衆院憲法審査会は24日、「緊急事態条項」を中心に集中討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、コロナ禍に便乗して緊急事態を理由に改憲議論を進めようとしていることについて「憲法を変えなければ対応できない問題は起きていない」と批判しました。
赤嶺氏は、自民党などが内閣の緊急政令や緊急財政処分を規定すべきだと主張していることを「三権分立を壊すものだ」と指摘。憲法が国会を唯一の立法機関とするのは、明治憲法下で乱用された緊急勅令や独立命令を排し、立法権を国会に独占させ権力分立を徹底するためだとして、「これらの議論は、権力の縛りを緩め、内閣に権限を集中させ、立憲主義を崩すものだ」と批判しました。
また、衆院の解散や任期満了時に大規模災害で選挙ができなくなるという主張について「想定外のことを仮定して議論すること自体が問題だ」と指摘。「想定外のために憲法を変えれば、権力を縛り国民の権利と自由を守る憲法原理に例外を置くことになり、乱用を許す危険が高まる」と主張しました。
社民党の新垣邦男議員は「緊急事態条項は立法府を停止するもので乱用の危険が高い」と強調しました。自民党の新藤義孝議員は「緊急時には政府の権限を集中させる必要がある」と主張しました。(しんぶん赤旗 2022年3月25日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
この間の審査会の議論で、コロナ禍や災害対応を理由に緊急事態条項を議論すべきだという発言が多くありました。そこでは、コロナに便乗し、あたかも緊急の事態に対応するために、憲法を変えることを最優先の課題にしなければならないという前提で議論が進められています。
しかし、コロナ禍で、憲法を変えなければ対応できないという問題は起きていません。今政治に求められているのは、憲法に保障された国民の生存権や幸福追求権を実現することです。国会議員はそのために全力を尽くすべきであり、コロナに乗じて改憲の議論を進め、ましてや自民党の改憲四項目の議論に持っていこうとすることは反対であります。
前回、新藤幹事は、国会の機能の維持を殊更に強調し、出席概念の議論は緊急事態全般に関する議論が必要であることを浮き彫りにしたとして、国会議員の任期延長、内閣の緊急政令、さらに、緊急財政処分にまで言及いたしました。極めて重大な発言であります。
日本国憲法は、国会を唯一の立法機関として規定しています。これは、明治憲法下で濫用された緊急勅令や独立命令を廃し、立法権を国会に独占させ、権力の分立を徹底するためのものであります。内閣による緊急政令や財政処分は、国会の機能を奪い、権力濫用を防ぐ三権分立を停止させるものであり、容認できません。
これらの議論は、改憲四項目にとどまらず、憲法を全面的に書き換えようとする二〇一二年の自民党改憲草案を推し進めようというものではありませんか。国会の機能を維持することが必要だと言いながら、その行き着く先は国会の機能の停止が狙いであることははっきりしています。こうした改憲議論は、権力の縛りを緩め、内閣に権限を集中させ、立憲主義を崩すものにほかなりません。
衆議院が解散されているときや任期満了時に大規模災害で選挙ができなくなると言いますが、そもそも、想定外のことを仮定して議論すること自体が問題です。国会議員も閣僚も官僚もいなくなってしまった場合まで検討するというのでしょうか。
その点では、二〇一七年三月二十三日の審査会での参考人の意見陳述を思い出すべきです。参考人として出席された永井幸寿弁護士は、想定外の事態のためにその先に制度を設けると、それは想定内になる、更にその先に想定外を考えて制度を設ける、そうすると、これも想定内になる、そうすると、更に設けなきゃいけないと述べ、際限なく想定外が広がると指摘しています。さらに、永井参考人は、想定外の事態とすると、権限がどんどん強くなってしまうことが危険だと強調しています。
さきの憲法五十六条一項に関する参考人の意見陳述でも、高橋参考人は、極端な事例を出せば出すほど、権限をどこかに大幅に移譲する以外に解決の方法はなくなっていく、極端な事例を出して議論をすると間違う危険が強いと警鐘を鳴らしています。
これらの専門家の意見が示しているのは、想定外を想定し、その想定外のために憲法を変えれば、権力を縛り、国民の権利と自由を守る憲法原理に例外を置くことになり、濫用を許す危険が高まるということであります。
緊急の事態に関する議論として、しきりに国会機能の維持を繰り返していますが、そうであるならば、なぜ、憲法五十三条に基づく野党の臨時国会召集要求を政府と与党が無視してきたことを問題にしないのですか。
三月十七日の福岡高裁判決は、憲法五十三条後段の規定は、少数派の国民の意見を国会に反映させるという趣旨に基づくものであり、極めて重要な憲法上の要請であることは論をまたないと強調しています。この明白な憲法違反を徹底的に議論すべきであります。
国会機能の維持を言いながら、現実には国会の行政監視機能を軽視し、さらに、国会の機能を停止させ、権力による人権制限を強めるための議論へと持っていくことは、権力分立や基本的人権の保障を原理とする現行憲法を幾重にも否定しようというもので、絶対に認められないと指摘し、発言を終わります。