日本共産党の赤嶺政賢議員は13日の衆院安全保障委員会で、河野太郎外相が日米地位協定の改正について「相互防衛の義務を負うNATO(北大西洋条約機構)加盟国と、異なる義務を負う日本の地位協定が異なるのは当然あり得る」(7日、参院予算委)と否定する答弁を行ったことを厳しく批判し、同協定の抜本改正と米軍への航空法など国内法の適用を求めました。
赤嶺氏は、ドイツやイタリアで地位協定が改定されたのは、米軍機の墜落事故が相次ぎ、地位協定の改正を求める世論に政府が応えた結果だと指摘。「相互防衛義務を負っていたからだ」とした河野氏の発言について具体的な根拠をただしました。
河野氏は「第三国と米国の地位協定と一律に比較するのは難しい。相互防衛義務は要素の一つだ」と何ら根拠を示せませんでした。
警察庁の田中勝也長官官房審議官は昨年12月の普天間第二小学校への米軍ヘリの窓落下の捜査状況について、機長による出発前の確認(73条の2)や物件の投下(89条)に関する航空法の罰則規定が米軍に適用されていないことをあげ「刑罰法令にふれる行為を認めるに至ってない」と答弁しました。
赤嶺氏は、1998年の米軍機のロープウエー切断事故当時に外相として対応したディーニ元伊首相の「米国のいうことを聞いているお友達は日本だけだ」という発言(沖縄県他国地位協定調査中間報告書)を紹介。全国知事会が米軍への航空法や環境法令などの国内法の適用や、事件・事故時の迅速な立ち入りを求めていることも触れて、「人命にかかわる根幹の問題だ。こうした提言を重く受け止めるべきだ」と強調しました。(しんぶん赤旗 2018年11月14日)
質問の映像へのリンク
議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょうは大臣の所信質疑で、次回は法案ということになっておりまして、それで、朝の理事会では武田与党筆頭の方から十一月中に必ず一般質疑は入れるという断言もありましたが、委員会室内では、法案を通した後にやるものかとこういう危惧の声も聞かれておりますが、私は武田筆頭を信じたいと思います。ぜひその信頼を裏切らないように、いつまでも後ろ指を指されるということが絶対にないように一般質疑を行いたいということを考えておりますから、両大臣におかれても、どうぞよろしくお願いいたします。
昨日、米海軍のFA18戦闘機が沖縄県那覇市の東南東約二百九十キロの海上に墜落をいたしました。エンジントラブルのためと報じられていますが、現時点でわかっている事故原因、米軍の訓練区域との関係を含む墜落場所、油漏れの有無を含む被害状況を明らかにするとともに、事故原因が究明されるまでの間の同型機の飛行停止を求めるべきだと思いますが、その点についての大臣の見解を伺いたいと思います。
○岩屋国務大臣 昨日の事案については、冒頭、委員から触れていただいたとおりでございます。
詳細な墜落地点についてはまだ明らかになっておりませんが、緊急脱出した当該機の搭乗員二名は、那覇市の東南東百五十六マイル、二百九十キロの海上において救助されたというふうに承知をしております。
そして、本件事故に関して、現時点において油漏れを含む被害情報はありません。それから、本件事故を受けまして、防衛省から米側に対し、直ちに情報の提供と安全管理の徹底、再発防止を申し入れ、そして、関係自治体に情報提供したところでございます。
原因は現在も米側において調査中であると承知をしておりまして、新たな情報が得られた場合には、関係自治体に対して速やかにお知らせをしたいというふうに思っております。
それから、飛行停止についてですけれども、これは、これまで、事故の個別の対応等を踏まえて、それぞれの事案に即して総合的に判断して米側に求めているところでございまして、現段階ではその判断に至っておりません。
○赤嶺委員 この海域、一歩間違えたら漁船などへの被害につながりかねない重大な事故であります。事故原因の究明を最優先にし、同型機の飛行停止を求めるべきだということを重ねて求めたいと思います。
次に、米軍の機体整備にかかわる自衛官の派遣の問題についてであります。
この問題は、米軍機の相次ぐ墜落、部品落下に加え、ことしに入って米軍ヘリの緊急着陸が伊計島、読谷村、渡名喜村で立て続けに起きたことを受けて、当時の小野寺防衛大臣が、一月二十九日の衆議院予算委員会で、自民党の國場議員の質問に答える形で打ち出されたものであります。
そこでは、一月に二度の緊急着陸を行ったAH1Z攻撃ヘリについて、アメリカ側から全ての同型機の点検を行ったとの説明を受けたことを小野寺防衛大臣が紹介した上で、これを私どもはそのまま受け取るわけにはいかない。アメリカ側が実施した点検整備については、防衛省として、今後速やかに、自衛隊の専門的、技術的な知見を活用して、確認、検証を行う予定であります。このように述べておりました。
