国会質問

質問日:2019年 5月 9日  第198国会  憲法審査会

国民投票法は改憲勢力に有利 「重大な欠陥」と赤嶺氏 民放連への参考人質疑 衆院憲法審

 

 衆院憲法審査会は9日、改憲の国民投票時のCM規制に関し、日本民間放送連盟(民放連)に対する参考人質疑を行いました。民放連の永原伸専務理事は「CM量の自主規制は表現の自由に抵触する恐れがある」とし、法規制についても「慎重であるべきだ」と述べました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、憲法審は改憲原案と改憲発議の審査の場であり、国民多数が改憲を望まない中で、憲法審を動かすべきではなく、改憲手続きのための法整備も必要ないとの立場を表明。国民投票法(2006年成立)に対しては「改憲案の広報や広告が改憲推進勢力に有利な仕組みになっているなど、極めて重大な欠陥があると指摘してきた」と強調しました。

 赤嶺氏はCMについて資金の多寡で国民への「情報量に格差が生じるおそれがある」と指摘した日弁連の意見書(1月18日)を紹介。日弁連が資金力によって賛否のCM量が偏ったり、意見表明が制限されるのは、放送法4条や民放連の「放送基準」にある「政治的公平性」などに抵触するのではないかと指摘していることへの参考人の見解を問いました。

 民放連の田嶋炎理事待遇番組・著作権部長は「(CM)枠が特定の広告主によって買い占められるとは想定できない」と述べました。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、同法制定時は放送局側によるCMの自主規制が前提だったとして「現行法は欠陥法だ。国民投票はできない」と述べました。 (しんぶん赤旗 2019年5月10日)

質問の映像へのリンク

民放連に対する参考人質疑(衆院憲法審査会)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 私たちは、憲法審査会は憲法改正原案、改正の発議を審査するための場であり、国民の大多数が憲法改正を望んでいない中、憲法審査会は動かすべきではないという立場であります。
 国民投票法についても、国民が改憲を望んでいないもとで改憲手続のための法整備を行う必要はないという立場をとってまいりました。
 同時に、国民投票法には最低投票率の規定がないこと、公務員や教師の意見表明や運動を不当に規制していること、改憲案の広報や広告が改憲推進勢力に有利な仕組みになっていることなど、極めて重大な欠陥があると指摘してきたところであります。
 本日は、テーマである有料広告について参考人に幾つか質問をいたします。
 有料広告については、潤沢な資金力のある方が有利ではないかという危惧が多く出されています。
 例えば、日本弁護士連合会は、ことし一月十八日に出した憲法改正手続法における広告放送及び最低投票基準に関する意見書で、一般に、広告放送を効果的に行うには数千万円から億単位の資金が必要であると言われている、したがって、資金力の多寡により、国民に提供される改正案に対する賛成及び反対に関する情報量に格差が生じるおそれがある、このように指摘をしております。
 昨年九月の東京新聞では、二〇一五年の大阪都構想の賛否についての住民投票で、資金力のある推進派が十八種類四百八十本のテレビコマーシャルを流したのに対し、資金力に劣る反対派は一種類百二十本だったと報道しています。約四倍の量の差があり、この差が投票結果に影響したという指摘も多くあります。
 資金力によって賛否のコマーシャルの量が偏る、あるいは、資金の有無によってコマーシャルでの意見表明の機会が制限されることについて、この点については参考人はどのように考えておられますか。

○田嶋参考人 量につきましては、賛否のバランスの要素と絶対量の要素と両方ございます。
 量の絶対量についてのお尋ねかと存じますが、特定の広告主にCM枠のほとんど全部が買い占められるというようなことは、私どもの感覚では想定のできないことでございます。ですので、仮に放送広告に充当していただける資金を、まあ潤沢かどうかわかりませんが、多くお持ちのお立場の方がいらっしゃったとしても、絶対的な量が、放送全体がそれで埋め尽くされるというようなことはないように理解をしてございます。
 以上です。

○赤嶺委員 先ほど申し上げたのは、禁止期間が二週間あるといっても、それ以前はいわば広告の規制がないわけですから、やはり資金量によって広告の違いが出てくることの懸念を申し上げたことであります。
 それで、日弁連は意見書で、憲法改正案の賛否に関する広告について量の規制を行わないのであれば、仮に憲法改正案の賛成又は反対のいずれかの広告のみが出稿された場合、そのまま片方の広告のみを放送することになるのか、このような疑問を呈しています。さらに、仮にそのまま放送することになるのであれば、放送法四条や民放連の放送基準にある政治的公平性や多角的に論じるといった規定や基準に抵触することになるのではないかと日弁連は指摘しておりますが、この日弁連の指摘については参考人はどのようにお考えでしょうか。

○永原参考人 お答えいたします。
 まず、正直なところ、先ほど田嶋が申しましたとおり、憲法改正が実際に発議されたとして、賛成でもいいですし反対でもよいのですが、どちらか片方だけの広告が媒体にあふれ返るという事態はにわかに想定しにくいというのが率直な感想でございます。
 現行憲法が制定されて以来初めて憲法を改正しようということですから、当然、さまざまな立場の方々がさまざまな意見を開陳なされるだろう、その表現の手段として広告を選択されるということなのではなかろうかと思っております。
 しかも、広告媒体はさまざまございます。じっくり読んでもらおうと新聞の一面広告を選ぶところもございましょうし、若者に訴求しようと動画配信サービスやインターネット広告に予算を割くところもございましょう。また、イギリスのEU離脱をめぐる国民投票では、バスの車体にスローガンを印刷したラッピング広告がよくニュースで報道されておりました。屋外広告や、電車やタクシーなどの交通広告を多用するというところもございましょう。
 そのような広告媒体の組合せによって憲法改正の発議案についての意見を国民に訴えるときに、放送CMだけで議論をされても、当然、ネット、SNSなど、ほかの媒体を選択するということもございましょうし、また、放送CMについても中盤から大量に投下するというような広報戦略をとるというところもございましょうし、出稿する側の広報戦略というのは媒体側でコントロールできるものではございません。政党のスポットCM一つとってみましても、ある政党はCMを大量に流し、ある政党は一本も流さないというようなことは日常的にあることでございます。
 国民投票法の条文を見ましても、国民投票運動のCMだけを特別扱いするよう求めた条文というのはございません。むしろ、国民の表現の自由を不当に侵害してはならないと百条に書いてございますので、私どもは、放送法の四条の準則規定や放送基準、更に今回まとめた基本姿勢、考査ガイドライン、このようなことを踏まえて、放送事業者が自主的、自律的に対応していくということだろうと考えております。

○赤嶺委員 表現の自由というのは極めて大事なもので、特に選挙や国民投票法などについても自由に行われるべきだと考えております。私も沖縄県の選出ですが、県民投票が二回行われた地域でもあります。
 ただ、実態として、憲法という事柄を考えてみた場合に、やはりそこの広告は公平でなければいけない、そして民放連自身が公平にコマーシャルを流すということがどういうことなのかということについても真剣にお考えいただきたいなということを申し上げて、質問を終わります。

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