国会質問

質問日:2022年 6月 3日  第208国会  安全保障委員会

ミサイル防衛が軍拡誘発 赤嶺氏「平和枠組み構築を」 衆院安保委

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は3日の衆院安全保障委員会で、米国によるミサイル防衛配備が現在の軍拡競争の再燃を招いたと指摘し、軍事力の強化ではなく、東アジアの全ての国が参加する集団安全保障体制の構築を求めました。

 岸田政権は敵基地攻撃能力の保有を検討する理由として、ロシアや中国などによる極超音速兵器の開発などミサイル技術の進化を挙げています。赤嶺氏は、米議会調査局が5月に公表した報告書で、両国による同兵器開発は、米欧へのミサイル防衛配備や米国の弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)からの離脱に対応したものだとの指摘を紹介。「ロシアも中国も米国のミサイル防衛網への対抗策として極超音速兵器の開発を進めてきた」と指摘しました。

 赤嶺氏は、2001年の同委で軍拡競争を再燃させる危険を警告したのに対し、中谷元・防衛庁長官(当時)が「ミサイル防衛が成功すれば相手の持つミサイルが無用化され、軍縮につながる」と答弁していたことにふれ、「当時の政府の説明が誤りだったことは明白だ」と追及。岸信夫防衛相は「昨今のミサイル技術の発展に対し、阻止していく技術をさらに高めていくのは当然だ」と強弁しました。

 赤嶺氏は「日本が敵基地攻撃能力まで持てば、相手も軍備を拡大し、軍拡競争の深みにはまるだけだ」と厳しく批判し、地域の全ての国が話し合いで問題を解決する集団安全保障の枠組みこそ求められると強調しました。(しんぶん赤旗 2022年6月4日)

 

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ミサイル防衛が軍拡誘発(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 先ほど来、離島における国民保護、住民避難の話もありましたが、一番大事なことは、南西諸島、沖縄本島で軍事的な緊張をもたらさない外交政策だと思います。
 石垣島の住民は、去った戦争で日本軍によってマラリア生息地に強制避難され、マラリアの悲劇を起こしました。宮古島では、島に残った兵隊は、海も空も全部連合軍に制圧をされ、餓死状態で命を失う者が次々に出てきました。沖縄本島の戦争では、住民混在の戦場になって、人間が人間でなくなる悲劇が、戦う兵隊よりも住民の方の犠牲が多くなる。
 いや、こんなことは繰り返すことはないと言っても、それは詭弁であります。やはり、沖縄に、南西諸島に絶対に軍事的な緊張を激化させない、そういう責任があの沖縄戦の悲劇を生んだ日本政府には求められているんだということを強く申し上げて、それで質問に移りたいと思います。
 敵基地攻撃能力の保有について質問をします。
 岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有を検討する理由として、極超音速兵器などのミサイル技術の進化を挙げています。では、なぜこうした兵器が開発されるようになったのかという点については、アメリカが国内外で配備を進めてきたミサイル防衛網の存在が指摘をされております。
 アメリカの議会調査局が今年の六月に公表した極超音速兵器に関する報告書によると、ロシアは、アメリカとヨーロッパへのミサイル防衛の配備と、二〇〇一年のアメリカの弾道弾迎撃ミサイル制限条約、ABM条約からの離脱に対応して極超音速技術に関する研究を加速させてきた、このように指摘しております。さらに、中国についても、アメリカのミサイル防衛を始めとする高度な軍事技術の進展からの安全保障上の脅威に対抗する必要性から、極超音速技術の開発に優先的に取り組んでいると述べております。
 昨年の防衛白書を見てみましたが、やはり同様の認識を示しております。
 防衛大臣は、極超音速兵器などの開発、配備が進められるようになった背景、原因についてどのように認識しておられますか。

