国会質問

質問日:2009年 2月 20日  第171国会  予算委員会

脳脊髄液減少症 「保険適用を検討」 赤嶺議員に厚労相答弁

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、二十日の衆院予算委員会分科会で、交通事故などの衝撃で脳脊髄(せきずい)液が漏れ、激しい頭痛やめまいなどに襲われる難病「脳脊髄液減少症」について質問しました。

 この病気の患者は全国で三十万人ともいわれます。赤嶺氏は患者救済と、「患者に有効とされるブラッドパッチ治療が、全額自己負担で、一回二十万―四十万円かかるため、一刻も早い保険適用を」と迫りました。

 舛添要一厚生労働相は「難病対策の中で、予算も大きく増やして、脳脊髄液減少症もしっかり取り組んでいきたい。患者の声によく耳を傾け、国が立ち上げた脳脊髄液減少症に関する研究の結果を待って、ブラッドパッチ治療法の保険適用を検討していきたい」と答えました。

 また、赤嶺氏の質問の中で、「脳脊髄液減少症の診断・治療に関する研究」において、終了期限がせまっているにもかかわらず、目標としている研究症例数二百五十に対して、二十二症例しか現時点で集まっていないことが明らかになりました。研究班の会合も昨年度一回しか行われていないなど、同研究が進んでいない実態が浮き彫りになりました。

 赤嶺氏は、症例を早急に集め、研究促進のための強力な具体的手だてを国に強く要求。厚労省の上田博三健康局長は「研究が遅れていることはそのとおり。促進に努力していきたい」と答えました。
( 2009年02月23日 しんぶん赤旗)

議事録

○赤嶺分科員

 そこでもう一つ、今度は脳脊髄液減少症に関する問題であります。

 これは、スポーツや交通事故などの衝撃が原因で脳脊髄液が漏れ、激しい頭痛や目まいなどに襲われる。脳脊髄液減少症の患者は全国で三十万人とも言われ、これまで脳脊髄液減少症患者支援の会などの関係団体や四十七都道府県の議会は、国に対して、脳脊髄液減少症の研究、治療の促進、脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチ治療法の保険適用を求める要望書や意見書を上げて、現在、三十七万七千人もの署名が全国から提出されております。

 昨年の二月に舛添大臣も患者と面会をされておりまして、患者の要望について、しっかり受けとめて、できることをやっていきたいと約束をされております。

 病気の症状に加え、この病気に対する社会的認識の低さから、怠け者病あるいは精神的なものなどと診断されたりして、患者や家族の肉体的、精神的苦痛ははかり知れないものがあります。

 患者の皆さんとの面会から一年たったわけですが、大臣は、この問題、どのように取り組んでこられたでしょうか。

 

○舛添国務大臣

 この脳脊髄液減少症の方々、今委員おっしゃったように、直接お会いしましたし、ブラッドパッチを打ってこんなによくなったよという話もそのときにもお伺いしております。その後も何度か、患者の皆さん、支援する皆さん方とも協議を重ねています。

 そういう中で、全体的な大きな話として、やはりこれを含めて難病対策をしっかりするべきだということで、この研究の二十五億円という予算を四倍増の百億円ということで今お願いをしているところでありますので、これでさらに進めたいというふうに思っています。

 ただ、具体的に、山形大学の嘉山医学部長を中心に研究をなさっていますが、その詳細、どういうところまで進んでいるかは、ちょっと健康局長に答えさせたいと思います。

 

○赤嶺分科員

 進めている、進めるんだというお話でありましたが、具体的な事例に入っていきますけれども、ただ、その前にやはり、今大臣もおっしゃられたブラッドパッチという治療法ですね。この脳脊髄液減少症に極めて効果が上がる。全国で百近くの病院で三千人以上の治療が行われて、約七割の例で、七割が症状の改善が得られた。これを保険適用してほしいと、切実であるわけですが、全国でも病院が限られている。患者がその限られた病院に押しかけて、治療に至るまでに一年も二年も待たされている。こういう非常に患者にとっては切実な現在があるわけですね。

 きょうあすにも治したいというのがあるわけですが、やはりブラッドパッチの治療法で成果が生まれているという、この成果を早く生かしていくべきではないかというぐあいに考えているんですが、この点からよろしくお願いします。

 

○上田政府参考人

 いわゆる脳脊髄液減少症につきましては、患者さんの方々からさまざまな御要望もいただいております。また、大変御苦労されているというふうに私どもも認識をしております。しかしながら、非常に症状についても多種多様な側面がございまして、その診断、治療に関しては、専門家の間にも幅広い意見があるというふうに承知をしております。

