国会質問

質問日:2013年 5月 10日  第183国会  内閣委員会

2013年5月10日 第183国会 衆議院内閣委員会

質問の映像へのリンク

日台漁業交渉問題について質問

議事録

○赤嶺委員

 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、日台漁業取り決めについて質問をいたします。

 先月十日に日台間で署名された漁業取り決めが、本日から全面的に開始をされました。政府は、沖縄の側から強い反発の声が上がったのを受けて、取り決めに基づいて設置された日台漁業委員会で沖縄の声を反映する考えを示していました。しかし、今月七日、開かれた委員会では、何も決められないまま終わったとのことであります。平等互恵の原則に反して、一方的に台湾側に譲歩した取り決めが、漁業資源の維持や安全操業にかかわるルールさえ決められないままスタートしたわけであります。

 まず、外務副大臣に伺いますが、七日に開かれた委員会では、日本側は何を主張し、どのような結果になったのか、その点を御説明していただけますか。

 

○鈴木副大臣

 七日におきましては、公益財団法人交流協会と台湾側の亜東関係協会、これが日台漁業委員会の第一回会合を七日に開催をし、取り決め適用水域における操業の取り扱い等について意見を行ったものと承知をいたしております。

 

○赤嶺委員

 操業ルールその他、そういうのを決めたんですか。

 

○鈴木副大臣

 そこの場の話し合いでは、双方の意見は一致をしなかったということを承知しております。

 

○赤嶺委員

 つまり、何も決められなかったわけですね。

 そもそも、問題の大もとにある取り決め、これ自体には手をつけないまま、それに基づいて具体的なルールづくりを進める。漁業委員会で問題を解決しようとしても、無理があると思います。沖縄の関係者は、委員会の場を途中退席いたしました。

 副大臣は、二月の末に上京した沖縄の関係者に対して、沖縄の漁業者の意向は理解している、頭越しに協定を締結することはない、このように回答いたしました。ところが、現実には、漁業者の意向を全く無視した取り決めを、何の説明もなしに締結したのであります。その責任、極めて重いと思いますが、どのように認識しておりますか。

 

○鈴木副大臣

 先生御指摘のとおり、二月に、沖縄の漁業関係者の方々が私のところに陳情に参りました。そのときに、沖縄の関係者の皆さんから、日台民間漁業取り決めにつきましては地元の漁業関係者の声を踏まえて対応してほしい、そういう御要望がございました。

 私自身、かつて、政界に入る前は全漁連に勤務をしておりましたし、また、自民党の水産部会長もやりましたので、水産に対しては大変深い思い入れがございます。ですから、私自身、そういう思いで、真摯にその陳情に対応させていただいたところでございます。

 ですから、私自身、事務方に対しましては、交渉事でありますから、日本の主張が一〇〇%通ることはないにせよ、沖縄の漁業関係者の方々の声にも耳を傾けて、その意向をできるだけ酌み取るよう意を用いるべきだ、こういうことを省内においても指示をしてきたところでございます。

 先生、今、頭越しとおっしゃいましたけれども、実際、二月には外務省の担当参事官が沖縄を訪問して、漁業協同組合の組合長さん初め関係者とも膝を突き合わせて地元の意向を聴取してきましたし、また、水産庁の担当部長も複数回にわたって沖縄を訪問して、地元の声に耳を傾けてきた、そういうことを承知しているところでございます。

 そのような中で、今回、相手がいる中で、我々の主張が反映されるよう最大限の努力を行ったわけでありますが、厳しい交渉の結果、最終的に本取り決めが作成された、そのように承知をしております。

 

○赤嶺委員

 鈴木副大臣、水産に従事していた、全漁連におられたと言うならなおさらですよ。

 何度か説明に行った、しかし、締結の直前まで、沖縄の漁民は、要望がこんなふうに頭越しに決められるとは考えてもいなかったわけですね。漁民としての存在そのものが無視された思いでいるんですよ。そういうのを、鈴木副大臣、認識していないんですか。

 

○鈴木副大臣

 私の気持ちといたしましては、先ほど述べたとおり、でき得る限り、交渉の過程において、沖縄の漁業関係者の気持ちを反映させるべきだ、そのことを事務方にも指示をしてきたところでございます。

 そういう中で、最大限努力をしたわけでありますが、相手のあることでございます。厳しい交渉の結果、このような結果に落ちついたということでございます。

 

○赤嶺委員

 それでは、どんな交渉をしていったのか、この点について、ちょっと振り返って見てみたいと思います。

 改めて交渉の経緯を確認いたしますけれども、日台漁業協議は一九九六年に開始されたものであります。日台間の主張の隔たりが大きく、二〇〇九年以降中断されたままとなっていました。今回の交渉は、民主党政権のもとで、協議の早期再開を求める日本側の提案を契機として再開されたものであります。

