国会質問

質問日:2021年 5月 21日  第204国会  内閣委員会

土地利用法案 実質審議入り まるで戦前の弾圧法

衆院内閣委

赤嶺議員が追及

「住民の不安」立法根拠なし

 基地周辺や国境離島の住民を監視する土地利用規制法案が21日の衆院内閣委員会で実質審議入りしました。与党は今国会中の成立を狙っています。同法案は、基地などの「機能阻害」のおそれがあれば土地の利用中止を命じ、応じなければ刑事罰を科すというもの。日本共産党の赤嶺政賢議員が追及しました。

 赤嶺氏は、戦前、要塞(ようさい)地帯法や治安維持法、軍機保護法などが制定され、基地などを撮影・模写しただけで逮捕されたと指摘。一連の治安立法は戦後、廃止されたにもかかわらず、「当時を彷彿(ほうふつ)とさせる法案の提出に憤りを感じる」と批判しました。

 赤嶺氏は、こうした治安立法で国民が弾圧され、戦争へと駆り立てられた歴史への反省・教訓は議論したのかと追及。木村聡内閣審議官は「土地利用に関する有識者会議では特段議論していない」と述べ、戦前の教訓は踏まえていないことを認めました。

 政府は法案提出の根拠として、外国資本による北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地購入に対する自治体・住民の「不安」をあげています。

 赤嶺氏は、全国約1800の自治体のうち意見書提出は16件にとどまり、千歳市と対馬市から意見書は提出されていないと指摘。政府もこの事実を認めました。

 赤嶺氏は、千歳基地周辺で土地が購入されたとされる北海道苫小牧市を含め、3市議会で同問題が議論されたのはそれぞれ数回程度だとして、「『住民の不安』に根拠がない」と強調しました。さらに、苫小牧市での土地購入は、市が統合型リゾート(IR)構想を進める下で行われ、購入された土地もIR施設の予定地に隣接していると指摘。「安全保障ではなく、IRとの関連を考えるのが常識的だ」とただしました。

 木村審議官は、千歳市議会の一部議員のやりとりの例をあげるだけで根拠を示しませんでした。赤嶺氏は「議員の質問は、そのまま安全保障上の危機にはつながらない。うわさや思いこみのレベルで法案を提出した」と批判しました。

政府提出資料(地方議会からの意見書)

 

 

 

論戦ハイライト

処罰の対象 白紙委任

土地利用規制法案 撤回せよ

衆院内閣委で赤嶺議員

 日本共産党の赤嶺政賢議員は21日の衆院内閣委員会で「土地利用規制法案」の問題点を指摘し、撤回を求めました。

 赤嶺氏は、政府が昨年、外国資本による土地売買の本格調査を開始し、中国系資本が関与した可能性のある買収を計700件確認したとの報道(「産経」14日付)について事実関係をただしました。

事実関係調査を

 小此木八郎領土問題担当相は「調査した事実はない」と否定しましたが、赤嶺氏は、「読売」昨年12月22日付が中国系資本による土地買収事例が約80カ所あったとする政府調査を報じるなど、同様の報道が繰り返されていると指摘。「法的根拠なく調査をしているならば法案審議どころではない」として、事実関係の調査を求めました。

 赤嶺氏は、戦前、要塞地帯法や治安維持法、軍機保護法など一連の治安立法により、基地や軍艦などを撮影・模写しただけで逮捕され、戦争に反対する者は容赦なく弾圧・拷問の対象にされたと指摘。今回提出された法案は戦前を彷彿(ほうふつ)とさせるものだと追及しました。

 赤嶺 法案提出にあたり、戦前の歴史への反省・教訓を議論したのか。

 木村聡内閣官房審議官 教訓等について有識者会議で議論いただいていない。

軍事行動を優先

 赤嶺氏は「法案は、政府が国民を日常的に監視し、基地などの機能阻害行為、つまり軍の行動を邪魔する者がいれば処罰の対象にするものだ」と強調。しかも、何を処罰するかを政府に白紙委任していると告発し、「軍事行動を至上価値とし、国民の権利が制限されても構わないという発想は戦前と変わらない。現行憲法下でこのような法案が許容される余地などない」と断じました。

