日本共産党の赤嶺政賢議員は13日の衆院安全保障委員会で、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で政府が計画する本島南部からの埋め立て土砂採取をやめるよう求めました。
赤嶺氏は、沖縄戦の激戦地でいまも遺骨収集が続く本島南部を採取地としたことに「沖縄の歴史や遺族への配慮はないのか」と追及。岸信夫防衛相は、委託業者が挙げた候補地だとして「法令で定められた鉱山から調達される」と答弁しました。
赤嶺氏は、遺骨収集に同行した経験も交え「手りゅう弾を抱えて自爆したため下半身しか残っていない遺骨や母親が幼児を抱えた状態で発見されるなど、遺骨からはその人の最期の様子が分かる」と指摘。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表の「戦争で亡くなった人の血や肉が染み込んだ土や石を新たな軍事基地建設に使用するのは人間のやることではない」との声を紹介し、「候補地からこの地域をなぜ除外しなかったのか」と追及しました。
防衛省の土本英樹整備計画局長は「採石業者において遺骨にも配慮する」などと答弁。赤嶺氏は、石灰岩と遺骨は容易に区別できず、素手で触って重さで判断するなど極めて専門性が高いと指摘し、業者まかせにする政府の姿勢を厳しく批判。「沖縄の歴史や痛みに向き合い、採取地から南部地域を外し、工事を中止すべきだ」と求めました。(しんぶん赤旗 2020年11月14日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょうは、辺野古の新基地建設について質問をいたします。
防衛大臣に伺いますが、政府は四月に、軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更申請書を沖縄県に提出をいたしました。埋立土砂の採取場所として、これまでは九州、瀬戸内地方と沖縄本島北部を挙げてきました。今回、これを変更して、県内については宮城島や南大東島、宮古島、石垣島を含む沖縄県全域に拡大をしております。引き続き九州地方も挙げていますが、沖縄県内で必要な量を満足できるとしております。
ところが、県内の調達可能量の七割を占めるのは、沖縄戦の激戦地である沖縄本島南部の糸満市と八重瀬町です。戦後七十五年を経た今なお、戦没者の遺骨が発見され、遺族のもとに送り届ける活動が続けられている地域でもあります。戦没者の血がしみ込んだ土砂を米軍基地の建設に使うのかという怒りの声が広がっています。
なぜそういう地域を土砂の採取場所に挙げたんですか。
○岸国務大臣 お答えをいたします。
埋立変更承認申請書に記載されております埋立土砂の一部であるいわゆる岩ズリの沖縄県内における採取場所については、沖縄防衛局から委託を受けた業者が行った採石業者に対するアンケート調査の結果、普天間飛行場代替施設建設事業に岩ズリを出荷することが可能であるとの回答を得た採石場の候補地を取りまとめたもの、こういうふうに承知をしています。
また、変更承認後の埋立てに使用する土砂の調達先につきましては、工事の実施段階で決まることでありますが、関係法令で定められた鉱山から調達されると承知をしているところでございます。
その上で、一般論で申し上げますと、沖縄本島南部における土砂等の資材については、県内のさまざまな事業で既に活用されていると承知をしておりまして、資材として用いる上で特段の問題があるとは考えていないところでございます。
○赤嶺委員 参議院の本会議でも、総理は私たちの小池書記局長の質問に対して同じ答弁をしていました。
関係法令というのは、鉱業法に基づいて許可を得た採石場から調達することを言っていると思います。もちろん、その地域の採石場はこれまでも公共事業などに使われてまいりました。
私が質問をしているのは、許可を得た場所から、さまざまな工事に採石場から調達するのは、これは当たり前のことで、私が聞いたのはそういうことではありません。今回の申請に当たって、沖縄戦の激戦地で、今も遺骨収集が続けられている地域をなぜ米軍基地の土砂の採取場所に加えたのか。沖縄の歴史や遺族への配慮は余りにもなさ過ぎると思いますが、いかがですか。
