衆院予算委員会の論戦準備を通して、日米関係には、謀略的な深い罠(わな)が仕掛けられていることを今さらながら実感した。
「『戦後最も親米的』とさえいわれる菅政権は、どのように誕生したのか」という書き出しではじまる新聞記事(東京新聞1月20日付)がある。
内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公開した米外交文書を、元外務省国際情報局長で元防衛大学校教授の孫崎享氏が読み解いた内容を紹介するなど、分析は興味深い。
沖縄問題で迷走した民主党政権を、親米路線に鍛え直すために、アメリカの介入があったとすれば、重大だ。
雑誌や新聞は「日米同盟の深化」論であふれかえっている。代表的な論客は、外務省の元高官、谷内正太郎氏。
「日本では、依然として、時折、うっ屈した反米感情がふき出すことがある」ことを、厳しくたしなめつつ、ビスマルクを引用して、「同盟というのは騎士と馬の関係」であり、「騎士と馬が一体になれば、同盟は強固になる」「騎士が方向を決め、馬は、騎士がどちらに行こうとしているのかをよく判断して、一体になって行動することを期待されている」と強調している。
同氏はさらに「TPP参加は『強い安保』『強い経済』の分水嶺(れい)」という論陣も張っている。
尖閣諸島問題が、日米軍事同盟強化の大義にされている。雑誌『世界』の1月号に掲載された「『尖閣問題』と安保条約」はその複雑な関係を鋭く読み解いている。
尖閣諸島は、国際法的にも歴史的にも沖縄県の一部だが、アメリカ政府は、沖縄返還の際、「施政権は日本に返還するが、領有権は、日中両国できめるべき」というあいまいな態度をとった。この態度はいまもかわらない。
これについて、同論文は、「沖縄の返還に際して日中間にあえて火種を残し、紛争に対処する在日米軍の存在を正当化させる、という狙いがあった」と分析している。
日米外交の属国性を、もっと深いところから学び直す必要を痛感した予算委員会の論戦準備だった。(しんぶん赤旗 2011年2月9日)