国会質問

質問日:2018年 7月 9日  第196国会  沖縄北方特別委員会

北特法改正案を全会一致で可決 衆院本会議

 

 北方領土に隣接する北海道の1市4町の地域振興などに充てる基金の取り崩しを可能とする北方領土問題等解決促進特別措置法改正案が10日の衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付されました。

 これに先立つ9日の衆院沖縄北方特別委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員は、長期の低金利政策による運用益の大幅な減少で、地元が新たな財源対策を求めてきたことにふれ、基金の取り崩しに賛意を表明。一方、同法案には、2016年12月の日口首脳会談で合意した「北方領土」での「共同経済活動」に関連する規定が盛り込まれています。

 赤嶺氏は、共同経済活動について、政府が両国の法的立場を害さない「特別な制度」の下で行われるとする一方、ロシア側が一貫して「ロシアの法律に沿って行われるべきだ」と主張していることを指摘。「共同経済活動がどういうものになるのか、いつ合意できるのかも分からない。なぜ法律への明記を急ぐのか」と述べ、共同経済活動の関連規定を法案から切り離すよう求めました。(しんぶん赤旗 2018年7月11日)

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北方領土問題について質問

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 質問に入る前に、一言申し上げたいと思います。
 今回の法案は、五月末の北方議連で初めて提案されたものです。会期末間際の提案に対して、議連やあるいは理事懇の場でもるる意見が出されました。各党に十分な検討の時間を保障するのは当然のことであります。ぜひ、今後の教訓としていただきたいと思います。
 まず、北方基金の取崩しについてですが、長期にわたる低金利政策の影響で運用益が大幅に減少するもとで、新たな財源対策を求めてきた地元の要望に応えるもので、私たちは賛成です。
 ただ、取崩しに伴って減少していく基金への財政措置をどう考えているかという点はただしておく必要があると思います。
 まず、提案者に伺いますが、現在、基金は百億円が積まれているわけですが、今後、毎年どのくらいの規模で取り崩していくことが想定されているのか、また、法案の附則で、政府に新たな財政措置の検討を求めておりますが、具体的にどういうことを想定しているのか。
 また、北方担当大臣に伺いますが、この規定を受けて、今後、政府としてどのように取り組んでいくのか、北方領土問題が解決されるまでは必要な財源が確保されるようにする必要があると思いますが、その点、どのようにお考えか。
 それぞれ御答弁をお願いしたいと思います。

○渡辺(孝)委員 赤嶺議員から二点質問がございましたので、お答えいたします。
 まず、北方領土隣接地域振興等の基金の取崩しの規模に関しては、北海道が今後見込まれる事業ニーズを積み上げたところでは、年間約五億円程度に上るものと聞いております。
 しかし、実際には、毎年度、事業の内容やその必要性、効果、さらには効率性などを精査した上で、必要額を取り崩して事業を行っていくことになるものと認識しております。
 二点目の、法案の附則の財政上の措置についての検討条項は、将来、まず、北方領土隣接地域振興等基金の原資の取崩しによって基金の原資が減少し、安定的に事業を継続することに支障が生じるおそれがあること、また、二つ目、他方、共同経済活動のさらなる振興に対応して、隣接地域振興に向けた新しい事業ニーズあるいは新しい行政需要が生まれる可能性もあることから、設けたものでございます。
 具体的には、地元がより柔軟に振興事業や北方領土返還の啓発、あるいは援護事業などを行うことが可能となるような交付金制度の検討をすることなどを想定しております。

○福井国務大臣 ありがとうございます。
 この法案によりまして北方基金の原資が取り崩されることとなった場合には、まずは、取崩しによる財源で北方領土隣接地域の振興等のために必要な事業が効果的、効率的に行われるよう、北海道の自主性も尊重しつつ、しっかりと対応してまいりたいと存じております。
 あわせて、それらの事業の実施に必要な取崩し額が確保できるよう、運用計画につきましても注視しつつ、北海道から相談がありますれば適切に対応してまいりたいと存じております。
 また、法案における附則第二項の検討条項につきましては、ただいま渡辺先生の方から御説明があったとおりの立法趣旨を十分に踏まえまして、適時適切に検討を行い、その結果に基づいて必要な措置をとってまいりたいと存じております。

