国会質問

質問日:2018年 5月 25日  第196国会  安全保障委員会

防衛省が「犯人捜し」 赤嶺氏批判 通報者の保護を 衆院委

 

 防衛省で公文書のファイルが抽象的な名称で登録されていた問題に関し、同省が報道(「毎日」5月13日付)を受け開始した事実関係の調査で、情報公開請求の回避が目的であることや、「上の指示」で名称が変更された実態などを語った職員の「犯人捜し」を行っていることが分かりました。5月25日の衆院安全保障委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員が明らかにしました。

 報道を受け15日付で同省が出した通知文書には、抽象的なファイル名を付す指示の有無とあわせて、今回の報道に関して、取材対応したにもかかわらず上司などへの報告等が行われなかった事実の調査を求めています。

 赤嶺氏は、ファイルに分かりやすい名称を付けるよう定めた公文書管理法のガイドラインについて「(職員の告発は)この趣旨に反する実態の『公益通報』だ」と指摘。「犯人捜し」が行われれば「(省内が)萎縮して国民目線で是正することができなくなる。通報者を保護すべきだ」と強調しました。

 防衛省の高橋憲一官房長は、取材を受ける際の「一般的な規則として通知した」と弁明。赤嶺氏は「組織にとって都合の悪い情報の流出を許さないという防衛省・自衛隊の隠ぺい体質を示している」と批判し「事実の究明に集中すべきだ」と主張しました。(しんぶん赤旗 2018年6月9日付)

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イラク日報隠ぺい問題について

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 最初に、公文書の名称の問題から質問をいたします。
 防衛大臣に伺いますが、今月十三日付の毎日新聞で、防衛省が保管する多くの行政文書ファイルが抽象的な名称で登録され、国民が検索しづらい状態になっていることが報じられました。イラク派遣にかかわる文書をおさめたファイルの名称が、単に運用一般とされるなどしておりました。情報公開請求を回避するために抽象的な名称にしていることや、提案したファイル名が上の指示によって変更された事例があったことも、職員の証言として伝えています。これが事実とすれば、組織的な隠蔽と言われても仕方がありません。なぜ抽象的な名称にしていたのか、そこに情報を隠そうとする意図はなかったのか、徹底的な調査が必要だと思いますが、大臣はどういう認識ですか。大臣の認識を聞いています。

○小野寺国務大臣 まず、委員が御指摘された新聞記事、私もこれを読みました。
 そして、例えば、文書ファイルが非常にわかりにくくなっている、抽象的なファイルになっているということ、これは、私ども十分受けとめるべき御指摘だと私は思いました。
 その上で、行政文書ファイルの名称、これはもともと、行政の適正かつ効率的な運営、行政機関からの国民に対する情報の一層の公開を更に図る観点から、わかりやすい名称とする必要がある、これが前提であります。
 このため、行政文書の管理に関するガイドラインや防衛省の文書管理に関する規定においても、行政文書ファイルの名称については、内容をわかりやすく端的に示すキーワードを記載するよう規定しており、その旨、これまでも、省内におけるさまざまな公文書管理に係る教育の機会で周知をしているところですが、私はこの記事を読み、担当者に、このような記事が出ていること、そして、しっかり、わかりやすい形で改善を更にすることということについて指示をいたしました。また、その報道の中にあるような、何か意図的なことがあったということがありましたら、これは大変重大な問題だと思っております。
 この事実については、現在、調査の結果を担当者の方でしているというふうに聞いておりますが、いずれにしても、適正な文書管理を行うことを周知すること、これは大事だと思っております。

○赤嶺委員 その報道を受けて、防衛省は、適正な文書管理に関する通知文書を出しております。
 それは、十五日付でありますが、きょうは、その通知文書を皆さんのお手元にお配りをいたしました。
 二、調査内容等のところを見ていただきますと、二つの調査を指示しています。一つは、アのところですが、各文書管理者に対して抽象的なファイル名を付すように指示した事実があるかを調査するよう求めています。先週十八日までの回答期限になっていますが、結果はどうなっておりますか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 現在、その結果については整理中でございますが、現在判明している限りにおいては、このような事実はないものと承知しております。

