国会質問

質問日:2018年 5月 17日  第196国会  その他

辺野古新基地 周辺高さ制限、米次第 赤嶺氏に答弁書

 

 政府は5月25日、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設予定地の周辺で、米軍の定める統一施設基準に基づく高さ制限に抵触する建造物は「米軍との個別の調整を経て判断されるもの」とする答弁書を閣議決定しました。日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の質問主意書への答弁。

 高さ制限を超える沖縄高専の校舎などについては、米軍が「航空機の航行の障害となることはなく、安全面に問題はないと認識している」として、高さ制限の適用除外とされていると答弁。どの建造物が制限に抵触するかは、米軍次第ということが浮き彫りになりました。

 また、米軍機が新基地周辺の住宅地上の飛行を避けるための場周経路から「外れた飛行をするやむを得ないケースがあることは否定し得ない」としました。

 空港設置の際、公聴会の実施などを義務付ける航空法についても、「日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」で適用が除外されているとして、利害関係者から意見を聞く必要はないとの認識を示しました。(しんぶん赤旗 2018年5月27日)

議事録

平成三十年五月十七日提出/質問第三〇三号

辺野古新基地建設に伴う周辺建造物等の高さ制限に関する質問主意書

 政府は、沖縄県民の民意を無視して、名護市辺野古への米軍新基地建設を強行している。昨年四月以降は、沖縄県との実施設計や環境保全対策に関する事前協議も終わっていないのに、埋立工事に必要な岩礁破砕許可さえ得ないまま、護岸工事に着手している。
 こうした下で、先月来の沖縄の地元紙の報道で、新基地周辺にある国立沖縄工業高等専門学校(以下、「沖縄高専」という。)の校舎や学生寮、久辺小中学校などが、飛行場とヘリポートの計画と設計に係る米国防総省の統一施設基準に基づく高さ制限、すなわち制限表面に抵触することが明らかになった。政府は、これまでの国会審議を通じて、これらを高さ制限の適用対象から除外する考えを示しているが、その根拠や具体的な安全確保策については判然としない。
 以下、質問する。

一 辺野古新基地建設に伴い、周辺の建造物や樹木(以下、「建造物等」という。)の高さ制限を設定する主体と具体的な制限内容を示されたい。

二 新基地の標点と標高、一の高さ制限を超えるすべての建造物等と標高を明らかにされたい。

三 二の建造物等の所有者や関係自治体をはじめとする利害関係者に対し、高さ制限に関する説明や依頼を行った期日と具体的内容を示されたい。

四 沖縄高専の安藤安則校長は、同校が高さ制限を超えることにつき、報道されるまで政府から説明がなかったことについて「非常に困惑している」(「沖縄タイムス」二〇一八年四月十三日付、「琉球新報」同十七日付)と述べている。政府は、二〇〇六年五月の日米安全保障協議委員会で、辺野古・大浦湾に滑走路をⅤ字型に配置する現在の計画に変更するに当たり、当該統一施設基準については「承知をしていた」(二〇一八年五月十日、衆院安全保障委員会での私への答弁)と述べているが、なぜ、当時、説明しなかったのか。きわめて不誠実な対応ではないか。

五 政府は、沖縄高専について、「現在までの米側との調整結果により、当該高さ制限の対象とはならない」(二〇一八年四月十日、衆院安全保障委員会での照屋寛徳議員及び参院外交防衛委員会での伊波洋一議員への答弁)との認識を示しているが、具体的にいつ、どのような手段で米側に確認したのか。当該統一施設基準に適用除外に関する規定が置かれていることを根拠に挙げているが、適用除外の要件は何か。要件に合致するかどうかを判断するのは誰か。高さ制限を超える建造物等が現存する下で、誰がどのように安全を確保するのか。

六 政府は、辺野古新基地の飛行経路について、「離陸、着陸のいずれも周辺の集落の上空を通過するのではなく、基本的に海上とすることで日米間で合意をしている」(二〇一八年五月十日、衆院安全保障委員会での私への答弁)としているが、その一方で、沖縄電力株式会社の送電鉄塔や通信会社の電波塔などは撤去・移設することを依頼している。米軍機による飛行を想定しているからこそ、送電鉄塔等の撤去等を依頼したのではないのか。