○赤嶺委員 次に、共同経済活動について外務副大臣に伺います。
 二〇一六年十二月の日ロ首脳会談で、北方四島における共同経済活動に向けた協議開始に合意してから一年半が経過しました。
 ところが、日ロ双方の法的立場を害さない特別な制度という肝心な部分が一向に見えてきません。そればかりか、ロシア側は、合意直後から一貫して、ロシアの法律に沿って行われるべきだと主張していることが報じられております。
 一年半が経過したにもかかわらず、肝心な部分が一向に具体化されないのはなぜですか。

○中根副大臣 お答え申し上げます。
 五月二十六日の日ロ首脳会談において、二〇一六年十二月の長門での合意に基づき率直な議論が行われ、平和条約締結問題について、北方四島における共同経済活動の実現に向けた作業が新たな段階に入ったことを確認しました。
 具体的には、本年七月又は八月をめどに、事業者中心のビジネスミッションを四島に派遣すること、その後、日ロ次官級協議を開催することで一致し、さらに、五件のプロジェクト候補の内容について、具体的な進展を確認したところでございます。
 プロジェクトを実現するための法的枠組みについても言及がありましたが、ロシア側との関係もあり、詳細は控えさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、二〇一六年十二月の長門での日ロ首脳間の合意に基づき、日ロ双方の法的立場を害さない形で鋭意取り組んでまいります。

○赤嶺委員 幾らプロジェクトの具体化が進んでも、肝心の法的枠組みが具体化できなければ、これはもう絵に描いた餅にしかならないわけであります。法的枠組みを含めて、日ロ間でいつごろまでに合意できるという見通しはあるんですか。

○中根副大臣 お答え申し上げます。
 ロシア側の主張に対してのコメントをする立場ではありませんが、共同経済活動は双方の法的立場を害することなく実施される必要がございます。
 今回の首脳会談においても、プロジェクトを実施するための法的枠組みについても言及がありましたが、ロシア側との関係もありますし、また、我が国の手のうちを明かすことにもなりますので、我が国での検討状況も含め、現時点で詳細をお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○赤嶺委員 今の答弁を聞いていて、共同経済活動がどういうものになるのか、あるいはいつ合意できるのか、これもわからないのに何で法律への明記を急ぐのか全く理解できません。私たちは、共同経済活動の部分は法案から切り離すべきだと思います。
 領土問題も、領土問題の交渉そのものが今どうなっているのか。これは何か進展があるんですか。

○中根副大臣 お答え申し上げます。
 二〇一六年十二月の日ロ首脳会談で、両首脳は、平和条約問題を解決するみずからの真摯な決意を表明するとともに、北方四島において双方の法的立場を害することのない形で共同経済活動を実施するための交渉を開始することで合意しました。
 共同経済活動の実現に向けた取組を通じて、日ロがともに北方四島の未来像を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくという未来志向の発想によりまして、北方領土問題の解決そして平和条約の締結にたどり着くことができると考えております。
 平和条約締結問題につきましては、安倍総理そしてプーチン大統領との間も含め、日ロ間で率直に対話を重ねてきております。五月二十六日の首脳会談においても、昨年十一月の日ロ首脳会談においても、二〇一六年十二月のプーチン大統領訪日の際の日ロ首脳会談の合意事項の具体的な進展を確認するとともに、そして、両首脳のみのテタテ会談では突っ込んだ議論が行われたと聞いております。
 政府としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針に基づき、引き続きロシアとの間で粘り強く交渉を進めていく考えです。

○赤嶺委員 最後に申し上げておきたいんですが、最近のロシアによる千島列島の軍事化の動きや、イージス・アショアの配備をめぐる日ロ間のやりとりを見ていても、こうした問題の根本にあるものをそのままにして共同経済活動を進めても、領土問題の解決につながるとは到底思えません。
 戦後、領土不拡大の原則に反して旧ソ連による千島領有を認めたサンフランシスコ講和条約、そして、日本をアメリカの極東アジア戦略の前進拠点とした日米安保条約、地位協定という問題の根本に立ち返らない限りこの問題は解決しないということを強く申し上げて、質問を終わります。

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