○赤嶺委員 全体を出していただけますか。

○高橋政府参考人 まとまり次第、御説明したいと思っています。

○赤嶺委員 速やかにまとめて、報告していただきたいと思います。
 ただ、そもそも、管理簿への記載を行うのは各文書管理者自身なんですよね。その本人に聞いて事実を明らかにできるかどうか、これは疑問ですよね。やはり、そのもとで働いている職員、抽象的なファイル名を付すような指示を受けた可能性のある職員、匿名でいいですから、アンケートなどをとるなりして、そういう人たちの意見も、あるいは認識も聞かない限り事実の究明はできないのではないか、このように思っておりますが、それをやるべきではないでしょうか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 いずれにせよ、先ほど御指摘がありました五月十五日の通知の中で、このような報道によるような事実はあるのかどうか、あるいは、それについての取材を受けた場合の規則として、報告をすることが必要というふうになってございますので、我々としてはその回答の結果を精査していきたいというふうに思ってございます。

○赤嶺委員 私は、文書を管理する責任者に聞くようなやり方で、本当に真実が解明できるかと。
 今の答弁にありましたけれども、この通知に見逃すことのできないところがあります。それは、下線を引いておりますけれども、イのところで、今回の報道に関して、取材対応したにもかかわらず上司に報告しなかった事実があるかどうかの調査を求めています。別の調査なんですね、これは。なぜこんなことまで調査する必要があるんですか。これでは犯人捜しをやっていることになりませんか、大臣。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 まず、取材を受けた場合に必ず上司あるいは広報部署、広報担当者に報告することというのは、既に一般的な我々の規則として通知をしてございます。
 今回の場合につきまして、我々としては、いわゆるわかりにくいファイル名をつけるということは、我々の規則上あってはならないことだと思ってございますので、仮にこのようなことを説明した人間がいるのであれば、どういう背景、どういう意図、どういう状況の中でそういう話をしたのかということもきちっと把握をした上で、正しい広報をする必要があると思ってございますので、その状況の把握のためにこのような通知を出したところでございます。

○赤嶺委員 これは、ガイドラインに沿っていないやり方を内部告発したということではありませんか。仮にそんなことがあったら、その背景だとか、誤解を解くだとか、何か別の調査なんですよ、これは、皆さん。ファイルの名のつけ方がおかしいということを指摘されて、こんなことを言ったやつは誰だ、そういう調査をしているのと同じですよ。
 これは、報道された職員が述べているのは、公文書管理にかかわる法令や規則への違反についてです。わかりやすい名称を付すことが義務づけられているにもかかわらず、それに反する実態があるという、いわば公益通報ですよ、これは。
 大臣、犯人捜しのようなことはやめて、通報者を保護すべきではありませんか。

○高橋政府参考人 委員御指摘の公益通報はまた別の制度で存在してございますので、もし仮にそういうことであれば、公益通報の手続にのっとってやるべきというふうに考えてございます。
 また、行政文書ファイルでございますが、先ほど委員御指摘の通知の中で、この行政文書の管理に関するガイドラインの規定に照らして適切な名称に是正し、その結果をまた総括文書管理者たる官房長に報告するということもあわせて出てございますので、この問題の是正について努めるということも大きな観点だと思ってございます。

○赤嶺委員 公益通報保護法、現行の法律が極めて狭く、極めて内部通報がやりにくい仕組みになっているのはそのとおりですよ。
 しかし、それに安住して、これは公益通報ではないから保護できないというんじゃなくて、まさに防衛省の内部の文書の管理のあり方が問われているときに、抽象的な名をつけてわかりにくくしていた、そして、そのわかりにくくしていたのはガイドラインに反するのではないかと内部から出てきた、それは当然褒められるべきじゃないですか。
 何でそれが、皆さん、その調査の対象になるんですか。そうしたら萎縮して、まさに防衛省の内部の間違いについて、国民目線で是正していくことができなくなるじゃないですか。今大事なことは、防衛省が国民目線で是正していくことでしょう。それに対する一つの貢献をしたわけでしょう。それを、犯人捜しのようなことをやるのはやめていただきたいと思いますよ。
 大臣、いかがですか。

○小野寺国務大臣 私どもは、文書管理を適正に行う、わかりやすい形で行政文書の管理を行う、このガイドラインに従って対応するということが大変重要だと思っております。
 そして、今官房長からも説明がありましたが、意図的に、このような文書を名前をつけて隠そうとするような、報道にあったような事案について、官房長は今のところ確認はされていないということであります。
 ですが、私どもとして、もしそのような事実があるのであれば、これは厳正に正し、そしてそのようなことがないようにするということが大切だと思っております。
 いずれにしても、私どもとしては、国民の知る権利、これにしっかり応えるために、防衛省・自衛隊として改善に取り組んでいくということだと思っております。