 ブラッドパッチについては成果があるというふうなことも私ども聞いてはおりますけれども、まずはこの脳脊髄液減少症についての診断法あるいは治療法が標準的に確立をされなければ、どういうケースの患者様にブラッドパッチを適用するか、そういうことがなかなか確立しない中で直ちに保険適用というのは難しいということで、限られた患者さんにまず効果があったということはそのとおりではございますけれども、そういう確立をすることがまず必要だということで、脳神経外科あるいは整形外科、放射線科など、さまざまな関係学会の専門家が今参加をして、疾病概念や標準的な診断、治療法の確立に向けて研究を行っているところでございますが、この保険適用の是非につきましては、現在行われている研究の成果が出た段階では検討することになる、このように考えているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 今、研究会を立ち上げている、保険適用はその成果、結論が出てからだというお話であったように伺ったわけですが、それではその研究会の進捗状況はいかがですか。

 

○上田政府参考人

 この研究会の名前でございますが、脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究班でございますが、これに関しましては、平成十九年四月より、厚生労働科学研究費補助金、こころの健康科学研究事業におきまして、山形大学医学部長をされております嘉山孝正先生を主任研究者とする研究班が、現在のところ三年計画で研究を実施しております。

 これまで、症例収集のための共通の評価項目を取りまとめ、現在では、研究班員の所属する複数の医療機関におきまして、検査結果や症状あるいは治療の状況などの情報収集をしていると聞いているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 研究の情報を収集していると。

 私が伺ったところによりますと、研究のかなめである症例数は、二百五十例予定症例を集めたいということですが、現在はどのくらい集まっているんでしょうか。

 

○上田政府参考人

 これは、疾病概念を確立し、標準的な診断法、治療法を確立するということではある程度の症例数が必要でございまして、そういう点からは、二百五十例ぐらいを集めることが適当ではないか、こんなふうに研究班でも判断をされているところなんですが、現時点での症例数は二十二例となっているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 二十二例といいますと、この研究会は結論を出すのは大体いつごろを予定しているんですか。

 

○上田政府参考人

 これにつきましては、三年計画でやっているわけでございますけれども、現在二十二例、十九年四月からですからことしが二年目、三年目ということになるんですが、そういう中で二十二例ということであれば確かに症例数としては非常にまだ十分ではないということでございます。

 そういう中で、私どもとしては、研究班の先生方とよく相談をして、症例の収集にもっと努力をしていただくことと、場合によっては研究期間の延長を図るというようなことをして早急に必要な症例数を集めていただき、標準的な治療法、診断法を確立していただきたい、このように要請をしたいと考えているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 その研究班が、私ちょっと理解に苦しむんですが、二十二例しか集まらない。その原因は何でしょうか。

 

○上田政府参考人

 まず、これは臨床研究ということになりますので、各研究機関の倫理審査委員会がありますけれども、そこでの承認、この研究をするための承認が必要でございます。

 それからもう一つ、研究に参加される患者さんの同意が必要だということで、実はこの二十二例も、母数は八十例の方をまず候補に挙げてやっていったわけなんですが、諸事情それから同意が得られないというようなこともございまして最終的に二十二例になったということでございまして、この辺の手続のスムーズ化というのは必要ではないかと考えているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 研究班というのは、期間内に結論を出す上でどんな推進体制をとっているんですか。研究班の集まりというのは、ことし、今年度ですか、何回持たれたんですか。

 

○上田政府参考人

 ことしは一回ということでございます。

 

○赤嶺分科員

 大臣もお会いになって、患者から直接ブラッドパッチの効果についてもお聞きになって、早く標準的な診断基準、治療基準を決めていきたいとして研究班をつくって予算もふやした。しかし実態は、一回しか集まりが持てていなくて、その研究の成果を出す上で一番大事な症例についても八十人にしか当たっていなくてわずか二十二例ということになってくると、今何か延期というお話もありましたけれども、これは努力を尽くされた上でそういう結果になっているのか、それとも別の要因があってそういうぐあいになっているのか、本当に努力されていたんですかということを伺いたくなるんですが、この点、いかがでしょうか。

 

○上田政府参考人

 研究の性格というのは、もちろんこの問題については私ども非常に重要な問題だと考えてはいるんですが、研究の主体は先生方にあるということと、先ほどから申し上げてございますように、患者様の御同意が得られないケースがあり、また、なかなか倫理審査委員会での判断というものに手間取るというようなこともございまして、現在こういう状況でございます。

