エッセイ

水曜随想  日米同盟の共通感覚

 

 今年の国会は289日間にわたった。史上最長だ。

 菅内閣から代わった野田内閣は、普天間「移設」、TPP、原発の輸出、消費税増税と暴走はとどまるところを知らない。

 普天間基地問題をめぐる県民との矛盾は深刻だ。辺野古新基地「環境影響評価書」の提出をめぐって、提出責任者である田中沖縄防衛局長(当時)が、「犯す前に、これから犯しますよといいますか」と発言し、「評価書提出」の時期は、県民に気付かれないよう、不意打ちで行うという意向を示したからだ。

 「評価書提出」を性暴力に例えた局長の発言は、米兵によって繰り返されてきたレイプ事件と重なった。〝県民の理解を得たい〃と低姿勢で県民に近付いてきながら、〝最後は力ずくで犯せばいい″という本音が透けて見える。

 これは、程度の差こそあれ、日米同盟の立場にたつ政治家や官僚に共通した感覚だ。さらに、深刻なのは、暴言の謝罪にくる政治家や官僚も、「評価書は予定通り提出したい」と繰り返していることだ。この事件の影響を気にしてか、玄葉光一郎外相とアメリカのルース駐日大使との会談が行われ、今週末にはワシントンで日米外相会談が行われる。アメリカの強い圧力だ。彼らは、クリスマス前後に、評価書提出を行うかもしれない。田中前防衛局長の陰湿な発言通りのシナリオだ。

 先月、衆院外務委員会で地位協定問題の論戦があった。田中真紀子外務委員長は、答弁不能に陥る外相や官僚に業を煮やして、しばしば審議を中断し叱り付けた。終わってから、玄葉外相が、「私たちだって、一生懸命努力している。少しは評価してください」と弁解してきた。外交辞令を交わせばよかったところだったが、私はつい「アメリカはそんな甘い国ではありませんよ」と言ってしまった。玄葉外相が私の言葉に、無言でうなずいたのが、印象的だった。

 野田首相の年内訪沖も取り沙汰されている。県民全体を敵に回した野田首相は、沖縄で大きな抗議の声に包まれることだろう。(しんぶん赤旗 2011年12月14日)

 

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