 赤嶺氏は、自民党内で土地利用規制問題に関する検討会を主宰した高市早苗元総務相が自身のホームページのコラムで、中国の国防動員法(2010年施行)に触れ「仮に日中間に軍事的対立が起きた場合には、莫大(ばくだい)な数の在日中国人が国防勤務に就くことになる可能性がある」などと述べていることを指摘。このような認識では差別感情により在日外国人が殺害された関東大震災のときと同じ過ちを繰り返すことになりかねないとして、法案の撤回を求めました。

自衛隊施設だけで500カ所超が対象に

 政府は21日の衆院内閣委員会で、「土地利用規制法案」で規制対象となりうる自衛隊関係施設が、全国で約500カ所以上と明らかにしました。公明党の浜村進議員への答弁。

 木村聡内閣審議官は、土地・建物の所有者などを調査し、施設の機能を阻害する行為などについて利用中止の勧告・命令ができる「注視区域」について、合計約四百数十カ所の施設周辺が指定の検討対象となると説明。指揮中枢機能や司令部機能を有し、特に重要として周辺土地・建物の売買に事前の届け出を義務付ける「特別注視区域」の検討対象は、約百数十に上るとしました。

 米軍基地については、米側と詳細を確認するとしています。

 また、海上保安庁の施設に関しては、当面、尖閣諸島周辺の海域で領海警備を担当している第11管区海上保安本部と、石垣海上保安部の2施設とする考えを示しました。

 「生活関連施設」では、原発や自衛隊と共用している民間空港を挙げました。(しんぶん赤旗 2021年5月22日)

質問の映像へのリンク

まるで戦前の弾圧法(衆院内閣委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、内閣委員会での質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 私も、今、後藤議員が指摘をした産経新聞、やや重なるところもありますが、きちんと説明をしていただきたいと思います。
 先週十四日付の産経新聞で、政府が昨年、外国資本による土地売買の本格調査を開始したということが報じられました。防衛施設の周辺十キロ以内や国境離島、宇宙開発施設周辺まで調査し、中国系資本が関与した可能性のある買収などを、去年の秋までに約八十件、その後の調査で計七百件把握したという内容であります。しかも、対象者の定点観測や周辺からの情報収集などを行い、アメリカ側と意見交換を行っていることもうかがえるものになっております。
 これから法案の審議をお願いする立場にある政府が、既に法案でできること以上の調査を行っているとすれば、国会軽視も甚だしいと言わなければなりません。
 大臣に伺いますが、既に理事会の求めに応じて事実関係を調査した、こう聞いてはおりますが、結果はどうだったんでしょうか。

○小此木国務大臣 重なりますけれども、この報道内容についてだと思いますけれども、関係省庁に確認をいたしました。
 報道にあるような調査は行っておらないということと、外国資本による七百件の土地買収を確認したという事実はないという回答を私受けておりまして、政府としては、全体としてもそういうふうに認識をしております。

○赤嶺委員 そうすると、今回の報道というのは誤報だということですか。

○小此木国務大臣 私は、各機関から、調査をした事実はない、七百件の土地買収を確認した事実はないという報告を受けております。

○赤嶺委員 仮に警察機関や公安調査庁がこのような調査を行っているとしたら、普通は調査を行っているかどうかも含めて事実関係を明らかにしないと思うんですよね、これまでの政府のスタンスとして。その点、政府はきちんと、各機関、本当に中身を説明したという具合に認識していらっしゃるんですか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども大臣から御答弁をさせていただきましたけれども、私ども内閣官房の方から関係省庁の方に厳密に確認をさせていただきました。
 そうしたところ、報道にあるような調査は行っておらず、外国資本によります七百件の土地買収を確認したという事実はない、このような回答をいただいているところでございます。

