日本共産党の赤嶺政賢議員は9日の衆院安保委員会で、台湾問題を戦争に発展させないために、米中双方に緊張を高める行動をやめるよう働きかけ、当事者間の平和的な話し合いの環境づくりに力をつくすよう求めました。
米国政府は1979年の米中国交正常化以降、「一つの中国」政策をとってきましたが、トランプ前政権は2019年公表のインド太平洋戦略で、台湾を初めて「国」と表記。バイデン大統領も「台湾は独立している」「台湾を防衛する」と明言し、台湾への武器売却や米軍による軍事訓練を拡大しています。
赤嶺氏は「当事者でない国が外から介入し、緊張を高めるのはやめるよう米国政府に言うべきだ」と求めました。林芳正外相は「他国政府が作成した文書にコメントすることは差し控える」と答弁を避けました。
赤嶺氏は「中国による軍事的な威嚇や武力行使には絶対に反対だ」と強調。「他国が介入すれば内政干渉になり、戦争の原因をつくりだす」と述べ、戦争回避のための外交努力を求めました。
赤嶺氏は日本が戦争で台湾を奪い、中国大陸を侵略した歴史にふれ、「台湾問題に軍事的に関与するなど許されない」と主張しました。(しんぶん赤旗 2023年3月10日付)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
台湾問題について質問をいたします。
先月十六日、予算委員会の公聴会が行われました。拓殖大学の川上教授は、台湾危機を前にして、日本がアメリカの戦争に巻き込まれる危険を指摘し、中国に対する信頼醸成措置やアジア地域の平和構築の必要性を強調しました。沖縄国際大学の前泊教授も、巻き込まれる危険を指摘し、沖縄を戦場にしないための対話プロジェクトや国連機関の誘致などの取組、アジアにEUのような組織をつくる構想などについて発言がありました。与党、野党が推薦した公述人の双方が、現状に強い危機感を持ち、絶対に戦争を起こさないための外交の重要性を強調したのが特徴的でした。
外務大臣に伺いますが、台湾海峡をめぐって緊張が高まっていますが、これを戦争に発展させないために、日本政府としてどのような外交を進めていこうとしているのでしょうか。安保三文書には具体的なことは何も書かれていません。政府の具体的な方針を示していただけますか。
○林国務大臣 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要でございます。我が国の従来からの一貫した立場は、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというものでございます。
この点、これまでも、一月の日米首脳会談を含めて、米国やG7との間で、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしておるところでございます。
先般、ミュンヘンで行われた会談におきましても、私から王毅外事工作委員会弁公室主任に対しまして、台湾海峡の平和と安定の重要性、これを改めて強調させていただきました。
台湾海峡の平和と安定を確保するため、我が国として、こうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかりと伝えるとともに、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として明確に発信していくことが重要でございまして、今後ともこのような外交努力を続けてまいります。
○赤嶺委員 もうちょっと具体的に伺いますが、政府は、台湾問題について、当事者間の直接の話合いを通じて平和的に解決されることに期待するとの立場を表明してきました。これはどのような考え方に基づいてこうした立場を取ってきているのですか。
○林国務大臣 この台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の平和と安定にとっても重要でございまして、先ほど申し上げましたように、そういうことが重要だという考え方の下で、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が国の従来からの一貫した立場でございます。
かかる基本的立場を述べるに際しまして、その時々の情勢に応じて様々な表現を用いてきておりますが、今申し上げたような我が国の基本的立場は一貫して何ら変わっていないところでございます。
○赤嶺委員 情勢に応じて表現はいろいろあるけれどもというお話でしたが、ただ、台湾問題は中国と台湾双方の当事者間の話合いで解決されるべき問題であります。この点、政府の見解もそれに沿ったものだと思っています。
日本政府を含む国際社会が、武力ではなく平和的に解決されるべきだというメッセージは示すことはあっても、問題解決の具体的な方策について外から発言するようなことはやるべきではないと思いますが、大臣はどのように考えますか。
○林国務大臣 御質問の趣旨を必ずしも正確に把握をしておるかどうか分かりませんが、我々としては、まさに今委員がおっしゃった、対話により平和的に解決される、これを期待するという立場、これが我々の立場ということを申し上げておるところでございます。
○赤嶺委員 当事者間の話合いが大事だという点は、そのとおりであります。ただ、そういうメッセージを示すことはあっても、問題解決の具体的な方策について外からの発言をするようなことはやるべきではないというようなことを思います。
この点に関わって、アメリカ政府の対応について伺います。
トランプ政権は、二〇一九年六月、インド太平洋戦略を公表しました。そこでは、初めて台湾を国、カントリーと表記しました。一九七九年の米中国交正常化以降、アメリカ政府は一つの中国政策を取ってきており、台湾を国家と認定したことはありません。
かつて、台湾の李登輝総統が、台湾と中国の関係を特殊な国と国との関係と発言して大問題になりました。現在の蔡英文総統も、台湾は既に主権国家であるというスタンスに立っており、中国側は強い警戒感を示しています。台湾の地位をどう位置づけるか、これは、この問題の核心であります。
台湾を国、カントリーと表記することは、当事者間の話合いで解決されるべき問題を外から介入していることになると思いますが、大臣はどのように考えますか。
○林国務大臣 今委員から御指摘のありました、米国防省の二〇一九年に公表したインド太平洋戦略におきまして、シンガポール、ニュージーランド、モンゴル及び台湾を合わせてフォーカントリーズと記載していると承知しております。
日本政府として、他国政府が作成した資料の一つ一つについてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、米国は、長年にわたり一つの中国政策を取っておりまして、そのような立場に変更はないというふうに承知をしております。