七 政府は、沖縄高専の真裏にある米軍の着陸帯「フェニックス」の使用状況をどのように把握しているか。草が生えた広場の状態だった同着陸帯に二つの正方形のヘリパッドが整備されていることが報じられているが(「琉球朝日放送」二〇一五年一月二十二日)、その事実関係についてどう認識しているか。新基地の供用開始後は、従来以上の頻繁な使用が想定されるのではないか。

八 米国政府関係者は、米軍機による新基地周辺の集落上空の飛行について、「私たちアメリカ側としては、再編協議の中で、住宅地上空を絶対飛ばないという合意をしたわけではない」(ラーセン在日米軍副司令官/二〇〇六年六月八日放映、NHK「変貌する日米同盟」)、「ヘリコプターの運用というのは、その性質上予測できないもので、通常通り運用できないという状況は出てきます」(ローレス米国防副次官/同年五月五日、JNNインタビュー)などと述べてきた経緯がある。そうした下で、政府が埋立申請書に添付した環境保全図書においては、「Ⅴ字型の滑走路は、主たる滑走路を使用することにより離発着時の飛行及び有視界飛行の場周経路が海上を通ることができるよう作られたもの」とする一方、「気象(風向き、視界及び雲の状況)、管制官の指示(間隔及び順序)、安全(緊急時)、パイロットの専門的な判断、運用上の所要等により、航空機は図示された場周経路から外れることがあります」としている。場周経路から外れた飛行には、新基地周辺の集落上空を飛行するケースも含まれるとの認識か。

九 沖縄防衛局は二〇一五年八月十二日付で、沖縄電力株式会社に送電鉄塔等の撤去等を依頼する文書(沖防企第三七二一号)を発出している。菅義偉官房長官が、政府と沖縄県との間で一ヶ月間の集中協議を行うこととし、八月十日から九月九日までは基地建設の作業を中止するとしていたその最中に、このような文書を発出していたことになるが、これは一体どういうことか。表向きは作業を中止するとしながら、実際には進めていたということか。

十 航空法第三十八条は、「国土交通大臣以外の者は、空港等又は政令で定める航空保安施設を設置しようとするときは、国土交通大臣の許可を受けなければならない」と規定している。ところが、米軍及び国連軍が使用する飛行場及び航空保安施設については、日米地位協定及び国連軍地位協定の実施に伴う航空法特例法によってその適用が除外されている。このため、民間空港等の設置に当たっては、空港等の位置や範囲、高さ制限等に関する告示と現地における掲示、利害関係者から意見を聴取するための公聴会の開催などが義務付けられているが、辺野古新基地建設においては、これらの手続きが行われないまま建設工事が進められている。公有水面埋立法は米軍基地の建設にも適用する一方で、なぜ、航空法第三十八条を適用しないのか。日本政府として飛行場の安全性をどう確保し、利害関係者が意見を述べる権利と機会をどう保障するのか。

 右質問する。

 

平成三十年五月二十五日受領/答弁第三〇三号

衆議院議員赤嶺政賢君提出辺野古新基地建設に伴う周辺建造物等の高さ制限に関する質問に対する答弁書

一について

 普天間飛行場代替施設を含め、米軍が運用する飛行場については、米軍が定めている飛行場及びヘリポートに係る計画及び設計についての統一施設基準が適用されるものと承知しており、当該基準においては、航空機の安全な航行を目的として、飛行場の周辺空間に進入表面、水平表面等の高さ制限(以下「高さ制限」という。)を設定していると承知している。

二について

 お尋ねの「新基地の標点と標高」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認願書においては、北側滑走路の標点は北緯二十六度三十一分二十四秒、東経百二十八度二分五十五秒と、南側滑走路の標点は北緯二十六度三十一分十五秒、東経百二十八度三分二秒と、それぞれ記載している。また、両滑走路の計画線は、基本水準面の十メートル上と記載しており、これを標高に換算すれば約八・八メートルとなるところである。
 その上で、普天間飛行場代替施設に関し、キャンプ・シュワブ周辺の個々の建造物が高さ制限の対象となるか否かについては、飛行場の運用形態等を踏まえ、米軍との個別の調整を経て判断されるものであるため、一概にお答えすることは困難である。