○赤嶺委員 しかしながら、同種の報道は続くんですね。同じような報道は、昨年の十二月二十二日の読売新聞、自衛隊施設などの周辺で中国系資本が土地買収に関わったと見られる事例が約八十か所あったとする政府調査の内容を報じています。
 これは法案審議の前提に関わる問題です。法的な根拠もなく既にこんな調査をやっているとしたら、法案審議どころの話ではなくなってしまいます。どこの省庁が、いかなる法的根拠に基づいて、どのような調査を行っているのか、改めて実質的な聞き取り調査を行って、結果をきちんと報告していただきたいと思いますが、その点、大臣、よろしいでしょうか。

○小此木国務大臣 私が報告を受けたのは、調査を行ったことはないということなんですね。そして、七百件の土地買収を確認したという事実もないということですから、調査そのものを行っていないということを申し上げております。

○赤嶺委員 本当に調査を行っていないのかどうか、余りにも報道が続いているものですから、法案審査の前提になる問題ですから、きちんと確認をしていただきたい。
 法案提出の根拠について伺います。
 今回の法案は、政府が安全保障上重要とする施設周辺、国境離島の住民を調査し、機能を阻害する行為や、その明らかなおそれがあると判断をすれば、土地や建物の利用を中止させ、応じなければ処罰するというものです。
 戦前、要塞地帯法や治安維持法、軍機保護法など一連の治安立法が制定され、基地や軍艦などを撮影、模写しただけで逮捕され、戦争に反対する者は容赦なく弾圧、拷問の対象にされました。国民の自由を奪い、戦争へと駆り立てていった歴史への反省から、戦後、こうした治安立法は廃止されました。ところが、今また、当時をほうふつとさせるような法案を政府が提出してきたことに、私は強い憤りを感じております。
 今回の法案提出に当たり、戦前の歴史への反省、教訓については、いつ、どこで議論したんですか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 この法律の必要性、あるいはその基本的な枠組みにつきましては、昨年大臣の下に設置させていただきました有識者会議の方で御議論いただいたところでございます。
 以上でございます。

○赤嶺委員 私が聞いているのは、戦前、治安立法がもたらした歴史の教訓について、悲惨な歴史的な結果について、その教訓の上に立って今回こういう立法の作業をしたのか、したとすれば、どこでそういう議論をやったのか、やっていないとすれば、やっていないのか、はっきり答えてください。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘をいただきました一連の教訓等につきましては、先ほど申し上げました有識者会議の中では特段御議論はいただいていないところでございます。

○赤嶺委員 今回の法案は、政府が国民を日常的に監視し、機能阻害行為、つまり、軍の行動を邪魔する者がいれば処罰の対象にするというものであります。しかも、何を処罰の対象とするかは政府に白紙委任するものとなっています。
 軍の行動を至上価値とし、国民の権利は制限されても構わないという発想の法律であります。根底にある考え方は戦前と変わりません。現行憲法下でこのような法案が許容される余地はないと思いますが、大臣、いかがですか。

○木原委員長 木村内閣審議官。(赤嶺委員「大臣に聞いているんだ、政治的見解を」と呼ぶ)どうぞ先に御答弁ください。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 私権制限との関係につきましては、先ほど来御答弁申し上げております有識者会議の中でも御議論いただいたところでございます。
 安全保障の確保という目的の下では、一定程度それは正当化されるというような御議論をいただいたところでございます。
 以上でございます。

○小此木国務大臣 委員がおっしゃる過去からの反省、教訓というのは、私も、戦後の生まれでありますけれども、年上の方々、あるいは先輩、両親から聞いてまいりました。その上で、戦後の国会も様々な議論を重ねてきておる、こういうふうに思います。
 午前中の議論でも言ってまいりましたけれども、そこの上で、安全保障の環境というものが今格段に変わってきているということについての様々な安全保障上のリスクが地方からも聞こえてきたということから、有識者の提言も踏まえて、今回提出に至ったということでございます。

