日本政府 否定に躍起だが…
米海兵隊が沖縄に配備を狙う垂直離着陸機MV22オスプレイに「オートローテーション(自動回転)」機能の欠如という致命的欠陥があるとの指摘に対し、日本政府は否定に躍起となっています。北沢俊美防衛相は「国民の命の問題として考えている」としつつ、「オートローテーション機能は十分ある」と断言しています。本当にそうなのか。(榎本好孝)
“空を飛ぶ恥”
オートローテーション機能はすべてのヘリコプターに備わり、空中でエンジンが停止しても機体の降下による空気の流れで回転翼を動かし揚力を得て安全に着陸する機能です。
今月8日の衆院予算委員会―。日本共産党の赤嶺政賢議員は、オスプレイの問題を取り上げ、同機に関する米誌タイム2007年10月8日号の特集記事を紹介しました。記事のタイトルは「空を飛ぶ恥(フライング・シェイム)」。
記事は、米国防総省の内部文書を使い、同省がオスプレイにオートローテーション機能を持たせることを断念した経過を暴露。国防総省内の研究機関でオスプレイの主席分析官を務めていたレックス・リボロ氏が内部報告書(03年)で、同機のオートローテーションの試験は「無残に失敗した」と指摘していることなどを明らかにしました。
ところが赤嶺氏の指摘に対し、北沢防衛相は「オートローテーションの機能は十分にあると承知している」と強弁したのです。
確かにオスプレイを開発したベル・ボーイング社の「製品情報」には、同機の「オートローテーション」機能について言及があります。しかしそれは「オートローテーションには時速110ノット(約200キロ)以上が必要」という説明です。
ある航空軍事専門家は「ヘリ・モードは垂直に着陸する時などに使うのだから110ノットという速度で飛んでいるケースはほとんどない。実用性に乏しく、ヘリに相当する機能ではない」と言います。
米軍は「オスプレイはオートローテーションができないから危険だ」というのは「作り話」だと反論しています。(『V22オスプレイ・ガイドブック』)
しかしその“根拠”も「V22はエンジン停止状態で無事着陸するためオートローテーションには頼らない」というもの。「必要なら固定翼機モードで(グライダーのように)滑空できる」と、事実上、オートローテーション機能がないことを認めています。
しかも、前出のリボロ氏は09年6月の米議会公聴会で、ヘリ・モードから固定翼機モードへの切り替えは12秒かかり、機体は最低でも1600フィート(約480メートル)落下するため、極めて危険だと主張しています。
米の受け売り
松本剛明外相は、赤嶺氏の指摘に対し「オスプレイのパイロットはシミュレーターを用いてオートローテーションの訓練を定期的に行っている」と答弁しました。グリーン在沖縄米国総領事の主張(7月22日メルマガ)の受け売りです。
しかし前出のタイムの記事はオスプレイのパイロットはシミュレーターの外でオートローテーションの実地訓練はしない、飛行マニュアルが禁じているからだと述べています。
赤嶺氏の質問に北沢防衛相は「いかにも(政府が)米側の代弁者のような決めつけ方」だと色をなしました。しかし、政府の態度は「米側の代弁者」そのものです。(しんぶん赤旗 2011年8月17日)
MV22オスプレイ 両翼のローター(回転翼)の向きを変え、「ヘリコプター・モード」でヘリのような垂直離着陸や、「固定翼機モード」で固定翼のプロペラ機のような水平飛行ができる輸送機