国会質問

質問日:2019年 12月 5日  第200国会  安全保障委員会

枠組み自体を改めよ 赤嶺氏 日米地位協定で主張

 

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は5日、衆院安全保障委員会で、7月に改定された基地外での米軍機事故に関するガイドライン(指針)について、日本側が事故機の調査・検証もできない現状を改めていないとして、日米地位協定と日米合同委員会の枠組み自体を改めるべきだと主張しました。

 赤嶺氏は、今回の改定で「適用範囲」に「既存の日米合同委員会合意に影響を与えない」と書き加えられたと指摘。2004年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故での米兵による事故現場の封鎖に対する県民の怒りが指針策定の契機となり、17年には沖縄県が地位協定改定を求める要請書を政府に提出したと紹介し、「県民の要求は日米地位協定と合同委員会の枠組みを改めることだ。小手先の見直しで解決するものではない」と迫りました。

 また、事故発生時の公有地や民有地への米軍立ち入りをめぐり、従来の指針の日本語仮訳にあった「日本側の事前の承認を受ける暇(いとま)がないときは立ち入りを許される」との文言が、改定で英語の正文に合わせて「事前の承認なく立ち入ることが許される」と書き改められたと指摘。政府がいう「日本側の事前の承認を得る」との原則がどこにあるのかとただしました。

 鈴木量博・外務省北米局長は、ガイドライン策定に向け04年に日米合同委員会に設置された「事故現場における協力に関する特別分科委員会」に「記録がある」としつつ、「詳細は外交上のやりとりのために明らかにできない」と答弁。赤嶺氏は同会合記録の提出を求めました。(しんぶん赤旗 2019年12月7日)

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日米地位協定の枠組み改めよ(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 きょうは、日米両政府がことし七月に改定した米軍機事故のガイドラインについて質問をいたします。
 外務大臣に伺いますが、今回の改定では、まず、適用範囲のところで、「既存の日米合同委員会合意に影響を与えない。」ということがわざわざ書き加えられています。何のためにこのようなことを書き加えたんでしょうか。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 政府といたしましては、沖縄を始めとする地元の負担軽減に全力で取り組んできております。米軍の運用や地位協定をめぐる課題について一つ一つ前に進め、地域住民の皆様の負担を軽減していきたいというふうに考えております。
 今般の御指摘のございましたガイドライン、七月に改正いたしましたが、これにつきましては、今申し上げたような考え方に基づきまして、これまでの事案における課題等も踏まえ、日米間の強固な信頼関係のもと、双方が協議を重ねた結果、実現したものでございます。
 特に、内周規制線、すなわち制限区域への立入りが迅速かつ早期に行われることが明確になる等、米軍機による事故が発生した際の対応が多くの面で一層改善されることとなり、重要な意義を有すると考えております。
 その上で、御指摘いただきました本ガイドラインのパラ二において、合衆国軍用航空機事故の調査に関する管轄権及び責任に係る日米合同委員会合意に影響を与えないとの言及がございますが、これは、本ガイドラインは、事故現場での統制に係る方針及び手続、具体的には、連絡通報体制、消防、救助活動の協力、立入り規制のあり方等、事故現場における日米の共同による統制の手続を定めるものでございまして、そもそも、米軍機の事故調査の管轄権あるいは責任について定めるものではございません。
 こういった観点から、御指摘の文言は、こうした管轄権や責任について定めるものでないということを日米間で確認的に規定したものでございます。

○赤嶺委員 答弁はもっと端的に、聞かれたことに答えるという態度をとってください。長々と、聞かれていないことも言いわけ的に言って、しかも、このガイドラインの見直しというのは、普天間基地でのヘリの墜落事故以降、私は何度も取り上げてきた問題ですが、小手先の見直しで解決する問題ではないわけです。
 沖縄国際大学への米軍ヘリの墜落や高江の炎上事故を通じて県民が求めてきたのは、日本国内で起きた事故であるにもかかわらず、日本の警察は機体の調査、検証もできない、地元の首長であっても事故現場から排除される、そういう現状を改めるべきだということであります。
 そのためには、日米地位協定と合同委員会合意の枠組みに踏み込むことが必要不可欠なことだと思います。
 外務大臣、何でそこに手をつけなかったんですか。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 今申し上げましたとおり、これまでのいろいろな事案、航空機関連の事故がございましたが、こういう事案における課題も踏まえまして、特に、内周規制線、制限区域内への立入り、これが迅速かつ早期に行われることが明確となる、ここが大事だということを私ども考えましたので、そういう観点から今般のガイドラインの改正をしたということでございます。