○赤嶺委員 大臣、当初自民党は、治安維持法と同じ年に制定された外国人土地法の改正による法整備を模索しておりました。WTOとの関係で別の形の法案になっておりますが、根底には戦前の歴史への無反省があるということを私は強く指摘しておきたいと思います。
 そこで、大臣は、十一日の本会議の答弁で、航空自衛隊千歳基地や海上自衛隊対馬防備隊周辺の外国資本による土地の取得に地域住民の不安が広がっていることや、全国の地方自治体から意見書が提出されていることを根拠に挙げました。
 今日の質疑に先立って、その意見書を全て提出していただきました。全国の市町村、都道府県や東京二十三区を含めて千八百近くある自治体の中で、提出されているのは十六件でした。しかも、そこには、政府が法案提出の根拠に挙げる地域の地元市議会、千歳それから対馬ですね、それらの市議会は含まれておりません。千歳基地がある千歳市、同基地から三キロほど離れたところで外国資本による土地の購入があったとされる苫小牧市、対馬防備隊に隣接する土地の購入があったとされる対馬市、いずれも含まれておりません。
 住民の不安が広がっているとしながら、肝腎の地元市議会からは意見書は提出されていないということですか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘ございましたように、千歳市あるいは対馬市そのものからは直接私ども御要望いただいておりませんけれども、それぞれの市議会におきましては国の対応についての御議論がなされていた、このように承知しております。
 以上でございます。

○赤嶺委員 大臣の説明の肝になっている地元市議会から意見書が上がっていない。ほかのところからは上がっていますよという話がありました。
 意見書が提出されていないだけではありません。この問題が取り沙汰されるようになった二〇〇八年頃からの三つの市議会の会議録を見てみました。ところが、取り上げられているのはいずれも数回程度であります。地元の新聞報道も見てみましたが、これもほとんどありません。べた記事が数件程度あるだけです。
 住民の不安が広がっていると言いますが、どういう根拠に基づいてそのようなことを言っているんですか。客観的な事実として示せるものはあるんですか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘ございました千歳や対馬の事例を受けまして、全国各地の地方公共団体の方から国に対しまして、安全保障の観点からの土地の管理に関する法整備などを求める意見書を提出していただいているところでございます。
 例えばということで御説明させていただきますが、令和二年八月に提出されました北海道東北地方知事会の提言等、これにおきましては、住民の安全、安心な暮らしを確保するため、国は安全保障の視点で重要な国土区域を定め、安全保障上重要な施設周辺など、土地取得、利用の規制に係る関係法令の整備を行うことにつきまして提言をいただいているところでございます。

○赤嶺委員 語るに落ちるというのはこういうことですよ。大臣は、この法の根拠で千歳や対馬をずっと挙げてこられたわけですよ、十一日の本会議でも。そこで意見書は上がっていないじゃないかという具合に指摘されたら、いやいや、別のところからこの意見が出ていますなんて、肝腎のところでの根拠を示せないじゃないですか、不安が広がっていると言いながら。
 私、もうちょっと調べてみたんですよ。千歳基地周辺で取得したとされる土地は、苫小牧市内にあります。念のために、私も地元の市議さんに確認してみました。そうしましたら、外国資本による土地の取得に住民の不安が広がっているなどという話は聞いたことがない、不安が広がっているのはIR、カジノだ、こうおっしゃっていました。
 大臣は、その苫小牧市内の土地を具体的にいつ、誰が、どういう目的で購入したかは把握しているんですか。

