国会質問

質問日:2021年 5月 11日  第204国会  本会議

基地周辺住民を監視 土地利用規制法案 衆院で審議入り

「違憲立法」赤嶺氏批判

 基地周辺や国境離島の住民を監視し、土地等の利用を規制する「土地利用規制法案」が11日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、「平和主義と基本的人権をふみにじる違憲立法だ」と批判し、廃案を求めました。

 法案は米軍・自衛隊基地や原発などの周囲約1キロメートルや国境離島を「注視区域」に指定し、土地所有者らの氏名、住所、国籍などの調査や、基地等の「機能を阻害する行為」とみなした場合に利用中止の命令を可能にするもの。

 赤嶺氏は、基地周辺住民は日常的に基地被害に苦しめられ、沖縄の住民は米軍占領下で土地を奪われ、基地周辺に住まざるを得なかったと指摘。「国策により負担を強いてきた住民を監視対象にするのは、住民を愚弄(ぐろう)するものだ」と強調しました。

 赤嶺氏は、法整備の根拠を外国資本による基地周辺の土地購入としていることに関し、防衛省が全国650の米軍・自衛隊基地の隣接地を調査しても運用に支障が生じる事態が確認されなかったと指摘。「立法事実が存在しない」と迫りました。

  「注視区域」の指定基準などを法案成立後に策定することに関し、赤嶺氏は、「核心部分を政府に白紙委任している」と批判。沖縄の辺野古新基地建設の抗議の座り込みが「機能阻害行為」に適用されるのかをただし、「処罰対象にするのは容認できない」と強調しました。

 小此木八郎領土問題担当相は「一概に答えるのは困難だ」とし、「単に座り込みを続けるなど機能を阻害する明らかな恐れがないものは対象とは考えない」と述べました。(しんぶん赤旗 2021年5月12日)

 

 

土地利用規制法案に対する赤嶺議員の質問

衆院本会議

 日本共産党の赤嶺政賢議員が11日の衆院本会議で行った、土地利用規制法案についての質問の要旨は次の通りです。


 本法案は、政府が安全保障上重要とする全国の米軍・自衛隊基地、海上保安庁の施設、原発などの周囲約1キロメートルと、国境離島で暮らす住民を監視対象にし、土地・建物の利用を中止させることを可能にするものです。憲法の平和主義と基本的人権をふみにじる違憲立法にほかなりません。

 基地周辺住民は、軍用機の墜落や部品落下、爆音、環境汚染、軍関係者による犯罪など基地あるがゆえの被害に日常的に苦しめられています。とりわけ、沖縄の住民は、米軍占領下で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかったのです。国策により、負担を強いてきた住民を監視の対象にするとは一体どういうことですか。住民を愚弄(ぐろう)するものです。

 政府は、法整備の根拠として、北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地を外国資本が購入したことを挙げますが、それらが一部メディアで取り上げられるようになったのは10年以上も前のことです。

 当初から政府自身が運用に支障が生じるような事態は確認されていないと答弁し、さらに2013年度以降、2度にわたり、全国約650の米軍・自衛隊基地の隣接地を対象に、約6万筆、8万人近くの所有者らを調査しましたが、結果は同じでした。法案の必要性、立法事実が存在しないではありませんか。

 政府がこうした法整備に踏み切ることは、排外主義的な主張にお墨付きを与え、特定の国に対する差別と偏見を助長することになるのではありませんか。

 重大なのは、どこで誰をどのように調査・規制するかという核心部分を政府に白紙委任していることです。何カ所の施設と離島を対象に検討し、どういう基準で指定するのですか。「特別注視区域」の指定基準は何ですか。

 調査範囲を拡大すれば、膨大な数の国民が調査対象にされるのではありませんか。

 重要施設や国境離島の機能を阻害する行為やその明らかなおそれがあれば、土地・建物の利用を中止させるとしていますが、どう判断するのですか。

 公募情報にとどまらず、職歴や海外渡航歴、思想・信条、家族、交友関係まで調査するのではありませんか。

 沖縄では辺野古新基地建設に抗議の座り込みが続いていますが、こうした活動に機能阻害行為を適用するのですか。憲法が保障する基本的人権と民主主義、地方自治を守る活動を処罰の対象にするなど断じて容認できません。本法案は廃案にすべきです。

質問の映像へのリンク

基地周辺住民を監視(衆院本会議)