○赤嶺委員 このような調査、犯人捜しのようなことを追加すること自体が、組織にとって都合の悪い情報の流出は許さないという防衛省・自衛隊の隠蔽体質を示すものだと言わなければなりません。(発言する者あり)
 安全保障上問題があるというやじが聞こえましたけれども、ガイドラインに沿っていないということを認めているわけでしょう。犯人捜しのようなことはやめるべきですよ。事実の究明に集中すべきだ、こういうことを重ねて求めておきたいと思います。
 次に、イラクの日報隠蔽問題についてであります。
 二十三日に、イラク日報に関する調査チームの報告書が公表されました。昨年三月、陸上自衛隊研究本部で日報の存在が確認されていたにもかかわらず、なぜ一年近くも報告されなかったのか、その点を調査したものでありますが、私は、その調査というのは、組織的な隠蔽を否定する内容に一生懸命になっていると感じざるを得ません。
 報告書によると、昨年二月二十日の衆議院予算委員会で稲田大臣が日報は残っていないと答弁した後、二十二日に大臣みずから再探索指示があり、研究本部の教訓課で情報公開を担当していたFに探索の依頼があったとしています。しかし、Fは、イラク関連の資料はないと前任者から申し送りを受けていたことから、十分な探索を行うことなく、イラクの日報に関する文書はない、このように回答した、日報が発見された外づけハードディスクには個人資料しかないと認識していたとしています。
 Fは情報公開の担当をいつからいつまでやっていたんでしょうか。

○小波政府参考人 Fにつきましては、平成二十七年の四月から二年間、平成二十九年の三月三十一日まで、あの担当をやっておりました。

○赤嶺委員 Fが教訓課で情報公開の担当になったのが二〇一五年四月一日、探索の依頼を受けたのが、昨年、二〇一七年二月。既に二年近く情報公開の担当をしていたにもかかわらず、どこにどういう文書が保管されているか知らなかったということですが、これは本当におかしいと思いますよ。
 外づけハードディスクは鍵のかかった書棚に保管されていたというのが、これまでの防衛省の説明です。大臣もそのように私に答弁なさいました。そのような書棚にある文書が個人資料のはずがないではありませんか。調査チームはこのような説明を額面どおりに受け取ったんですか。

○小波政府参考人 お答えいたします。
 まず、私どもが調査報告書などに書かせていただきましたのは、まさに、このF、個人の認識の部分でございまして、それについては、るる申し上げましたように、個人資料しか入っていない、また、前任者からイラク関係のものはない等々の理由で、これらについては探索をしなかったということを証言しております。
 一方、これについては、当然のことながら、私どもとしては、極めて問題のある行動でございまして、それについては、結果といたしまして、それらを端緒に、上司に諮ることなく情報公開請求等について不存在という形で回答したこと等を起因といたしまして、今回、処分の対象となったところでございます。

○赤嶺委員 私は、もうちょっと質問したいんです。
 防衛省の行政文書管理細則というのがあります。個人資料の収納場所は、職員各自の机の周辺に限る、このように書いてありますよね。それが、机の周辺に限るというのが細則の中で書かれているのに、二年間もやっていた人が、何でハードディスクに個人資料だと思っていたと。
 その点、どのように説明しておりましたか。その点も確認しましたか。

○小波政府参考人 お答えいたします。
 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも大変この点については不審に思いまして、当人に幾重にも問いただしました。
 残念ながら、事実関係といたしましては、あくまでも本人の認識としては、ですから、情報公開担当として当然了知しておかなければいけない個人文書の、まさにその、今細則にあるところの規定等を正しく理解しておらず、結果として今回のような事案の一因になったということでございます。

○赤嶺委員 これは、そういう説明になっていくと、まさに、個人資料と思っていたという理由が、考えられない理由が、隠蔽の事実を隠そうとしていたのではないか、そういう疑いを抱かれて当然だと思います。
 もう一つ不可解に思うのは、大臣からの再探索の指示があったときにも、その後の情報公開請求があったときにも、Fが上司への報告を行わず、決裁も得ないで回答をしていることです。
 教訓課では、情報公開請求への対応に当たって、上司の決裁は必要ないんですか。