○赤嶺委員 事実をゆがんで認識しているから、こんな小手先細工に終わるわけですよ。
 沖縄県は二〇一七年九月に、日米地位協定の改定を求める要請書を政府に提出をしております。そこでは、米軍の財産が施設・区域外にある場合には日本の当局が捜査、差押え、検証を行う権利を行使する、事故現場の必要な統制は日本の当局の主導のもとに行う、これらを地位協定に明記することを求めています。
 県民が一致して要求しているのは、日米地位協定と日米合同委員会合意の枠組み自体を改めることだということを強く申し上げておきたいと思います。
 目の前で事故が起こり、内周規制線の問題だけでなく、事故機の捜索、差押え、捜査もできない、こういう、これが主権国家かと言われるような事態に怒りを持っているわけですから、今回のガイドラインの見直しはやはり小手先だというような、しかも、それが見直しにつながっているかどうかもわからないような内容であります。
 そこで、内容について伺っていきますが、今回の改定では、事故が発生した場合の米軍による公有地や民有地への立入りについての規定が書き改められました。従来、日本語の仮訳では、日本側の「事前の承認を受ける暇がないときは、」「立ち入ることが許される。」と書かれておりました。ところが、英語の正文では、ウイズアウト・プライアー・オーソリティー、つまり、事前の承認なく立ち入ることが許されると書かれておりました。正文の英語と日本語の間で明らかに違いがあったわけです。仮訳では、事前の承認を得ることが原則で、そのいとまがないときに限って立入りが許されることになり、そして正文では、承認そのものが必要なくなってしまう。その矛盾を私は二〇〇五年の合意当時に取り上げました。
 そうしたら、今回、英語の正文の方ではなく、仮訳の方が書き改められたわけです。日本語でも「事前の承認なく」「立ち入ることが許される。」と明記をされております。
 しかし、考えてみたら、改めるべきは、まるで事前の承認など必要ないかのように書かれていた英語の正文だったはずです。それを、日本語も英語の正文に合わせてしまった。なぜ英語の方を改めなかったんですか。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘いただきました箇所、これは、米軍機が米軍の使用する施設・区域外にある我が国の財産に墜落したり、又は着陸を余儀なくされた場合の緊急事態についての基本的な考え方を述べたものでございます。
 このような緊急事態において、緊急を要するときには、あらかじめその場所の管理者の承認を求めるいとまがない場合でもありますことから、そのような場合には、米軍の代表者が管理者の承認を得ないで事故現場に立ち入ることができることを定めているものでございます。
 その上で、ほかの合同委員会合意との整合性等を総合的に勘案いたしまして、今回のガイドラインの改定に際しましては、過去のこういった文章とあわせて、仮訳の方を修正させていただいたものだということでございます。
 このガイドラインにつきましては、正文は英文でございます。英文の方につきましては、内容に変更はございません。仮訳の修正前後で、今私が申し上げたような基本的な考え方に変更はございません。

○赤嶺委員 正文と仮訳が合わない問題を二〇〇五年に取り上げたわけですよ。それを、あのとき、皆さんは同じ意味内容なことを言っておりましたが、今回になって、仮訳を正文に合わせたと。合わせるのなら、いとまがあるとき、ないときという限定がつけられているはずのものに合わせるべきだったと思いますが、それをしておりません。
 政府は、管理者の事前の承認を得ることが原則だ、このように言っておりますが、ガイドラインの文言上はそのようにはなっていないわけです。ただ、事前の承認なく立ち入ることができると書いてあるだけです。あくまで管理者の承認を得ることが原則だと言うなら、日本語の方に英語を合わせるべきではないかと思います。
 なぜ今回、正文に合わせた、不正確な文言の方に合わせたんですか。

○鈴木政府参考人 今御指摘いただいたところ、「事前の承認なくして、」というところの話かと御理解いたしましたけれども、これにつきましては、他の合同委員会の合意における訳し方ぶりとその整合性を総合的に勘案した上で、考え方としては、事前の承認を受けるいとまがないときという考え方に変更はないわけですけれども、これまでの訳し方の整合性等を勘案いたしまして、「事前の承認なくして、」との、より逐語的な表現を使用することとしたわけでございます。

○赤嶺委員 二〇〇五年当時は、訳し方も当たっていると言っていたんですよ。今になって、逐語的にといって、正確に合わせたら、やはり正文と仮訳が違っていましたと言う。
 私、もう一つ聞きたいんですが、管理者の承認を得ることが原則だ、このように言ってきましたが、公表されたガイドライン以外にそのことを日米間で確認した文書はあるんですか。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 米軍機が施設・区域外に墜落した場合の米軍関係者の現場の立入りについて、御指摘いただきましたとおり、原則、管理者の事前の承認が必要だという基本的な考え方につきましては、これまでのさまざまな日米間の議論を踏まえたものでございます。

○赤嶺委員 そういう文書があるのかと聞いているんです。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 事前の承認に関する基本的な考え方の日米間の議論につきましては、例えば、事故現場における協力に関する特別分科会の記録というものがございます。