○岸国務大臣 沖縄はさきの大戦で大変凄惨な地上戦を経験されて、そして、特に本島南部地域においては多くの命が、とうとい命が失われました。沖縄の地は焦土と化して、我々としては、沖縄の方々の筆舌に尽くしがたい困難と癒えることのない深い悲しみ、これらを胸に刻みながら、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない、こういう考えでおります。
このように、多くの方々がお亡くなりになった沖縄県でございます。遺骨収集につきましては、発見された御遺骨の状況に応じて、厚生労働省と沖縄県で連携して適切に対処されていると承知をしております。
この上で、変更承認後の埋立てに使用する土砂の調達先は工事の実施段階で決まります。関係法令で認められた鉱山から調達をされる、こういうふうには思っておりますが、また、一般論として申し上げれば、沖縄本島南部における土砂の資材については、県内のさまざまな事業で活用されているものと承知をしているところではございます。資材として用いる上では契約上は特段問題がない、こういうふうに考えています。
ただ、心情的な問題として、それは、先生のおっしゃることはよく理解をするところでございます。
○赤嶺委員 心情を理解しても、そこから土砂を採取して基地建設に岩ズリを使うというのは、やはり、大臣が私の心情を理解すると言っても、理解していないんじゃないかなという気持ちを持つわけです。ここではっきり、やはり凄惨な戦場になった南部地域からは土砂は米軍基地には使いませんと言うのなら、話は別ですけれどもね。
沖縄戦の遺骨収集ボランティア、ガマフヤーの代表で、四十年近く遺骨収集と遺族への返還に取り組んでこられた具志堅隆松さんという方がいらっしゃいます。私も、何度となく遺骨収集の現場に同行させていただきました。先月も、具志堅さんの案内で糸満市のガマを見てきました。日本軍兵士の衣服のボタンや靴底、下顎の骨、大腿骨などが確認することができました。この地域には今もこうした場所が数多く残っています。
今月も、魂魄の塔という戦後沖縄で最初につくられた慰霊塔がありますが、その近くの採石現場、これは新しい採石現場なんですよ、新しく開発される、恐らく辺野古を当て込んでいるんじゃないかと思いますけれども、既存の採石場でない、そういう新しい採石現場の斜面で遺骨や遺留品が見つかっています。
発見される遺骨からは、その人の最期の様子がわかるということを説明をされました。下半身しか残っていない遺骨からは、その人が手りゅう弾を抱えて自爆したということがわかります。また、母親が幼児を抱えた状態で遺骨が見つかることもあります。湿気を含んだ黒い土が出てくるのは、人間のたんぱく質を吸い込んだからだ、このように言います。
具志堅さんは、この地域が採取場所に加えられたことについて、遺族のもとに遺骨を返そうとしているのに心が痛い、戦争で亡くなった人の血や肉がしみ込んだ土や石を新たな軍事基地建設に使用するのは人間のやることじゃない、このように批判の声を上げています。
埋立土砂の採取場所の調査は、防衛省が民間業者に委託して行っているものです。業者から上がってきた報告書に沖縄本島南部が入っていたとしても、政府として申請書を出すときには、そういう地域は除外すべきだ、このように考えるべきではありませんか。なぜ除外しなかったんですか。そして、そういう検討はしたんですか。いかがですか、大臣。
○土本政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘のアンケートの関係でございますが、沖縄防衛局から委託を受けた業者が行った沖縄県内の採石業者に対するアンケート調査につきましては、普天間飛行場代替施設事業に岩ズリを出荷することが可能であるかどうかにつきまして、沖縄県内全体で八十一事業者にアンケートを送付しまして、そのうち二十八事業者から回答があり、そのほかに一事業者から情報提供がございました。これをベースに、我々の方は、先ほど委員の御指摘のような形で記載させていただいたところでございます。