○岸国務大臣 極超音速兵器は、マッハ五を超える極超音速で飛翔するとともに、通常の弾道ミサイルと比べまして、低い軌道や、長時間飛翔する、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になるとの指摘がございます。こうした点も踏まえて、米国や中国、ロシアなどが開発を行っていると承知をしております。
 極超音速兵器について、ロシアのプーチン大統領は、二〇一八年三月に行った演説の中で、米国を始めとするミサイル防衛システム配備への対抗手段の一つとして紹介したと承知をしております。また、中国も、ミサイル防衛の突破が可能な打撃力を獲得するため、その開発を急速に進めていると見られます。
 こうした動きについて、米国は、ミサイル防衛見直しの中で、既存のミサイル防衛システムへ挑むもの、このように認識を示しています。また、米軍の高官は、中国の極超音速兵器に関する急速な能力向上に危機感を表明していると承知をしています。
 極超音速兵器は、将来の戦闘様相を一変させる、いわゆるゲームチェンジャー技術の一つであると認識をしており、防衛省としても、こうした最新兵器の動向を注視してまいるところでございます。

○赤嶺委員 今の答弁にもありましたように、ロシアも中国も、アメリカが同盟国を巻き込んで配備を進めてきたミサイル防衛網へのいわば対抗策として極超音速兵器などの開発、配備を進めてきたということであります。しかし、こうした対策が取られることは、計画当初から広く指摘されていたことであります。
 私は、二〇〇一年のこの安保委員会で、アメリカが圧倒的な核戦力を保有し、核の先制使用政策も放棄していない下で、圧倒的な盾まで持つことになれば、周辺諸国に多大な懸念と不安を与え、ミサイル防衛を打ち破ることのできる新たな兵器を開発しようという誘惑に駆られ、軍拡競争が再燃する、このように指摘をいたしました。当時は中谷防衛庁長官でしたが、中谷防衛庁長官は、ミサイル防衛が成功すれば、相手の持っているミサイルが無用化され、軍縮につながることもある、このように答弁をいたしました。
 現状を見れば、軍縮につながるどころか、私たちが指摘していたとおり、新たな兵器の開発を誘発し、軍拡競争が再燃しています。当時の政府の対応は、あるいは説明は誤りだったということではありませんか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 委員るる御指摘をいただきましたけれども、弾道ミサイル防衛システムにつきましては、これは、弾道ミサイル等の拡散が世界的に進む中で、国民の命と暮らしを守るための純粋に防御的なシステムでございます。そういう観点から、政府はその研究開発や導入を進めてきたところでございます。
 確かに、委員御指摘のように極超音速兵器の開発等が進んでおりますけれども、我々がなさなきゃいけないのは、国民の命と暮らしを断固として守り抜くという観点から必要な施策を取っていくということでございます。
 そのためには、純粋な防御的なシステムであるこの弾道防衛システムにつきましては、更なる迎撃能力の向上等も図りつつ、総理や防衛大臣等も述べておりますように、あらゆる選択肢を排除することなく、国民の命と暮らしを守り抜くための施策の検討を進めてまいりたいと思っております。

○赤嶺委員 当時、中谷長官は、弾道ミサイルの導入は軍縮につながる、このように言っておられたんですよ。中谷長官だけじゃないですよ。ミサイル防衛関連の自衛隊法改正を議論した二〇〇五年の衆議院本会議でも、当時民主党の本多議員の質問に対して、当時の大野防衛庁長官は、BMDシステムは、純粋に防御的、他に代替手段のない唯一の手段であり、相手国が我が国に対し弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはない、軍拡競争を招くとは考えられない、このように言い切っているわけですね。
 ところが、現実は、当時の政府の説明と全く異なる方向に進んだことは明らかだと思います。間違っていた、軍拡に結びつかないと言っていた説明は間違いだったということは明白ではありませんか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 当時、中谷防衛庁長官、そして防衛省側、政府側からはそのような御説明をしておりました。
 軍備管理・軍縮と申しますのはなかなか難しい道のりではございますけれども、弾道ミサイルの脅威が世界的に拡散する中で、それに対する防御システムを持つということは、攻撃側の攻撃能力をそぐという意味では意味があるということは間違いないと思っております。
 そういう意味で、道のりは長いかもしれませんけれども、そういう弾道ミサイル、それから巡航ミサイル、そして今般出てきております極超音速兵器等について、そのような世界的な拡散や能力向上等をどのように抑止していくのかということについては、不断に検討してまいりたいと思っております。

