日本共産党の赤嶺政賢議員は15日の衆院安全保障委員会で、米軍岩国基地(山口県)所属部隊が昨年12月に高知県沖で起こした空中給油中の接触・墜落事故の調査報告書で薬物の乱用など規律違反が部隊内でまん延していたことが明らかになった問題で、事故を起こした米兵が禁止されている睡眠薬を服用していたにもかかわらず、日米地位協定に基づく航空特例法により違法性を問うことができないと指摘。「従来の延長線上の対応では、米軍機事故の再発防止はできない」として、米軍に対し航空法を全面適用するよう求めました。
また、赤嶺氏は、2016年4月に同じ部隊が同様の接触事故を引き起こしていたことを米側が日本側に通報しなかった理由をただしました。
茂木敏充外相は、米軍による事件・事故の通報手続きに関する日米合同委員会合意は日本の領域における事件・事故を対象とし、公海上の訓練空域での事故は対象外として、「合意に反するものではない」などと答弁。赤嶺氏は「そんな姿勢では、米側がどんな危険な事故を起こしても県民には何も知らせない事態が続く。合意に反しないと言うなら(合意自体を)見直すべきだ」と主張しました。(しんぶん赤旗 2019年11月22日 一部訂正)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私は、きょうは米軍機事故と地位協定の問題について質問をいたします。
昨年十二月、高知県沖で発生した米軍岩国基地所属のFA18戦闘機とKC130空中給油機の接触、墜落事故の事故調査報告が公表されました。
報告書によりますと、FA18のパイロットは、資格がないのに夜間の空中給油訓練を実施し、状況認識能力を失ってKC130の機体後部に衝突をいたしました。訓練に参加していた二人の乗組員の尿からは睡眠薬の成分が検出をされ、部隊内には、薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、命令に対する違反行為などが横行していたことを指摘しています。
添付資料には、パイロットが飛行中に酸素マスクを外し、操縦桿から手を放し、小説を読む、口ひげを整える、こうした唖然とするほかないような写真も掲載をされています。米軍内部の緩み切った実態を示すもので、ゆゆしき事態だと思います。
防衛大臣に伺いますが、政府は事故が起きるたびに、米軍機の飛行の安全確保は米軍が我が国に駐留する上での大前提だと述べてきました。今回の墜落事故と報告書が示した米軍内部の実態はまさにその大前提を揺るがすものだと思いますが、そういう認識はありますか。
○河野国務大臣 今回の事故調査は、米軍の専門の調査機関が実施したものであり、事故を引き起こした事実関係、航空機の整備状況、組織の体制などのさまざまな内容を徹底的に分析し、最終的な報告書として結論づけ、評価したものであります。
米側は、調査結果を踏まえ、部隊の複数の幹部を解任するとともに、プログラムやマニュアルの見直し、管理体制の改善に取り組んでいるものと承知しております。
他方、報告書の中で新たに判明した部隊内での規律違反が横行している実態については、著しくプロ意識に欠けるものであり、在日米軍全体に対する信頼を損なうものであること、かつ、地元の方々の安全に影響を与える重大な事案になり得たものであり、大きな不安を与えるものであることから、看過できない問題です。
今後、日米が協力して、地元の皆様の理解を得るために努力する必要があると認識をしております。
日米同盟の維持強化あるいは在日米軍の安定的な駐留については、地元の御理解が大前提であり、そのためにも、まずはしっかりとした情報提供を行い、同時に、安全面に対して最大限の配慮がなされ、事故を起こさないということが重要です。
特に情報提供の重要性については、先日、私からインド太平洋軍司令官に対しても説明を行ったところであり、今後、日米間のさまざまなレベルでこの認識を共有していきたいと考えております。
さらに、その他の面につきましても、引き続き、日米間で協力し、米軍による事件、事故の防止について、より一層しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 もう米軍には、日本駐留の大前提を揺るがしているわけですから、あなた方には日本に駐留する資格はない、そのぐらい強い姿勢でやはり臨むべきだと思います。
今、通報の話もありましたが、報告書の中には、二〇一六年四月二十八日も、同じ部隊が同じような接触事故を引き起こし、米軍嘉手納基地に緊急着陸していたことを明らかにしています。このときにしっかりした原因究明と再発防止策がとられていれば事故は防げたかもしれない、そういう認識も示しております。
この事故については、当時、日本政府への通報はありませんでした。通報がなぜなかったのか。そして、大臣はきちんと説明させるということでしたが、その説明はあったのか。この点はいかがですか。
