沖縄県周辺の上空に米軍が“臨時”訓練空域(アルトラブ)を設定し、民間機の安全を脅かしている問題で、防衛省は9日の衆院安全保障委員会で、米軍嘉手納基地の第18航空団に航空自衛隊員を派遣して日米間で訓練空域の調整をしていると明らかにしました。同省はこれまで米軍のアルトラブについては関知していないとしてきましたが、実際には把握できる立場であることになります。
沖縄県周辺には、日米地位協定により米軍が使用している空域が20カ所あり、民間機の運航に支障をきたしています。一方、第18航空団が作成した「空域計画と作戦」(2016年12月28日付)で、米軍が同県周辺上空に「固定型」アルトラブを常時設定し、訓練空域を事実上拡大していることがわかっています。
9日の同委で、日本共産党の赤嶺政賢議員は、嘉手納基地がホームページで公表している訓練空域の「User’s Handbook」に言及。沖縄県上空のアルトラブを含む訓練空域の大半を管理・調整する同基地内の沖縄合同調整機関(JOSC)に航空自衛隊が「連絡員」を派遣していることや、「すべての空域と射撃場についての要請の許可、却下は…連絡員に通知される」との記述があるとして「防衛省・自衛隊は沖縄周辺のアルトラブの使用状況を把握しているのではないか」と追及しました。
岩屋毅防衛相は、連絡員がJOSCと空域の調整をしていると認める一方「アルトラブの設定は国土交通省と米軍の間で行われている」などと釈明。赤嶺氏は「広大な米軍訓練空域を縮小し、アルトラブは認めるべきでない」と強調しました。(しんぶん赤旗 2019年4月10日)
抗議テント撤去批判
赤嶺氏 絶対に繰り返すな
日本共産党の赤嶺政賢議員は9日の衆院安全保障委員会で、沖縄県東村高江で米軍がオスプレイやヘリの着陸帯への抗議活動のために設置していたテントを撤去した問題に関し、「基地の爆音に苦しんでいる住民は抗議の声もあげてはいけないのか。米軍に二度とこういうことをやらせるべきでない」と厳しく批判しました。
テント小屋は、米軍北部訓練場の通称「N1ゲート」前につくられた抗議活動の拠点の一つ。事前の通告もなく、3日夕から翌朝にかけ、テントや椅子、机、全国の人が寄せた激励文などが一切なくなっていました。
赤嶺氏は「テントは、米軍基地と道路の境界を示す杭の外側、道路側にあった。道路の管理者は沖縄県だ。なぜ米軍が勝手に撤去できるのか」と批判。岩屋毅防衛相は、道路は米軍基地内で沖縄県が共同使用している区域で「米軍は日米地位協定に基づき、施設区域の管理のためすべての措置をとることができる」などとして、昨年6月から日米間で撤去を協議していたと明らかにしました。
赤嶺氏は「米軍が日米地位協定で何でもできると言えば、日本は主権がない状態になる。絶対に繰り返すべきでない」と主張しました。(しんぶん赤旗 2019年4月23日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
週末に東村高江で起こった問題について最初に伺っておきます。
集落を取り囲むように米軍ヘリやオスプレイの着陸帯が建設をされた東村高江で、住民が抗議活動のために設置していたテントや掲示物などが米軍に撤去されました。事前の警告もなく、住民が不在になった三日の夕方から翌朝までの間に撤去されていました。住民からは、全国の支援による思いのこもったものだ、米軍なら問答無用が許されるまさに治外法権だ、こういう怒りの声が上がっています。
米軍は、沖縄の地元紙の取材に、昨年六月から沖縄防衛局と協議していたと答えています。防衛省、これは事実ですか。米軍には何と言っていたんですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の件でございますが、北部訓練場の施設・区域内に昨年六月から設置をされておりました御指摘のテントでございます。今月の三日、米軍が撤去したというように承知をしております。
日米間では、このテントが設置をされました当初の昨年の六月から、その取扱いについて協議、議論をしてきたところでございます。米側とのやりとりの詳細については差し控えさせていただきたいと思いますが、米側は早期の撤去を求めていたところ、日本側は沖縄県に是正措置を依頼してきたというところでございます。
○赤嶺委員 米軍がテントを撤去できる根拠は何ですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