ところが、予定されていた二月一日の派遣は米側の都合で延期され、それから九カ月余り、何の進展もありませんでした。
こうしたもとで岩屋防衛大臣が、先週七日、参議院の予算委員会で我が党の小池晃書記局長、議員に対して、「何らかの形で実施できる方向で現在最終調整中」、このように述べておられました。
何か進展があるだろうと思っていましたら、その翌日に行われた飛行安全に関する日米専門家会合の中身を見て、これはもう本当に、大変驚きました。米軍による点検整備の検証だったはずが、単なる訪問になっています。しかも、日米相互の問題になっている。これらの意見交換をしただけで、何も決まったものはない。幾ら何でも、これはおかしいのではありませんか。
岩屋大臣に伺いますが、なぜ、当初の日本側による検証が相互の訪問に変わってしまったんですか。
○岩屋国務大臣 本件については私も、就任して以来、どうなっているのかということを直ちに聞きました。
小野寺前大臣がおっしゃった確認、検証するという意味は、米側から情報を得て、そのことをしっかり理解するという意味だというふうに思いますけれども、残念ながら、そこの米側との意思の疎通が必ずしもうまくいっていなくて、協議に時間がかかった、調整に時間がかかったということでございましたので、これは何とか前に進めなきゃいけないということで、私は、在日米軍司令官のマルティネス司令官にも、あるいはハガティ大使にもお願いをして、まずお互いの専門家同士の会議体をつくらせてもらいたい、その中で、AH1Zの問題のみならず、その個別の事案に特化した議論というよりも、まずお互いの飛行安全というものをしっかりと情報交換、意見交換する場をつくらせてもらいたいということで、その会合が、八日、第一回目が行われたということでございますので、この会合を発展させていく中で、さまざまな事案に適切に対応できるようにしていきたいと思っているところです。
○赤嶺委員 ちょっと違うと思いますよ。小野寺大臣は、アメリカ側の説明をそのまま受け取るわけにはいかない、防衛省として検証を行う、こうはっきり述べているわけですよ。
当初の説明は、米軍の点検整備が妥当なものかどうか日本政府として主体的に検証するということだったのではないですか。そのようにはっきり答弁しているのではありませんか。
○岩屋国務大臣 そこのニュアンスが日米間でちょっと何といいますか、意思の疎通が十分でなかったと思うんです。
もう先生に申し上げるまでもないことですが、自衛隊であれ米軍であれ、相手の軍用機の整備について、インスペクトするということはあり得ません。つまり検査するということはあり得ないわけですけれども、それが検査するというような趣旨に聞こえたところもあって、また、メディアの中にはそういう誤訳した報道を流したところもあったりして、非常に意思の疎通がうまくいかなくなったということがあったことは事実だと思います。
したがって、やはりここはしっかり仕切り直して、専門家同士がお互いの整備状況について情報交換し、確認し合うという場を設けることが適切だというふうに判断をしたところでございます。
○赤嶺委員 小野寺防衛大臣の答弁は、当時、私も委員会席に座っていて聞いておりましたが、大変力強く、そして迫力に満ちた答弁でありました。検証ということもはっきり言っておりました。
ところが、あの答弁の時期というのは、名護市長選挙の最中での答弁であったんです。選挙の最中には威勢のいいことを言いながら、選挙が過ぎればどこかに行ってしまう。こういう対応は本当に無責任だと思います。ましてや、検証と言いながら、メディアの報道に責任の一端があったかのような発言は到底許されるものではありません。
一月以降も米軍機の緊急着陸は頻発しています。四月には普天間基地所属のヘリが熊本空港に、九月にも久米島空港に緊急着陸しています。そして、昨日のFA18戦闘機の墜落です。
防衛大臣、一度は答弁されたわけですから、この際、米軍の点検整備を日本側が主体的に検証できるような仕組みを検討すべきではありませんか。いかがですか。
○岩屋国務大臣 先ほども申し上げましたように、自衛隊であれ米軍であれ、相手方の軍用機の整備について検査をするなどということはあり得ない。自衛隊がその指令を受けてもお断りをするということになるわけでございます。