 台湾と日本側窓口である交流協会のホームページを見ますと、昨年九月二十四日付で、日本政府は、日台漁業協議の早期再開への期待を表明し、十月五日には、玄葉外務大臣の台湾向けの異例のメッセージが出されております。

 メッセージでは、日本側が提案した日台漁業協議の早期再開への期待を重ねて強調するとともに、いたずらに緊張を高めるような事態が再び発生しないことを強く期待していると述べております。九月二十五日に台湾の漁船や巡視船約五十隻が尖閣諸島沖の領海に侵入したことを踏まえたものと報じられておりました。

 民主党政権のもとで日本側が協議再開を提案したのはどういう判断からだったのか、当然、政府として引き継いでいることでしょうから、この点を説明していただけますか。

 

○鈴木副大臣

 先生も御承知のことと思いますけれども、あの海域、従来、日本と台湾との間には、海洋生物資源の保存、利用、あるいは操業秩序の維持を図るための枠組みというものがなかったわけでございます。そのために、海洋生物資源の保存というものが十分できない、あるいは操業秩序も非常に安定したものが得られない、こういうことでございましたので、双方の民間窓口機関が、東シナ海における平和及び安定の維持、それから友好及び互恵協力の推進、海洋生物資源の保存及び合理的な利用、操業秩序の維持、これを図ることを目的として、交渉を重ねてきたところでございます。

 

○赤嶺委員

 沖縄の漁民も、安全な操業、資源の確保を願っていたわけですよ。沖縄の漁民たちは、みずから台湾に出かけていって、台湾の漁業関係者とルールをつくる努力も重ねていたわけです。

 ところが、今度の政府間の交渉というのは違うんですね。

 沖縄県や県内の漁業関係者は、協議に当たって、一、漁業者の意向を十分に尊重すること、二、地理的中間線を基本に交渉することを繰り返し政府に求めてきました。それだけでなくて、最大限の譲歩として、一、先島諸島の北では東経百二十五度三十分以東の水域に台湾漁船を入れないこと、二、先島諸島の南では台湾漁船の操業を認めないこと、三、台湾漁船に対して拿捕など徹底取り締まりを行うことを提示していました。

 協議に当たっての沖縄側の要請内容は非常に明確でありました。一方、明確でないのが、交流協会を窓口として、政府の側の交渉の方針であります。

 協議再開を提案するに当たって、日本側としてはどういう方針で交渉に当たることとしていたのか、この点を明確にしていただけますか。

 

○鈴木副大臣

 このことにつきましては、先ほど申し上げたことのとおりでございます。

 つまり、私どもとしては、そこに安定した操業秩序、それから海洋生物資源の保存、利用、そういうものの枠組みがなかったわけでありますから、東シナ海における平和及び安定の維持、友好及び互恵協力の推進、海洋生物資源の保存及び合理的な利用、操業秩序の維持、これを図ることを目的にして、方針として、交渉を重ねてきたところでございます。

 

○赤嶺委員

 そんな一般的な話じゃないわけですよ。

 きちんと、沖縄県の漁民にとって大事なところは最低限守ってほしい、漁業のルールをつくるのは、これは当然だと願っていたわけですよ。最低限守ってほしいということさえ、主張したのかどうか曖昧なわけですよ、今の皆さんの答弁では。そういう方針が曖昧だった。

 去年の十二月に安倍政権がスタートをいたしました。政権内で、日台漁業協議をめぐってどのようなことが話し合われ、確認されたのか、民主党政権のときと何か変更した点はあったのか、その点はいかがですか。

 

○本川政府参考人

 私ども水産庁としても、漁民の方々の御意見を伺うということで、昨年、豊かな海づくり大会のときに私も沖縄へ参りまして、意見交換をさせていただきました。

 その中で、皆さんが一様におっしゃったのは、先島以南の水域については取り決めの対象からぜひ外してほしいということをおっしゃいました。それから、当然ながら、尖閣の領海についても安全操業を確保してほしいということをおっしゃいました。それから、尖閣諸島と先島諸島の間の水域については、双方が入り乱れて操業しておるという実態を踏まえて、操業秩序の確立をしてほしいということを伺いました。

 そういうお話を伺った上で、例えば今回は先島以南の水域は協定の対象外にするなど、そのような形で交渉をさせていただいたという経緯でございます。

 

○赤嶺委員

 今、水産庁、よく知っているのに答弁をそらしたんですけれども、先島以南はそうですよ。しかし、沖縄の漁民たちから、久米島の、久米西、ここの漁場を守ってくれ、それから、暫定執法線からはみ出ることがないように、先島北側の漁場を守ってくれ、こういうのは交渉の方針にありましたか。これは日本政府の交渉の方針にあったんですか。答えてください。