米軍は、日米地位協定に基づきまして、施設及び区域内におきまして、「それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」とされているところ、今回の措置も、この地位協定に基づいて実施をしたものというように説明をしているところでございます。
○赤嶺委員 防衛省もそのように考えているんですか。
○中村政府参考人 米側はそのように説明を行っているというように承知をしております。
○赤嶺委員 非常に曖昧でありますがね。
米軍の管理権、米軍が主張をすると言っておりましたが、私も週末に改めて現地に行ってきました。米軍基地と道路の境界を示すくいがあって、テントはその外側、つまり、道路側に設置をされているんです。道路の管理者は沖縄県です。なぜ米軍が勝手に撤去をできるんですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
このテントが設置をされておりましたところは、元来米軍の施設及び区域でございまして、沖縄県と共同使用を行っているという区域でございます。
○赤嶺委員 共同使用を行っている地域で、米軍が勝手に県民の財産や私物や、あるいはそういう施設類を撤去したり壊したりできるんですか。そんなのできませんでしょう。米軍は誰から許可をもらったんですか。誰からももらっていませんよ。勝手に米軍が基地の外に出てきて行動をしたら、県民はどういう感情になるかわかりますか、防衛大臣。そんな勝手なことはできないでしょう。日本は主権国家でしょう。主権のあるところがこういうことをちゃんとやるべきじゃないですか。二度とやはりこういうことをやるべきではない。
そもそもあの人たちは、オスプレイの着陸帯がつくられて夜も眠られないような騒音や爆音に苦しめられて、耐えがたい気持ちでああいう抗議の声を上げているわけですよ。沖縄の人が基地で苦しめられて、抗議の声も上げちゃいけないんですか。米軍のそういう勝手な行動を許すんですか。大臣、いかがですか。
○岩屋国務大臣 御指摘のテント等が米軍の施設・区域内に設置されていたことから、同二十六日というのは、昨年の六月二十六日に沖縄防衛局から道路管理者である沖縄県に対しまして、必要な是正措置をとるように依頼を行ったところでございますが、その後、沖縄県からは、必要な措置について検討する旨回答を得ていましたけれども、その後、是正措置がとられることがなかったというところでございます。
他方、今説明させていただいたように、米軍は、日米地位協定に基づいて、施設・区域内において、「それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」とされているところでございますので、今回の措置も、その地位協定に基づくものと説明をしているところでございます。
○赤嶺委員 そこは共同使用区域ですよ。管理者は沖縄県ですよ。米軍じゃないですよ。
米軍が、そういうところまで地位協定だからできると言っていたら、日本は主権がない状態になりますよ。絶対にそういうことは繰り返すべきではないということを防衛大臣は米軍に申し入れるべきであります。
次の質問に移ります。
次は、きょうは米軍の訓練空域の問題について確認をしていきたいと思います。
沖縄県の上空には、日米地位協定などによって米軍に使用を認めている空域が二十カ所あります。沖縄の空の大部分が米軍の訓練空域で占められております。沖縄県によれば、面積は約九万五千四百十六平方キロメートルに及んでおり、北海道のほぼ一・一倍もの広さになります。これらの米軍空域に民間の航空機が入ることは制限をされており、民間機の安全な運航に影響を与えています。
きょうは資料を出しておりますが、資料の一枚目の新聞記事にもありますように、米軍の訓練空域がパイロットにどれほど負担をかけているのか、詳しく報道されています。
悪天候の際、雷雲を避けて飛ぼうとしても、そこには米軍の訓練空域が立ちはだかっている。管制に訓練空域内への進入を要請しても、時間がかかり過ぎて最善の回避方法がとれない。さらに、やむを得ず緊急時に訓練空域に突っ込む場合、もし事故が起きても、それは操縦士個人の責任だという管制官の声も紹介されております。
防衛大臣、広大な米軍の訓練空域が民間機の安全な操縦、運航に支障を与えているという認識、これはありますか。
○岩屋国務大臣 米軍の訓練空域の設定等につきましては、民間航空交通の安全の確保の観点等も踏まえつつ、米側と適切に調整を行っているものと承知をしております。