○河野国務大臣 御指摘の沖縄本島沖で発生した事故につきましては、米側から、事実関係として、平成二十八年四月、嘉手納から約二百七十キロの公海上の訓練空域内で夜間空中給油訓練を実施した際に、FA18戦闘機がKC130空中給油機のホース及びノズルに接触した事案であり、両機体いずれにも深刻な損害がなく、嘉手納飛行場に安全に着陸したという回答があったところでございます。
事故の概要については調査報告書に記載のものと同様でありますが、そもそも、別の事故に関する調査報告書に事故原因の一つとして記載した段階で米側としては重大な事故であるとの認識を持っていたということであり、更に詳細について確認をしているところでございます。
また、米海兵隊がホームページに当該事故に関するものと思われる調査報告書が掲載されていることを確認したため、事実関係について米側に照会するとともに、先週末、関係自治体の方々に通知を行ったところでございます。
○赤嶺委員 通報の中には、米側は公海上で起きた事故だから通報の必要なしということを言っているわけです。大臣は、これはもう重大な事故だ、市民に不安を与える事故だということをおっしゃっている。
であれば、米側と日本側が共通認識を持てないでいるのは、その通報の条件として、領海内あるいは領域内に起きた事故と限っている取決めになっているわけですよ。しかし、公海上で起こったああいう重大事故が、結局、嘉手納基地に帰ってくるわけですよ。ホースを垂れ流したまま嘉手納基地に帰ってくる。
そういう点では、通報は、仮に公海上であっても、住民に不安を与えたり大きな影響を与えたりすることについては通報の義務があるんだということをはっきり日米間で合意していく必要があると思うんですが、いかがですか。
○河野国務大臣 先ほどの質問にもお答えをいたしましたが、今般の事故が地元の方々の安全に影響を与える重大な事案になり得たこと、日本の国内に駐留する在日米軍に所属している部隊によるものであること、事故機が国内にある嘉手納飛行場に帰投していることを踏まえれば、日本側へ積極的に情報提供されてしかるべき事案であったと考えております。
米側としっかりとこうした通報に関する認識を共有し、今後、しっかりそうした情報の提供が行われるようにしてまいりたいと思っております。
○赤嶺委員 認識を共有していくというそういう政府の答弁に私たちは一抹の不安を感じるわけです。
アメリカは通報の義務はなかったと言っているわけですが、これは通報すべきものであったかどうか。この点での政府の認識はいかがですか。
○河野国務大臣 今般の事故が、地元の方々の安全に影響を与える重大な事案になり得たこと、日本国内に駐留する在日米軍に所属する部隊によるものであること、事故機が国内にある嘉手納飛行場に帰投していることを踏まえれば、日本側へ積極的に情報がもたらされてしかるべき事案であったと考えております。
○赤嶺委員 それは通報においてもそのとおりで、いわば領域の外で起こった事故であっても、今度のように事故機が嘉手納基地に帰投するとか、そういう場合には通報の義務があるというぐあいにアメリカに申し入れて、そのとおりに協議していくという理解でいいんですか。
○茂木国務大臣 平成九年三月の日米合同委員会で合意されました在日米軍にかかわる事件、事故発生時におけます通報手続、これは、日本国の施政のもとにある領域において、公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件、事故が発生した場合に、米側から日本側へ通報することになっております。
そして、御指摘いただいております二〇一六年四月の事故につきましては、事実関係、アメリカ側からの回答は先ほど河野防衛大臣から答弁させていただいたとおりでありますが、米側からの説明を踏まえれば、当該事故に関して日本政府への通報がなかったことが直ちに合同委員会合意に反するものとはならないわけでありますが、他方で、事故の今回の性格、これについても河野大臣から三点指摘をさせていただきましたが、そういったことを踏まえますと、日本側に積極的に情報提供がされてしかるべき事案であったと考えております。
米軍機の航行の安全確保は米軍が我が国に駐留する上での大前提でありまして、地元の方々に不安を与えるようなことがあってはならないと考えております。
事件、事故の対応については、通報のあり方も含めて、平素からさまざまな機会を通じて米側とやりとりをしております。
また、我が国における米軍機の運用に際して安全性が最大限確保されるように、先週、ミリー米統合参謀本部議長が来ておりまして、先月末はデービッドソン米インド太平洋軍司令官、それぞれと私、表敬を受けまして会談をいたしましたが、その際にもこれらの件を申し入れたところでありまして、当該事案も踏まえまして、引き続き米側に対しまして、安全面に最大限配慮するよう強く求めていくとともに、事件、事故への対応についてもしっかりと協議をしてまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 ですから、住民に与えた不安からすればそれは日本側に連絡して当然だが、しかしアメリカ側は、これは合同委員会合意違反に当たらない、外務省も違反に当たらないと言っている。これで住民の安全が守れるわけないじゃないですか。