 確かに御指摘の、おくれているといった点はそのように私どもも考えますので、私どもとしましても、研究班の先生方とよく連絡をとって今後のあり方についてよく相談をさせていただきたい、このように考えております。

 

○赤嶺分科員

 研究班の会合が一度しか持たれなかったというのは、これは研究を進めていく上でどのように理解されておりますか。

 

○上田政府参考人

 これにつきましては、現在症例の対象になる方々を収集しているということでございますので、必ずしも研究班の先生方が一堂に会することが必要だというわけではないとは思うんですけれども、確かに一回というのは少ないというのはそのとおりでございます。

 ただ、さまざまなメール等の連絡によって、一定の患者様を集めるルールが決まればそれに基づいて一斉に走り出すということでございますので、そういう点で何か支障があるということであれば、私どもとしても、その辺は明確にして先生方と一緒に考えていきたい、このように考えているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 医学の分野で科学的な知見をお持ちの先生方が研究を進めているということは理解できます。しかし、一斉に走り出すといっても、お互いに、症例が集まってくるのが少ない、遅い、どうしようかというのはやるべきじゃないですか。それはやって当然だと思いますが、いかがですか。

 

○上田政府参考人

 もちろん倫理審査委員会の迅速化、それから、私ども聞いておりますのは、症例を集めるために患者様に御協力をいただく、症例を集める対象の医療機関の数をふやすということを今研究班の方でも検討されているということでございますので、そういうものを促進しながら、できるだけ早く適切な症例数を集めたい、このように考えているところでございます。

 

○赤嶺分科員

 ぜひ促進方をお願いしたいんです。

 大臣、私も先日、二〇〇三年当時、中学二年生の女性の方、この方は学校の体育館でほかの生徒のけった硬球バレーボールが頭部に当たり、その場に倒れて、治療に苦しんだという女性にお会いすることができました。

 この方が手記の中で、「激しい頭痛と、強烈な吐き気がアタシの体をおそった。目の前の視界が一気に変わり、声にできないほどの痛みは、治ることなく、耳鳴りと共にどんどん激しくなっていった。」「まるで、首の据わらない赤ちゃんみたいで、ナイフで突き刺されたような激しい痛みが、アタシの頭をおそう。」「私の体は全く違う体とすり替えられたように変わっていった。食事も出来ず、昼夜を問わず、激しい頭痛と吐き気が治まらず、不眠の日が続いた。」「手に力が入らず、箸を持つこともままならなかった。」「今まで、何度も神様に祈った。アタシを元の体に戻してください・・」「アタシの人生は、このボール一つからガラガラと音を立てて崩れていった。」このようにつづっておられます。

 学校の中での事故を原因とするものも多いんですね。だから文部科学省も冊子を出して注意を喚起している。

 この方はことし二十歳を迎えました。思春期、青春をこの病気で苦しみ抜いていて、その後、ブラッドパッチ療法を受けて、この間は飛行機で大分県から国会にまで来られるというぐらいまで回復したんですね。その方がおっしゃった言葉がとても印象的でした。なぜ患者がいるのに病気として認められないのか。この患者さんは、自分はこんなによくなっている、自分は病気だったんだ、何でそれを政府は認めないんだ、このようにおっしゃっているわけですよ。

 ブラッドパッチの治療を受けて少なくない患者が回復してきておりますが、この治療費は一回で二十万から四十万、三回受けなきゃいけない。非常に高額なため治療を断念する、こういう方もいらっしゃるわけですね。ですから、研究を促進していくための国の手だて、ブラッドパッチ治療の保険適用、患者救済のためになお一層努力すべきだと考えますが、大臣の決意を伺いたいと思います。

 

○舛添国務大臣

 この疾病以外にもたくさん難病の方が来られる、例えばこの薬を一刻も早く承認してくださいと。ただ、そこで常に問題が起こるのは、これが薬害を引き起こしたらどうするかという副作用の問題がありますので、安全性と有効性をきちんと確立しないといけない、そのための臨床研究があるわけですね。

 ですから、臨床研究体制をさらに推進し、それから患者の皆さんの御協力も、全国に散っておられますから、いただいて、できるだけ早く症例を集める。そして、こういう承認をするPMDAという医薬品医療機器総合機構、この承認をする人員体制も一気にふやしてこれを迅速化する。今まで新薬について例えば四年かかっていたのをアメリカ並みに五カ年計画で一年半にする、そういう大きな政策の中で、この問題についてもさらに進めることができるかどうか。しっかりと患者の皆さんのことを念頭に置いて、さらに前に進めたいと思っております。

 

○赤嶺分科員

 国としてきちんと責任を果たしていただくことを申し上げて、質問を終わります。

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