○赤嶺委員 最初の、確信を持って軍拡にはつながらないと言っていたのは、これまでの経過を見れば間違いであったということははっきりしております。
 ミサイル防衛に関する経費については、政府は、導入決定当時、八千億円から一兆円程度を要するとの見通しを示していました。政府がこれまでに投じてきた予算額はどれだけになるんですか。また、その中で米国政府と米国企業に対して幾ら支払ってきましたか。

○土本政府参考人 経費の関係でございますので、私の方から答弁させていただきます。
 先ほど防衛政策局長からも答弁がございましたように、弾道ミサイルは、一たび発射されれば極めて短時間で我が国に到達し、国民の生命財産に甚大な被害を与えるおそれがあることから、弾道ミサイル防衛能力は非常に重要なものであると考えているところでございます。
 このため、BMDに特化した事業の関連経費といたしまして、二〇〇四年、平成十六年度予算から、二〇二二年、令和四年度予算までの累計で約二兆七千八百二十九億円を計上してきております。
 続いて、委員御指摘の関係で、現時点で集計しております、二〇一六年度から二〇二二年度の、五年間のFMS及び一般輸入の主な契約額につきまして、合計は約五千四百八十三億円となっており、その内訳につきましては、FMSによるものが約五千百三十三億円、一般輸入によるものが約三百五十億円となっているところでございます。

○赤嶺委員 今の数字は、導入決定前に進めていた日米共同技術研究などの経費、これは約百六十億円、そこは含まれていないわけです。いずれにしても、政府が当初示していた額の三倍、三兆円近い予算を費やし、ミサイル防衛だけで、国民の貴重な税金を毎年一千億円以上、湯水のようにアメリカに支払い続けております。
 その上、今度は、使い物にならなくなってきたから、敵基地攻撃能力だ、軍事費は増額だ、このように言っています。これは余りにも無責任だと思いますよ。
 まず、これまでの政府の取組を検証して、国民に謝罪することから始めるべきだと思いますが、いかがですか。

○土本政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど冒頭申しましたように、我々は弾道ミサイルから国民の生命財産をしっかり守るという重要な任務というものを遂行する必要があることから、予算措置を各年度やらせていただいているところでございます。
 先ほど総額を申しましたが、具体的に少し申し上げれば、イージス艦の能力向上とか、SM3ミサイルの取得、整備等、ペトリオットシステムの能力向上、PAC3ミサイルの取得、探知レーダーのFPS5の整備、あと、自動警戒管制システムへの弾道ミサイル対処機能の付加等、これらの経費等をしっかり措置して、我々としては、我が国の平和と独立を守り、国民の生命と財産を守るという自衛隊の任務をしっかり遂行していくということでございます。

○赤嶺委員 我々が聞かされるのは、ミサイル技術が進展しているから今度は敵基地攻撃能力の保有を検討する、こう言っているわけです。
 圧倒的なアメリカの核戦力に加えて日本もそうした兵器を持てば、相手もそれに対抗して軍備を拡大し、更なる軍拡競争の深みにはまっていくだけだ、これは二〇〇一年に私たちが指摘していたことです。軍拡競争の深みにはまっていく、大臣はそうならないという見通しを示せますか。

○岸国務大臣 昨今のミサイル発射技術の急速な発展、これを見ましても、これを阻止するためのBMD技術に更に高めていかなければならないのは当然のことだと考えております。
 その上で、そのミサイルに対して、ミサイルを撃ち落とすだけでいいのかという問題意識の下で、反撃能力を含めた、またあらゆるオプションを含めた議論をこれから国家安全保障戦略策定に向けて行っていく、このように考えております。