○小此木国務大臣 御指摘の航空自衛隊千歳基地周辺の事例については、防衛関係施設周辺の土地を外国資本が取得したことに関し、地方議会において、安全保障の観点から国に必要な対応を求めることについての議論が行われた事例として政府が把握しているものであります。
 具体的には、平成二十六年六月の千歳市議会において、同市から、平成二十六年一月に千歳空港の滑走路南端に近接する森林約八ヘクタールが外国資本に取得されたことが確認され、その利用目的は資産保有のためとの情報提供を得た旨の答弁があったと承知しております。

○赤嶺委員 北海道のホームページにも出ているわけですよ。北海道は二〇一二年以降、海外資本による森林取得状況の調査結果、これをホームページで公表しています。それによると、確かに二〇一四年に香港の方が六ヘクタールの土地を資産保有の目的で購入し、今も保有し続けていることになっています。
 二〇一四年というのは市長選があった年です。ここでは既にIRが争点になっています。再選された岩倉市長は、その後、IRを中核として、宿泊施設やMICE、周辺市街地の整備などを一体で進める国際リゾート構想を推し進めてきました。
 住民からは、ギャンブル依存症や自然環境の破壊に対する不安の声も上がってきました。そうした中で、指摘される土地の購入も行われているということであります。しかも、その土地は、IR施設を整備しようとしているその場所の隣接地と聞きました。
 何か、安全保障上の問題であるかのように言われていますが、まずはIRとの関連を考えることが常識的ではありませんか。そうしたこととの関係、これは確認しておりますか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の件でございますけれども、私どもが承知しております、千歳市議会におきます定例会におけるやり取りでございますけれども、防衛施設等の周辺の外国資本の土地取得について御質問がなされたわけでありますが、それに対しまして当局の方からは、外国資本の土地取得に係る法整備は、自治体の権限を越えるものであって、国防の観点から、国において適切に対応されるものと考えている、現在、北海道から国に対し、危機管理の観点から、外国資本等による重要な施設周辺などの土地取引について法令の整備を要請していると承知している、このようなやり取りがなされていると確認してございます。

○赤嶺委員 政府が根拠に挙げている千歳空港の周辺の土地だとか、そこで起こっているのはIRの問題ですよ。対馬の市議会からも意見書は上がっていない。実際には根拠はないですよ。議会でいろいろな立場の議員さんが、自分の思想信条、信念に基づいて質問は行われると思います。それがそのまま安全保障の危機ということにはつながらないですよ。それはそれぞれの立場で議会で言っているということであって、やはり今度の法案というのは、外国人が買っているぞ、怪しいぞといううわさや思い込みのレベルで法案を提出してしまったというようなことを指摘しておきたいと思います。
 十六件の意見書、政府から提出していただきました。これも問題をよく整理する必要があると思います。確かに法整備を求めてはいますが、多くの意見書が今回の法案とは別のことを法整備の理由に挙げています。
 大臣は、これらの意見書には全て目を通されておりましたか。そして、同じようなタイトル、表現が出てくる意見書が多いのにお気づきですか。

○小此木国務大臣 全てに目を通してはおりませんけれども、例えば、地方自治法に基づく意見書の上がってきたものとして、ここにこういう資料がございますけれども、目を通すことはいたしました。

○赤嶺委員 同じような表現が出てくる意見書が幾つもあるんですね。
 例えば、和歌山県議会の意見書、こう述べております。近年、北海道を始め、他県においても、スキー場、ゴルフ場、温泉施設などへ外国資本が進出しており、このような投資や売買による土地所有が無制限に拡大するようなことになれば、日本国民の安全保障や国土保全の観点から国家基盤を揺るがす問題に発展しかねないと危惧する、こう述べているわけです。スキー場や温泉施設などへの外国資本による投資、国家基盤を揺るがすような安全保障上の問題ですか、これが。
 そして、有識者会議の議論、これも読んでみましたが、法案の内容ともこれらの意見書の中身は違うと思いますけれども、大臣、この点、どのようにお考えですか。

