エッセイ

水曜随想 訓練場断念は住民の力

 

 沖縄県うるま市石川の陸上自衛隊訓練場の建設計画を住民の力で断念に追い込んだ。玉城デニー知事の権限を「代執行」で奪い、辺野古の工事を強行している政府のやり方に切歯扼腕(やくわん)していただけに、今回の快挙は県民を励ましている。宮古、八重山、与那国の軍事要塞(ようさい)化に反対する闘いにも連動させたい。

 訓練場の建設は昨年12月、突然持ち上がった。予定地のゴルフ場跡地周辺は閑静な住宅地で、年間4万人が訪れる県立石川青少年の家や、年齢に応じた登山を楽しめる石川岳もある。現場を知っているものからすれば、あまりにも無謀な計画だった。

 予定地を抱える旭区自治会から始まった闘いは、瞬時にしてうるま市全体の自治会協議会へ、そしてうるま市議会、沖縄県議会に広がり、デニー知事は直接、木原防衛大臣に白紙撤回を申し入れた。当初態度をあいまいにしていたうるま市長も反対を表明した。

 県議選挙や市長選挙で争点化することを恐れた自民党県連は、住民の闘いとは一線を引きながら白紙撤回を防衛大臣に申し入れた。土地は購入し、訓練内容は見直すという線で決着させる算段だった。

 しかし、住民はそんなあいまいな見直し論を許さなかった。土地の購入を含め、計画の断念を表明するまで闘うことを確認し、「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」を結成、市民集会の開催、政府交渉を繰り返した。私たち県選出野党国会議員5人でつくる「うりずんの会」も、連日の国会論戦で鋭く切り込んでいった。島ぐるみの様相を強めた運動が政府を追い込んだのだ。

 ところが大臣は、計画断念に至った経過を「本日、中村うるま市長と自民党の島袋県連幹事長からの重ねての要請を受けた結果」と述べた。選挙を前にした、あからさまな政治利用だ。

 これには、会のメンバーから、事実をゆがめるものと新聞投稿が繰り返された。政府と県連の態度はあまりにもしらじらしいと、住民の投書も相次いだ。陸自訓練場の断念は住民の力で勝ち取ったものだ。(しんぶん赤旗 2024年5月15日)

 

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