ただ、同盟関係で、お互いに共同訓練などもやっております。米軍の事故も遺憾なことですけれども、残念ながら、自衛隊の方にも時折そういう事件、事故というものが起こってしまいます。そういうときに、お互いの整備の状況について情報交換し、意見交換し、飛行安全に更に資するような取組を行うということは大変大事なことだと思っておりますので、今度の枠組みを使ってぜひそういうことをやらせていただきたいと思っているところでございます。
○赤嶺委員 大臣のこの記者会見での発言も含めて、結局、根っこにあるのは日米地位協定だということを隠して、米軍の機体には指一本触れることもできない、そういう日米地位協定があることを知りながら、小野寺防衛大臣は、選挙中だったから、いかにも日本の権限が通るような言い方をした。しかし、戻ってみたら、日米地位協定のもとでそれはできない。こういう米軍任せの対応にならざるを得ないということであります。この間の経過は到底納得できるものではありません。
関連して警察庁に伺いますが、昨年十二月に、普天間第二小学校の校庭に米軍ヘリが窓を落下させました。事故発生から来月で一年になろうとしていますが、警察による捜査はどうなったんですか。
○田中政府参考人 お尋ねの事案でございますが、昨年十二月十三日、沖縄県宜野湾市の小学校のグラウンドに米軍機の窓枠が落下した事案であると承知をしております。
沖縄県警察におきましては、通報を受けまして直ちに臨場し、現場の状況を確認するとともに、米軍の協力を得て、窓枠を落下させた機体を確認するなど事実確認を行っておりますが、刑罰法令に触れる行為を認めるに至っていないものと承知をいたしております。
○赤嶺委員 刑罰法令に触れる行為には至っていない。無罪放免。どういうことですか、それは。
○田中政府参考人 例えば航空法違反というのが考えられないわけではございませんけれども、航空法におきましては、機長による出発前の確認や物件の投下に関する罰則が設けられておりますが、この規定につきましては、特例法によりまして、米軍航空機及びその運航に従事する者については適用されないということとされているものと承知をしております。
○赤嶺委員 結局、そういう落下事故を起こして、さっき機体も調べたと言っておりましたが、あれは、落下したドアがその機体のものかどうかを確かめに、返しに行っただけなんですよ。機体の検証なんかやっていませんよ。だって、防衛大臣の答弁だと、そういうことができないのは常識でしょうという答弁が先ほどからありましたからね。結局何のおとがめもなかった。
防衛省に伺います。窓の落下にかかわった米軍の搭乗員や整備員への処分はどうなったんですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の事案に関しましては、米側から、本件事故が人的ミスであるとの説明を受けているところでございます。
お尋ねの処分につきまして、防衛省としては現時点で承知をしてございません。
いずれにいたしましても、米軍機の飛行に際しましては安全の確保が大前提と認識をしており、米側に対し、安全面に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう、引き続き求めてまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 防衛省も警察も、手も足も出ないという状況であるわけです。
外務大臣に伺いますが、沖縄県は、ことし一月、地位協定をめぐる実情を把握するために、ドイツとイタリアに調査団を派遣をいたしました。三月に公表された中間報告書によると、いずれの国も、自国の法律や規則を米軍に適用させて、米軍の活動をコントロールしております。航空法が適用されず、危険な飛行訓練が野放しにされている日本とは全く違います。日本では事故後の飛行再開は米軍の判断次第ですが、ドイツやイタリアでは、受入れ国の同意がなければ米軍は飛行訓練を行うことはできません。日本では米軍の許可がない限りできない基地への立入りについても、ドイツ、イタリアでは、国レベルでも地方自治体レベルでも、基地への立入り権が認められています。
外務大臣、ドイツ、イタリアでできていることがなぜ日本でできないんですか。在日米軍についても同じようにすべきだと求めるべきだと思いますが、いかがですか。
○河野国務大臣 以前から繰り返し答弁しておりますけれども、日本とアメリカの間の地位協定と、アメリカと第三国の地位協定というのは、地位協定そのものの規定ぶりだけでなく、細かいところの取決め、あるいは実際の運用、背景などを含めた全体像の中で比較検討する必要があると思います。
日本の地位協定の中であるいは日本の運用の中で認められていることが他国の地位協定の中あるいはその運用の中で認められていないということもございますので、一部を取り出して比較をすることには意味がないと思っております。