あと、委員の方からございました、岩ズリを採取する際に戦没者の遺骨が混入する可能性があるという観点に関しまして、まず、沖縄県における遺骨収集につきましては、発見された御遺骨の状況に応じまして、厚生労働省と沖縄県で連携して適切に対応されているものと承知をしております。その上で、一般論として申し上げれば、採掘途中における遺骨が発見された場合には、採石業者におきまして地元市町村及び警察に通報するものと承知をしております。
いずれにいたしましても、沖縄本島南部の鉱山内での採掘に当たっては、採石業者において、遺骨にも十分配慮した上で事業を行っているものと考えています。
以上でございます。
○赤嶺委員 適切に遺骨は発見していると言いますが、糸満の南部地域での遺骨の発見の大半は、このボランティア団体、ガマフヤーの皆さんですよ。厚労省がわざわざ行っているわけじゃないんですよ。厚労省もガマフヤーから連絡を受けて現場を見に行っているんですよ。適切になんて、そんなでたらめな答弁しないでくださいよ。
事は、遺骨はやはり家族のもとに帰りたいわけですよ。それは兵士であっても民間人であっても同じですよ。そういう遺骨が今でもどんどん出てくる。原野や森林のところに入ったら、今でもどんどん出てくるんですよ。そういうところから、今から採石をして岩ズリを取り出そうというわけですよ。
石灰岩と遺骨は見た目には絶対に区別がつかないと言っています。ガマフヤーの方は、手で、素手で、手袋もはかないで素手にさわって重さでわかると言うんですよ。そういう極めて専門性の高いものを、いや、私たちは注文をしました、後は業者がやってくれますよなんて、そういう戦場を体験した場所に対して、それが政府の姿勢ですか。
土砂の調達問題で、私は、この問題というのは、今の政権、安倍政権や菅政権の沖縄に対する姿勢そのものを問う問題でもあると考えております。
二〇〇〇年の沖縄サミット開催を決めた小渕首相は、学生時代、占領下の沖縄をたびたび訪れ、遺骨収集に参加しております。この南部地域です。開催決定の背景には、沖縄戦末期に大田海軍中将が大本営に送った、沖縄県民かく戦えり、後世格別の御高配を賜らんという電文に応えたいという心情があったと伺っております。以前、私が議員になったころ、まだ自民党の議員の皆さんから大田中将の話が出ましたよ。最近、全く聞いたことない。
そして、その小渕内閣で官房長官兼沖縄開発庁長官を務めた野中広務さんも、京都の園部町長時代に占領下の沖縄を訪れました。宜野湾市嘉数の高台に京都出身の戦没者の慰霊碑を建てるためであります。そのとき、空港から乗ったタクシーの運転手が、宜野湾市に入るところで車を停車させ、この場所で妹が殺された、アメリカ軍人ではない、暗に日本兵にということを言っていたそうであります。泣き続けていたと。その日から野中さんはずっと沖縄を思うようになった、このように話しております。
もちろん、小渕さんも野中さんも辺野古移設を推し進めたという人たちであります。それに対する私の感情もあります。それでも、沖縄の痛みに対する最低限の知識やあるいは配慮はあったと思いますよ。今の自民党政権からは、そうしたものが全く感じられないわけです。
大臣、沖縄の歴史や痛みに向き合っていただいて、沖縄本島南部からの土砂採取、これは取りやめていただきたいと思いますが、いかがですか。
○土本政府参考人 今、委員長の方から御指名いただきましたので、まず私の方から答弁させていただきます。
埋立土砂の一部である岩ズリの具体的な調達先に関しましては、先ほど大臣からも御答弁ありましたように、施工段階で確定するものでございまして、県内、県外のどちらから調達するかも含め、現時点では確定しておりません。
したがいまして、現時点では、岩ズリを南部地区から調達することが確定しているものではないということを、まず冒頭申し上げたいと思います。
○岸国務大臣 今、防衛省としての局長から答弁がありましたけれども、いずれにいたしましても、沖縄県における遺骨収集、これは、発見された御遺骨の状況に応じて、厚労省と沖縄県で連携して、先ほど御批判がありましたけれども、適切に対応されているものと承知をしておりますし、適切に対応されなければいけないというふうには思っております。