三について

 お尋ねについては、平成二十七年六月十一日に株式会社NTTドコモ、ソフトバンクモバイル株式会社(当時)及び沖縄セルラー電話株式会社(以下「通信事業者」と総称する。)に対して、高さ制限について説明を行った上で、通信鉄塔の移設等に係る依頼を行い、同年八月十二日に沖縄電力株式会社(以下「沖縄電力」という。)に対して、高さ制限について説明を行った上で、送電線路の移設及び既設鉄塔の撤去に係る依頼を行ったところである。また、平成三十年四月十一日に独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校(以下「沖縄高専」という。)及び地元自治会等に対して、同月十二日に名護市に対して、同月十六日に沖縄県に対して、それぞれ高さ制限について説明を行ったところである。

四について

 沖縄高専の建造物については、現在までの米軍との調整の結果、航空機の航行の障害となることはなく、安全面に問題はないと認識していることから、高さ制限の対象とはならないこととされているため、沖縄高専に対し、この旨を説明したところである。政府としては、引き続き、関係者への説明等を通じ、普天間飛行場代替施設の建設事業に対する理解を得ていきたいと考えている。

五について

 お尋ねの日米間のやり取りの詳細について明らかにすることは、米国との関係もあり、差し控えたい。また、高さ制限の適用除外については、米海軍航空システム司令部において判断されるものと承知しており、沖縄高専の建造物については、航空機の航行の障害となることはなく、安全面に問題はないと認識していることから、高さ制限の適用除外とされているところである。

六及び九について

 沖縄電力の送電線路及び既設鉄塔並びに通信事業者の通信鉄塔については、周辺の地形から突出した形で建設されていること、送電線が広域にわたり設けられていること等から、周辺地域への安全性の確保に万全を期す観点から移設等に向けた調整を行っているものであり、その一環として、沖縄防衛局は、平成二十七年八月十二日に、沖縄電力に対し、送電線路の移設及び既設鉄塔の撤去に係る依頼を行ったところである。
 他方、同年八月十日から九月九日までの工事の中断については、普天間飛行場の危険除去と辺野古移設に関する政府の考え方、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の姿勢等を沖縄県に対して丁寧に説明する協議期間を確保するために、辺野古沖における工事等について行うこととしたものである。

七について

 お尋ねの「米軍の着陸帯「フェニックス」の使用状況」については、米軍の運用に関することであり、政府としてお答えすることは差し控えるが、「同着陸帯に二つの正方形のヘリパッド」が存在することは承知している。
 政府としては、米軍機の飛行に際しては安全の確保が大前提と認識しており、引き続き、米軍に対し、安全管理の徹底に万全を期すとともに、地元に与える影響を最小限にとどめるよう求めてまいりたい。

八について

 普天間飛行場代替施設の完成後における飛行経路については、平成二十三年十二月二十八日に防衛省が公表した「普天間飛行場の代替の施設における有視界飛行経路について」において示しているとおり、離陸、着陸のいずれも周辺の集落の上空を通過するのではなく、基本的に海上とすることで日米間で合意しているところである。他方、当該公表において、「気象(風向き、視界及び雲の状況)、管制官の指示(間隔及び順序)、安全(緊急時)、パイロットの専門的な判断、運用上の所要等により、航空機は図示された場周経路から外れることがある」としているとおり、航空機が場周経路から外れた飛行をするやむを得ないケースがあることは否定し得ないが、その場合であっても安全面に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう米軍に対して求めているところである。

十について

 米軍は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条の規定に基づき、日本の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国において施設・区域を使用することを許されているところ、米軍がかかる目的で我が国に駐留することを同条約が認めているということは、事前協議に係る事項のように別段の定めがある場合を除くほか、米軍がかかる目的の達成のため、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としている。かかる前提の下で、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)は、我が国に駐留する米軍が使用する飛行場及び航空保安施設並びに航空機及びその乗組員等に関する諸規定を置いているところ、その趣旨に鑑み、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律(昭和二十七年法律第二百三十二号)は、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第三十八条第一項の規定を含めた同法の規定の一部の適用除外を定めたものである。

 

 

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参考資料

辺野古新基地建設に伴う周辺建造物等の高さ制限に関する質問主意書

辺野古新基地建設に伴う周辺建造物等の高さ制限に関する質問主意書に対する政府答弁書

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