その上で、米軍機の飛行に際しては安全の確保が大前提でございますので、事故などはあってはならないことは当然でございます。防衛省としては、累次の機会を捉えまして、米側に対し、飛行に際しては安全面に最大限配慮するとともに、周辺地域に与える影響も最小限にとどめるように申入れを行ってきておりますが、引き続き、民間航空機の安全の確保の観点等も踏まえて、強く求めていきたいと思っております。
○赤嶺委員 余りにも広大な訓練空域の存在がそういう問題を引き起こしているわけです。
それで、ただでさえ民間機に影響を与えているわけですが、今度は、米軍が新たに訓練空域を拡大していることが明らかになっています。
資料の二枚目は、嘉手納基地の第一八航空団が二〇一六年十二月二十八日に作成いたしましたレンジ・プランニング・アンド・オペレーションズ、空域計画と作戦というぐあいに訳できると思いますが、これをお配りしております。
ここには、米軍が沖縄周辺にアルトラブと呼ばれる訓練空域を設定していることが示されております。アルトラブとは、一定の空域の中に一定時間他の航空機が飛行しないようにする管制業務上の措置だ、このように国交省は説明してきました。このアルトラブが、既存の空域の一・六倍に及ぶ形で沖縄上空には設定されているわけです。これは米軍がホームページで公開している資料であります。
この米軍資料の中身について、防衛省は米軍と確認しておられますか。
○岩屋国務大臣 お尋ねの在日米空軍第一八航空団が作成した資料に、アルトラブ、空域の一時的留保に関する記載があるということは承知をしております。
そして、この米軍のアルトラブにつきましては、国土交通省と米軍との間で調整し、設定しているものでございます。先生今お話しあったように、当該措置は継続的なものではなくて、時間の経過によって終了するものであると承知をしておりますけれども、これ以上の詳細は、できれば国土交通省にお尋ねいただければというふうに思います。
○赤嶺委員 アルトラブというのは訓練空域ですから、防衛省が責任を負うわけですよ、そういう訓練空域を提供することについては。
私は、去年の三月にそういう報道が出されてから一年間、国土交通省が発する航空情報、これをずっと確認してきました。そうすると、第一八航空団が作成した空域計画と作戦に示されているアルトラブ空域と全く同じ範囲、同じ高度の空域を米軍が使用するという情報が、日曜日を除いて毎日発出されております。沖縄上空では、米軍が常時アルトラブを設定し、使用しているということであります。
米軍は、実質的に訓練空域を拡大しているということではありませんか。
○岩屋国務大臣 アルトラブの設定については、米軍と国交省の間の協議で定められておりますので、そこは国交省にお尋ねいただきたいというふうに思います。
沖縄周辺には自衛隊が使用できる常設の訓練空域というのが過去は存在していなかったものですから、米軍の訓練空域を使用してきたところですけれども、平成二十七年十二月には、国交省と自衛隊・防衛省が協議した結果、自衛隊用の臨時訓練空域が設定されたところでございます。
米国と一緒に訓練をやる場合は、当然、米軍と防衛省・自衛隊は調整をいたしますけれども、あくまでも空域の設定に関しては国交省との間で行われているということでございます。
○赤嶺委員 アルトラブ訓練空域は空の米軍基地なんですよ。沖縄には空も米軍基地があり、海にもあり陸にもあるというそういう超過密状態なんですが、まさに、アルトラブという臨時の訓練空域の設定は防衛省の所管であります。管制のやり方としていろいろ国土交通省は技術的なものをやっていると思うんですが。
嘉手納基地のホームページを更に調べてみました。JOSC、沖縄合同調整機関という組織が嘉手納基地にあり、沖縄上空の訓練空域について、一部を除き、全てを管理、調整している、このように書いてあるわけです。資料の三枚目でありますが、そこには、自衛隊も連絡員を派遣している、こう述べられているわけです。
それが三枚目の資料でありますけれども、このJOSCが管理する米軍訓練空域のユーザーのハンドブックがあります。このハンドブックは、航空自衛隊南西方面隊が、JOSC、沖縄合同調整機関に連絡員を派遣する、このように述べているわけです。ここにあるように、空自は米軍との訓練空域の調整のために嘉手納基地に連絡員を派遣している、そういうことではありませんか。
○岩屋国務大臣 現在、航空自衛隊南西航空方面隊司令部所属の自衛官一名を嘉手納連絡調整官として米軍嘉手納基地の第一八航空団に派遣をしております。なお、この調整官は、在日米空軍との連絡調整を行うために平成二十年度から派遣をしているところでございます。