そうであれば、施政下にある領域というものを、公海上で事故を起こしても帰ってくるのは沖縄の米軍基地、こういうのも通報に該当するようなそういう合同委員会合意に見直すべきだと思いますが、外務大臣いかがですか。
○茂木国務大臣 先ほど申し上げましたように、事実関係からしますと合同委員会合意に反するものとはなりませんが、日本側に積極的に情報提供がされてしかるべき事案であったと日本としては考えています。
当該事案も含めまして、引き続き米側に対して安全面に最大限配慮するよう強く求めるとともに、事件、事故への対応についてもしっかりと協議をしてまいり、そして、地元の皆さんに不安を与えることがないような状況をつくってまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 こんな姿勢では、幾ら日本側に連絡するべきであったと日本政府だけで叫んでみても、米側は合同委員会合意違反じゃないからということで、どんな危険な事態になっても、県民には全く何も知らされないような事態が繰り返されるわけですよ。こういう姿勢では米軍の事故はなくならない。そういう、合同委員会合意違反でないとするアメリカの態度を改めるためにも、きちんとそれを見直すべきだということを申し上げておきたいと思います。
この二つの衝突事故があった時期、これはこの委員会でも何度も取り上げましたが、二〇一六年十二月というのは、普天間基地に配備されたオスプレイが初めて墜落事故を引き起こして、翌年十月には同じ普天間基地所属のCH53ヘリが炎上、大破する事故を起こしました。緑ケ丘保育園や普天間第二小学校などへの部品落下、米軍機による不時着が相次いでいた時期であります。
たび重なる米軍機の事故に県民が不安と怒りの声を上げていたとき、こういうこととは全くお構いなしに、ああいう訓練を本当にやってきたわけです。
そういう点では、重大な事案として抗議されたということを防衛大臣さっきおっしゃいましたけれども、抗議は防衛大臣みずからがなさったんですか。
○河野国務大臣 私がさまざま米軍の関係者と会談をし話をする中でこちら側からも、在日米軍の安定的な駐留には地元自治体の理解が大前提であるということを繰り返し申し上げ、具体的な例もお話しをしたところでございます。
私は、私の会談相手がいずれもその問題についてはしっかりと認識をしている、そういうふうに感じているところでございます。
○赤嶺委員 それは抗議ということだとさっきもおっしゃいましたが、それで間違いないわけですね。
○河野国務大臣 抗議、申入れ、どう言うかは、それは人それぞれだと思います。
○赤嶺委員 ですから、受け取る人によってそれぞれの受取り方があるようなやり方じゃなくて、明確に、抗議なら抗議とすべきですよ。米軍は絶対に改まりませんよ、こんなことでは。改まるわけがないですよ、さんざん私たちは経験してきていますから。
問題は、この岩国の部隊に限られたものなのかということなんです。
報告書は、事故機の所属する飛行中隊の司令官がシリアの軍事作戦から戻ってきた兵士の話を紹介しながら、睡眠薬の使用は全ての航空部隊に広がっていると証言をしております。従来から、中東の軍事作戦には在日米軍の部隊も参加してきました。
現在、日本に駐留する米軍関係者にもこうした薬物の使用、アルコールの過剰摂取などが広がっている可能性があります。
沖縄でも三沢でも、米軍ヘリからの窓の落下や、あるいは戦闘機からの模擬弾の落下が続発していますが、こうした事故が繰り返される背景にも、規律違反が蔓延する米軍内部の実態があるかもしれません。
この際、在日米軍の全ての部隊に対して、薬物の乱用、アルコールの過剰摂取を始めとする規律違反についての実態調査と結果の報告を米軍に求めるべきだと思います。大臣いかがですか。
○河野国務大臣 我々、日米同盟が極めて重要であり、我が国を防衛する、そして、この東アジアの平和と安定を維持する上でも日米同盟は非常に大事だと思っております。
先ほど申し上げましたように、そういう同盟の相手とさまざまな話をするときに対外的にどのように言うかというのは、それはさまざまな考慮が払われて当然のことだと思っております。対外的に、言ったぞ、抗議したぞ、どうしたぞと言うのがいいのか、あるいは、きちんと言うけれども、対外的には対外的にさまざまな発信の仕方があると我々は思っているところでございます。
今御指摘いただきました薬物、アルコール摂取に関する実態、あるいは綱紀粛正に向けた措置などについて、在日米軍との間で包括的に議論を行っているところでございます。
