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「コロナ封じ込め」を戦略目標にすえ3本柱の対策強化を

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志位委員長が政府に緊急要請

 日本共産党の志位和夫委員長は20日、菅義偉首相あてに、新型コロナウイルス感染症の「封じ込め」を戦略目標にすえ、ワクチン接種、大規模検査、十分な補償の対策強化を求める緊急要請を行いました。志位氏が国会内で河野太郎ワクチン担当相と会談し、要請書を手渡しました。穀田恵二国会対策委員長が同席しました。

 要請は、(1)「コロナ封じ込め」を戦略目標にすえ、ワクチンの安全・迅速な接種、大規模検査、十分な補償と生活支援の3本柱で対策を強化する(2)医療機関への減収補填(ほてん)、医療体制への支援強化(3)東京五輪の中止―の3点の対策の実行を求めています。感染拡大の第4波が深刻な状況のもとで、これまでの対策の延長ではコロナ封じ込めはできないと指摘しました。

 (1)では、ワクチン接種回数が世界128位と立ち遅れるなか、迅速な接種とともに他の対策と一体でこそ感染封じ込めができるとしました。そのうえで「感染拡大の波が繰り返すことはさけられない」という政府の姿勢を転換し、「コロナ封じ込め」を戦略目標に据えることを要求。▽ワクチンの安全・迅速な接種のため、実態に即したロードマップ(工程)を示し、安定した供給・接種を行う自治体への万全の支援という国の責任を果たす▽社会的検査を抜本的に拡充し、大規模検査で感染を封じ込める▽打撃をこうむるすべての中小企業、個人事業主、労働者に十分な補償と生活支援を行う―の3本柱で対策強化を求めました。

 ワクチンについて志位氏は、高齢者への接種の7月末完了という目標期日を自治体に押し付けるやり方が現場に混乱を生んでいると指摘。86%の自治体で7月末完了という調査結果を政府が公表したものの、医療体制などが確保できればという条件付きだと述べ、「裏付けのない目標期日を上から押し付けるやり方ではなく、現場の実態をリアルに把握し、ネックになっている問題をつかんで全面的に支援する責任を果たす必要がある」と求めました。

 そのうえで志位氏は、実態に即した接種のロードマップを明らかにすることや、接種体制への支援、医療従事者への報酬の確保などを要求。各自治体へのワクチン供給の通知が直前になっていることも障害となっているとして、この日に届けるという確定日付を速やかに示すことなども求めました。

 河野氏は、現場の実態把握などの要望に対し「承りました」と応じ、医療従事者への報酬の確保については「総理に強く求めている」として共産党の要請も受け引き続き求めていく考えを示しました。また、確定日付でのワクチン供給については「確定日付で2週間前にお示しできるようにした」と答えました。(しんぶん赤旗 2021年5月21日)

 

 

新型コロナ感染症対策に関する緊急要請

2021年5月20日 日本共産党

 日本共産党の志位和夫委員長が20日、河野太郎ワクチン担当相に手渡した「新型コロナ感染症対策に関する緊急要請」の全文は次の通りです。


 感染拡大の第4波は、東京、大阪だけでなく全国に広がり、感染者も、重症者も増え続けている。感染力が強く重症化のリスクも大きいとされる変異株の広がり、医療危機とそのもとで入院も治療も受けられない患者の急増、長引くコロナ危機による暮らしと事業の疲弊と危機などが深刻になっている。緊急事態宣言が延長・拡大され、まん延防止等重点措置も広がっているが、問題は、対策の中身である。これまでと同じ対策の延長線上では、コロナを封じ込めることはできない。

 ただちに、以下の対策を実行することを求める。

1、コロナ封じ込めを戦略目標にすえ、ワクチンの安全・迅速な接種、大規模検査、十分な補償と生活支援の3本柱での対策を強化する

 ワクチン接種が始まったが、感染抑止の社会的効果が得られるまでには一定の時間がかかる。しかも、ワクチン接種自体が、日本は世界で128位と大きく立ち遅れている。迅速なワクチン接種はきわめて重要であるが、他の対策と一体にすすめてこそ、感染を封じ込めることができる。

 政府は、「コロナでは感染拡大の波がくり返されることはさけられない」と弁明するが、「波」がくり返されるごとに命が損なわれ、社会の疲弊が深刻になっているのが現実である。こうした姿勢を続けることは許されない。

 政府に対して、これまでの姿勢を転換し、「コロナ封じ込め」を戦略目標にすえることを強く求める。そのために、以下の3本柱で対策を強化することを求める。

(1)ワクチンの安全・迅速な接種のために、実態にそくしたロードマップ(工程)を示すとともに、安定したワクチンの供給と接種を行う自治体への万全の支援という、国の責任を果たすことを求める

 政府は、「高齢者は2回接種を7月末完了」として、自治体に「計画の前倒し」の号令をかけ、86%の自治体で「完了」するという政府の調査を発表した。しかし、これは「医療従事者の確保等を前提とした回答も含まれる」としているように「体制がとれたら前倒しできる」というものにすぎない。「予約がとれない」「回線がパンクした」「やっと取れた予約は8月と9月」「国直営の大規模接種のシステム混乱」など、現場の実態、起きている混乱や苦労を反映したものではない。

 医療従事者への接種も、5月17日時点で39%にとどまっていることへのまともな説明もない。一方で、自治体がいちばん苦労し、全国知事会も国に強く要望している医師・看護師の確保など接種体制への支援策は立ち遅れている。

 いま国がやるべきことは、裏付けのない「目標・期日」を宣伝し、自治体に上から押しつけることではない。ワクチン接種をすすめるうえで、現場の実態をリアルに把握し、ネックとなっている問題をつかみ、ワクチンの安定的供給と自治体への全面的支援という、安全かつ迅速なワクチン接種への国の責任を果たすことである。