○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 地方自治体からの意見書の中身については様々なものがあるというのは御指摘のとおりでございます。
 今、観光地への投資について御指摘がございました。一般的な対内直接投資につきましては、有識者会議においても様々な議論を行っていただいたところでございます。
 改めて申し上げるまでもございませんけれども、経済活動、グローバル化が進んでおりますので、外国資本によります対内投資は、イノベーションあるいは新しい技術をもたらすということとともに、地域の雇用機会の創出にも寄与するものでございますので、御指摘ございました様々なリゾート施設等々、観光地への対内投資も含めまして、基本的には我が国経済の持続的成長に資するものだ、このように考えているところでございます。

○赤嶺委員 そういう有識者会議の議論もあったわけですよね。有識者会議の提言も、今答弁がありましたように、外国資本による対内投資はイノベーションや地域の雇用創出に寄与する、こう指摘しているわけですね。
 よく中身を見ていくと、地方議会の意見書、それと今回の法案、これにはずれがあると思いますが、その点、大臣、いかがですか。

○小此木国務大臣 日本への海外からの投資、これは経済成長として重要なものであると思いますが、委員が御指摘されている御疑念といいますか、地方から安全保障上のリスクというものが伝えられたのも事実でありますし、近年の我が国を取り巻く安全保障の環境が厳しくなっているということも私は事実だと思っております。そういう観点からも有識者会議での提言があり、この法案を提出させていただくことになっておるのが今日の状況でございます。

○赤嶺委員 対馬と千歳や、そこの、大臣が説明していた当該地方自治体からは意見書も上がっていないのに、広く地方から意見が上がっているというのは政府の思い込みじゃないですか。だって、提出してもらった意見書も全部読んだら、やはりリゾート地での外国資本の進出に対する危惧ですよ。これが何で安全保障につながっていくんですか。そういうものじゃないということを有識者会議は言っていますでしょう。根拠、ないんですよ。大臣は本会議場でも対馬と千歳しか説明しなかったんですよ。それ以外、やっていませんよ。意見書が出たところも、実際この法案の中身と違うんじゃないですか。
 近年のインバウンド頼みのオーバーツーリズムによって、地価の高騰や交通混雑、観光客のマナーの問題など、地域住民の生活に支障が生じる事象が起きてきていました。沖縄の宮古島でも、家賃が二倍に跳ね上がり、住む場所もままならないような状況になりました。京都でも、民泊の解禁によって住民との間でトラブルになったり、交通混雑でバスにも乗れないといった問題が起こってきました。
 しかし、先ほどのIRもそうですが、これらは観光政策の在り方をめぐる問題であって、安全保障の問題ではありません。意見書が求めているのは、実際は今回の法案ではなく、別の対策だと思います。一旦立ち止まってよく問題を整理することからやり直すべきだと思います。
 今回の法案に関わって私が強く懸念するのは、ヘイトスピーチを始め日本国内に排外主義が広がっている下で政府がこのような法案を提出したことの与える影響です。
 自民党内では、当初この問題の検討を主宰しておられたのは高市元総務大臣でした。御自身のホームページにコラムを掲載されておりますが、今年三月のコラムでは、二〇一〇年に施行された中国の国防動員法に触れて、こう述べています。仮に日中間で軍事的対立が起きた場合には、中国資本系企業の日本事務所も中国の国防拠点となり得ますし、莫大な数の在日中国人が国防勤務に就くことになる可能性がある、中国政府が日本国内での大規模土地取得を強力に推進し始めたのは平時からの国防動員準備業務の一環なのではないかという疑念を抱きました、こう述べています。
 やはり、このような認識で日本で暮らす外国人の方々を見るようになったら、一体どういうことになってしまうのか。関東大震災のときと同じような過ちを繰り返すことになるのではないか。根拠のない法案、しかも排外主義の考え方と結びついたこの法案は撤回し、廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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