鉱山内で採掘に当たっては、もし遺骨が発見された場合、まずしっかり関係省庁と協議をして、その遺骨を丁寧に扱わなければいけない、十分配慮しなければいけない、その上で事業を行う、こういうことだと思います。
○赤嶺委員 あの一帯は、一九七〇年代にほとんど鉱業権が設定されているんです。それで、原野や山林には一歩入ると遺骨が残っているんです。皆さんは、辺野古の埋立てに必要な七割を、あの地域から岩ズリをとろうとしている。どんどんどんどん遺骨を掘り起こしていくことになるじゃないですか。適切に処理するなんて、そんなの言葉だけですよ。
まだ、工事が始まるまで決まっていないということをおっしゃいました。でも、候補地ですよ。岩ズリの七割は糸満ですよ。候補地に挙げておきながら、まだ決まっていませんという、こんな不誠実な答弁がありますか。もしそうであれば、やめようじゃないですか、今からでも。南部地域、全部外してくださいよ。もちろん辺野古も工事はやめるべきですけれども。
ここはこことして、次の議論に行きたいと思います。
もう一点、埋立土砂の問題で、今回、採取場所を県内の離島に拡大していますが、島々によって異なる生態系を持つのが沖縄の離島の特徴です。日本自然保護協会は、設計変更申請の告示、縦覧に当たって、沖縄県に意見書を提出しています。そこでは、同じ県内であっても沖縄島とは異なる自然を持つ島々からの調達は、外来種侵入のリスクを高めると指摘をしております。
今回の設計変更申請書の提出に当たって、県内各地の採取場所の外来種の生息状況、これは調査をしたんですか。
○土本政府参考人 お答え申し上げます。
普天間代替施設建設事業におきましては、環境保全図書に記載したとおり、埋立土砂の供給元などの詳細を決定する段階で、生態系に対する影響を及ぼさない材料を選定することなどによって、環境に配慮することとしております。
本年四月に沖縄県に提出した変更承認申請書に記載された埋立てに用いる土砂等の採取場所につきましては、本事業に岩ズリを出荷することが可能であるとの回答を得た採石場の候補地を取りまとめたものでございまして、変更承認後の埋立てに使用する土砂の供給元は工事の実施段階で決まることになると承知しており、変更承認申請書の提出に当たりまして外来生物の生息状況についての調査は行っていません。
○赤嶺委員 そうしますと、専門家からは、離島から土砂を搬入するのであれば、県外の場合と同様に、高熱処理で外来種を死滅させる必要があるという声も上がっています。
これから調査するというわけですが、調査結果次第では高熱処理が必要になる可能性も否定できないということですね。
○土本政府参考人 お答え申し上げます。
普天間飛行場代替施設建設事業における外来生物の侵入対策につきましては、これも環境保全図書におきまして、埋立てに用いる購入土砂等の供給元等の詳細を決定する段階で、生態系に対する影響を及ぼさない材料を選定し、外来種混入のおそれが生じた場合に、外来生物法や既存のマニュアル等に準じて適切に対応し、環境保全に配慮すること、また、埋立土砂の種類ごとに注意すべき生態系への影響の検討は、専門家の助言を得ながら行うこと等の対策を実施することとしております。
本事業におきましては、埋立土砂等を県外から持ち込み、海域へ投入することも想定されるところ、シュワブ、平成二十七年でございますが、水域生物等調査業務におきまして、特定外来生物の侵入防止対策を検討するための基礎資料といたしまして、特定外来生物が死滅する条件を明らかにすることを目的とした実験を行ったところでございます。
この実験の結果、高熱処理によりまして特定外来生物を死滅させることができるとの知見が得られたところですが、特定外来生物の具体的な駆除方法につきましては、今後、必要に応じて、専門家等の意見を踏まえながら適時適切に対応するという考えでございます。
○赤嶺委員 残念ながら、ちょっと時間が来てしまいましたけれども、外務大臣には事件、事故についての通告もしておりましたが、今、高熱処理の駆除方法についてというお話もありましたが、また引き続きの質問で明らかにしていきたいと思います。
これで質問を終わります。