 

○本川政府参考人

 お答え申し上げます。

 私どもとしては、先島以南を適用対象にしないということについては、何としても守りたいという思いでございます。それから、先島より北の水域については、暫定執法線というものを基本に置きながら、そこに一定の秩序をつくるということを目指して取り組んでまいったわけでございます。

 その結果として、日台の漁業委員会という協議の場が、それまで全くできていなかったものができまして、この場において、これから、そういう操業秩序について、話し合いを第一回目やり、残念ながら継続協議になっておりますけれども、粘り強く議論してまいりたいと考えておるところでございます。

 

○赤嶺委員

 操業のルール、海域は決めたけれども、台湾側は、自分たちが求めていた以上の海域を確保したと。その求めた以上の部分が、沖縄側としては大事な漁場だから守ってくれと言ったと。しかし、そういう方針はなかったわけですね。

 私は官房長官に伺いますけれども、取り決めの内容について沖縄に説明に訪れた水産庁の幹部は、後ろから早くしろと叱られていた、このように述べています。官邸が早期締結を迫ったのではありませんか。

 

○菅国務大臣

 日本と極めて友好関係にある台湾との間で、先ほど副大臣からお話がありましたけれども、海洋資源の保存、利用や、操業秩序の維持を図るための枠組みがなかった。そういうことで、民主党政権で交渉し、私どもも、安倍政権になってから、この問題を解決するために交渉してきたわけであります。

 結果として、これは十七年間にわたっての協議が重ねられて、一定の共通認識が得られて、本取り決めが署名されるというふうに認識をいたしております。

 そして、また一方で、この署名が結果として沖縄県の漁業関係者の皆さんに懸念を与えているということには、政府としてもこれを重く受けとめております。

 今後は、本取り決めの実施状況を踏まえながら、台湾漁船の漁業のあり方に関する諸課題が解決されるよう、政府としても全力を尽くしていきたいというふうに思います。

 そしてまた、本取り決めの実施に伴う影響について、関係漁業者の意見も十分に聞きながら、しっかりと把握をして、関係省庁が連携をして、必要な対策をしっかりととっていきたいと思います。

 

○赤嶺委員

 こういうことは協定を締結する前にやるべきことなんですよ。

 水産庁の幹部の話として沖縄で報道されている中身ですが、非常に具体的です。

 報道を引用しますと、日本側の担当として台湾政府当局者と交渉に当たった同幹部は、交渉の最終作業を前に、菅官房長官と対峙していた。久米島西方の水域に台湾の船が来たらおしまいですよ。沖縄との関係が破裂しちゃいますよ。沖縄の人たちの生活の糧を奪っていいんですか。同幹部の反論に、官邸側から、なぜだめなのか、一つ一つ詰問責めに遭い、ことごとくはじかれた。日本のため、国益のために交渉しろと強く言われ、最終的には、菅官房長官自身が、自分の責任で最後まで対応するとの言葉で幕が引かれた、こう報じられております。

 菅官房長官自身が、沖縄側が最低限守りたいとしていた久米西、この水域を譲り渡して交渉を妥結するよう迫ったのではありませんか。

 

○菅国務大臣

 何の、どこの新聞記事かわかりませんけれども、まさに、あたかもそこにいて私が指示したようなことでありますけれども。

 やはり交渉というのはそれぞれ相手がいることでありますから、そして、十七年間にわたってできてこなかったことであります。政府として、やはり現場でそれぞれ交渉にあずかっている。相手がいることですから、先ほども鈴木副大臣が述べておりました、この厳しい厳しい状況下でありますから。

 そうした中で交渉が締結できたわけでありますけれども、当然これは双方に不満が残るわけでありますから、政府とすれば、沖縄の皆さんにできる限りのことをさせていただきたいというのは、政権として当然のことじゃないでしょうか。

 

○赤嶺委員

 できるだけのことをするというのは、まさに久米島の漁民の皆さんの漁場を守ること、そして、先島の北方の漁場を守ること。ここは、幾ら交渉の相手がいると言っても、これを台湾側に譲り渡してしまうと、沖縄の漁業はもう成り立たなくなっていくわけですよ。官房長官は、この話はあたかも見てきたことであるかのようにと言っていますが、そういう姿勢で臨んだのは間違いないわけでしょう。

 しかも、沖縄の漁民の漁場は、大半は米軍に訓練水域として奪われているんですよ。

 

○平井委員長

 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

 

○赤嶺委員

 残った漁場がここだった。

 ここを、協議を急ぐ上で、アメリカの議会事務局からは、アメリカの圧力もあったという報告書が出ております。きょうは時間がないから取り上げませんけれども、そういうことまでして、漁民のなりわいを無視したやり方は撤回すべきだということを求めて、質問を終わります。

すべて表示

このページをシェアする