○赤嶺委員 その特別分科会の記録について日本政府はどのように理解しておられたんですか。

○鈴木政府参考人 今御指摘いただきました事故現場の協力に関する特別分科委員会につきましては、平成十六年八月に沖縄で起きた米軍ヘリ墜落事故を受けまして、施設・区域外の航空機事故現場における日米両当局の対応のあり方を検証する目的で設置されたものでございます。
 平成十六年九月から五回の会合を開催しておりまして、現場統制のあり方等につきまして米側と協議を行い、その結果、当時、ガイドラインの作成について日米間で意見の一致を見たものでございます。

○赤嶺委員 聞いているのは、日米間の意見の一致を見たのは、当時、正文で、緊急の場合は当局の了解なくして入れるということですよね。日本政府は当時、しかし、緊急でない場合は当局の理解が、合意が必要だという解釈をしていた。そういう解釈をしたものがあるんですかと聞いているわけです。

○鈴木政府参考人 御指摘いただきました特別分科会について、記録はございます。
 ただ、その詳細につきましては、外交上のやりとりのために、明らかにすることは差し控えたいと存じます。

○赤嶺委員 私は、日本側とアメリカ側で、米軍機事故の現場への立入りについての解釈も非常にそごがあると考えているわけです。事は主権の問題です。内周規制線に速やかに立ち入ることができるようになったと言いますが、今までの経過からして、およそ考えられません。
 日米間の合意について文書があるというわけですから、それを提出してください。提出できますよね。

○鈴木政府参考人 繰り返しになりまして申しわけございません。特別分科会の記録はございますが、これにつきましては、外交上のやりとりのため、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○赤嶺委員 いつまでたっても、私たちが、米軍優先じゃないか、まるで日本の主権がないような事態が米軍機事故の現場では起こっているというような疑念は全く晴れません。
 沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したとき、いきなり米兵が普天間基地のフェンスをよじ登って大学構内に立ち入り、事故現場を封鎖しました。私はたまたまそのときに、偶然ですが、事故現場におりました。一体ここをどこだと思っているのかと、県民の激しい怒りが巻き起こりました。あの事態を繰り返さないためのガイドラインだったはずであります。
 外務大臣に伺いますけれども、管理者の承認を得ることが原則だ、このように日本政府が考えているというのであれば、ガイドラインの文言上もきちんとそのことを明確にすべきだと思いますが、いかがですか。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘いただきました管理者の事前承認につきましては、今回改正いたしましたガイドラインにおいても、米軍機が米軍の使用する施設・区域外にある我が国の財産に墜落等をした場合において、急を要するときは、あらかじめその場所の管理者の承認を求めるいとまがないこともあることから、そのような場合に、米軍の代表者が管理者の承認を得ないで事故現場に立ち入ることができるというふうに定められております。
 この背景にございますのは、原則としましては、事故等が発生したときに管理者の承認を得た上で入るということは、これは当然のことでございます。ただ、そのいとまがない場合にはこういうこともできない場合があるということでございますので、今申し上げたような表現になっているわけでございます。

○赤嶺委員 原則がどこにも書かれていないんですよ。原則以外のことは書かれていて、当然、当事者の、当局者の理解を、了解を得るということが原則というのであればガイドラインに書くべきではないですかと、外務大臣、そのことを聞いているんです。

○鈴木政府参考人 たびたび繰り返しになって申しわけございません。私どもとしましては、もう当然のことでございまして、その上で、今回、共同で、日米が共同になって、一緒にどういう形で統制しなくちゃいけないのか、その手続を明確化するために、こういういとまがない場合についてちゃんと書いておいた方がいいだろうということで書いたものだということでございます。

○赤嶺委員 原則が見当たらないことを問題にしているわけです。いとまがないときにというのは、二〇〇五年の正文では既に書かれているわけであります。
 もう一点伺いますけれども、今回の改定では、日米双方の当局又は地元の当局が環境調査を行った際に、その結果を日米合同委員会の枠組みで共有をすることが盛り込まれました。
 二〇一七年の高江の炎上事故では、沖縄県による内周規制線内での立入調査が認められたのは事故発生から六日後、米軍が汚染された土壌を持ち去った後でありました。
 防衛大臣に二点伺いますが……

○西銘委員長 時間が来ていますので、まとめてください。

○赤嶺委員 米軍は、汚染された土壌の調査結果をいつ取りまとめ、それはどのような内容だったんでしょうか。
 それから、嘉手納のパラシュート降下訓練の例外に当たる場合について、日米合同委員会合意議事録、公表するために米側と折衝するという答弁でありましたが、この点はどうなったんでしょうか。
 二点お答えください。

○西銘委員長 河野防衛大臣、時間が超過していますので、まとめてください。

○河野国務大臣 はい。
 この事故の調査報告は、民間企業が委託され、平成三十年四月に米軍に報告したものと承知をしております。
 合意議事録については、米側と調整をしております。

○赤嶺委員 終わります。

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