元米海兵隊員の米軍属による女性遺体遺棄という衝撃的な事件は、5月27日に告示された沖縄県議選(6月5日投開票)の様相を激変させました。国土の0.6%に74%の米軍専用基地が集中し、戦後71年間、基地あるがゆえの悲劇が繰り返されてきた沖縄のあり方、さらには沖縄に基地を押し付けてきた歴代政権の姿勢そのものが鋭く問われています。
共産党 基地撤去訴え
「基地の島・沖縄からの脱却が問われる歴史的なたたかいです」。7期目を目指すカヨウ宗儀候補(沖縄市区)は出発式で参加者を前に訴えました。
日本共産党は名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げる「オール沖縄」の翁長県政を支えるとともに、県民のいのちと人権を守るために米軍基地撤去を訴えています。そのために、県政与党の過半数確保に貢献するとともに、何としても7人全員当選を目指します。
訴えを聞いていた有権者からは、安倍政権への怒りとともに、県議選を通じて国のあり方を変えたいという思いが語られました。
ニシメ純恵候補(浦添市区)の出発式に参加した男性(68)は「怒り心頭だ。沖縄では、米兵が家族に暴行しても抵抗したら射殺される。そういうことが繰り返されてきた。こんな国は変えなければならない」と憤ります。
とぐち修候補(那覇市・南部離島区)の訴えを聞いていた男性(42)も言います。「今回の米軍属の事件が起こってもなお、安倍首相は『辺野古が唯一』だと言っている。選挙で勝たないと変わらない。共産党の7候補には全員当選してほしい」
買い物帰りに通りがかった女性(66)は、「まだ決めていないが『基地撤去』の候補がいい。辺野古の基地もつくってほしくない」と語っていました。
「子どもの貧困」、くらしも争点
今回の選挙では、基地問題に加え、「子どもの貧困」や福祉・雇用など暮らしの問題も問われます。糸満市で玉城ノブコ候補の訴えを聞いていた介護職の女性(40)は期待を込めます。「介護保険の改悪でお年寄りがデイケアに通えなくなるのではと心配です。4人の子どもがいて教材費・給食費の負担も大変。無料相談所で市民のための活動をしている共産党なら願いを託せます」
ただ、日本共産党の7候補が立候補している6選挙区はいずれも横一線の大激戦になっています。現状は、全国からの支援を受けながら、対話・支持拡大や大量宣伝で大きな飛躍がなければ勝ち抜くことはできません。
自民 「厳しさ」あおり企業締め付け
「ひじょうに強いアゲンスト(逆風)の中にいる」。那覇市内での自民党現職の出陣式。陣営幹部は強い危機感をあらわにしました。ここ数日、同党候補者の決起集会でも、一様に「厳しい」という声が出ています。
今年1月の宜野湾市長選では、自公推薦の現職が基地問題の争点化を徹底して回避する戦術をとりました。自民党はこの経験を踏まえ、経済政策を前面に出して論戦を展開。「県政奪還」を掲げ、現有13議席に対して20人(推薦含む)を擁立し、公明党などと合わせ過半数確保を狙うなど、攻勢に出ていました。
しかし、今回の事件を契機に情勢は激変。基地問題が、避けては通れない重要争点に浮上したのです。
「すべての基地をなくしてほしい」という有権者の声が高まるなか、辺野古新基地推進の自民党はこれに応えることができません。県議会では25日に海兵隊撤退、辺野古新基地断念の意見書が可決されましたが、同党は賛否を明らかにできず、退席しました。
ただ、自民党は決起集会や出陣式では徹底した企業締め付けで多くの人数を集め、期日前投票にも力を入れています。メディア関係者は「むしろ厳しさを強調することで陣営を引き締めている可能性もある」と指摘します。
衆院議員6氏応援
27日に告示された沖縄県議選には、日本共産党の笠井亮、穀田恵二、赤嶺政賢、池内さおり、斉藤和子、田村貴昭の各衆院議員が応援に駆けつけました。
(しんぶん赤旗 2016年5月28日)