 ―医療体制の確保状況など実情を把握し、実態にそくしたロードマップ(工程)を国民に明らかにする。

 ―医師・看護師の確保、保冷バッグ、効率的な注射器など機材の確保、集団接種会場の確保など、接種体制の整備・確立への国の全面的な支援を行う。集団接種のためにクリニックを休診することへの補償を含め、医療従事者への適切な報酬を確保する。

 ―各自治体へのワクチンの供給量の通知が直前になっていることが接種体制を整えるうえでも障害になっている。全国知事会からも「2週間ごとのワクチン割り当てでは弾力的な接種計画がたてづらい」「日程を組む上では支障が大きい」という意見が出ている。供給スケジュール、配分量等について確定日付で速やかに示す。

(2)高齢者施設・医療機関などに対する社会的検査を抜本的に拡充するとともに、無症状者に焦点をあてた大規模検査で感染を封じ込める

 高齢者施設・医療機関などに対する頻回・定期的な社会的検査とともに、無症状感染者、初期症状感染者を見つけ出し保護することは、感染力が強い変異株の拡大によって、いよいよ重要になっている。

 ―高齢者施設、医療機関・障害福祉施設の職員・入所者への頻回検査を、最低でも週1回にするなど拡充する。保育園、学校などにも対象を拡大する。

 ―無症状者に焦点をあてた幅広いPCR検査(モニタリング検査)は、1日5000件程度にすぎず、効果を発揮していない。10万規模に引き上げ、大規模検査によって感染の封じ込めをはかる取り組みに本腰をいれるべきである。

 政府分科会は、体調が悪いなどわずかでも症状のある人に短時間で結果が出る抗原定性検査を実施し、陽性であれば同じ職場の人全体にPCR検査を行うなどの手法を併用するなどの提案を行っているが、政府は「検討する」というだけで具体化をしていない。こうした手法も併用して、検査の規模と対象を思い切って拡大する取り組みの具体化をはかるべきである。

 ―インドで猛威をふるっている変異株を迅速につかむため、検査・ゲノム解析の拡充とともに、地方衛生機関で検査できるように人的・財政的支援を強化する。検疫・検査の強化とともに、入国者の停留期間を2週間に延長するなど水際対策を強化する。

(3)自粛要請などで打撃をこうむっているすべての中小企業、個人事業主、労働者に対して十分な補償と生活支援を行う

 感染拡大と緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の経済的影響は全国に及び、特定の業界・業種だけでなく、すべての中小企業、個人事業主に深刻な打撃となっている。十分な補償は、経済対策・生活防衛策であるとともに、感染拡大を抑止するうえでも必要不可欠である。

 ―全国規模で、コロナ禍による売り上げ減少で苦しむ中小・小規模事業者、個人事業主への支援が必要である。2回目の持続化給付金、家賃支援給付金の支給を強く求める。

 ―「月次支援金」の増額と支給の迅速化をはかるとともに、地方が支援策として活用できる地方創生臨時交付金も、緊急事態宣言などの地域に限定せず、全国で幅広く活用できるようにする。「協力金」を事業規模に応じて拡充し、対象も拡大するなど、地方の中小企業等への支援が拡充できるようにする。

 ―雇用調整助成金、休業支援金の一部縮小をただちに撤回し、コロナ特例措置を全国規模で維持する。

 ―文化・芸術関係の団体、フリーランスへの支援を「新規事業」などに限定せず、使途を問わない特別給付金の支給や休業補償など抜本的に強化する。

 ―野党が共同で提案している生活困窮者への一律10万円の給付をただちに実施する、「住居確保給付金」「生活福祉資金の特例貸し付け」の支援の延長・拡大、給付への切り替えなど、コロナ禍で仕事や収入が減り、生活に困窮にしている多くの人たちへの支援を強化する。

2、命を救うために医療機関への減収補填、医療体制への支援強化を

 ―今度こそ医療機関への減収補填(ほてん)を実施する。コロナ患者を受け入れている医療機関はもとより、地域医療を共同して支えているすべての医療機関、医療従事者への支援は急務である。緊急包括支援交付金による財政支援の継続・拡充、受診・利用控えによって減収が生じている医療機関・薬局・健診機関、介護・福祉事業所などへの支援を強化する。

 ―大阪、兵庫をはじめ感染が拡大し、医療が危機にひんしている地域への医師・看護師等の応援派遣、病床の広域確保を国の責任で行う。

 ―病床逼迫(ひっぱく)のもとで、自宅や施設で療養している患者への観察・急変時への対応などのための緊急支援を行う。緊急事態のなかで「持ち出し」覚悟で自宅療養者への酸素吸入などの治療を往診で実施している医療機関もある。ただちに診療報酬の特例加算、公的支援を行う。

 ―公的・公立病院の統廃合、医学部定員削減を中止する。

3、コロナ封じ込めと医療に多大な負荷と困難をもたらす東京五輪の中止を

 今年7月のオリンピック開催は、全世界から数万人規模の選手・関係者を来日させるなど感染爆発の大きなリスクがあるとともに、五輪への医師・看護師の派遣、特別な病床の確保など、逼迫している医療体制をさらに危機に追いやるなど、コロナ封じ込めと命を守る医療への多大な負荷となる。

 コロナ対策と五輪開催が両立できないことは、いまや明瞭である。

 国民の命を最優先する立場から日本政府が中止の決断をすれば、IOC(国際オリンピック委員会)がそれを覆すことはできない。「主催者はIOC」などという責任回避はやめ、開催国の政府として、中止を決断することを求める。

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