米兵による相次ぐ性的暴行事件と隠蔽(いんぺい)が大問題になっている中、6月に別の暴行事件が起こっていたことが報じられた。昨年12月の少女暴行事件が報じられた6月25日の前に起こっていた。女性が受診した医療機関の関係者が、事件直後に県警に通報していた。この間、国会で賢問もしたが、政府は新たな隠蔽を行いながら、「通報体制を見直した」などとしらじらしい答弁を繰り返していたのだ。下劣としか言いようがない。
昨年の少女暴行事件の犯人は、基地の外に居住している米兵だった。直後に母親が110番通報しており、その時点で身柄を拘束することも可能だった。ところが、県警は米軍に通報し、犯人を逮捕しなかった。それから半年、初公判の期日が決まり、県内メディアが報じて明らかになった。
県警の刑事部長は、私たちの抗議に「県警は身柄を拘束したら、すぐにマスコミに公報していた」と説明した。身柄を拘束しなかったので、公報しなかったと言わんばかりの説明だった。6月の事件も、県警は逮捕を避け、2カ月半近くたって、書類送検したのを機に明らかになった。米軍の捜査協力を得られているとして、いずれの事件も起訴前の身柄引き渡しは求めていない。官邸や外務省、警察庁など政府挙げての強い圧力を感じる。
2019年の直木賞受賞作に、『宝島』という小説がある。沖縄が米軍に統治された1952年から72年の日本復帰までを描いた小説だ。米軍支配への沖縄住民の抵抗を見事に映し出している。そのなかに、当時の琉球警察が暴力的性犯罪を繰り返す米兵を、米軍のMP(憲兵隊)に知られないようにして追い詰める場面がある。米軍の直接統冶下でも、琉球警察は刑事裁判権を守るため奮闘していた。
いまの政府の姿は属国としか言いようがない。米軍犯罪の根絶には、日米地位協定や安保条約に縛られている日本の政治を大本から変えることが必要だ。県民の人権と尊厳が守られる政治の実現をあきらめるわけにはいかない。(しんぶん赤旗 2024年9月11日)