○赤嶺委員 これは一部の話じゃないですよ、大問題になっていることですよ。
外務大臣は、この間の参議院の予算委員会で我が党の小池議員の質問に対して、「NATOの加盟国の一員として加盟国間の相互防衛の義務を負っている国と、それと異なる義務を負っている日本の間で地位協定が異なるということは、当然にあり得る」、このように述べておられます。これは一体どういう根拠に基づくものなのか。
例えば、ドイツはボン補足協定を三回にわたって改正しています。とりわけ一九九三年には大きな改正が行われていますが、これは、米軍機の墜落事故が相次ぎ、改正を求める世論が高まったことを受けて政府が取り組んだ結果であります。一九八八年六月には米軍のF16戦闘機が同じ日に三機も墜落し、八月にはイタリア軍の曲技飛行チームが空中で接触し、観客とパイロットを合わせて七十五名が死亡するという大惨事が起こりました。そうしたことを受けて政府が取り組んだ結果であります。
外務大臣は、そういう世論のドイツやイタリアでの地位協定の改正が、こういう経過の中で行われたのではなくて、相互防衛義務を負っていたからだと言われるんですが、その具体的な根拠は何ですか。
○河野国務大臣 私が申し上げたのは、日米の地位協定と第三国とアメリカの間の地位協定を一律に比較するのは難しいということを申し上げているのであって、私の発言を曲解するのはやめていただきたいと思います。
この相互の防衛義務というのは、その要素の一つであるということを申し上げているわけでございます。
日本でも、軍属の補足協定あるいは環境の補足協定といったものがつくられましたし、あるいは、合意議事録などを含んだ大きな法的枠組みの中でさまざまな改善というものが行われてきているわけでございまして、ドイツ、イタリアはやったけれども日本はやっていないと言うのは適切でないと思っております。
○赤嶺委員 事故が起こって人命に危機が起これば世論が盛り上がって、地位協定を変えてきたドイツ、イタリアの経過があるわけです。日本政府は、一九六〇年の締結以降、日米地位協定の改正を提起したことさえありません。
一九九八年の米軍機によるロープウエー切断事故当時に、当時外務大臣として事故対応に当たったディーニ元首相は、沖縄県の調査団に対して、米軍基地があるのは日本だけではないが、インターナショナルな見直しを進めていかないと、日米関係だけが奇異な関係になってしまう、米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ、沖縄県の調査団にそう語ったというんです。
私は、国民の安全に責任を持つ政府の外務大臣として、できないことの説明、これを探していくのではなくて、どうすればできるか、これを考えるべきだと思います。
全国知事会は、ことしの七月、日米地位協定を抜本的に見直すことを求める提言を全会一致で採択をいたしました。航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させ、事件、事故時の自治体職員の迅速、円滑な立入りを保障することなどを求めております。
こうした提言を重く受けとめて、日米地位協定の抜本改正、米軍への国内法の適用、これを踏み切るべきだと思います。
環境補足協定や軍属の話はきょうはおいておきますけれども、部分的な話ではなくて、県民の人命にかかわる、基地がある地域での人命にかかわる一番大事な根幹の問題ですよ。地位協定の曲解どころじゃないんです。正面から受けとめていただきたいと思います。
警察庁、せっかく来ていただいておりますので、名護市数久田の銃弾事故について、発射された銃弾であるということで米軍に捜査協力を求めておりますが、米軍から同種の実弾や資料は提供されたんですか。
○田中政府参考人 お尋ねでございますが、本年六月二十一日、沖縄県名護市内の農作業小屋内から銃弾様のものが発見された事案であると承知をしております。
発見をされたものにつきましては、発射をされました銃弾であることが判明した旨の報告を受けているところでございますけれども、これが米軍のものかどうかというのは確認はされておりません。
○岸委員長 赤嶺君、時間が来ました。
○赤嶺委員 外務大臣、結局、米軍は捜査の協力もしないんですよ。米軍基地実弾射撃訓練場から飛んできた銃弾であることもみんなはっきりしているのに、協力しないから警察も手も足も出ない。
しかも、キャンプ・シュワブは、防衛大臣、欠陥実弾射撃訓練場です。即刻閉鎖することを強く求めて、質問を終わりたいと思います。