○赤嶺委員 変更はないと言いながら、違うことを言っているわけですよね。
バイデン政権も同じなんです。二〇二一年十一月に、米中首脳会談が行われました。バイデン大統領は、会談後のぶら下がり会見で、台湾は独立している、自分で自分たちのことを決めていると述べました。しかも、従来の曖昧政策を転換して、台湾を防衛すると繰り返し発言しています。実際の行動でも、台湾に次々と武器を売却し、米軍による台湾軍への軍事訓練も行っています。川上教授は、バイデン政権が台湾に国連への加盟申請を促す可能性があることも指摘しております。
要するに、アメリカ自身の思惑から、強大な軍事力を背景に、現在の状態を既成事実化しようとしているのではありませんか。こういうことを力による一方的な現状変更というのではありませんか。
○林国務大臣 米国は、長年にわたり一つの中国政策を取っておりまして、台湾関係法も前提としつつ、台湾海峡の平和と安定や両岸の相違の平和的解決の重要性を強調しております。
昨年五月の日米首脳会談の際でございますが、台湾に関する米国のこのような基本的立場に変更がないということを確認しておりまして、その後も、例えば、昨年十一月の米中首脳会談においても、バイデン大統領は、米国の一つの中国政策に変更はない旨述べていると承知をしております。
いずれにいたしましても、台湾海峡の平和と安定、これは、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でございます。
我が国としては、今後とも、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、両岸関係の推移を注視してまいります。
○赤嶺委員 確かに、バイデン政権は、昨年の国家安全保障戦略、ここでも、一つの中国政策を維持すると、外務大臣がおっしゃったように表現しています。どちらの側からの一方的な現状変更にも反対し、台湾の独立も支持しないと述べています。
しかし、現実にやっていることは、アメリカの軍事力を背景にした一方的な現状変更です。しかも、閣僚経験者や議会関係者が次々と台湾を訪問して、挑発的な発言を繰り返しています。ポンペオ元国務長官は、昨年三月、アメリカ政府は台湾を主権国家として承認すべきだと述べています。エスパー元国防長官も、一つの中国政策はもう必要ない、このように述べて、台湾に軍事費を増額するよう求めております。こうしたアメリカの対応が、緊張を高めるもう一方の要因になっているのではありませんか。
昨年八月の中国による大規模な軍事演習も、ペロシ下院議長の台湾訪問が発端でした。当事者でない国が外から介入し緊張を高めるのはやめるべきだとアメリカ政府に言うべきではありませんか。
○林国務大臣 他国の元閣僚等々の活動につきまして一つ一つコメントするということは、当然ながら差し控えたいというふうに思っておりますが、先ほど申し上げましたように、アメリカは、長年にわたり一つの中国政策を取っておりまして、台湾関係法も前提としつつ、台湾海峡の平和と安定、また両岸の相違の平和的解決の重要性を強調しておるわけでございます。
こうしたことも踏まえながら、今後とも、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、両岸関係の推移を注視してまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 私たちも、中国による軍事的な威嚇や、ましてや武力の行使には絶対に反対です。しかし、だからといって、他国が一方の側に立って介入し、力を背景に押し通すことなど許されません。一つ一つに反応せよということではなくて、基本的には、やはり他国が介入している、それが問題を複雑にしている、これを改めるように、日本政府がちゃんとアメリカにも言うべきだと思います。
こういうことをやれば、内政干渉になるばかりか、戦争の原因をつくり出すことになります。そのとき戦場になるのはアメリカ本国ではありません。この地域の国々です。日本政府は、この地域で絶対に戦争を起こさせない、そのために、米中双方に対して、緊張を高める行動をやめるよう働きかけ、当事者間の平和的な話合いの環境をつくることにこそ力を尽くすべきではありませんか。
○林国務大臣 この台湾海峡の平和と安定、これは、今お話がありましたように、日本の安全保障はもとよりでございますが、国際社会の安定にとっても重要でございます。
我が国としては、今後とも、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携をしながら、両岸関係の推移を注視をしてまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 今日は外務大臣のみの質問通告ですが、私の意見は防衛大臣もしっかり受け止めていただきたいと思います。
今年一月の日米2プラス2の共同発表は、日米の戦略文書がかつてないほど整合していることを確認したと述べています。アメリカの対中戦略に追随して力による一方的な現状変更に加担するなど、これは絶対に許されません。
政府は、これまで、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄した我が国としては台湾の法的地位について独自の認定を行う立場にないとの見解を示してきました。この立場には今も変わりありませんか。
○林国務大臣 我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条に従いまして、台湾に関する全ての権利、権原及び請求権を放棄しておりまして、台湾の領土的位置づけに関して独自の認定を行う立場にない、このような立場に変わりはございません。
○赤嶺委員 日本は、戦争で台湾を奪い、中国大陸を侵略した歴史を持つ国です。その日本がアメリカにつき従って台湾問題に軍事的に関与するなど、絶対に許されないことを強く申し上げたいと思います。
最後に、一点外務大臣に確認します。
アメリカ政府は、先月五日、中国の高高度監視気球を撃墜したことを発表しました。外務大臣は、その二日後、七日の記者会見で、米国の立場を十分に理解していると述べました。一方、十四日には、米国の立場を支持していると見解を変えています。見解を変えたのはなぜなのか、理解と支持のどちらが日本政府の公式な見解なのか、明確にしていただけますか。
○林国務大臣 事柄の性質上、詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、各種の情報収集、分析を踏まえて、米国の立場を支持するに至ったものでございます。
○赤嶺委員 終わります。