国会質問

質問日:2022年 12月 1日  第210国会  憲法審査会

「緊急事態」時の議員任期延長 赤嶺氏「民主主義の否定」

衆院憲法審

 衆院憲法審査会が1日、開かれ、自由討議を行いました。

 審査会に先立つ幹事会で、法制局が自民党の新藤義孝議員の依頼でまとめた「『緊急事態』に関する論点」を報告させることが問題になりました。立憲民主党の中川正春議員が、新藤氏は私的に法制局にまとめさせた資料であり、新藤氏が持ち時間の範囲で説明すべきだと批判。日本共産党の赤嶺政賢議員も反対を表明しました。

 これを受け、審査会では、新藤氏が「私なりに取りまとめ、法制局に整理してもらったものだ」と釈明。赤嶺氏は「新藤氏が私的に依頼した資料を法制局に報告させることは、議論を誘導しようとするもので看過できない」と批判。この間の審査会では、各党から憲法と矛盾する現実政治の課題が提起されたとして、「これらを無視して自分たちに都合のいい議論を進めようとすることは容認できない」と強調しました。

 赤嶺氏は、「緊急事態」を理由に選挙を停止し、国会議員の任期延長を可能にしようとする改憲議論について、「緊急事態」は政府の一存で決められると批判した上で、「国会が政府の決定を追認した場合、最終的にその是非を判断するのは国民であり、その機会が選挙だ」と強調。「選挙を行い、政権を交代させる機会を奪うことは、代表制民主主義の否定だ」と批判しました。

 赤嶺氏は、「緊急事態」として戦争状態が強調されていることについて、米軍の軍事行動に付き従って日本が参戦する仕組みこそ問われているとして、「アメリカが軍事行動を起こすことを前提に、安保法制に基づき、日米が一体で米軍を支援し、参戦することに最大の危険がある」と指摘。

 岸田政権が日本全国に長距離ミサイルを配備し、集団的自衛権のもとで、日本が攻撃されていなくても、相手国を攻撃することを検討しているとし、「相手国からすれば先制攻撃であり、それ以上の反撃を受ける」「そのとき犠牲になるのは基地と隣り合わせに暮らしている住民であり、日本国民だ」と強調。「だからこそ、国民が審判を下すことが決定的に重要だ。その機会を奪うことは絶対に許されない」と批判しました。(しんぶん赤旗 2022年12月2日)

 

質問の映像へのリンク

「緊急事態」時の議員任期延長を批判(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 まず、今日の運営について一言述べておきます。
 今日の審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての自由討議であり、その具体的な内容について、テーマは設定されておりません。にもかかわらず、新藤筆頭が私的に依頼した緊急事態に関する資料について、冒頭に法制局に報告させるということ自体が問題であります。今日の議論を誘導しようというものであり、看過できません。
 資料の中身も問題です。
 この間の審査会では、憲法に関わる現実の課題について様々な意見が出されました。私は、九条を破壊する大軍拡、憲法の上にある日米地位協定、自民党と統一協会との癒着など、憲法の諸原則をじゅうりんする現実政治の問題を提起してきました。他党からは、国民投票法や、政治と宗教の関係、沖縄と憲法などについての指摘がありました。
 ところが、今日出されている資料は、自分たちが進めたいテーマに沿う議論だけを取り上げて一覧にし、これからの議論を方向づけるようなものになっています。自分たちに都合のよい議論を進め、改憲内容を固めていくかのようなことは容認できないと強く指摘しておきたいと思います。
 議員任期延長の議論は、立憲主義の上から重大な問題があります。
 そもそも、任期とは、ある一定の者がその地位にとどまり権力が集中することを防ぐために定められたものです。国民主権に基づく議会制民主主義の下では、国会議員の任期満了が来たら選挙を行い、国民の意思を議会に反映させることによって、権力を民主的にコントロールしようというものです。これは、国民主権と民主主義に基づく近代立憲主義の大原則であります。
 ところが、今行われている議論は、有事を理由に選挙を停止し、国会議員の任期を延長できるようにしようというものです。そこでは、政府の一存によって有事を認定できることになっており、戦争などの事態やこれに匹敵する事態などと、政府の恣意的な判断を可能にするものとなっています。
 この間の議論では、ロシアのウクライナ侵略を挙げて、究極の緊急事態は安全保障問題だなどと強調し、いついかなるときも国会の機能を維持しておかなければならない、そのために任期延長が必要だということが繰り返し叫ばれました。
 しかし、重要なことは、有事を決定するのは政府で、国会が政府の決定を追認した場合、最終的にその是非を判断するのは国民であり、その機会が選挙だということです。選挙を行い、政権を交代させる機会を保障することが民主主義の要です。この選挙の機会を奪うことは、代表制民主主義の否定にほかなりません。
 しきりに戦争状態を強調しますが、問われているのは、米軍の軍事行動につき従って日本が参戦する仕組みであります。
 自民党は台湾有事は日本有事などと声高に言いますが、それは日本が独自に判断するものではなく、アメリカが台湾海峡をめぐる問題に介入し、それを日本が存立危機事態や重要影響事態に認定して米軍の軍事行動に参戦しようというものです。日米安保体制の下で、アメリカが軍事行動を起こすことを前提に、安保法制に基づき日本が米軍を支援し、アメリカの戦争に参戦する、ここに日本の直面する最大の危険があります。
 日本政府はあくまでも主体的に判断すると言いますが、憲法の上に日米地位協定がある下で、繰り返される米軍の事件、事故に対しまともに物も言えず、地位協定の改定すら提起できないのが現実です。これこそ米軍追従のあかしではありませんか。
 岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有の議論を進めていますが、そこでは、日本が攻撃されていないにもかかわらず、相手国を攻撃することまで検討されています。その実態は、米軍の作戦と指揮の下に攻撃を米軍と分担するなど、米軍と一体となって敵基地を攻撃しようというものです。
 集団的自衛権に基づく敵基地攻撃は、相手国からすれば先制攻撃を受けたことにほかならず、日本がそれ以上の反撃を受けることは必至です。そのとき、真っ先に攻撃対象となるのは、米軍基地や自衛隊基地が集中する沖縄の島々です。
 政府は、南西諸島でのミサイル基地を増強して軍事要塞化し、さらに民間空港や港湾まで軍事利用することを狙っていますが、一たび戦争になれば、こうした軍事拠点がますます標的となるのは軍事の常識です。
 南西諸島だけではありません。今、政府は、本州からさらに北海道に至るまで、全国のあらゆる場所に長距離ミサイルを配備することを検討しています。そうなれば、日本全土が相手国からの攻撃にさらされることになります。そのとき犠牲になるのは、政府でも国会議員でもありません。基地と隣り合わせに暮らしている住民であり、日本国民です。
 だからこそ、アメリカと一体となって参戦し、戦禍をもたらそうとしている政権に対し、国民がその是非の審判を下すことが決定的に重要なのであります。米軍に追従する政府の判断を追認するだけの国会でいいのかということが真っ先に問われなければならないからです。
 その機会を国民から奪い取り、時の多数派が自らの都合のいいように権力を振るい、その延命のために任期を延長するなどということは絶対に許されません。緊急事態条項を最優先に議論するといって、その第一に国会議員の任期延長、自分たちの保身のための議論を進めようなどということはあってはなりません。
 国民の生命と財産を守るために重要なのは、国と国との争い事を絶対に戦争にしないことです。そのためには、九条を始めとした日本国憲法の平和主義の精神に基づいた外交努力に知恵と力を尽くすことこそ必要だと繰り返し強調し、発言といたします。

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