○小波政府参考人 お答えいたします。
 この点につきましても、私どもも、まさにその疑念から、当人、また関係者にも問いただしました。
 それで、当然のことながら、情報公開請求におきまして、当該文書が特定された場合、その文書についてどのような形で出すのか、そのまま出すのか、あるいは不開示部分があるのかないのか等の手続に入りますので、当然、上司等に決裁をとり、上げているという事例は私どもも確認されました。
 問題は、今回の件については、不存在という回答であったために、それ以後の事務が、基本的には教訓課内で発生しなくなる方向に進んでいく、極めて重要な責任をこのFは負っておったんですけれども、その部分について、先ほど来、誤解のあったような、誤った前提のもとに、本来、外づけハードディスクには、後にイラク日報が発見されておるわけなんですけれども、そちらを探索し、捜し出していくという方向ではなくて、安易に不存在という形で回答してしまったということのようでございます。

○赤嶺委員 不存在というのは、情報公開請求をした国民にとっては重大なことですよ。不存在は上司の決裁をとらない、そういう習慣になっていたんですか。

○高橋政府参考人 情報公開の不存在の場合の処置でございますが、本来ならば、文書管理担当者である課長の決裁を得てやるのが当然だと思ってございますし、実は、昨年の南スーダンの再発防止策の中の一環としまして、仮に不存在だという場合には情報公開査察を改めてかけるということになっています。また、不存在で回答する場合には、文書管理者の報告あるいはそのような関与が決められてございますので、今後はこのようなことがないように是正を既にいたしております。

○赤嶺委員 手続はそうなっていたのに、今後はそういうことがないようにと、今度起きたことはそんなことだったという、何かちょっと意味がわからないですよね。本当に納得できるような説明ではありません。
 その一方で、上司である教訓課長は、報告書を見る限り、まるで英雄のように描かれているとしか思えません。課内のパソコンを、みんながパソコンを点検していた、そのときに書棚に保管されている外づけハードディスクを目にし、探索を指示したとか、南スーダン日報が国会等で議論されていたことから、陸幕に報告する必要があるのではないかと考え確認を指示したが、不要と言われたなどということが書かれています。これはもう上司の保身のために口裏合わせ、それがあったと疑わざるを得ません。
 防衛大臣、やはり今回の調査で事実関係が明らかになったとは到底言えないと思います。調査は継続すべきだと思いますが、いかがですか。

○小野寺国務大臣 今委員の御指摘を聞きながら、実は私どもも全く同じ疑問を持って、今回の調査について、当初から、不自然ではないかとか、どうしてそうなのかということ、むしろ、大野チーム、大野政務官はその疑問を持って、疑念の形で何度もこのことについて調査を繰り返しました。
 ですから、三十四回も会合を開いてその点をただし、本人からもさまざまな聴取をし、さまざまな証拠について集め、精力的に調査をしていただきました。その結果が、今回公表させていただいた結果ということだと思います。

○赤嶺委員 この結果に納得しているか、満足しているかといえば、とてもそうじゃない。疑問が次から次へと湧いてくる。
 陸上自衛隊のイラク日報については、いまだ半分以上が提出されていないわけです。航空自衛隊はわずか三日分、海上自衛隊は全く提出されないままであります。探索も継続すべきだと思います。
 調査チームは、研究本部に赴いて関係職員のパソコンや行政文書の検査を行ったとしていますが、みずから日報の探索を行ったんですか。

○小波政府参考人 お答えいたします。
 ただいまお話しの、調査チームが陸上自衛隊の研究本部にということで、本年五月九日及び十六日両日、調査チームの職員は、陸自の教育訓練研究本部、実は現在は研究本部が改組しておりまして、教育訓練本部になっておるんですけれども、に赴きまして、関係職員が業務上使用するパソコン及び文書ファイル並びに外づけハードディスクの保管状況等を調査いたしました。
 当然、今お話がありましたように、中身等についても確認をいたしましたが、その調査方法の詳細につきましては、ちょっと今後の調査に支障を来すおそれがございますから、お答えは差し控えさせていただきますけれども、今回の報告書の内容をしっかりとエビデンスベースでということで、チーム長、大野政務官よりも御指導いただき、また、大野政務官御自身にも赴いていただきまして、私どもとしては十分な調査をしたつもりでございます。

○赤嶺委員 探索は隠蔽を行っていた部隊がやった、これで真実の解明にはほど遠いと思います。もっときちんとした探索、調査をやるように強く要求して、これでは国民の隠蔽の疑念は全く解消していないということも強く申し上げて、質問を終わります。

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参考資料

安保委員会配布資料

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