議事録

○赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、土地利用規制法案について質問をします。(拍手)
 本法案は、政府が安全保障上重要とする全国の米軍、自衛隊基地、海上保安庁の施設、原発などの周囲約一キロメートル、さらに、国境離島で暮らす住民を全て監視の対象にし、土地建物の利用を中止させることを可能にするものです。憲法の平和主義と基本的人権を踏みにじる違憲立法にほかなりません。
 基地周辺住民は、軍用機の墜落や部品の落下、昼夜を分かたぬ爆音、環境汚染、軍関係者による犯罪など、基地あるがゆえの被害に日常的に苦しめられています。
 とりわけ、沖縄の住民は、米軍占領で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかったものであります。
 国策により負担を強いてきた住民を監視の対象にするとは一体どういうことですか。これほど住民を愚弄するものはありません。
 法案提出に当たり、昨年、政府が設置した有識者会議で、このことが一切議論されていないのはなぜですか。関係自治体、住民の意見は聞いたのですか。
 政府は、法整備の根拠として、北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地を外国資本が購入したことを挙げますが、それらが一部メディアで取り上げられるようになったのは十年以上も前のことです。
 当初から、政府自身が、運用に支障が生じるような事態は確認されていないと答弁し、さらに、二〇一三年以降、二度にわたり、全国約六百五十の米軍、自衛隊基地の隣接地を対象に、約六万筆、八万人近くの所有者らを調査してきましたが、結果は同じでした。
 法案の必要性、つまり立法事実自体が存在しないということではありませんか。
 にもかかわらず、具体的な根拠もなく、政府がこうした法整備に踏み切ることは、排外主義的な主張にお墨つきを与え、特定の国に対する差別と偏見を助長することになるのではありませんか。
 重大なことは、どこで誰をどのように調査、規制するのかという法案の核心部分を全て政府に白紙委任していることです。
 注視区域は、法案成立後の基本方針で指定の考え方を決め、新設する審議会の意見を踏まえ要否を判断するといいますが、全国何か所の施設と離島を対象に検討し、どういう基準で指定するのですか。
 特別注視区域の指定基準は何ですか。
 調査範囲を周囲一キロとし、他の施設や国境離島に拡大すれば、膨大な数の国民が調査対象にされるのではありませんか。
 重要施設や国境離島の機能を阻害する行為や、その明らかなおそれがあれば、土地建物の利用を中止させるとしていますが、それをどう判断するのですか。
 不動産登記簿や住民基本台帳などの公簿情報にとどまらず、職歴や海外渡航歴、思想、信条、家族、交友関係まで調査することになるのではありませんか。
 機能阻害行為の事例として、電波妨害やライフラインの供給阻害、施設への侵入などを挙げますが、これらは既に現行法で規制されているのではありませんか。
 沖縄では、政府が県民の民意を無視して強行する辺野古新基地建設に抗議の座込みが続けられていますが、こうした活動に適用しようというのですか。
 憲法が保障する基本的人権と民主主義、地方自治を守るための活動を処罰の対象にするなど、断じて容認できません。
 以上、本法案は廃案にするべきことを主張し、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

