル攻撃を抑止する、そのために持つものでございます。
我々は、そのような考え方で、我々独自の考え方で、このようなミサイル防衛網と反撃能力による抑止を目指した考え方を推進していきたいというふうに考えているところでございます。
○赤嶺委員 何だか日米がそれぞれが独立した指揮系統に従って行動するかのような言いぶりですが、日米が共同でミサイル防衛に当たるときに、飛来する複数のミサイルにどのイージス艦が対処するのかを瞬時に決めなければならないはずです。
指揮系統がばらばらでは瞬時の判断などできないと思います。どうやって判断するんですか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
日米は独自の指揮系統に従ってそれぞれ作戦行動を行うということは、これは我々の大原則でございますし、アメリカとも共通の理解でずっと来ているところでございます。
その上で、日本の防衛に当たりまして日米が共同で対処するということも、これは日米防衛協力のガイドライン等で定まっていることでございまして、その共同の対処行動をどのようにしていくかということにつきましては、日米間で調整を行っていくということでございます。
○赤嶺委員 調整を行っていく。ミサイルが飛んでくるときに、複数のミサイルに瞬時に対処しなければならないときに、日米で調整するとか話し合うとか、こんな時間はないですよね。あらかじめ指揮系統を一元化しておかない限り対処できないのではありませんか。
○増田政府参考人 お答え申し上げます。
日米間でどのような共同の対処行動を行うかにつきましては、あらかじめ大きな方針、考え方を定めておきまして、その枠の中で個別具体的に、例えば弾道ミサイルからの防護をどうしていくかということが個別具体的に決まっていくということでございます。
○赤嶺委員 あらかじめ決めていると言っても、実態は、実際に戦闘になれば飛んでくる複数のミサイルを瞬時に撃ち落とす、それはやはり、共同対処の中でも、指揮が一つにならなければできない話であります。
今、日本の国は、ミサイル防衛、敵基地攻撃能力でも大変危険な道を歩み出している。それは絶対にやめるべきだし、安保三文書は撤回すべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。