今年も沖縄市で「沖縄全島エイサーまつり」が行われた。エイサーは沖縄の夏の風物詩で、3日間にわたって開催される年に一度の祭典には、毎年30万人を超える人々が押し寄せる。
今年の祭りが例年と違ったのは、那覇市に司令部を置く陸上自衛隊第15旅団が初めて参加したことだ。市民団体から抗議の声が上がり、中谷元・防衛相が記者会見で不快感を示す事態に発展した。
その日の会見は異様だった。冒頭から一連の県民の抗議活動を並べ立て、「過度な抗議活動」「妨害行為」などと攻撃した。矛先は宮古島市の自衛隊の行軍訓練や日米共同演習に反対する抗議活動にも向けられた。
いま政府はアメリカの軍事戦略に追随した異常な軍事要塞(ようさい)化を進めている。県民の抗議の根底には、「沖縄を再び戦場にするな」「国策の過ちを繰り返させない」という平和への強い意志がある。防衛相の発言は、この沖縄の心を全く理解しないものだ。
沖縄のエイサーは、1600年頃に伝えられた念仏踊りが源流とされる。沖縄戦と米軍占領でエイサーどころではない困難に直面したが、県民は伝統を守り抜いてきた。収容所では、物資不足の中でも、空き缶と棒でつくったカンカラ三線で歌った。コザ(現在の沖縄市)では、米軍払い下げの水管や一斗缶をたたいてエイサーをした。
米軍統治下の苦しい生活の中で、コザの街を盛り上げたいとの思いから生まれたのがエイサー大会だ。嘉手納基地に集落ごと接収され、故郷を追われた人々が苦労の末、戦前から続くエイサー踊りを復活させ、絆をつないできたのだ。そこには、基地の街といわれるコザを自分たちの街にしていきたいという若者たちのエネルギーが詰まっていた。
こうした歴史を持つ大会に自衛隊が参加するなど到底認められない。自衛隊への抗議は、憲法で保障された国民の権利だ。防衛相の発言には、全国から100人を超える憲法学者や弁護士からの抗議声明も発せられた。厳重に抗議し、謝罪と撤回を求める。(しんぶん赤旗 2025年10月8日)
中谷防衛相の発言に抗議し、謝罪と撤回を求める「うりずんの会」=9月26日