そして、この連絡調整員は、航空自衛隊の所要のために空域の使用について調整することが役目でございまして、具体的には、南西航空方面隊は空自の所要を取りまとめ、JOSCに提出し、その結果を空自に伝えるという役割を担っているところでございます。
○赤嶺委員 ですから、空自の訓練の調整、それと一緒に、嘉手納基地に派遣している連絡員は、アルトラブの設定、使用について米軍と調整しているんじゃないですか。
○岩屋国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、アルトラブ、空域の設定そのものは、あくまでも管制業務上の措置として国交省と米軍との間で調整され、行われているものでございます。
○赤嶺委員 アルトラブの臨時訓練空域の提供については防衛省の責任なんですよ、管制の調整については国土交通省がやるかもしれませんけれども。そうじゃないですか。
○岩屋国務大臣 あくまでも空域の提供でございますから、所管は国土交通省です。
○赤嶺委員 空域の提供は、空の米軍基地は防衛省でしょう。空域の管制の調整が国土交通省でしょう。そこは取り違えてはいけないと思いますよ。
さらに、そのハンドブックに何が書いてあるかといいますと、米軍の嘉手納の空軍の全ての空域と射撃場について、要請の許可、却下は、第一八航空団のスケジュール担当官、在沖艦隊活動部のスケジュール担当官及び航空自衛隊の連絡員に通知されます、このように述べております。
防衛省・自衛隊は、沖縄周辺の米軍アルトラブ空域、これらについて、いつ誰が使っているのか、これは把握しているのではありませんか。
○岩屋国務大臣 それはしておりません。
先ほど申し上げたのは、アルトラブというのはあくまでも空域の一時的な留保でございますので、これは国交省と米軍との調整によって設定をされているということでございます。
○赤嶺委員 アルトラブという、空の管制に関することは国土交通省が調整しているはずですが、アルトラブの、訓練空域の臨時の提供、これはあくまでも米軍基地ですから。防衛省は、しかも連絡調整員を嘉手納に送っている。そして、送られた嘉手納の調整員については、米軍は訓練空域に関する全ての情報を提供している、こう言っているわけですよ。ですから、連絡調整員を通じて、アルトラブがいつどこでどんなふうに設定されるかということを、防衛省はちゃんと米軍と調整して把握しているんじゃないですかということであります。
事は民間航空機の安全にかかわる問題であります。米軍の運用ということで非常に曖昧な答弁、あるいは国土交通省だというような話にはならないと思います。
航空関係者でつくる航空安全推進連絡会議は、毎年行っている政府の要請で、悪天候空域の回避が困難であり、また、出発、到着経路の迂回を強いられているといって、軍事空域の縮小、これを求めています。これは防衛省がやらなければいけません。
米軍の訓練空域は縮小すべきであり、ましてやアルトラブの設定など認めるべきではないということを強く求めて、ちょっと時間も少なくなりましたが、法案部分について質問をいたします。
今回の法案では、早期警戒機などを使用する警戒航空隊の団への格上げが盛り込まれております。今後、現有の早期警戒機E2Cは全てE2Dに更新されることになっており、日米間の軍事一体化が一層進むことになります。
二〇一四年に早期警戒機が配備された航空自衛隊那覇基地では、その後、二〇一六年に戦闘機部隊が二個飛行隊に増強をされました。年間約一万回だった自衛隊の着陸回数は一万二千回前後に増加しております。
こうしたもとで、昨年は、F15戦闘機が管制官の待機の指示にもかかわらず滑走路に進入し、E2Cのタイヤの損傷で滑走路が一時閉鎖されるなど、民間航空機の運航に支障を与えるトラブルが相次いでおります。
防衛大臣、自衛隊機の離着陸が増加するもとで事故が相次いでいることについてどのような認識を持っておられますか。
○岩屋国務大臣 那覇基地が所在する南西航空方面隊における平成二十九年度の緊急発進回数が四百七十七回に達しておりまして、全体の半分以上を占めていることなどを含めると、非常に、先生御指摘のように、民航機の利用増加と相まって、那覇空港の過密化が進展をしている。実際に、国交省によれば、五年前に比べると着陸回数が約一万回ふえているというふうに承知をしております。
そんな中で、昨年度は先生御指摘のような事案が起こりまして、これは民航機の正常な運航に影響を与え、また、周辺住民の皆さんに大変な御心配をおかけしたということを大変申しわけなく思っているところでございます。防衛省としては、今後このような事案が発生しないように、引き続き再発防止及び安全対策に全力を尽くしてまいります。
○赤嶺委員 終わります。