エッセイ

水曜随想  平和の原点取り戻したい

 

 被爆69年を迎えた長崎市。8月9日の「原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」で安倍首相は被爆者から厳しく批判された。昨年は田上富久市長から核兵器を容認する姿勢を指弾され話題をよんだ。今年は、「集団的自衛権行使容認」の閣議決定が批判の対象。いずれも、安倍首相を目の前にしての出来事だ。

 

 被爆者代表の城臺美彌子さん(75歳)は訴えの中で「集団的自衛権の行使容認は憲法をふみにじる暴挙」と声をふりしぼった。あらかじめ配られていたパンフの中にはなかった文言に最前列にいた私たちも驚いた。東京新聞10日付は「『日本国憲法を踏みにじる暴挙』のくだりは、事前に書いた原稿では『武力で国民の平和を作ると言っていませんか』となっていた。差し替えは、読み上げる直前に決意した。待機席で登壇を待っている時、来賓席に座る安倍晋三首相ら政治家たちの姿が目に入ったのがきっかけだった」と報じた。

 

 戦争の悲惨さを実感できない総理大臣のあいさつは、長崎にとどまらず広島や沖縄の平和式典でも軽すぎて、戦争体験者の軽蔑の対象だ。彼は平気を装っているからなお許せない。長崎から沖縄にもどった11日、翁長雄志那覇市長に対して沖縄県知事選挙への出馬要請を行った。日本共産党、社民党、沖縄社会大衆党、生活の党など県政野党そろっての要請に対して翁長氏は、「私は保守政治家の父親、兄のもとで育ったので、ごく自然に『革新勢力は敵』と考える保守政治家だった。那覇市長になって2年目に高校歴史教科書検定で沖縄戦がゆがめられ、基地問題で本土政府の横暴を目の当たりにした。保革敵対するのではなく、沖縄が一つになって立ち上がり本土政府を変えなければならない」と応じた。

 

 安倍内閣の暴走は必ず国民的抵抗を生む。広島や長崎の被爆者が安倍首相から受けた屈辱ははかりしれない。沖縄県民も同様だ。沖縄県知事選挙はなんとしても勝ちたい。そして壊されようとしている平和の原点を取戻したい。(しんぶん赤旗 2014年8月13日)

 

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