○国務大臣(小此木八郎君) 赤嶺議員から、十問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。
 まず、防衛関係施設の周辺の区域の住民を監視の対象とするのかという点について御質問いただきました。
 本法案は、安全保障等の観点から重要な防衛関係施設等の周辺や国境離島等の土地等の利用実態を調査し、必要に応じて、それらの機能を阻害する利用を規制しようとするものであります。
 御指摘のあった、対象区域の住民の方を監視するものではありません。
 有識者会議における住民の負担に関する議論、及び地方公共団体や住民からの意見聴取について御質問いただきました。
 有識者会議では、我が国の安全保障をめぐる内外情勢を踏まえた新たな制度の基本的な枠組みについて議論が行われました。その中で、新たな制度に伴う地方公共団体及び地域住民の負担や懸念の声などを考慮する必要性についても議論が行われたところであります。
 本法案のベースとなった有識者会議の提言は、こうした幅広い議論を経て取りまとめていただいたものです。
 また、有識者会議での議論に加え、防衛関係施設が所在する地方公共団体等とも意見交換を行いました。
 この意見交換の中では、例えば、住民の安全、安心な暮らしを確保するため、安全保障上重要な施設の周辺において、土地利用等の規制に係る関係法令の整備を行うべき、外国資本に限らず、土地取得後の利用に問題があれば、財産権の行使に一定の制限をかけることは問題ない、国が責任を持って安全保障上の必要性から相応の規制を行うことについては、国民生活の安定という観点からも評価できるなどの意見がありました。
 本法案に基づく措置を実施するに当たっては、地方公共団体の理解、協力を得ていくことは重要です。
 今後とも、関係する地方公共団体等とは丁寧に意見交換を行ってまいります。
 次に、法案の必要性、立法事実について御質問いただきました。
 御指摘のあった防衛省の調査は、全国六百五十の防衛関係施設の隣接地のみを対象として、土地登記簿謄本等による調査を行ったものです。
 これまで、住所、氏名から外国人による所有と類推される土地が七筆確認された一方で、登記簿の地目以上の利用実態までは把握できていないと承知しています。
 本法案が想定する機能阻害行為があったかどうか、あるいはその内容についてお答えすることは、安全保障の観点から、必ずしも適切でないと考えます。
 我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地の買収を行っていることは、安全保障の観点から、長年問題視されてきた課題であり、国会や地方議会でも議論されてきました。
 全国各地の地方公共団体からは、安全保障の観点から土地の管理を行うための法整備を求める意見書が提出されています。
 本法案は、そうした要請に応えるため、防衛関係施設等の重要施設の周辺や国境離島等における土地等の利用状況を調査し、必要に応じて、それらの機能を阻害する利用行為を規制するものとして、取りまとめたものです。
 次に、特定の国に対する差別と偏見を助長するのではないかとの懸念について御質問いただきました。
 安全保障の観点からリスクのある、防衛関係施設等の重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為については、その主体が外国人、外国法人であるか又は日本人、日本法人であるかにかかわらず、適切に対処することが必要であり、本法案は、内外無差別の枠組みとしています。
 すなわち、安全保障の観点からリスクのある土地建物については、それらの利用者が外国人、外国法人である場合に限定せず、利用の実態を調査し、必要に応じて利用規制を行うこととしています。
 したがって、本法案が特定の国に対する差別と偏見を助長するとの御指摘は当たらないと考えます。
 なお、有識者会議の提言においても、我が国の法律に基づいて設立された会社であっても、実質的な所有者や支配者が日本人ではないケースもあり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適切でないとされたところであります。
 次に、区域指定の基準及び検討状況について御質問いただきました。
 本法案の対象区域は、重要施設の周辺及び国境離島等に関し、まず、土地等が当該重要施設及び国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要がある区域を、注視区域として指定し、その上で、重要施設又は国境離島等の、機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、その代替が困難であるものについては、特別注視区域として指定することとしています。
 重要施設の周辺のうち、自衛隊施設については、例えば、指揮中枢機能、警戒監視、情報機能、防空機能等を有する施設、部隊等の活動拠点となる又は機能支援を行う施設等の周辺が、区域指定の検討対象になるものと考えています。
 その他、海上保安庁の施設や政令で定めることを想定している原子力関係施設など重要インフラ施設の周辺も、区域指定の検討対象になるものと考えています。
 次に、国境離島等については、領海基線を有する離島である国境離島、及び有人国境離島法に基づく有人国境離島地域を構成する離島である有人国境離島地域離島において、それぞれ区域を指定いたします。
 領海基線の近傍や領海警備等の活動の拠点となる港湾施設及び行政機関の施設等の周辺が、区域指定の検討対象になるものと考えています。
 法施行後に行う具体的な区域の指定は、法定する手続に沿って、第三条に規定する必要最小限の原則を踏まえ、適切に判断いたします。
 このため、現時点においては、区域指定の数の見通しをお示しすることは困難です。
 次に、調査対象となる国民の数について御質問いただきました。
 本法案に基づく調査は、対象区域における土地等の利用状況を把握するものです。
 対象区域は、法施行後に、法定する手続に沿って決定いたします。
 このため、現時点において、対象区域に所在する土地等の利用者や所有者など、数の見通しをお示しすることは困難です。
 なお、対象区域の指定に当たっては、第三条に定める必要最小限の原則を踏まえ、指定に伴う社会経済活動への影響にも配慮し、区域指定の要否、範囲等を慎重かつ適切に判断してまいります。
 次に、機能を阻害する行為のおそれに関する判断について御質問いただきました。
 本法案では、調査の結果、防衛関係施設等の機能を阻害する土地等の利用が判明した場合に、その利用の中止を勧告、命令する等の措置を講ずることとしております。
 重要施設等の機能を阻害する行為が行われるおそれがあるか否かは、不動産登記簿、住民基本台帳等の公簿情報の収集、現地・現況調査、利用者からの報告徴収を通じて収集する情報によって、土地等の利用者やその利用状況を総合的に勘案して判断することとしています。
 その判断に当たっては、防衛関係施設等の重要施設を所管する関係省庁や当該施設を運営する事業者等から機能阻害行為の兆候等に係る情報提供をいただき、その内容も参考にさせていただく予定であります。
 次に、本法律に基づく調査の内容について御質問いただきました。
 本法案に基づく調査は、注視区域内にある土地等の利用状況を把握するために行うものです。
 第七条において、内閣総理大臣が、調査の一環として、関係行政機関の長等に提供を求めることができる情報は、氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られております。
 また、第八条において、内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用者等に対し、報告徴収等を行うことができますが、報告等を求めることができる事項は、条文上、当該土地等の利用に関するものに限定されております。
 このため、本法案に基づく調査では、注視区域内にある土地等の利用者等について、その土地等の利用に関連しない、例えば、御指摘のあった思想、信条等に係る情報を収集することは想定しておりません。
 次に、機能阻害行為と現行法の規制との関係について御質問いただきました。
 本法案が対象とする重要施設等への機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢、施設等の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、現行法では規制が不十分な場合もあると考えております。
 例えば、重要施設に対する電波妨害については、電波妨害を行うための送信機とアンテナが接続され、電波を発射し得る状態にあれば、無線局の不法開設として電波法違反になりますが、アンテナのみが設置され、電波を発射し得る状態にない場合、電波法違反とはなりません。
 最後に、辺野古基地建設を例に、抗議活動に対する法の適用について御質問いただきました。
 御指摘のあった行為に対する本法案の適用について、一概にお答えすることは困難でありますが、その上で、注視区域内にある土地等において、単に座込みを続けている場合など、重要施設の機能を阻害する明らかなおそれがない態様で行われているものについては、本法案に基づく勧告、命令の対象となるとは考えておりません。
 以上であります。(拍手)

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