○赤嶺委員 いろいろなやり方があるんだとそういう発言をする前に、駐留の前提が壊れている、駐留の全体は安全だということを基地が集中する沖縄県に向かって言ってきたわけですから、沖縄県民がわかるようにやってくださいよ。いや、政府はやっているんだということじゃなくて、沖縄県民がわかるようにやっていただきたいと思います。
航空法について伺います。
航空法第七十条は、アルコールや麻酔剤などの薬品の影響によって航空機の正常な運航ができないおそれがある間は航空業務を行ってはならないとしています。この規定に違反する飛行が行われていた可能性があるにもかかわらず、航空特例法によって米軍に航空法を適用していないため、日本政府はその違法性を問うことができません。
民間航空機のパイロットや客室乗務員は、少なくとも乗務前八時間以内の飲酒が禁じられています。民間航空会社で飲酒にかかわる不適切な事案が相次いだことを受け、ことし一月から、操縦士に対する飲酒基準が設けられました。業務前のアルコール検知器による検査で血中濃度一リットル当たり〇・二グラム未満、呼気中濃度〇・〇九ミリグラム未満という基準を満たさない限り、航空機の運航は認められません。
これは外務省に伺いますが、米軍は操縦士の飲酒についてどのような基準を設けておりますか。
○鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。
米国の統一軍事裁判法によりますと、酒に酔った状態若しくは血中若しくは呼吸気のアルコール濃度が定められた基準を超える状態で航空機などを操縦した場合には、軍法会議の判断に従って処罰を受ける旨、規定されていると承知しております。
○赤嶺委員 睡眠薬について、これは、国土交通省の身体検査マニュアルで使用できる薬剤を三種に限定し、服用後二十四時間以内は航空業務を行ってはならないと定めています。
米軍ではどうなっているんでしょうか。
○鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。
今般発出されました本件事故調査報告書によれば、米軍内のマニュアルにおいて、第一に、航空機操縦士が副作用や予見不能な反応をもたらす睡眠薬等の鎮静剤を含む市販薬を使用することは航空医官が特別に許可しない限りは禁止されているということ、それから第二に、未使用分の睡眠薬については航空医官又は内科診療所に返却されなければならない旨、それぞれ明記されているというふうに承知しております。
○赤嶺委員 それは報告書の中に書いてあるということで、報告書に書いてある中身ですね、今のは。日米間で共有しているんですか。皆さん、報告書に書かれる以前から知っていましたか。それから、報告書は日本政府に届けられていますか。
○鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。
今申し上げましたのは報告書における記載でございますが、米国の統一軍事裁判法、ここにおきましても、同法で定められた薬物の使用により精神的及び肉体的機能が十分に発揮できない状態で航空機を操縦した場合には、軍法会議の判断に従って処罰を受ける、そういうふうに明記されているところでございます。
報告書自体につきましても、これは、日本政府に対しまして、海兵隊が公表するタイミングと同時に、私どもの方に提供がございました。
○赤嶺委員 私、これほどの、日本における米軍機のいわば特例法があるために処罰されない乱暴な運用、これについて、やはりきちんと改善していく必要があると思うんですよ。
副大臣に伺いますが、それは航空法の全面適用が必要であると思いますが、いかがですか。短く言ってください。
○青木副大臣 お答えいたします。
航空法は、民間航空の国際的な枠組みを規定する国際民間航空条約の規定等に準拠し、航空機の航行の安全等を図るために制定されたものです。
一方で米軍機につきましては、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法により、民間航空機の円滑な航空交通を確保するためのものを除き、航空機の運航に関する規定などについて適用が除外なされております。
これは、我が国が締結した国際約束である日米地位協定等に基づき米軍が我が国において活動することが認められていることを踏まえ、その履行を担保するために定められたものと承知いたしております。
その性格を鑑みると、米軍機に適用される航空法の規定を見直す際には、米国との調整を要するものと考えております。
○赤嶺委員 資料をお配りいたしました。これは、玉城デニー知事が全国知事会に提出した、オーストラリアにおける米軍の航空機の運用のあり方……
○西銘委員長 時間ですのでまとめてください。
○赤嶺委員 これについての資料であります。
オーストラリアでは、米軍機がオーストラリアに入るときには、オーストラリアの検疫に従って、二十日間、検査を受けて入るという国内法が適用されております。
日本でも国内法の適用が必要であるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。