○赤嶺委員 やはり、私たちがかねてから指摘していたように、今の政府の取っている方向は、果てしない軍拡競争、抑止力のジレンマ、そこにつながっていくということを強く指摘しておきたいと思います。
 ウクライナ情勢に乗じて、敵基地攻撃能力を持つべきだとか、軍事費を増額すべきだとか、憲法九条を変えるべきだという議論が振りまかれております。しかし、ロシアによるウクライナ侵略に至る経緯を冷静に見れば、そのような結論にはならないと思います。
 昨年の防衛白書はこう述べています。「一九九九年以降、NATOへの東欧諸国の加盟、いわゆる「NATOの東方拡大」が進められるとともに、米国が国内外でミサイル防衛システムの構築を進めていることに対してロシアは警戒感を強めている。」このように述べています。
 NATOの東方拡大に警戒感を強めているというのは、具体的にこれはどういうことですか。NATOの東方拡大をめぐるこれまでの経緯を説明していただけますか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 NATOのいわゆる東方拡大とは、冷戦終結後、旧ソ連圏であった中東欧諸国がNATOに加盟することが実現してきた一連の過程を指すものと理解しております。
 この点、これまでロシアはNATOのいわゆる東方拡大に反対の立場を示してきましたけれども、その一方で、旧ソ連圏であったバルト三国が二〇〇四年にNATOに加盟した際など、個々の加盟事例においては必ずしもウクライナをめぐるような明確な反対はしておりませんで、現在のような状況は生起していないことに留意する必要があると考えております。
 また、NATO・ロシア間においては、両者が平等な立場で協議等を行う場としてNATO・ロシア理事会が設置されるなど、信頼醸成のための制度も整備されてきたと承知しております。
 このように、NATOのいわゆる東方拡大は、ロシアへの配慮が示されつつ進展し、ロシアもそれを事実上受容してきたことや、NATO・ロシア間の協力が停止する契機になったのは、二〇一四年のロシアによる違法なクリミア併合であったことを想起すべきであると考えております。
 さらに、二〇一四年のロシアによるいわゆるクリミア併合等を契機といたしまして、ウクライナはそれまでロシアに一定程度配慮していた安保政策を転換いたしまして、NATOとの関係強化にかじを切っております。昨年二〇二一年にウクライナ周辺に多数の兵力を集結させた事例を含め、そもそも地域の緊張を高めたのはロシア側であったと考えております。
 いずれにせよ、どのような理由や判断があったといたしましても、武力によって自らの主張を実現するという今般のロシアによるウクライナ侵略は、断じて認められない国際法違反の行為であり、何ら正当化できるものではないと考えております。

○赤嶺委員 ロシアのウクライナ侵略は、国連憲章に真っ向から違反するものであり、断じて認められない、直ちに撤退せよというのは私たちも強く主張しているところであります。
 ただ、戦後の米ソ対決の時代が終わろうとしていた三十年前、私たちは、ヨーロッパの安全保障体制の在り方として、NATOとワルシャワ条約機構の双方を解体し、ヨーロッパの全ての国が参加する集団安全保障体制を確立することを日本共産党として提唱しておりました。しかし、その動きは私たちが提唱した方向には進みませんでした。
 ロシアを含むこの地域の全ての国が参加する欧州安全保障協力機構、OSCEを発展させて、紛争の平和的解決のための主要な機関と位置づけるなどの動きも起こりましたが、アメリカはあくまでNATOに固執し、ロシアの反対を押し切って東方への拡大を推し進めました。
 ロシアも、当初は欧州共通の家などの構想を打ち出しました。しかし、NATOの東方拡大が推し進められる下で、それに対抗して旧ソ連時代の権益に固執し、チェチェンやジョージア、二〇一四年以降はウクライナへの軍事介入を繰り返してきました。
 アメリカとロシアが、米ソ対決の終えんというチャンスを生かせず、軍事同盟的な発想で勢力圏を拡大しようとする下で起こったのが今回の事態だと思います。
 今回の侵略の責任はロシアにあります。ただ、今回の事態から酌み取るべき教訓は、軍事力の強化ではなく、全ての国が参加し、あらゆる問題を話合いで解決していくための集団安全保障の枠組みをこの東アジアで構築していくということではないかと思います。
 大臣、いかがですか。

○大塚委員長 時間が過ぎておりますので、手短にお願いいたします。

○岸国務大臣 今般の事態についての背景の分析は必要でございますが、いずれにせよ、圧倒的な軍事力を持つ国が他の主権国を一方的に侵略し、罪のない人々に犠牲が出ているということは、ロシアが責任を負うべきものであり、ウクライナによる抵抗及び我が国や世界各国による制裁と支援は当然のことと考えます。
 しっかり連帯を示していくことが必要であるというふうに思います。

○赤嶺委員 終わります。

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